・竹中平蔵パソナ会長「残業代を出すのは一般論としておかしい」「労働者でなく私のニーズで高プロ提唱」(BLOGOS 2018年6月21日)
※竹中平蔵パソナ会長が今朝(6/21)の東京新聞で、残業代ゼロ=高プロ賛成派として登場して呪いの言葉を連発しています。
竹中パソナ会長「時間に縛られない働き方を認めるのは自然なことだ。時間内に仕事を終えられない、生産性の低い人に残業代という補助金を出すのも一般論としておかしい」
東京新聞6月21日付「残業代ゼロ」=「高プロ」導入是非は
わかります。残業代を払いたくないのですね。現時点では派遣労働者に高プロは適用できないとのことですが、労働者派遣法と同じようにパソナ会長として「対象拡大」をして、派遣労働者も「時間に縛られない働き方」にすれば、「パソナの派遣労働者は定額働かせ放題・残業代ゼロです!」を売りにできパソナはさらにボロ儲けできますから、パソナ会長が先頭を切って残業代ゼロ=高プロに賛成することは自然なことですね。
竹中パソナ会長「(高プロを提唱した)産業競争力会議の出発点は経済成長。労働市場をどんどん改革しなければならず、高プロはその第一歩だ。」
東京新聞6月21日付「残業代ゼロ」=「高プロ」導入是非は
(※注:政府の産業競争力会議の議員は大企業の役員ばかりで労働者は一人もいません。竹中パソナ会長も議員ですから、竹中パソナ会長は自分が高プロを提唱した、労働者でなく私のニーズで高プロ導入だ!と言っているのと同じですね)
高プロに対する労働者のニーズはゼロなのに、安倍政権は労働者のニーズがあるから高プロ導入が必要だと未だにウソをつきまくっていますが、さすが竹中パソナ会長! ここは正直ですね! 竹中パソナ会長はじめ大企業役員だけのニーズで高プロは提唱されたのですね! そして、高プロの目的は「経済成長」であって、「働き方改革」でも過労死根絶でも長時間労働根絶でもないのですね! 竹中パソナ会長のお話は非常によくわかります!
もっと突っ込むと、「高プロは経済成長のため」とする言説もウソです。高プロがむしろ経済成長を阻害して日本経済を低迷させることは、田中信一郎千葉商科大学特別客員准教授が「高度プロフェッショナル制度が日本経済を低迷させるこれだけの理由」という記事の中でわかりやすく指摘しています。それにこの間も、竹中パソナ会長は高プロと同じように派遣労働を拡大することが経済成長につながると主張してきましたが、むしろ労働生産性を低下させ経済成長を損ない日本経済を失速させてきたことを見れば、また竹中パソナ会長の大ウソが発動しているだけだということがよくわかるでしょう。
高プロが労働生産性を低下させ経済成長を阻害して日本経済を低迷させるとなると、それでは一体、高プロのニーズはどこにあるのでしょうか? それは竹中パソナ会長の話を追っていくとわかってきます。
竹中平蔵パソナ会長「時間ではなく成果で評価する高プロで、労働生産性を上げるインセンティブは間違いなく働く」
東京新聞6月21日付「残業代ゼロ」=「高プロ」導入是非は
「時間ではなく成果で評価する高プロ」というのは大ウソです。高プロの法案には「時間ではなく成果で評価する高プロ」などと書かれていないことは、嶋崎量弁護士や佐々木亮弁護士が繰り返し指摘していることです。
★嶋崎量弁護士「本当は存在しない「高度プロフェッショナル制度」~欺瞞性を曝く~」
★佐々木亮弁護士「高プロの法案を全文チェックしてみた。【前編】」
また、高プロがむしろ労働生産性を下げることは、先に紹介した田中信一郎千葉商科大学特別客員准教授が指摘しています。高プロ労働者の裁量は一切ないのでインセンティブは間違いなく下がります。
――高プロを含む「働き方」関連法案は、過労死促進法案との批判がある。
竹中平蔵パソナ会長「全く理解していない。過労死を防止するための法案だ。その精神がすごく織り込まれている。例えば年間104日以上の休日をとれと。(適用には)本人の同意も要る。なぜこんなに反対が出るのが、不思議だ」
4週で4日以上の休日も定めているが、裏を返せば24日間、24時間働かせても違法ではない。
竹中平蔵パソナ会長「そういう言い方はいくらでもできるが、休みを義務づけているわけだから。しかも、適用されるのはごく一部のプロフェッショナル。」「個人的には、結果的に(対象が)拡大していくことを期待している」「世の中の理性を信じれば、そんな(24時間働かされるかのような)変な議論は出てこない」
東京新聞6月21日付「残業代ゼロ」=「高プロ」導入是非は
竹中パソナ会長の「理性」はすごい! 高プロは休憩なしの24時間労働を48日間連続させても違法にはならなくなりますが、労働者の命と健康を「理性」を信じることまかせる上に、高プロの対象拡大の期待を表明。毎日1人以上が過労死で命を奪われ労災最多、パワハラ、セクハラ、残業代不払いなどおかまいなしのブラック企業が跋扈している中で、法律を取っ払ってブラック企業の「理性」をブレーキにするのが高プロだと竹中パソナ会長が断言! 高プロ、すごい!というほかありません!
細かいツッコミも入れておくと、「年間104日以上の休日をとれ」というのは、1年間で祝日もお盆も年末もお正月もないという前提での週休2日に過ぎません。「(適用には)本人の同意も要る。」ことについては、修正された「同意の撤回」すらまったく意味をなさないことを佐々木亮弁護士が指摘しています。(※→佐々木亮弁護士「高プロの法案を全文チェックしてみた。【真の後編】」)
また、対象を拡大させたいと言いながら「適用されるのはごく一部のプロフェッショナル」などと竹中パソナ会長は言っていますが、年収300万円台でも適用されたり(※→佐々木亮弁護士「高プロ制度は地獄の入り口 ~ High-pro systm is the gate to hell~」)、通勤手当など諸手当込みであることから年収要件はグッと下がり、竹中パソナ会長の期待する対象拡大をしなくても導入当初から多くの労働者に適用可能であることも判明しています。
※日本の労働者を極限まで疲弊させてきたパソナ竹中氏がいよいよその”本音”を全開に!日本は安倍政権とこの男に再起不能なまでに崩壊させられる!(ゆるねとにゅーす 2018年6月22日)
安倍政権がまさに、「残業代ゼロ制度(高プロ)」を含んだ「働き方改革法案」の強行可決に向けて国会会期を延長したところですが、そんな中、この制度を強力に提言してきたパソナ竹中平蔵氏が「残業代は”補助金”」とした上で、「生産性の低い人に残業代を払うのはおかしい」との本音を剥き出しにした発言をしました。
さらには、早速、現状の高年収の専門職に限定されている「残業代ゼロ制度」をどんどん拡大させていくことも明言したね。
そして、「世の中の理性を信じれば、(過労死に繋がる過酷労働が横行するなどの)変な議論は出てこない(キリッ)」という、何とも笑ってしまうような非科学的な願望を丸出しにし、現行ですらブラック労働やうつ、過労死が続出している「恐ろしい現実」を完全に無視してしまっている。
まさに、「パソナ会長としての自分自身」「ブラック労働をやらせたい悪徳経営者」の立場に立った上での、「彼らの儲けの拡大」だけで安倍政権に強行採決を促しているのが丸分かりの事態だけど、竹中氏はこれまでも、小泉政権では閣僚として日本の労働環境の破壊(奴隷労働化)に邁進したことからも分かるように、(CIAによって作られた)自民党をコントロールしながら、日本国民の富を極限まで吸い尽くそうとしているグローバル資本勢力から手厚い支援を受けてきたことがうかがえる。
まさに、彼らがやっていることは、「日本国民を疲弊させること」「貧富(1%と99%)の格差を極限まで広げること」「日本に眠っている財産をグローバリストに横流しすること」などを通じて、日本の国家を衰退させ、国家・国境をせっせと破壊した上で、国境なき資本勢力による”完全独裁世界”を構築している最中(=グローバリズム)だということだ。
全く恐ろしいことです…。
こうしたブラック労働を通じた国民のさらなる疲弊や賃金の低下は、結婚・子育てできない人をますます多く生み出し、少子高齢化をますます加速させますし、必然的に移民などに頼らざるを得なくなります。
こうして、日本の国家や分野、民族もどんどん希薄化されていき、最終的にはTPPなどによって、やがては日本の国家・国境も無くなってしまうのでしょうか。
「日本が大好き」「日本は世界一」「日本が好きで何が悪い」なんていう、自画自賛による愛国思想を叫んでいる連中ほど、こうしたグローバリズムを推し進める安倍政権を賛美したり、電通などのグローバル資本と結びついているのだから、滑稽なことこの上ない。
安倍政権のことを「日本を守る勢力」などと大嘘を国民に刷り込んでいるせいで、すでに大いなる矛盾が露呈しまくっているし、ガチで騙されてきた人達はいい加減にそろそろ気がついた方がいいね。
すでに高プロが強行可決されるのを確信しているのか、竹中氏もすっかり無防備になってその「本音」を全開にしているのだから、国民がそれこそ底力を出して、一致団結してこれを阻止していくくらいの行動力を見せる必要があるんじゃないかな。
とにかくも、国民自身が安倍政権にもっと強くプレッシャーや危機感を与えていかないと、こうしたグローバリズムの強力な流れを一定程度止めることは難しいですし、まずは一日も早くに世間に多くはびこっている洗脳や騙しから脱却する必要がありますね。
・強行採決されそうな「高度プロフェッショナル制度」は、一億総ブラック企業従業員にする欠陥制度(HARBOR BUSINESS Online 2018年5月13日)
※ついに高度プロフェッショナル制度(=高プロ)を含む「働き方改革」関連法案が一気に強行採決される可能性が高まってきた。
「成果に応じた賃金がもらえる制度」や「柔軟な働き方が可能になる」といった美辞麗句から、「年収1075万円以上の労働者が対応」と、さも一般のサラリーマンには無関係かのような報道が多かったせいで、いまだに誤解している人が多いが、この「高プロ制」、サラリーマンとして働く人ならば誰もが適用範囲になり、今までは労働基準法で規制されてきたさまざまな「労働者保護」がすべて無視して、経営者のやり放題で馬車馬のようにこき使えるようになる極めて危険な制度であることがまったく認識されていない。
ブラック企業被害対策弁護団代表として、常に労働者側にたった弁護活動を行っている弁護士の佐々木亮氏(Twitter ID:@ssk_ryo)に話を聞いた。
成果に応じた賃金体系など微塵も書かれていない
「法案の中身を見てもらえば一目瞭然なのですが、この条文案の中に成果に応じて賃金を払うということは一切言及されていません。というより、賃金体系自体に言及がない。しかし、当初は多くのメディアが、あたかも成果に応じて賃金を払う制度であるかのように報じてきました。これは、メディアが官僚からの記者レクをそのまま鵜呑みにして垂れ流しただけなのが原因ではないかと思います。
ちなみに、朝日新聞や東京新聞、あるいはサンケイビズや日本テレビは当初から比較的正確に報じていましたが、それ以外の主要メディアの多くは『成果型労働』や『成果で評価する』などという、法案読んでないだろ! と突っ込みたくなるような報道を続けていました。さすがに今年3月の時点で、そのような報じ方をするメディアの数は減り、日本経済新聞以外は正確に報じるようになりましたが、日経新聞はもはや意地としか思えないほどこの表現に固執していました」
このように「成果に応じた賃金をもらえるようになるからいいではないか」というような声は、佐々木氏のTwitterにも数多く寄せられるそうだが、一度法案全文にくまなく目を通して欲しいという。
(参照:法案、佐々木氏による法案全文解説)
https://news.yahoo.co.jp/byline/sasakiryo/20150403-00044515/
https://news.yahoo.co.jp/byline/sasakiryo/20150406-00044594/
しかし、問題はそうした誤解だけに留まらない。もっとサラリーマンの労働環境を大きく悪化させることになりかねないのだという。
何時間働かせても問題なしになる恐怖
「まず問題点を挙げるとすると、高プロには労働時間の規制がありません。今、議論されている働き方改革法案には、1カ月平均80時間までという時間外労働時間の規制がありますが、これは高プロには適用されません。もちろん、現行法の1日8時間、1週40時間の原則も適用されません。極端に言えば、朝9時から午前0時、いや翌朝9時までの就業時間にしても何のお咎めもないということになります。
裁量労働制のように、業務遂行に際して労働者の裁量でできることもありません。
さらに、高プロでは、会社は労働者に休憩を与える必要がありません。現行法では6時間を超える労働には45分、8時間を超える場合は1時間の休憩を労働時間の途中に与えなければいけないことになっています。しかし、高プロの対象者には何時間でも働かせてOKなのです。
もちろん、労働時間の規制がないので残業代もありません。深夜労働についても割増の賃金を払う必要はありません。
一応、高プロには労働者の健康確保措置についても記載がありますが、なんと
1 勤務間インターバル制度と深夜労働の回数制限制度の導入
2 労働時間を1ヵ月又は3ヵ月の期間で一定時間内とする
3 1年に1回以上継続した2週間の休日を与える
4 時間外労働が80時間を超えたら健康診断を実施する
のどれか一つを選べばいいのです。企業側はそもそもできるだけ低い賃金でたくさん働かせたいわけなので、4を選ぶ企業が多くなるでしょう」
しかし、対象は1075万円以上となるという話が以前からあったように、それなりに高収入の人が対象で年収400万円程度ではそれに該当しないのではないかという声も依然として根強いというが……。
経団連の狙いは「年収400万円から適用」
「1075万円というのはあくまでも例えであり、実際は平均給与の3倍の額を相当程度上回るものと設定されています。しかし、そもそも経団連は第一次安倍政権で高プロの元とも言えるホワイトカラーエグゼンプションが検討されたときに出された提言(参照:経団連)では、”年収400万円以上で時間の制約が少ない頭脳系職種、つまりホワイトカラー労働者をすべて残業代ゼロにすること”と記載されていたんです。最終的なゴールはいまだにそこを狙っているのは間違いありません。
それに、現在の法案でもやり方次第では理論上年収400万円以下でも適用することが可能になります。
高プロで最大限に労働者を働かせようと思ったら、365日から使用者が付与を義務付けられている休日日数104日を引いた261日働かせることができます。前述した通り、労働時間規制がないので、24時間の就業時間にすれば、6264時間働かなければならないという契約も可能になります。無茶苦茶だと思われるかも知れませんが、労働時間規制を外すということはこういうことなんです。
しかし、そんなぶっ続けで人は働けません。するとどうなるか? 使用者側にとって、控除は可能なんです。労働時間と賃金のリンクを外すなどと謳われてますが、その反面欠勤控除はそのまま。おかしいですよね?
それを前提に、年収1075万円をモデルケースにされることが多いのでその場合で考えてみましょう。まず、年収1075万円の人を6264時間働かせることが理論上可能なので、実質の時給は1075万円÷6264時間となり1716円となります。すなわち、もし1時間働けないと1716円ずつ給料が減ることになります。
高プロの年収要件はあくまでも『見込み』なので、実績などは不問で使用者側が『君はこれから年収1075万円の見込みとするので、高プロ適用になるから』と言えばそのまま適用になる。その後、欠勤などで下がって控除される分については、あくまでも『見込み』なので関係ないとされてしまうんです。
すると、単純に時給1716円の労働者となり、労基法の労働時間規制で許される労働時間、すなわち現在の適法状態の労働条件で計算し直すと年収357万7860円になってしまうんです」
メディアの忖度か? 「残業代ゼロ法案」という言葉も使えず
そんなに無茶苦茶なシステムなのに、なぜサラリーマンから大きな反発が出てこないのか。
「確かに、ブラック企業の問題はSNSなどでも左右関係なく盛り上がります。しかし、高プロの問題はなかなか火がつかない。それは第一に法律や制度の話なので、具体的な被害者や敵がいないため、わかりにくいという点もあるかもしれません。
また、労働組合の発信力が弱いことも挙げられます。例えば、連合のアカウントですら私個人のアカウントよりフォロワー数が少ないんです。これは連合だけの問題でなく、その他の労働組合もSNSなどでの発信を強化してほしいなと思っています。
あとはやはりメディアの問題です。先述したように、多くのメディアが法案も読まずに官僚のレクを垂れ流していたことからもわかりますが、メディアがあまりに無批判過ぎました。例えば、ある記者さんに、『残業代ゼロ法案』という呼称のほうがいいと提案したことがあるんですが、上からその呼称は使えないと言われていると返されたことさえありました」
メディアの怠慢もあって、すでに強行採決されそうな機運だが、もし通ったらどうなってしまうのか。
「高プロは労働時間の規制をことごとくなくす制度です。労働時間を短くするという論理的必然性もなく、労働時間規制が及ばないのだから短くなる必然性はどこにもない。また、労働生産性が高まることも柔軟な働き方を実現するものでもない。ただただ、企業が残業代を払う必要がなく、いいように働かすことができるようになるだけです。
今まで挙げた例は極論かもしれませんが、一度通らせて枠組を作ってしまえば、あとはいくらでも拡大していくことができるんです。強行採決されたとしても、その後参議院に送られて6月には成立してしまうかもしれない。諦めずに発信してなんとしても阻止しないといけない」
データ捏造などの影響で裁量労働制が見送りになった今、経団連では「高プロだけは何としても成立してほしい」という声があるという。
この国で、サラリーマンとして雇われて働いている人には確実に影響を及ぼすであろう「高プロ」制度。今一度、頭を冷静にして、その是非について考えて欲しい。
・またインチキ発覚!「高プロ」の必要性の根拠はでっち上げだった! たった“十数人”のヒアリングは企業の仕込み(LITERA 2018年5月31日)
※本日の衆院本会議で強行採決されてしまった働き方改革関連法案。周知のとおり、“残業代ゼロ法案”こと「高度プロフェッショナル制度」(以下、高プロ)を含むこの一括法案をめぐっては、労働問題の専門家を中心に激しい批判が殺到。国会では、担当の加藤勝信厚労相が論点をずらすインチキ答弁を連発、「ご飯論法」(「朝ごはんを食べたか?」と訊かれ、実際はパンを食べたのにそれに触れず「ご飯は食べてない」と答える詭弁)なる造語まで流行した。
参院では何としてでも可決を食い止めなくてはならないが、そんななか、この法案を根本から覆す“でっちあげ調査”の実態が暴露された。6月3日付の「しんぶん赤旗日曜版」が報じるスクープだ。
念のためおさらいしておくが、高プロは、年収1075万円以上の一部専門職を対象に労働時間の規制から除外し、残業や休日労働に対して割増賃金が一切支払われないというもの。
しかも本サイトでも既報のとおり、年収1075万円以上という年収要件にもトリックがあり、実際は誰にでも適用可能である【http://lite-ra.com/2018/05/post-4025.html】。
長時間労働や過労死が促進されるのは必至で、人間の命を軽視した悪法だ。安倍首相はこの制度を経団連など経済界の要望を受け、強引に成立させようとしている。
制度の本質は“定額働かせ放題”というものであり、労働者の搾取を正当化して使用者(会社側)だけが得をする仕組みにある。一方、加藤厚労相は5月9日の衆院厚労委員会で、高プロの必要性(ニーズ)について、労働者から労働時間規制を外すことに肯定的な意見があると主張して、根拠について「いくつかの企業と働く人十数人から話を聞いた」と答弁していた。
つまり、政府はわずか十数人の声しか聞かずに高プロという重要法案を推し進めてきたわけだ。しかも、厚労省が示した聞き取り内容の概要はわずか3業務で計12人分のコメントが数行だけ載った全2ページの資料のみ。詳しい調査方法については公開していなかった。
そんななか、今回、赤旗がスクープしたのは、この政府の聞き取り調査が、実のところ“でっちあげ”と呼ぶしかないシロモノだったという事実だ。
わずか“十数人”のヒアリングは、企業側の仕込みだった
スクープの核心は、聞き取り調査を担当した厚労省の労働基準局労働条件政策課が赤旗の取材に対して回答した内容にある。そもそも、厚労省はこの調査が、労働者から高プロの必要性を聞き取った「唯一の調査」と説明しているが、実は、問題の調査方法は、企業の意向だけが反映されるよう恣意的に仕組まれたものだったのだ。
赤旗の取材に同課が答えたところによれば、厚労省は企業に対し「高プロについて労働者の意見を聞きたい」と依頼したうえで、同意を得た企業を厚労省の職員が訪問したという。
驚くのはここからだ。厚労省の職員が訪問先の企業内の一室を借りて、労働者と高プロについて意見交換したというのだが、なんと、その聞き取り対象者は企業側が選んでおり、さらには調査の際、企業側の同席者がいたこともあったというのである。
つまり、労働者から高プロの必要性を聞いたと言い張った政府答弁は、実際には、使用者側が全面的に協力して選んだ労働者にすぎず、しかも監視下において答えさせていたのである。まるで“ヤラセ”ではないか。
これは、高プロの立法事実が根本から崩れたと言っていいだろう。ようは、政府は協力的な企業とグルになって、「導入に前向きな労働者の声」だけを恣意的に集めたのだ。しかも、繰り返しになるが、調査委対象はわずか12人である。裏を返せば、ここまで作為的な調査方法を用いてもなお、高プロを望む労働者の声がほとんど集まらなかった。そういうことではないのか。
周知の通り、働き方改革法案のもうひとつの目玉であった「裁量労働制」を巡っても、厚労省は異常値が多数含まれた“捏造データ”を出してきて大きな問題になった。しかもそのデータは、高プロの創設を議論した厚労省の労働政策審議会で「議論の出発点」として提出されていたものでもあった。
つまり、高プロもまた、当初から間違ったデータをもとに議論されてきたわけだが、ここにきて、政府が「導入に前向きな労働者の声」として示した調査も“でっち上げ”と呼ぶしかないシロモノであることが判明したのである。これで、労政審でいちから審議をやり直さないというのなら、もはやこの国は民主主義国家ではないだろう。
何度でも言う。高プロの本質は“残業代ゼロ”“働かせ放題”である。なんとしても廃案にもっていかねばならないのは当然だが、捏造データやでっち上げ調査を用いて労働者を欺こうとしている安倍政権の責任も徹底追及されねばならない。
・高プロのニーズ聞き取りについて、加藤厚生労働大臣が1月31日に虚偽答弁を行っていたことが判明(2018年6月8日)
上西充子
1965年生まれ。日本労働研究機構 (現:労働政策研究・研修機構)研究員を経て、2003年から法政大学キャリアデザイン学部教員。
※働き方改革関連法案に含まれる高度プロフェッショナル制度は、労働者のニーズがないまま立法化されようとしている。その中でニーズのヒアリングとされた12名のヒアリング結果について、加藤大臣が1月31日の参議院予算委員会で虚偽答弁を行っていたことが判明した。
わずか12名へのヒアリング結果が高プロの「ニーズ」調査?
労働基準法の労働時間規制をはずし、使用者が労働時間規制に縛られずに労働者を働かせることを可能とする高度プロフェッショナル制度(高プロ)について、労働者にそのニーズを聞き取ったとされるヒアリング結果をめぐる疑義が、社民党の福島みずほ議員によって参議院厚生労働委員会で呈されている。
ことの経緯の概略は、筆者が把握している限りにおいて、こうだ(より詳しい経緯があると思うが、把握しきれていない)。
まず、5月9日の衆議院厚生労働委員会において、立憲民主党の岡本あき子議員が、高プロのニーズ把握はどうやっているのかと尋ねたところ、加藤厚生労働大臣は次のように答弁した(インターネット審議中継の5:03:20頃から)。
●加藤厚生労働大臣
ニーズということであればですね、私どものほう、これ、あの、実際、いくつかの企業と、あるいは、そこで働く方からですね、いろんなお話をきかせていただいているということであります。
「いくつかの企業」と、「そこで働く方から」というのは、随分と曖昧な言い方だ。そして、そこで聞いた話の例として、エピソードを少し紹介した。岡本議員は、その調査の全体像を示すように求めた。
その後、5月16日に厚生労働省労働基準局が、12名のヒアリング結果の抜粋を理事会に提出した。しかしその内容は、下記の通り、実に簡素なものであり、いつ、どこで、誰に聞いたものかも記されていないものであった。
さらにその後、6月3日付のしんぶん赤旗日曜版に、12名のヒアリングについての記事が掲載された。
調査を担当した厚生労働省労働基準局労働条件政策課へのしんぶん赤旗日曜版の編集部の取材によれば、
●調査の対象者は東京都内の12人
●厚労省が企業に「新しい制度(高プロのこと)について労働者の意見を聞きたい」と協力を依頼。同意を得た企業に厚労省の職員2人が訪問
●企業内の一室を借り、企業側が選んだ労働者と高プロについて意見交換した。
●調査には企業側の同席者がいたことも
というものであり、また、厚労省はこの調査について、労働者に高プロのニーズを聞き取った「唯一の調査」と説明した、という。
さらに、聞き取りをした日については、「公表を前提としないことを企業と確認したので答えられない」と回答したという。
福島みずほ議員の質疑から、12名のヒアリングに次々と疑義が噴出
その後、福島みずほ議員が、この12名へのヒアリングについて集中的に質疑を行ったところ、次々と疑義が噴出することとなった。
5月31日の参議院厚生労働委員会で福島議員は、この12名へのヒアリングは、誰が、いつ、どこで聞いたのかと尋ねるが、加藤大臣をはじめとして、誰も答弁のための手を上げようとしない。下記の画像の11:45頃からを、ぜひ確認していただきたい。
●【高プロ要求でたらめデータ】福島みずほ「こんなんで高プロ導入?」:6/5 参院・厚生労働委
しばらく後に山越労働基準局長が答弁したところによれば、こういう説明だった。
●山越労働基準局長
ご指摘のヒアリングでございますけれども、平成27年の労働基準法案を検討している際に、労働基準局の職員がヒアリングを行ったものでございます。
さらに、職員が先方にヒアリングのアポイントを取って実施したものだとの答弁を山越局長は行っている。また、企業の方でヒアリング対象者を選定いただいたもの「だと思います」と山越局長は答弁している。ヒアリングの時間は「1時間程度ではなかったかと思います」というのが山越局長の答弁だ。
またこの時に福島議員は、12名のうちコンサルタントが8名、アナリストが3名と、11名が2職種で占められていることを問題にしている。そして、「これって、まともなんですか?」と疑義を呈している。もしかしたら同じ会社の同一人物ではないか、とも福島議員は疑問を呈している。そして企業名の開示を求めた。
また、この12名のヒアリング概要のうち、誰が高度プロフェッショナル制度を要求しているのか、と福島議員は問うている。それに対する山越局長の答弁はこうだ。
●山越労働基準局長
今回の高度プロフェッショナル制度ですけれども、自律的な働き方ということで、新たに制度を設けるものでございます。この当時におきましては、こうした高度プロフェッショナル制度というものは、制度設計ができあがっていないわけでございますが、そういった働き方を希望されるような方がおられるであろうという業種、そういった職種があるだろうという企業に対してヒアリングを実施した、そういうことから、こういったことになっているわけでございます。
その後も、ヒアリング内容は高プロへのニーズを示しているわけではないという福島議員の質疑が続くのだが、そこは省略したい。ここで問題にしたいのは、このヒアリングの実施時期だ。
実はヒアリング実施は、2015年3月と2018年2月1日だった
上の5月31日の山越労働基準局長の答弁では、ヒアリングは、「平成27年(2015年)の労働基準法案を検討している際に、労働基準局の職員がヒアリングを行ったもの」とされていた。
しかしその後の6月5日の福島議員に対する山越局長の答弁によれば、12件のヒアリングのうち、No.1、No.2、No.12の3件は2015年3月に実施したものであり、残りの9件は2018年2月1日に実施したものであることが明らかになった。
現在の働き方改革関連法案に含まれる高度プロフェッショナル制度は、今国会への提出にあたって若干の修正が施されたとはいえ、ほとんどの内容は2015年4月3日に閣議決定された労働基準法改正案と同じである。そしてその労働基準法改正案の法律案要綱は、2015年2月17日には第126回労働政策審議会労働条件分科会に諮問されている。
つまり、2015年3月の3件のヒアリングは、法律案要綱が労働政策審議会に諮問された後に行われている。労働者のニーズ把握を元に法案に高度プロフェッショナル制度の創設を盛り込むのであれば、当然、法律案要綱の諮問(2月17日)よりも前、さらには労働政策審議会の建議(2月13日)よりも前に、行われていなければならない。
にもかかわらず、法律案要綱が諮問されたよりも後になってヒアリングが行われている。これでは立法事実を示す「ニーズ」とは言えない。この12件しか高プロの「ニーズ」を示すエビデンスがないというのであれば、高プロには立法事実がない、と言えよう(注1)。
さらに、法律案要綱の諮問後に3件のヒアリングが行われたのであれば、「平成27年(2015年)の労働基準法案を検討している際に、労働基準局の職員がヒアリングを行った」という5月31日の山越局長の答弁は、虚偽答弁の疑いが濃い。
この点について6月7日の参議院厚生労働委員会で福島議員が追及しているが、山越局長はすれ違った逃げの答弁に終始している。
2018年2月1日になぜ、追加の9件のヒアリングが行われたのか
もう一つの問題は、なぜ「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案要綱」の答申が2017年9月15日に既に行われているのに、国会が開催されている最中の、しかも裁量労働制の労働時間をめぐる安倍首相の答弁に疑義が呈され始めた2月1日に、9名の追加ヒアリングが行われたか、である(注2)。
この点について、6月7日の共同通信はこう伝えている。
●2月に高プロのヒアリング実施 野党追及の翌日、9人に(共同通信、2018年6月7日)
国会で「働く人のニーズを把握しているのか」と野党から追及された翌日に当たるため、野党側は「アリバイ作りのための茶番だ。立法理由にならない」と反発。高プロ創設の根拠となる「ニーズの把握」がずさんな形で行われていたと批判を呼びそうだ。
出典:同記事
この記事を読んで、はたと思いだした。1月31日の参議院予算委員会で、浜野喜史議員が高プロのニーズを加藤大臣に問うていた。加藤大臣は、話を聞いたとエピソードを語りつつ、公表できる記録はないことを答弁していた。
その議事録を確認したところ、1月31日に加藤大臣がこのヒアリングについて、虚偽答弁を行っていたことに筆者は気づいたのだ。
1月31日の加藤大臣の虚偽答弁
1月31日の参議院予算委員会における浜野議員と加藤大臣のやりとりはこうだ。
●浜野喜史議員
厚労大臣にお伺いいたします。この(裁量労働制と高度プロフェッショナル制度という)二つの制度、働く者の側からの要請があったというふうに理解してよろしいでしょうか。
●加藤厚生労働大臣
(略)
私自身も、この働く方の立場に立って働き方改革を推進していくということで、働く方の声をいろいろと聞かせていただきました。
まず、企画業務型裁量労働制の適用についても、・・・(略)。
また、高度で専門的な職種、これはまだ制度ございませんけれども、私もいろいろお話を聞く中で、その方は、自分はプロフェッショナルとして自分のペースで仕事をしていきたいんだと、そういった是非働き方をつくってほしいと、こういうご要望をいただきました。
例えば、研究職の中には、1日4時間から5時間の研究を10日間やるよりは、例えば2日間集中した方が非常に効率的に物が取り組める、こういった声を把握していたところでありまして、そうしたまさに働く方、そうした自分の状況に応じて、あるいは自分のやり方で働きたい、こういったことに対応する意味において、これ全員にこの働き方を強制するわけではなくて、そういう希望をする方にそうした働き方ができる、まさに多様な働き方が選択できる、こういうことで今議論を進めているところであります。
●浜野喜史議員
ご説明いただきましたけれども、現裁量労働制対象の方々からも意見があったと、そして、新設される高度プロフェッショナル制度につきましてもご意見があったということですけれども、そういう意見があったというような記録ですね、これは残っているんでしょうか、ご説明願います。
●加藤厚生労働大臣
今、私がそうしたところへ、企業等を訪問した中でお聞かせいただいたそうした意見、声でございます。
●浜野喜史議員
その記録は残っているんでしょうか。
●加藤厚生労働大臣
そこでは、その思うことを自由に言ってほしいということでお聞かせいただいたお話でございますから、記録を残す、あるいは公表するということを前提にお話をされたものではございません。
●浜野喜史議員
私は厚労大臣を疑うわけじゃありませんけれども、記録ないわけですね。もう一度確認させてください。
●加藤厚生労働大臣
公表するという意味でお聞かせをいただいたわけではありませんが、ただ、やはりそうしたフランクな話を聞かせていただくということは私は大事なことではないかと思います。
●浜野喜史議員
そういうふうにおっしゃいましたけれども、記録はないということでございました。
ここで浜野議員はかなりしつこく、記録はないのかと問うているが、加藤大臣は、公表を前提としたものではなかったとして、記録があるとは答弁していない。
しかし実は、ここで加藤大臣が語ったエピソードが、5月16日に国会に報告された12人のヒアリング結果のNo.1と同じなのだ。
No.1はこうである。
研究開発職(製造業において研究開発業務に従事)
「1日4~5時間の研究を10日繰り返すよりも、2日間集中した方が、トータルの労働時間は短くて済む。」
加藤大臣が語ったものと同じエピソードと判断してよいだろう。
ここで矛盾が露呈する。加藤大臣は1月31日の答弁で、「私自身も、この働く方の立場に立って働き方改革を推進していくということで、働く方の声をいろいろと聞かせていただきました」と語り、「私もいろいろお話を聞く中で」とした上で、この研究職の方の声を伝えていた。声を伝えたあとにも、「今、私がそうしたところへ、企業等を訪問した中でお聞かせいただいたそうした意見、声でございます」と答弁している。どう考えてもここで加藤大臣は、みずからが働き方改革の推進のために話を聞き取ったものとして、この研究職の方の声を答弁で伝えている。
しかし、上に見たように、6月5日の福島みずほ議員に対する山越局長の答弁によれば、このNo.1のヒアリングは2015年3月のものだ。当時は加藤大臣は、厚生労働大臣でもないし、働き方改革担当大臣でもない。また、5月31日の山越局長の答弁によれば、これは労働基準局の職員がヒアリングしたものだ。6月7日の福島議員に対する山越局長の答弁でも、ヒアリングは労働基準局の職員が行ったと答弁している。
つまり1月31日に加藤大臣が、働き方改革の推進のためにみずから企業等に出向いて話を伺ったかのように答弁した研究職の方の声は、実は労働基準局の職員が2015年3月にヒアリングして聞き取った内容であった、ということだ。1月31日の加藤大臣の答弁は、虚偽答弁である(注3)。
虚偽答弁であることを隠すために、記録の存在について繰り返し問われても、公表を前提としていないという理由で記録の開示を拒んだものと思われる。
虚偽答弁を伴って紹介されていたヒアリング結果
そのことを踏まえて、もう一度、5月31日の参議院厚生労働委員会で福島議員が、12名へのヒアリングについて、誰が、いつ、どこで聞いたのかと尋ねた際の、加藤大臣や山越局長らの様子を映像で見ていただきたい。下記の画像の11:45頃からだ。
●【高プロ要求でたらめデータ】福島みずほ「こんなんで高プロ導入?」:6/5 参院・厚生労働委
加藤大臣は素知らぬふりをして、答弁のための手を上げようとしない。山越局長も手を上げない。山越局長が後ろの厚生労働省職員の方を振り向き、職員が山越局長のもとに駆け寄って何かを語り、ようやく山越局長が手を挙げて、前述のように、あたかも2015年法案の検討時にヒアリングを行っていたかのような、野党を欺く内容の答弁をする。実際は法案要綱の諮問より前の2015年3月に行われたヒアリング結果であったのに。
つまり、高プロのニーズとして示されたこの12名のヒアリング結果は、虚偽答弁まで行わなければならないような代物であった、ということだ。
こんな状態のまま、20日の国会会期末を控えて、14日にも参議院で働き方改革関連法案の強行採決が行われるのではないかという話が出ている。いいかげんにしていただきたい。
改めて加藤大臣には辞任を求める。そして、高度プロフェッショナル制度は廃案とすることを求める。
***
(注1)
高プロの立法事実は、経営側が求めているから、というものではありえない。確かに本音ではそうだろう。しかし、法案提出理由(こちらの最終ページ)は、次の通りとなっており、その理由に即した形で立法事実を示すためには、労働者が求めているというニーズを示す必要があるはずだ。
労働者がそれぞれの事情に応じた多様な働き方を選択できる社会を実現する働き方改革を推進するため、時間外労働の限度時間の設定、高度な専門的知識等を要する業務に就き、かつ、一定額以上の年収を有する労働者に適用される労働時間制度の創設、短時間・有期雇用労働者及び派遣労働者と通常の労働者との間の不合理な待遇の相違の禁止、国による労働に関する施策の総合的な推進に関する基本的な方針の策定等の措置を講ずる必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。
なお、高プロのニーズについては、ヒアリングの他にアンケート調査も用意されていた。しかしこれは、不自然な二択の選択肢によって労働時間規制緩和にニーズがあるかのように誘導する設問によるものであり、ニーズを「捏造」したものと言える。このアンケートについては、4月17日の東京新聞「こちら特報部」が下記の記事で取り上げた。
●「残業代ゼロ」も導入ありき? 厚労省調査で裁量労働維持7割(東京新聞「こちら特報部」2018年4月17日) (橋本誠、石井紀代美)
筆者もその記事を踏まえてより詳細に、この二択のアンケートの問題を下記の記事で指摘している。
●「導入ありき」で意図的にゆがめられた設問により、高プロへのニーズが主張されていたことが判明(上西充子)- Y!ニュース(2018年4月24日)
そのため、政府はこのアンケート結果を、ニーズ調査結果として国会で示すことは、できなくなっているものと思われる。
(注2)
この2月1日とは、裁量労働制の方が労働時間が短いとした安倍首相の1月29日の答弁について、1月30日に山井和則議員が厚労レクで説明を求め、2月1日に調査名と根拠となるデータの明示を求める質問主意書を提出した、その最中でのことである。
2月19日の第4回野党合同ヒアリングでは、労働条件政策課長は、野党議員からの問い合わせを受けて、2月1日に安倍首相答弁のもととなった平成25年度労働時間等総合実態調査の調査票を確認したと説明している。この日に調査票を確認していながら、問題についての加藤大臣への報告は2月7日になってからであったとされている。
このように裁量労働制の「比較データ」問題については、経緯に大きく不透明な部分がある。筆者は、この「比較データ」は意図をもって捏造されたものと考えており、1月30日から2月1日にかけては、その捏造が山井議員に対してバレてしまうのではないか、という混乱状態の中にあったのではないかと推測している。その中で、9名への追加ヒアリングが行われているのである。
(注3)
なお、このように、あるヒアリング結果を別の場でのヒアリング結果のようにすり替えて紹介することについては、安倍政権には「実績」がある。
2017年6月24日の神戸「正論」懇談会の設立記念特別講演会で、安倍首相が非正規で働く女性から聞いた話を紹介しているが、これはその後の記者会見で菅官房長官が説明しているように、2016年12月6日に官邸で安倍首相が非正規雇用等で働く方々との車座の座談会の中で聞いた話であり、グローバル企業であるイケアで働く女性の話だ。
にもかかわらず、安倍首相はその女性の声をこういう導入と共に紹介している。
そして生産性をあげる最大の切り札が働き方改革です。昨年、伊勢へ行った際にお話を伺う機会がありました。ある女性は最初、印刷会社に正社員として就職しましたが、締め切りに追われる長時間労働の職場だったため、結婚・出産を機に退職する道を選びました。その後、小売り関係の会社でパートを始めます。
その「小売り関係の会社」とは、実はグローバル企業であるイケアなのだが、このように紹介されると、伊勢にある小売関係の会社で働く女性の声としか聞こえない(ちなみに、伊勢にはイケアの店舗はない)。
このことは下記の記事の末尾に「追記」として記した。
●安倍首相の「非正規のときにはなかった責任感」発言を「批判する方がおかしい」とする菅官房長官への反論(上西充子)- Y!ニュース(2017年6月30日)
エピソードの流用の仕方は、安倍首相も加藤大臣も、同じである。講演ならばまだ、許されるかもしれないが、加藤大臣はまさに、与野党が激しく対立する高度プロフェッショナル制度の立法事実に関わる問題で、国会において虚偽答弁を行ったのだ。これは、とうてい、看過できない問題だ。
※竹中平蔵パソナ会長が今朝(6/21)の東京新聞で、残業代ゼロ=高プロ賛成派として登場して呪いの言葉を連発しています。
竹中パソナ会長「時間に縛られない働き方を認めるのは自然なことだ。時間内に仕事を終えられない、生産性の低い人に残業代という補助金を出すのも一般論としておかしい」
東京新聞6月21日付「残業代ゼロ」=「高プロ」導入是非は
わかります。残業代を払いたくないのですね。現時点では派遣労働者に高プロは適用できないとのことですが、労働者派遣法と同じようにパソナ会長として「対象拡大」をして、派遣労働者も「時間に縛られない働き方」にすれば、「パソナの派遣労働者は定額働かせ放題・残業代ゼロです!」を売りにできパソナはさらにボロ儲けできますから、パソナ会長が先頭を切って残業代ゼロ=高プロに賛成することは自然なことですね。
竹中パソナ会長「(高プロを提唱した)産業競争力会議の出発点は経済成長。労働市場をどんどん改革しなければならず、高プロはその第一歩だ。」
東京新聞6月21日付「残業代ゼロ」=「高プロ」導入是非は
(※注:政府の産業競争力会議の議員は大企業の役員ばかりで労働者は一人もいません。竹中パソナ会長も議員ですから、竹中パソナ会長は自分が高プロを提唱した、労働者でなく私のニーズで高プロ導入だ!と言っているのと同じですね)
高プロに対する労働者のニーズはゼロなのに、安倍政権は労働者のニーズがあるから高プロ導入が必要だと未だにウソをつきまくっていますが、さすが竹中パソナ会長! ここは正直ですね! 竹中パソナ会長はじめ大企業役員だけのニーズで高プロは提唱されたのですね! そして、高プロの目的は「経済成長」であって、「働き方改革」でも過労死根絶でも長時間労働根絶でもないのですね! 竹中パソナ会長のお話は非常によくわかります!
もっと突っ込むと、「高プロは経済成長のため」とする言説もウソです。高プロがむしろ経済成長を阻害して日本経済を低迷させることは、田中信一郎千葉商科大学特別客員准教授が「高度プロフェッショナル制度が日本経済を低迷させるこれだけの理由」という記事の中でわかりやすく指摘しています。それにこの間も、竹中パソナ会長は高プロと同じように派遣労働を拡大することが経済成長につながると主張してきましたが、むしろ労働生産性を低下させ経済成長を損ない日本経済を失速させてきたことを見れば、また竹中パソナ会長の大ウソが発動しているだけだということがよくわかるでしょう。
高プロが労働生産性を低下させ経済成長を阻害して日本経済を低迷させるとなると、それでは一体、高プロのニーズはどこにあるのでしょうか? それは竹中パソナ会長の話を追っていくとわかってきます。
竹中平蔵パソナ会長「時間ではなく成果で評価する高プロで、労働生産性を上げるインセンティブは間違いなく働く」
東京新聞6月21日付「残業代ゼロ」=「高プロ」導入是非は
「時間ではなく成果で評価する高プロ」というのは大ウソです。高プロの法案には「時間ではなく成果で評価する高プロ」などと書かれていないことは、嶋崎量弁護士や佐々木亮弁護士が繰り返し指摘していることです。
★嶋崎量弁護士「本当は存在しない「高度プロフェッショナル制度」~欺瞞性を曝く~」
★佐々木亮弁護士「高プロの法案を全文チェックしてみた。【前編】」
また、高プロがむしろ労働生産性を下げることは、先に紹介した田中信一郎千葉商科大学特別客員准教授が指摘しています。高プロ労働者の裁量は一切ないのでインセンティブは間違いなく下がります。
――高プロを含む「働き方」関連法案は、過労死促進法案との批判がある。
竹中平蔵パソナ会長「全く理解していない。過労死を防止するための法案だ。その精神がすごく織り込まれている。例えば年間104日以上の休日をとれと。(適用には)本人の同意も要る。なぜこんなに反対が出るのが、不思議だ」
4週で4日以上の休日も定めているが、裏を返せば24日間、24時間働かせても違法ではない。
竹中平蔵パソナ会長「そういう言い方はいくらでもできるが、休みを義務づけているわけだから。しかも、適用されるのはごく一部のプロフェッショナル。」「個人的には、結果的に(対象が)拡大していくことを期待している」「世の中の理性を信じれば、そんな(24時間働かされるかのような)変な議論は出てこない」
東京新聞6月21日付「残業代ゼロ」=「高プロ」導入是非は
竹中パソナ会長の「理性」はすごい! 高プロは休憩なしの24時間労働を48日間連続させても違法にはならなくなりますが、労働者の命と健康を「理性」を信じることまかせる上に、高プロの対象拡大の期待を表明。毎日1人以上が過労死で命を奪われ労災最多、パワハラ、セクハラ、残業代不払いなどおかまいなしのブラック企業が跋扈している中で、法律を取っ払ってブラック企業の「理性」をブレーキにするのが高プロだと竹中パソナ会長が断言! 高プロ、すごい!というほかありません!
細かいツッコミも入れておくと、「年間104日以上の休日をとれ」というのは、1年間で祝日もお盆も年末もお正月もないという前提での週休2日に過ぎません。「(適用には)本人の同意も要る。」ことについては、修正された「同意の撤回」すらまったく意味をなさないことを佐々木亮弁護士が指摘しています。(※→佐々木亮弁護士「高プロの法案を全文チェックしてみた。【真の後編】」)
また、対象を拡大させたいと言いながら「適用されるのはごく一部のプロフェッショナル」などと竹中パソナ会長は言っていますが、年収300万円台でも適用されたり(※→佐々木亮弁護士「高プロ制度は地獄の入り口 ~ High-pro systm is the gate to hell~」)、通勤手当など諸手当込みであることから年収要件はグッと下がり、竹中パソナ会長の期待する対象拡大をしなくても導入当初から多くの労働者に適用可能であることも判明しています。
※日本の労働者を極限まで疲弊させてきたパソナ竹中氏がいよいよその”本音”を全開に!日本は安倍政権とこの男に再起不能なまでに崩壊させられる!(ゆるねとにゅーす 2018年6月22日)
安倍政権がまさに、「残業代ゼロ制度(高プロ)」を含んだ「働き方改革法案」の強行可決に向けて国会会期を延長したところですが、そんな中、この制度を強力に提言してきたパソナ竹中平蔵氏が「残業代は”補助金”」とした上で、「生産性の低い人に残業代を払うのはおかしい」との本音を剥き出しにした発言をしました。
さらには、早速、現状の高年収の専門職に限定されている「残業代ゼロ制度」をどんどん拡大させていくことも明言したね。
そして、「世の中の理性を信じれば、(過労死に繋がる過酷労働が横行するなどの)変な議論は出てこない(キリッ)」という、何とも笑ってしまうような非科学的な願望を丸出しにし、現行ですらブラック労働やうつ、過労死が続出している「恐ろしい現実」を完全に無視してしまっている。
まさに、「パソナ会長としての自分自身」「ブラック労働をやらせたい悪徳経営者」の立場に立った上での、「彼らの儲けの拡大」だけで安倍政権に強行採決を促しているのが丸分かりの事態だけど、竹中氏はこれまでも、小泉政権では閣僚として日本の労働環境の破壊(奴隷労働化)に邁進したことからも分かるように、(CIAによって作られた)自民党をコントロールしながら、日本国民の富を極限まで吸い尽くそうとしているグローバル資本勢力から手厚い支援を受けてきたことがうかがえる。
まさに、彼らがやっていることは、「日本国民を疲弊させること」「貧富(1%と99%)の格差を極限まで広げること」「日本に眠っている財産をグローバリストに横流しすること」などを通じて、日本の国家を衰退させ、国家・国境をせっせと破壊した上で、国境なき資本勢力による”完全独裁世界”を構築している最中(=グローバリズム)だということだ。
全く恐ろしいことです…。
こうしたブラック労働を通じた国民のさらなる疲弊や賃金の低下は、結婚・子育てできない人をますます多く生み出し、少子高齢化をますます加速させますし、必然的に移民などに頼らざるを得なくなります。
こうして、日本の国家や分野、民族もどんどん希薄化されていき、最終的にはTPPなどによって、やがては日本の国家・国境も無くなってしまうのでしょうか。
「日本が大好き」「日本は世界一」「日本が好きで何が悪い」なんていう、自画自賛による愛国思想を叫んでいる連中ほど、こうしたグローバリズムを推し進める安倍政権を賛美したり、電通などのグローバル資本と結びついているのだから、滑稽なことこの上ない。
安倍政権のことを「日本を守る勢力」などと大嘘を国民に刷り込んでいるせいで、すでに大いなる矛盾が露呈しまくっているし、ガチで騙されてきた人達はいい加減にそろそろ気がついた方がいいね。
すでに高プロが強行可決されるのを確信しているのか、竹中氏もすっかり無防備になってその「本音」を全開にしているのだから、国民がそれこそ底力を出して、一致団結してこれを阻止していくくらいの行動力を見せる必要があるんじゃないかな。
とにかくも、国民自身が安倍政権にもっと強くプレッシャーや危機感を与えていかないと、こうしたグローバリズムの強力な流れを一定程度止めることは難しいですし、まずは一日も早くに世間に多くはびこっている洗脳や騙しから脱却する必要がありますね。
・強行採決されそうな「高度プロフェッショナル制度」は、一億総ブラック企業従業員にする欠陥制度(HARBOR BUSINESS Online 2018年5月13日)
※ついに高度プロフェッショナル制度(=高プロ)を含む「働き方改革」関連法案が一気に強行採決される可能性が高まってきた。
「成果に応じた賃金がもらえる制度」や「柔軟な働き方が可能になる」といった美辞麗句から、「年収1075万円以上の労働者が対応」と、さも一般のサラリーマンには無関係かのような報道が多かったせいで、いまだに誤解している人が多いが、この「高プロ制」、サラリーマンとして働く人ならば誰もが適用範囲になり、今までは労働基準法で規制されてきたさまざまな「労働者保護」がすべて無視して、経営者のやり放題で馬車馬のようにこき使えるようになる極めて危険な制度であることがまったく認識されていない。
ブラック企業被害対策弁護団代表として、常に労働者側にたった弁護活動を行っている弁護士の佐々木亮氏(Twitter ID:@ssk_ryo)に話を聞いた。
成果に応じた賃金体系など微塵も書かれていない
「法案の中身を見てもらえば一目瞭然なのですが、この条文案の中に成果に応じて賃金を払うということは一切言及されていません。というより、賃金体系自体に言及がない。しかし、当初は多くのメディアが、あたかも成果に応じて賃金を払う制度であるかのように報じてきました。これは、メディアが官僚からの記者レクをそのまま鵜呑みにして垂れ流しただけなのが原因ではないかと思います。
ちなみに、朝日新聞や東京新聞、あるいはサンケイビズや日本テレビは当初から比較的正確に報じていましたが、それ以外の主要メディアの多くは『成果型労働』や『成果で評価する』などという、法案読んでないだろ! と突っ込みたくなるような報道を続けていました。さすがに今年3月の時点で、そのような報じ方をするメディアの数は減り、日本経済新聞以外は正確に報じるようになりましたが、日経新聞はもはや意地としか思えないほどこの表現に固執していました」
このように「成果に応じた賃金をもらえるようになるからいいではないか」というような声は、佐々木氏のTwitterにも数多く寄せられるそうだが、一度法案全文にくまなく目を通して欲しいという。
(参照:法案、佐々木氏による法案全文解説)
https://news.yahoo.co.jp/byline/sasakiryo/20150403-00044515/
https://news.yahoo.co.jp/byline/sasakiryo/20150406-00044594/
しかし、問題はそうした誤解だけに留まらない。もっとサラリーマンの労働環境を大きく悪化させることになりかねないのだという。
何時間働かせても問題なしになる恐怖
「まず問題点を挙げるとすると、高プロには労働時間の規制がありません。今、議論されている働き方改革法案には、1カ月平均80時間までという時間外労働時間の規制がありますが、これは高プロには適用されません。もちろん、現行法の1日8時間、1週40時間の原則も適用されません。極端に言えば、朝9時から午前0時、いや翌朝9時までの就業時間にしても何のお咎めもないということになります。
裁量労働制のように、業務遂行に際して労働者の裁量でできることもありません。
さらに、高プロでは、会社は労働者に休憩を与える必要がありません。現行法では6時間を超える労働には45分、8時間を超える場合は1時間の休憩を労働時間の途中に与えなければいけないことになっています。しかし、高プロの対象者には何時間でも働かせてOKなのです。
もちろん、労働時間の規制がないので残業代もありません。深夜労働についても割増の賃金を払う必要はありません。
一応、高プロには労働者の健康確保措置についても記載がありますが、なんと
1 勤務間インターバル制度と深夜労働の回数制限制度の導入
2 労働時間を1ヵ月又は3ヵ月の期間で一定時間内とする
3 1年に1回以上継続した2週間の休日を与える
4 時間外労働が80時間を超えたら健康診断を実施する
のどれか一つを選べばいいのです。企業側はそもそもできるだけ低い賃金でたくさん働かせたいわけなので、4を選ぶ企業が多くなるでしょう」
しかし、対象は1075万円以上となるという話が以前からあったように、それなりに高収入の人が対象で年収400万円程度ではそれに該当しないのではないかという声も依然として根強いというが……。
経団連の狙いは「年収400万円から適用」
「1075万円というのはあくまでも例えであり、実際は平均給与の3倍の額を相当程度上回るものと設定されています。しかし、そもそも経団連は第一次安倍政権で高プロの元とも言えるホワイトカラーエグゼンプションが検討されたときに出された提言(参照:経団連)では、”年収400万円以上で時間の制約が少ない頭脳系職種、つまりホワイトカラー労働者をすべて残業代ゼロにすること”と記載されていたんです。最終的なゴールはいまだにそこを狙っているのは間違いありません。
それに、現在の法案でもやり方次第では理論上年収400万円以下でも適用することが可能になります。
高プロで最大限に労働者を働かせようと思ったら、365日から使用者が付与を義務付けられている休日日数104日を引いた261日働かせることができます。前述した通り、労働時間規制がないので、24時間の就業時間にすれば、6264時間働かなければならないという契約も可能になります。無茶苦茶だと思われるかも知れませんが、労働時間規制を外すということはこういうことなんです。
しかし、そんなぶっ続けで人は働けません。するとどうなるか? 使用者側にとって、控除は可能なんです。労働時間と賃金のリンクを外すなどと謳われてますが、その反面欠勤控除はそのまま。おかしいですよね?
それを前提に、年収1075万円をモデルケースにされることが多いのでその場合で考えてみましょう。まず、年収1075万円の人を6264時間働かせることが理論上可能なので、実質の時給は1075万円÷6264時間となり1716円となります。すなわち、もし1時間働けないと1716円ずつ給料が減ることになります。
高プロの年収要件はあくまでも『見込み』なので、実績などは不問で使用者側が『君はこれから年収1075万円の見込みとするので、高プロ適用になるから』と言えばそのまま適用になる。その後、欠勤などで下がって控除される分については、あくまでも『見込み』なので関係ないとされてしまうんです。
すると、単純に時給1716円の労働者となり、労基法の労働時間規制で許される労働時間、すなわち現在の適法状態の労働条件で計算し直すと年収357万7860円になってしまうんです」
メディアの忖度か? 「残業代ゼロ法案」という言葉も使えず
そんなに無茶苦茶なシステムなのに、なぜサラリーマンから大きな反発が出てこないのか。
「確かに、ブラック企業の問題はSNSなどでも左右関係なく盛り上がります。しかし、高プロの問題はなかなか火がつかない。それは第一に法律や制度の話なので、具体的な被害者や敵がいないため、わかりにくいという点もあるかもしれません。
また、労働組合の発信力が弱いことも挙げられます。例えば、連合のアカウントですら私個人のアカウントよりフォロワー数が少ないんです。これは連合だけの問題でなく、その他の労働組合もSNSなどでの発信を強化してほしいなと思っています。
あとはやはりメディアの問題です。先述したように、多くのメディアが法案も読まずに官僚のレクを垂れ流していたことからもわかりますが、メディアがあまりに無批判過ぎました。例えば、ある記者さんに、『残業代ゼロ法案』という呼称のほうがいいと提案したことがあるんですが、上からその呼称は使えないと言われていると返されたことさえありました」
メディアの怠慢もあって、すでに強行採決されそうな機運だが、もし通ったらどうなってしまうのか。
「高プロは労働時間の規制をことごとくなくす制度です。労働時間を短くするという論理的必然性もなく、労働時間規制が及ばないのだから短くなる必然性はどこにもない。また、労働生産性が高まることも柔軟な働き方を実現するものでもない。ただただ、企業が残業代を払う必要がなく、いいように働かすことができるようになるだけです。
今まで挙げた例は極論かもしれませんが、一度通らせて枠組を作ってしまえば、あとはいくらでも拡大していくことができるんです。強行採決されたとしても、その後参議院に送られて6月には成立してしまうかもしれない。諦めずに発信してなんとしても阻止しないといけない」
データ捏造などの影響で裁量労働制が見送りになった今、経団連では「高プロだけは何としても成立してほしい」という声があるという。
この国で、サラリーマンとして雇われて働いている人には確実に影響を及ぼすであろう「高プロ」制度。今一度、頭を冷静にして、その是非について考えて欲しい。
・またインチキ発覚!「高プロ」の必要性の根拠はでっち上げだった! たった“十数人”のヒアリングは企業の仕込み(LITERA 2018年5月31日)
※本日の衆院本会議で強行採決されてしまった働き方改革関連法案。周知のとおり、“残業代ゼロ法案”こと「高度プロフェッショナル制度」(以下、高プロ)を含むこの一括法案をめぐっては、労働問題の専門家を中心に激しい批判が殺到。国会では、担当の加藤勝信厚労相が論点をずらすインチキ答弁を連発、「ご飯論法」(「朝ごはんを食べたか?」と訊かれ、実際はパンを食べたのにそれに触れず「ご飯は食べてない」と答える詭弁)なる造語まで流行した。
参院では何としてでも可決を食い止めなくてはならないが、そんななか、この法案を根本から覆す“でっちあげ調査”の実態が暴露された。6月3日付の「しんぶん赤旗日曜版」が報じるスクープだ。
念のためおさらいしておくが、高プロは、年収1075万円以上の一部専門職を対象に労働時間の規制から除外し、残業や休日労働に対して割増賃金が一切支払われないというもの。
しかも本サイトでも既報のとおり、年収1075万円以上という年収要件にもトリックがあり、実際は誰にでも適用可能である【http://lite-ra.com/2018/05/post-4025.html】。
長時間労働や過労死が促進されるのは必至で、人間の命を軽視した悪法だ。安倍首相はこの制度を経団連など経済界の要望を受け、強引に成立させようとしている。
制度の本質は“定額働かせ放題”というものであり、労働者の搾取を正当化して使用者(会社側)だけが得をする仕組みにある。一方、加藤厚労相は5月9日の衆院厚労委員会で、高プロの必要性(ニーズ)について、労働者から労働時間規制を外すことに肯定的な意見があると主張して、根拠について「いくつかの企業と働く人十数人から話を聞いた」と答弁していた。
つまり、政府はわずか十数人の声しか聞かずに高プロという重要法案を推し進めてきたわけだ。しかも、厚労省が示した聞き取り内容の概要はわずか3業務で計12人分のコメントが数行だけ載った全2ページの資料のみ。詳しい調査方法については公開していなかった。
そんななか、今回、赤旗がスクープしたのは、この政府の聞き取り調査が、実のところ“でっちあげ”と呼ぶしかないシロモノだったという事実だ。
わずか“十数人”のヒアリングは、企業側の仕込みだった
スクープの核心は、聞き取り調査を担当した厚労省の労働基準局労働条件政策課が赤旗の取材に対して回答した内容にある。そもそも、厚労省はこの調査が、労働者から高プロの必要性を聞き取った「唯一の調査」と説明しているが、実は、問題の調査方法は、企業の意向だけが反映されるよう恣意的に仕組まれたものだったのだ。
赤旗の取材に同課が答えたところによれば、厚労省は企業に対し「高プロについて労働者の意見を聞きたい」と依頼したうえで、同意を得た企業を厚労省の職員が訪問したという。
驚くのはここからだ。厚労省の職員が訪問先の企業内の一室を借りて、労働者と高プロについて意見交換したというのだが、なんと、その聞き取り対象者は企業側が選んでおり、さらには調査の際、企業側の同席者がいたこともあったというのである。
つまり、労働者から高プロの必要性を聞いたと言い張った政府答弁は、実際には、使用者側が全面的に協力して選んだ労働者にすぎず、しかも監視下において答えさせていたのである。まるで“ヤラセ”ではないか。
これは、高プロの立法事実が根本から崩れたと言っていいだろう。ようは、政府は協力的な企業とグルになって、「導入に前向きな労働者の声」だけを恣意的に集めたのだ。しかも、繰り返しになるが、調査委対象はわずか12人である。裏を返せば、ここまで作為的な調査方法を用いてもなお、高プロを望む労働者の声がほとんど集まらなかった。そういうことではないのか。
周知の通り、働き方改革法案のもうひとつの目玉であった「裁量労働制」を巡っても、厚労省は異常値が多数含まれた“捏造データ”を出してきて大きな問題になった。しかもそのデータは、高プロの創設を議論した厚労省の労働政策審議会で「議論の出発点」として提出されていたものでもあった。
つまり、高プロもまた、当初から間違ったデータをもとに議論されてきたわけだが、ここにきて、政府が「導入に前向きな労働者の声」として示した調査も“でっち上げ”と呼ぶしかないシロモノであることが判明したのである。これで、労政審でいちから審議をやり直さないというのなら、もはやこの国は民主主義国家ではないだろう。
何度でも言う。高プロの本質は“残業代ゼロ”“働かせ放題”である。なんとしても廃案にもっていかねばならないのは当然だが、捏造データやでっち上げ調査を用いて労働者を欺こうとしている安倍政権の責任も徹底追及されねばならない。
・高プロのニーズ聞き取りについて、加藤厚生労働大臣が1月31日に虚偽答弁を行っていたことが判明(2018年6月8日)
上西充子
1965年生まれ。日本労働研究機構 (現:労働政策研究・研修機構)研究員を経て、2003年から法政大学キャリアデザイン学部教員。
※働き方改革関連法案に含まれる高度プロフェッショナル制度は、労働者のニーズがないまま立法化されようとしている。その中でニーズのヒアリングとされた12名のヒアリング結果について、加藤大臣が1月31日の参議院予算委員会で虚偽答弁を行っていたことが判明した。
わずか12名へのヒアリング結果が高プロの「ニーズ」調査?
労働基準法の労働時間規制をはずし、使用者が労働時間規制に縛られずに労働者を働かせることを可能とする高度プロフェッショナル制度(高プロ)について、労働者にそのニーズを聞き取ったとされるヒアリング結果をめぐる疑義が、社民党の福島みずほ議員によって参議院厚生労働委員会で呈されている。
ことの経緯の概略は、筆者が把握している限りにおいて、こうだ(より詳しい経緯があると思うが、把握しきれていない)。
まず、5月9日の衆議院厚生労働委員会において、立憲民主党の岡本あき子議員が、高プロのニーズ把握はどうやっているのかと尋ねたところ、加藤厚生労働大臣は次のように答弁した(インターネット審議中継の5:03:20頃から)。
●加藤厚生労働大臣
ニーズということであればですね、私どものほう、これ、あの、実際、いくつかの企業と、あるいは、そこで働く方からですね、いろんなお話をきかせていただいているということであります。
「いくつかの企業」と、「そこで働く方から」というのは、随分と曖昧な言い方だ。そして、そこで聞いた話の例として、エピソードを少し紹介した。岡本議員は、その調査の全体像を示すように求めた。
その後、5月16日に厚生労働省労働基準局が、12名のヒアリング結果の抜粋を理事会に提出した。しかしその内容は、下記の通り、実に簡素なものであり、いつ、どこで、誰に聞いたものかも記されていないものであった。
さらにその後、6月3日付のしんぶん赤旗日曜版に、12名のヒアリングについての記事が掲載された。
調査を担当した厚生労働省労働基準局労働条件政策課へのしんぶん赤旗日曜版の編集部の取材によれば、
●調査の対象者は東京都内の12人
●厚労省が企業に「新しい制度(高プロのこと)について労働者の意見を聞きたい」と協力を依頼。同意を得た企業に厚労省の職員2人が訪問
●企業内の一室を借り、企業側が選んだ労働者と高プロについて意見交換した。
●調査には企業側の同席者がいたことも
というものであり、また、厚労省はこの調査について、労働者に高プロのニーズを聞き取った「唯一の調査」と説明した、という。
さらに、聞き取りをした日については、「公表を前提としないことを企業と確認したので答えられない」と回答したという。
福島みずほ議員の質疑から、12名のヒアリングに次々と疑義が噴出
その後、福島みずほ議員が、この12名へのヒアリングについて集中的に質疑を行ったところ、次々と疑義が噴出することとなった。
5月31日の参議院厚生労働委員会で福島議員は、この12名へのヒアリングは、誰が、いつ、どこで聞いたのかと尋ねるが、加藤大臣をはじめとして、誰も答弁のための手を上げようとしない。下記の画像の11:45頃からを、ぜひ確認していただきたい。
●【高プロ要求でたらめデータ】福島みずほ「こんなんで高プロ導入?」:6/5 参院・厚生労働委
しばらく後に山越労働基準局長が答弁したところによれば、こういう説明だった。
●山越労働基準局長
ご指摘のヒアリングでございますけれども、平成27年の労働基準法案を検討している際に、労働基準局の職員がヒアリングを行ったものでございます。
さらに、職員が先方にヒアリングのアポイントを取って実施したものだとの答弁を山越局長は行っている。また、企業の方でヒアリング対象者を選定いただいたもの「だと思います」と山越局長は答弁している。ヒアリングの時間は「1時間程度ではなかったかと思います」というのが山越局長の答弁だ。
またこの時に福島議員は、12名のうちコンサルタントが8名、アナリストが3名と、11名が2職種で占められていることを問題にしている。そして、「これって、まともなんですか?」と疑義を呈している。もしかしたら同じ会社の同一人物ではないか、とも福島議員は疑問を呈している。そして企業名の開示を求めた。
また、この12名のヒアリング概要のうち、誰が高度プロフェッショナル制度を要求しているのか、と福島議員は問うている。それに対する山越局長の答弁はこうだ。
●山越労働基準局長
今回の高度プロフェッショナル制度ですけれども、自律的な働き方ということで、新たに制度を設けるものでございます。この当時におきましては、こうした高度プロフェッショナル制度というものは、制度設計ができあがっていないわけでございますが、そういった働き方を希望されるような方がおられるであろうという業種、そういった職種があるだろうという企業に対してヒアリングを実施した、そういうことから、こういったことになっているわけでございます。
その後も、ヒアリング内容は高プロへのニーズを示しているわけではないという福島議員の質疑が続くのだが、そこは省略したい。ここで問題にしたいのは、このヒアリングの実施時期だ。
実はヒアリング実施は、2015年3月と2018年2月1日だった
上の5月31日の山越労働基準局長の答弁では、ヒアリングは、「平成27年(2015年)の労働基準法案を検討している際に、労働基準局の職員がヒアリングを行ったもの」とされていた。
しかしその後の6月5日の福島議員に対する山越局長の答弁によれば、12件のヒアリングのうち、No.1、No.2、No.12の3件は2015年3月に実施したものであり、残りの9件は2018年2月1日に実施したものであることが明らかになった。
現在の働き方改革関連法案に含まれる高度プロフェッショナル制度は、今国会への提出にあたって若干の修正が施されたとはいえ、ほとんどの内容は2015年4月3日に閣議決定された労働基準法改正案と同じである。そしてその労働基準法改正案の法律案要綱は、2015年2月17日には第126回労働政策審議会労働条件分科会に諮問されている。
つまり、2015年3月の3件のヒアリングは、法律案要綱が労働政策審議会に諮問された後に行われている。労働者のニーズ把握を元に法案に高度プロフェッショナル制度の創設を盛り込むのであれば、当然、法律案要綱の諮問(2月17日)よりも前、さらには労働政策審議会の建議(2月13日)よりも前に、行われていなければならない。
にもかかわらず、法律案要綱が諮問されたよりも後になってヒアリングが行われている。これでは立法事実を示す「ニーズ」とは言えない。この12件しか高プロの「ニーズ」を示すエビデンスがないというのであれば、高プロには立法事実がない、と言えよう(注1)。
さらに、法律案要綱の諮問後に3件のヒアリングが行われたのであれば、「平成27年(2015年)の労働基準法案を検討している際に、労働基準局の職員がヒアリングを行った」という5月31日の山越局長の答弁は、虚偽答弁の疑いが濃い。
この点について6月7日の参議院厚生労働委員会で福島議員が追及しているが、山越局長はすれ違った逃げの答弁に終始している。
2018年2月1日になぜ、追加の9件のヒアリングが行われたのか
もう一つの問題は、なぜ「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案要綱」の答申が2017年9月15日に既に行われているのに、国会が開催されている最中の、しかも裁量労働制の労働時間をめぐる安倍首相の答弁に疑義が呈され始めた2月1日に、9名の追加ヒアリングが行われたか、である(注2)。
この点について、6月7日の共同通信はこう伝えている。
●2月に高プロのヒアリング実施 野党追及の翌日、9人に(共同通信、2018年6月7日)
国会で「働く人のニーズを把握しているのか」と野党から追及された翌日に当たるため、野党側は「アリバイ作りのための茶番だ。立法理由にならない」と反発。高プロ創設の根拠となる「ニーズの把握」がずさんな形で行われていたと批判を呼びそうだ。
出典:同記事
この記事を読んで、はたと思いだした。1月31日の参議院予算委員会で、浜野喜史議員が高プロのニーズを加藤大臣に問うていた。加藤大臣は、話を聞いたとエピソードを語りつつ、公表できる記録はないことを答弁していた。
その議事録を確認したところ、1月31日に加藤大臣がこのヒアリングについて、虚偽答弁を行っていたことに筆者は気づいたのだ。
1月31日の加藤大臣の虚偽答弁
1月31日の参議院予算委員会における浜野議員と加藤大臣のやりとりはこうだ。
●浜野喜史議員
厚労大臣にお伺いいたします。この(裁量労働制と高度プロフェッショナル制度という)二つの制度、働く者の側からの要請があったというふうに理解してよろしいでしょうか。
●加藤厚生労働大臣
(略)
私自身も、この働く方の立場に立って働き方改革を推進していくということで、働く方の声をいろいろと聞かせていただきました。
まず、企画業務型裁量労働制の適用についても、・・・(略)。
また、高度で専門的な職種、これはまだ制度ございませんけれども、私もいろいろお話を聞く中で、その方は、自分はプロフェッショナルとして自分のペースで仕事をしていきたいんだと、そういった是非働き方をつくってほしいと、こういうご要望をいただきました。
例えば、研究職の中には、1日4時間から5時間の研究を10日間やるよりは、例えば2日間集中した方が非常に効率的に物が取り組める、こういった声を把握していたところでありまして、そうしたまさに働く方、そうした自分の状況に応じて、あるいは自分のやり方で働きたい、こういったことに対応する意味において、これ全員にこの働き方を強制するわけではなくて、そういう希望をする方にそうした働き方ができる、まさに多様な働き方が選択できる、こういうことで今議論を進めているところであります。
●浜野喜史議員
ご説明いただきましたけれども、現裁量労働制対象の方々からも意見があったと、そして、新設される高度プロフェッショナル制度につきましてもご意見があったということですけれども、そういう意見があったというような記録ですね、これは残っているんでしょうか、ご説明願います。
●加藤厚生労働大臣
今、私がそうしたところへ、企業等を訪問した中でお聞かせいただいたそうした意見、声でございます。
●浜野喜史議員
その記録は残っているんでしょうか。
●加藤厚生労働大臣
そこでは、その思うことを自由に言ってほしいということでお聞かせいただいたお話でございますから、記録を残す、あるいは公表するということを前提にお話をされたものではございません。
●浜野喜史議員
私は厚労大臣を疑うわけじゃありませんけれども、記録ないわけですね。もう一度確認させてください。
●加藤厚生労働大臣
公表するという意味でお聞かせをいただいたわけではありませんが、ただ、やはりそうしたフランクな話を聞かせていただくということは私は大事なことではないかと思います。
●浜野喜史議員
そういうふうにおっしゃいましたけれども、記録はないということでございました。
ここで浜野議員はかなりしつこく、記録はないのかと問うているが、加藤大臣は、公表を前提としたものではなかったとして、記録があるとは答弁していない。
しかし実は、ここで加藤大臣が語ったエピソードが、5月16日に国会に報告された12人のヒアリング結果のNo.1と同じなのだ。
No.1はこうである。
研究開発職(製造業において研究開発業務に従事)
「1日4~5時間の研究を10日繰り返すよりも、2日間集中した方が、トータルの労働時間は短くて済む。」
加藤大臣が語ったものと同じエピソードと判断してよいだろう。
ここで矛盾が露呈する。加藤大臣は1月31日の答弁で、「私自身も、この働く方の立場に立って働き方改革を推進していくということで、働く方の声をいろいろと聞かせていただきました」と語り、「私もいろいろお話を聞く中で」とした上で、この研究職の方の声を伝えていた。声を伝えたあとにも、「今、私がそうしたところへ、企業等を訪問した中でお聞かせいただいたそうした意見、声でございます」と答弁している。どう考えてもここで加藤大臣は、みずからが働き方改革の推進のために話を聞き取ったものとして、この研究職の方の声を答弁で伝えている。
しかし、上に見たように、6月5日の福島みずほ議員に対する山越局長の答弁によれば、このNo.1のヒアリングは2015年3月のものだ。当時は加藤大臣は、厚生労働大臣でもないし、働き方改革担当大臣でもない。また、5月31日の山越局長の答弁によれば、これは労働基準局の職員がヒアリングしたものだ。6月7日の福島議員に対する山越局長の答弁でも、ヒアリングは労働基準局の職員が行ったと答弁している。
つまり1月31日に加藤大臣が、働き方改革の推進のためにみずから企業等に出向いて話を伺ったかのように答弁した研究職の方の声は、実は労働基準局の職員が2015年3月にヒアリングして聞き取った内容であった、ということだ。1月31日の加藤大臣の答弁は、虚偽答弁である(注3)。
虚偽答弁であることを隠すために、記録の存在について繰り返し問われても、公表を前提としていないという理由で記録の開示を拒んだものと思われる。
虚偽答弁を伴って紹介されていたヒアリング結果
そのことを踏まえて、もう一度、5月31日の参議院厚生労働委員会で福島議員が、12名へのヒアリングについて、誰が、いつ、どこで聞いたのかと尋ねた際の、加藤大臣や山越局長らの様子を映像で見ていただきたい。下記の画像の11:45頃からだ。
●【高プロ要求でたらめデータ】福島みずほ「こんなんで高プロ導入?」:6/5 参院・厚生労働委
加藤大臣は素知らぬふりをして、答弁のための手を上げようとしない。山越局長も手を上げない。山越局長が後ろの厚生労働省職員の方を振り向き、職員が山越局長のもとに駆け寄って何かを語り、ようやく山越局長が手を挙げて、前述のように、あたかも2015年法案の検討時にヒアリングを行っていたかのような、野党を欺く内容の答弁をする。実際は法案要綱の諮問より前の2015年3月に行われたヒアリング結果であったのに。
つまり、高プロのニーズとして示されたこの12名のヒアリング結果は、虚偽答弁まで行わなければならないような代物であった、ということだ。
こんな状態のまま、20日の国会会期末を控えて、14日にも参議院で働き方改革関連法案の強行採決が行われるのではないかという話が出ている。いいかげんにしていただきたい。
改めて加藤大臣には辞任を求める。そして、高度プロフェッショナル制度は廃案とすることを求める。
***
(注1)
高プロの立法事実は、経営側が求めているから、というものではありえない。確かに本音ではそうだろう。しかし、法案提出理由(こちらの最終ページ)は、次の通りとなっており、その理由に即した形で立法事実を示すためには、労働者が求めているというニーズを示す必要があるはずだ。
労働者がそれぞれの事情に応じた多様な働き方を選択できる社会を実現する働き方改革を推進するため、時間外労働の限度時間の設定、高度な専門的知識等を要する業務に就き、かつ、一定額以上の年収を有する労働者に適用される労働時間制度の創設、短時間・有期雇用労働者及び派遣労働者と通常の労働者との間の不合理な待遇の相違の禁止、国による労働に関する施策の総合的な推進に関する基本的な方針の策定等の措置を講ずる必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。
なお、高プロのニーズについては、ヒアリングの他にアンケート調査も用意されていた。しかしこれは、不自然な二択の選択肢によって労働時間規制緩和にニーズがあるかのように誘導する設問によるものであり、ニーズを「捏造」したものと言える。このアンケートについては、4月17日の東京新聞「こちら特報部」が下記の記事で取り上げた。
●「残業代ゼロ」も導入ありき? 厚労省調査で裁量労働維持7割(東京新聞「こちら特報部」2018年4月17日) (橋本誠、石井紀代美)
筆者もその記事を踏まえてより詳細に、この二択のアンケートの問題を下記の記事で指摘している。
●「導入ありき」で意図的にゆがめられた設問により、高プロへのニーズが主張されていたことが判明(上西充子)- Y!ニュース(2018年4月24日)
そのため、政府はこのアンケート結果を、ニーズ調査結果として国会で示すことは、できなくなっているものと思われる。
(注2)
この2月1日とは、裁量労働制の方が労働時間が短いとした安倍首相の1月29日の答弁について、1月30日に山井和則議員が厚労レクで説明を求め、2月1日に調査名と根拠となるデータの明示を求める質問主意書を提出した、その最中でのことである。
2月19日の第4回野党合同ヒアリングでは、労働条件政策課長は、野党議員からの問い合わせを受けて、2月1日に安倍首相答弁のもととなった平成25年度労働時間等総合実態調査の調査票を確認したと説明している。この日に調査票を確認していながら、問題についての加藤大臣への報告は2月7日になってからであったとされている。
このように裁量労働制の「比較データ」問題については、経緯に大きく不透明な部分がある。筆者は、この「比較データ」は意図をもって捏造されたものと考えており、1月30日から2月1日にかけては、その捏造が山井議員に対してバレてしまうのではないか、という混乱状態の中にあったのではないかと推測している。その中で、9名への追加ヒアリングが行われているのである。
(注3)
なお、このように、あるヒアリング結果を別の場でのヒアリング結果のようにすり替えて紹介することについては、安倍政権には「実績」がある。
2017年6月24日の神戸「正論」懇談会の設立記念特別講演会で、安倍首相が非正規で働く女性から聞いた話を紹介しているが、これはその後の記者会見で菅官房長官が説明しているように、2016年12月6日に官邸で安倍首相が非正規雇用等で働く方々との車座の座談会の中で聞いた話であり、グローバル企業であるイケアで働く女性の話だ。
にもかかわらず、安倍首相はその女性の声をこういう導入と共に紹介している。
そして生産性をあげる最大の切り札が働き方改革です。昨年、伊勢へ行った際にお話を伺う機会がありました。ある女性は最初、印刷会社に正社員として就職しましたが、締め切りに追われる長時間労働の職場だったため、結婚・出産を機に退職する道を選びました。その後、小売り関係の会社でパートを始めます。
その「小売り関係の会社」とは、実はグローバル企業であるイケアなのだが、このように紹介されると、伊勢にある小売関係の会社で働く女性の声としか聞こえない(ちなみに、伊勢にはイケアの店舗はない)。
このことは下記の記事の末尾に「追記」として記した。
●安倍首相の「非正規のときにはなかった責任感」発言を「批判する方がおかしい」とする菅官房長官への反論(上西充子)- Y!ニュース(2017年6月30日)
エピソードの流用の仕方は、安倍首相も加藤大臣も、同じである。講演ならばまだ、許されるかもしれないが、加藤大臣はまさに、与野党が激しく対立する高度プロフェッショナル制度の立法事実に関わる問題で、国会において虚偽答弁を行ったのだ。これは、とうてい、看過できない問題だ。