・値上げ必至か、水道民営化を促すPFI法改正案(週間金曜日オンライン 2018年5月8日)
※森友学園、加計学園の問題の陰に隠れてしまっているが、国会では「公の領域」をめぐる重要な法案が審議入りしている。PFI法(民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律)の改正案である。
安倍政権は「コンセッション」の推進を成長戦略の柱に位置づけている。コンセッションはPFIの一種で、国や自治体が公共インフラの所有権を保持したまま、運営を民間企業に任せてしまう民営化の手法だ。
PFI法が成立したのは1999年だが、民間企業が公共インフラの運営に携われるようになったのは2011年の法改正以降だ。今回の改正案が成立すれば、地方議会の議決なしで自治体は運営権を売却でき、自治体の承認が必要だった利用料金の設定も届け出で済むようになる。上下水道事業のコンセッションを促進する狙いがある。
流れを先取りするようにこの4月から、日本初の下水道事業のコンセッションが浜松市でスタートした。20年間の契約で運営権を買い取ったのは6社企業連合。「水メジャー」とも呼ばれるフランスのグローバル企業「ヴェオリア」の日本法人2社のほか、JFEエンジニアリング、オリックスなどで、市の下水の約5割を処理する西遠浄化センターなどの運営を始めている。
水道民営化を世界に先駆けて推進したのは、英国のサッチャー政権(1979―90年)だった。「新自由主義政策の切り札」として導入されたわけである。一方で、水道の民営化は1990年代以降、発展途上国で盛んになった。なぜかというと、世界銀行が融資の条件として民営化を迫ったからだ。
結果はどうだったのか。玉真俊彦著『水ビジネスの教科書』(技術評論社)によると、発展途上国の上下水道民営化プロジェクトの約3分の1は失敗に終わり、失敗例の多くは「再公営化」されたという。失敗例としてしばしば取りあげられるのがブエノスアイレス(アルゼンチン)、ジャカルタ(インドネシア)、マニラ(フィリピン)などだ。
先進国に目を向ければ、水ビジネスの本場フランスの首都パリの例がある。シラク元大統領が市長だった1985年にヴェオリアなどと委託契約を結んだものの、契約は2009年末に打ち切られ、パリ市は2010年から水道事業を「再公営化」した。容易に想像がつくことだが、契約打ち切りの主な理由は水道料金の上昇だった。
安倍政権で水道民営化を含む「公的サービス・資産の民間開放」の火つけ役となり、議論をリードしてきたのは産業競争力会議(現在「未来投資会議」)である。主査として指揮をとった竹中平蔵氏は次のように発破をかけた。
〈我々は、アベノミクスの「新三本の矢」によるGDP600兆円の達成に向けて、PPP/PFIの活用拡大に向けた取り組みを大きく前に進めることを求められている〉(2016年4月14日の会議に提出された“竹中ペーパー”の冒頭文)
だが、誰もが知る国際都市を含む世界の失敗事例が物語っているのは、「社会的共通資本としての水」という視座を忘れた水道民営化など決して長くは続かないということである。
(ささき みのる・ジャーナリスト。2018年4月20日号)
・地元企業の参入排除 塩川氏 PFI法改定に反対(しんぶん赤旗 2018年5月15日)
※衆院内閣委員会は11日、上下水道事業について民間が運営する「コンセッション制度」を導入した際に自治体の財政負担を軽減する措置などを盛り込んだ「PFI法」改定案を採決し、賛成多数で可決しました。日本共産党は反対しました。
採決に先立つ質疑で日本共産党の塩川鉄也議員は、昨年からPFI事業の中止を含む大幅な見直しを行っている愛知県西尾市で2年前、市議会に提出されたPFI事業の「提案書」が墨塗りだらけだったことを示し、「事業者の都合を優先するがために起こる情報開示の後退だ」と指摘しました。
また、水道事業へのPFIコンセッション方式導入を進める静岡県浜松市が内閣府からの全額補助で行った調査報告書の中で「コンセッション方式導入によって、地元事業者が排除されれば安定的・継続的な水道事業への障害となる懸念を指摘している」と質問。梶山弘志・地方創生担当相は「もっともな指摘だ」と認めました。
塩川氏は、PFI受注の上位は大手ゼネコンばかりで上位10社だけで全体の35%を占めることを示し、「結局、PFI事業は大企業の参入を促進し、地元企業を排除する仕組みとなっている」と追及。梶山氏は「PFI導入は自治体の判断だ」と述べました。
塩川氏は「PFI事業は、地方自治を侵害し、地元企業の参入を妨げ、住民サービスの後退につながる」と批判しました。
・【拡散希望】イギリス・ヨーロッパの会計監査院がともに「PFIは割高で透明性悪化。使うべきでない」とレポートする中、今国会でPFI法を改正していいのか?
2018年5月26日
http://am-net.seesaa.net/article/459530694.html
※英国会計検査院(NAO)、ヨーロッパ会計監査院(ECA)が続けて、発表したレポートで
「PFIでの入札価格は40%割高であり、コスト削減効果もなく、透明性も悪化」
「問題点が改善するまで、PPPを広い分野で集中的に使うべきではない」
と勧告する中、今国会において、「水道民営化」を加速させる「PFI法改正」が通ろうとしています。
英国会計検査院(NAO)、ヨーロッパ会計監査院(ECA)のレポートについて、岸本聡子さんより、超特急での報告をいただきました。
以下、ぜひご覧いただき、拡散いただけますようお願いいたします。
<以下、岸本聡子さん(トランスナショナル研究所(オランダ)によるレポート>
英国の官民パートナーシップ(PPP)請負企業カリリオンが2018年1月に倒産した直後、国家機関で財政の監査役である英国会計検査院(NAO)がPPPの仕組みを克明に報告するレポート「PFI and PF2」を発表した。
「PFI(Private Finance Initiative:プライベート・ファイナンス・イニシアティブ)」とは、公共施設等の建設、維持管理、運営等を民間の資金、経営能力及び技術的能力を活用して行う手法である。英国ではPFIが用語として一般的に使われている。
PPPはより広義で、PFIは、PPPの代表的な手法の一つである。
折しも日本ではこの5月に、コンセッション方式の導入を推進するPFI法改正案が衆議院本会議で賛成多数により可決され参議院に送付された。
英国会計検査院はPFIの対費用効果と正当性を調査し、コスト削減の効果があるか検証した。
英ガーディアン紙は「納税者は先25年、£200 billion(約29兆円)をPFI契約に支払うことに」とする記事(1月18日)で英国会計検査院のレポートの主要な内容を掲載した。
レポートはPFIが公的な財政にプラスであるという証拠が乏しいと結論した。
さらに多くのPFIプロジェクトは通常の公共入札のプロジェクトより40%割高であると報告。
NAO(英国会計検査院)は、英国が25年もPFIを経験しているにもかかわらず「PFIが公的財政に恩恵をもたらすというデータが不足」と報告した。
現在英国では716のPFIプロジェクトが進行中で資本価値は£60 billion(約8兆7878億円)、年間の支払い額は2016-17で £10.3 billion(約1兆5084億円)。
新しいPFIプロジェクトが全くなかったとしても、2040年までの支払い金額は £199 billion(約29兆14520億円)に達する。
折しも英政府は、カリリオン(英国PPP請負企業)の£2.6mポンド(約3.8億円)の株を所有して主要なPFIプロジェクトに参画している。
カリリオンが倒産したことで、この公的な資金は危機にさらされている。
英国下院、公的会計委員会議長ののメグ・ヒラ―氏は
「民間の負債を相殺するだけの恩恵がないことを25年間のPFIの経験は示した。今多くの自治体は変更に膨大な費用のかかる柔軟性のないPFI契約で鎖でつながれた状態である」
とPFIスキームを痛烈に批判した。
「財務省は指摘された問題に対処しないままPF2という新しいブランド名でPFI を続行しようとしている。学校や病院にもっと投資が必要であるのに、間違った契約で結局は納税者が過剰な支払いをすることになる。」
PF2はPFIの批判を受けて、前ディビット・キャメロン首相のときに導入された。
支払ったお金に見合う価値があるかどうか (value for money)と透明性を高めるというのが主な趣旨であるが、PF2の6つのプロジェクトを精査した結果も懐疑的である。
レポートによると総体的に公的に資金調達されたプロジェクトよりPFIスキームは高くつき、学校建設の分析では政府が直接ファイナンスするよりも40%割高である。
主要なPFIプロジェクトを公的な所有に戻す場合、未払いの債務に加えて追加で£2 billion(約2929億円)が必要であり、これは未払い債務の23%に相当する。
労働党と労働組合は、この非常にリスクの高いPPP・PFI の停止を訴える。
「PPP・PFI企業は追い出されるべき。私たちに必要なのは公的な倫理と確かな管理のもので公務員によって提供される公共サービスである」
と党首のジェレミー・コービン氏は言う。
GMB(全国都市一般労組)の書記長レアナ・アザム氏は
「会計院のレポートはPFIが納税者のお金の破壊的な無駄づかいだであることを証明した。カリリオンは公共サービスを利益の最大追求の企業に任せたときにどうなるかを示す最新の例の一つでしかない。」
と批判した。
これに対し
「道路や学校や病院といった重要なインフラはPFI や PF2で支払われているし、これは経済を活性化させ雇用を創出している。私たちはPF2を通じてPFI 契約の透明性を高めvalue for moneyを改善している。納税者のお金は、建設と長期維持管理のリスクが民間セクターに移譲するPFI や PF2を通じて守られている」
と保守党のスポースクマンは語った。
これに続き、ヨーロッパ会計監査院(ECA)もNAOに準じるレポートを発表。
ECAは欧州連合が共同出資する12のPPPプロジェクトを分析。
「短所と限られた費用効果が広く観察され、€1.5 billion(約1924億円)が無駄で非効率的に使われた。支払ったお金に見合う価値があるかどうか (value for money)と透明性は広く悪化した。不明確な政策と戦略、不十分な分析、PPPの債務が公的なバランスシートに現われないこと(オフバランスシート)、政府と民間企業のリスク分担が不公平であることが特に問題である」
と結論。
ECAはEU委員会とEU加盟国は指摘された問題点が改善するまでPPPを広い分野で集中的に使うべきではないと勧告。
2010-2014年の間、EUは €5.6 billion(約7189億円) を84の PPPプロジェクトに提供した。
プロジェクトの全体の資本価値は, €29.2 billion(約3兆7480億円)である。監査は.フランス、ギリシャ、スペインの道路、交通、情報テクノロジー分野の12のプロジェクトを調査。プロジェクトの総額は€9.6 billion(約1兆2318億)で、うち EU が €2.2 billion(約2822億)を提供。
PPPs は公的機関に大規模なインフラを一つの手続きでまとめての発注を可能にするが、これによって競争効果はなくなる。受注者同士の競争がないうえに、ひとつにまとめることで発注者への依存度が高まり、発注者の公的機関は交渉において弱い立場になる。
「さらに調査対象のPPPプロジェクトの大半(9のうち7)が建設期間中、相当な非効率と、無駄が見られ、プロジェクトの遅れ(最長で52か月)による損失総額は€7.8 billion(約1兆7億円)に上った。」
「スペインとギリシャで高速道路を完成させるために約 €1.5 billion(約1924億円) の追加の公的資金は必要になった。その 30 % (€422 million-約541億円) はEUから拠出された。 」
レポートを担当したヨーロッパ会計監査院 のオスカー・へリックス氏は
「潜在的な経済的利益を得る手段として非効率」
と結論した。
※森友学園、加計学園の問題の陰に隠れてしまっているが、国会では「公の領域」をめぐる重要な法案が審議入りしている。PFI法(民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律)の改正案である。
安倍政権は「コンセッション」の推進を成長戦略の柱に位置づけている。コンセッションはPFIの一種で、国や自治体が公共インフラの所有権を保持したまま、運営を民間企業に任せてしまう民営化の手法だ。
PFI法が成立したのは1999年だが、民間企業が公共インフラの運営に携われるようになったのは2011年の法改正以降だ。今回の改正案が成立すれば、地方議会の議決なしで自治体は運営権を売却でき、自治体の承認が必要だった利用料金の設定も届け出で済むようになる。上下水道事業のコンセッションを促進する狙いがある。
流れを先取りするようにこの4月から、日本初の下水道事業のコンセッションが浜松市でスタートした。20年間の契約で運営権を買い取ったのは6社企業連合。「水メジャー」とも呼ばれるフランスのグローバル企業「ヴェオリア」の日本法人2社のほか、JFEエンジニアリング、オリックスなどで、市の下水の約5割を処理する西遠浄化センターなどの運営を始めている。
水道民営化を世界に先駆けて推進したのは、英国のサッチャー政権(1979―90年)だった。「新自由主義政策の切り札」として導入されたわけである。一方で、水道の民営化は1990年代以降、発展途上国で盛んになった。なぜかというと、世界銀行が融資の条件として民営化を迫ったからだ。
結果はどうだったのか。玉真俊彦著『水ビジネスの教科書』(技術評論社)によると、発展途上国の上下水道民営化プロジェクトの約3分の1は失敗に終わり、失敗例の多くは「再公営化」されたという。失敗例としてしばしば取りあげられるのがブエノスアイレス(アルゼンチン)、ジャカルタ(インドネシア)、マニラ(フィリピン)などだ。
先進国に目を向ければ、水ビジネスの本場フランスの首都パリの例がある。シラク元大統領が市長だった1985年にヴェオリアなどと委託契約を結んだものの、契約は2009年末に打ち切られ、パリ市は2010年から水道事業を「再公営化」した。容易に想像がつくことだが、契約打ち切りの主な理由は水道料金の上昇だった。
安倍政権で水道民営化を含む「公的サービス・資産の民間開放」の火つけ役となり、議論をリードしてきたのは産業競争力会議(現在「未来投資会議」)である。主査として指揮をとった竹中平蔵氏は次のように発破をかけた。
〈我々は、アベノミクスの「新三本の矢」によるGDP600兆円の達成に向けて、PPP/PFIの活用拡大に向けた取り組みを大きく前に進めることを求められている〉(2016年4月14日の会議に提出された“竹中ペーパー”の冒頭文)
だが、誰もが知る国際都市を含む世界の失敗事例が物語っているのは、「社会的共通資本としての水」という視座を忘れた水道民営化など決して長くは続かないということである。
(ささき みのる・ジャーナリスト。2018年4月20日号)
・地元企業の参入排除 塩川氏 PFI法改定に反対(しんぶん赤旗 2018年5月15日)
※衆院内閣委員会は11日、上下水道事業について民間が運営する「コンセッション制度」を導入した際に自治体の財政負担を軽減する措置などを盛り込んだ「PFI法」改定案を採決し、賛成多数で可決しました。日本共産党は反対しました。
採決に先立つ質疑で日本共産党の塩川鉄也議員は、昨年からPFI事業の中止を含む大幅な見直しを行っている愛知県西尾市で2年前、市議会に提出されたPFI事業の「提案書」が墨塗りだらけだったことを示し、「事業者の都合を優先するがために起こる情報開示の後退だ」と指摘しました。
また、水道事業へのPFIコンセッション方式導入を進める静岡県浜松市が内閣府からの全額補助で行った調査報告書の中で「コンセッション方式導入によって、地元事業者が排除されれば安定的・継続的な水道事業への障害となる懸念を指摘している」と質問。梶山弘志・地方創生担当相は「もっともな指摘だ」と認めました。
塩川氏は、PFI受注の上位は大手ゼネコンばかりで上位10社だけで全体の35%を占めることを示し、「結局、PFI事業は大企業の参入を促進し、地元企業を排除する仕組みとなっている」と追及。梶山氏は「PFI導入は自治体の判断だ」と述べました。
塩川氏は「PFI事業は、地方自治を侵害し、地元企業の参入を妨げ、住民サービスの後退につながる」と批判しました。
・【拡散希望】イギリス・ヨーロッパの会計監査院がともに「PFIは割高で透明性悪化。使うべきでない」とレポートする中、今国会でPFI法を改正していいのか?
2018年5月26日
http://am-net.seesaa.net/article/459530694.html
※英国会計検査院(NAO)、ヨーロッパ会計監査院(ECA)が続けて、発表したレポートで
「PFIでの入札価格は40%割高であり、コスト削減効果もなく、透明性も悪化」
「問題点が改善するまで、PPPを広い分野で集中的に使うべきではない」
と勧告する中、今国会において、「水道民営化」を加速させる「PFI法改正」が通ろうとしています。
英国会計検査院(NAO)、ヨーロッパ会計監査院(ECA)のレポートについて、岸本聡子さんより、超特急での報告をいただきました。
以下、ぜひご覧いただき、拡散いただけますようお願いいたします。
<以下、岸本聡子さん(トランスナショナル研究所(オランダ)によるレポート>
英国の官民パートナーシップ(PPP)請負企業カリリオンが2018年1月に倒産した直後、国家機関で財政の監査役である英国会計検査院(NAO)がPPPの仕組みを克明に報告するレポート「PFI and PF2」を発表した。
「PFI(Private Finance Initiative:プライベート・ファイナンス・イニシアティブ)」とは、公共施設等の建設、維持管理、運営等を民間の資金、経営能力及び技術的能力を活用して行う手法である。英国ではPFIが用語として一般的に使われている。
PPPはより広義で、PFIは、PPPの代表的な手法の一つである。
折しも日本ではこの5月に、コンセッション方式の導入を推進するPFI法改正案が衆議院本会議で賛成多数により可決され参議院に送付された。
英国会計検査院はPFIの対費用効果と正当性を調査し、コスト削減の効果があるか検証した。
英ガーディアン紙は「納税者は先25年、£200 billion(約29兆円)をPFI契約に支払うことに」とする記事(1月18日)で英国会計検査院のレポートの主要な内容を掲載した。
レポートはPFIが公的な財政にプラスであるという証拠が乏しいと結論した。
さらに多くのPFIプロジェクトは通常の公共入札のプロジェクトより40%割高であると報告。
NAO(英国会計検査院)は、英国が25年もPFIを経験しているにもかかわらず「PFIが公的財政に恩恵をもたらすというデータが不足」と報告した。
現在英国では716のPFIプロジェクトが進行中で資本価値は£60 billion(約8兆7878億円)、年間の支払い額は2016-17で £10.3 billion(約1兆5084億円)。
新しいPFIプロジェクトが全くなかったとしても、2040年までの支払い金額は £199 billion(約29兆14520億円)に達する。
折しも英政府は、カリリオン(英国PPP請負企業)の£2.6mポンド(約3.8億円)の株を所有して主要なPFIプロジェクトに参画している。
カリリオンが倒産したことで、この公的な資金は危機にさらされている。
英国下院、公的会計委員会議長ののメグ・ヒラ―氏は
「民間の負債を相殺するだけの恩恵がないことを25年間のPFIの経験は示した。今多くの自治体は変更に膨大な費用のかかる柔軟性のないPFI契約で鎖でつながれた状態である」
とPFIスキームを痛烈に批判した。
「財務省は指摘された問題に対処しないままPF2という新しいブランド名でPFI を続行しようとしている。学校や病院にもっと投資が必要であるのに、間違った契約で結局は納税者が過剰な支払いをすることになる。」
PF2はPFIの批判を受けて、前ディビット・キャメロン首相のときに導入された。
支払ったお金に見合う価値があるかどうか (value for money)と透明性を高めるというのが主な趣旨であるが、PF2の6つのプロジェクトを精査した結果も懐疑的である。
レポートによると総体的に公的に資金調達されたプロジェクトよりPFIスキームは高くつき、学校建設の分析では政府が直接ファイナンスするよりも40%割高である。
主要なPFIプロジェクトを公的な所有に戻す場合、未払いの債務に加えて追加で£2 billion(約2929億円)が必要であり、これは未払い債務の23%に相当する。
労働党と労働組合は、この非常にリスクの高いPPP・PFI の停止を訴える。
「PPP・PFI企業は追い出されるべき。私たちに必要なのは公的な倫理と確かな管理のもので公務員によって提供される公共サービスである」
と党首のジェレミー・コービン氏は言う。
GMB(全国都市一般労組)の書記長レアナ・アザム氏は
「会計院のレポートはPFIが納税者のお金の破壊的な無駄づかいだであることを証明した。カリリオンは公共サービスを利益の最大追求の企業に任せたときにどうなるかを示す最新の例の一つでしかない。」
と批判した。
これに対し
「道路や学校や病院といった重要なインフラはPFI や PF2で支払われているし、これは経済を活性化させ雇用を創出している。私たちはPF2を通じてPFI 契約の透明性を高めvalue for moneyを改善している。納税者のお金は、建設と長期維持管理のリスクが民間セクターに移譲するPFI や PF2を通じて守られている」
と保守党のスポースクマンは語った。
これに続き、ヨーロッパ会計監査院(ECA)もNAOに準じるレポートを発表。
ECAは欧州連合が共同出資する12のPPPプロジェクトを分析。
「短所と限られた費用効果が広く観察され、€1.5 billion(約1924億円)が無駄で非効率的に使われた。支払ったお金に見合う価値があるかどうか (value for money)と透明性は広く悪化した。不明確な政策と戦略、不十分な分析、PPPの債務が公的なバランスシートに現われないこと(オフバランスシート)、政府と民間企業のリスク分担が不公平であることが特に問題である」
と結論。
ECAはEU委員会とEU加盟国は指摘された問題点が改善するまでPPPを広い分野で集中的に使うべきではないと勧告。
2010-2014年の間、EUは €5.6 billion(約7189億円) を84の PPPプロジェクトに提供した。
プロジェクトの全体の資本価値は, €29.2 billion(約3兆7480億円)である。監査は.フランス、ギリシャ、スペインの道路、交通、情報テクノロジー分野の12のプロジェクトを調査。プロジェクトの総額は€9.6 billion(約1兆2318億)で、うち EU が €2.2 billion(約2822億)を提供。
PPPs は公的機関に大規模なインフラを一つの手続きでまとめての発注を可能にするが、これによって競争効果はなくなる。受注者同士の競争がないうえに、ひとつにまとめることで発注者への依存度が高まり、発注者の公的機関は交渉において弱い立場になる。
「さらに調査対象のPPPプロジェクトの大半(9のうち7)が建設期間中、相当な非効率と、無駄が見られ、プロジェクトの遅れ(最長で52か月)による損失総額は€7.8 billion(約1兆7億円)に上った。」
「スペインとギリシャで高速道路を完成させるために約 €1.5 billion(約1924億円) の追加の公的資金は必要になった。その 30 % (€422 million-約541億円) はEUから拠出された。 」
レポートを担当したヨーロッパ会計監査院 のオスカー・へリックス氏は
「潜在的な経済的利益を得る手段として非効率」
と結論した。