・米軍、シリア化学兵器施設への攻撃開始 英仏合同作戦(BBC 2018年4月14日)
※ドナルド・トランプ米大統領は東部時間13日午後9時(日本時間14日午前10時)、ホワイトハウスでテレビ演説を行い、シリア・アサド政権の「化学兵器施設」に対する局所攻撃を命じたと発表した。首都ダマスカス郊外東グータ・ドゥーマに対してシリア政府軍が化学兵器を使用したと疑われている攻撃に対応するもので、英仏軍との合同作戦が「すでに始まっている」と述べた。国防総省によると、ダマスカスのほか、西部ホムス近郊の施設が標的になった。
トランプ大統領はホワイトハウスで会見し、アサド政権の「化学兵器使用能力に関連する標的」への局所攻撃を命じたと述べた。さらに、「シリア政権が禁止されている化学物質の使用をやめるまで、我々はこの対応を持続する用意がある」と強調した。
大統領は、攻撃の目的は「化学兵器の製造・拡散・使用に対して強力な抑止力を確立すること」だと説明。アサド政権が「化学攻撃をエスカレート」させ、ドゥーマに対する化学攻撃で罪のない市民を「大虐殺した」と断定し、それを命じたバッシャール・アル・アサド大統領について、「人間のやることではない。むしろ、化け物による犯罪だ」と強い調子で糾弾した。さらに、「犯罪的」アサド政権を支援するイランとロシアを非難し、アサド政権が化学攻撃を繰り返しているのは、ロシアがそれを容認しているからだと非難した。
トランプ氏は、イランとロシアに対して、「罪のない男性や女性や子供の大量殺人に関わっていたいというのは、いったいどのような国なのか」と問いただした。
大統領発表に続き、ジェイムズ・マティス国防長官とジョセフ・ダンフォード統合参謀本部議長が国防総省で記者会見した。会見でダンフォード議長(海兵隊大将)は、3つの標的を爆撃したと説明した。
◾ダマスカスの科学研究施設(生物化学兵器の製造に関わるとみられる)
◾ホムス西部の化学兵器保管施設
◾ホムス近くの化学兵器材料保管・主要司令拠点
シリア国営テレビは、政府軍は10基以上のミサイルを迎撃したと伝えた。
マティス長官は記者団に、撃墜された報告はないと述べた。大統領は攻撃継続の用意があると表明したが、国防長官は攻撃の第一波は終了したと述べ、「今のところ、これは一度限りの攻撃で、非常に強力なメッセージを相手に伝えたと思っている」と述べた。
シリア国営テレビはさらに、被害を受けたのはダマスカスの研究施設のみだが、ホムスでは民間人3人が負傷したと伝えた。

(上)シリア国内の空軍基地(Airbase)と化学兵器製造拠点と思われる施設(Suspected chemical weapons sites)、空爆地点(Airstrike)
国営シリア・アラブ通信(SANA)は、米英仏の攻撃を「はなはだしい国際法違反」と呼び、「シリアに対する米仏英の侵略は失敗する」と伝えた。
シリア大統領府は空爆から一夜明けた14日午前、午前9時に大統領府に出勤するアサド大統領の様子だという映像をツイートした。スーツ姿でブリーフケースを手にしたアサド大統領が歩いてくる様子を、「ゆるぎない朝」表現している。
シリア政府は一貫して、ドゥーマ攻撃への関与を否定している。
化学兵器禁止機関(OPCW)はドゥーマに調査団を派遣しており、14日にも現地調査を始める予定。
ロシア政府はアナトリー・アントノフ駐米大使を通じて声明を発表。「あらかじめ計画済みのシナリオが実施されている。またしても我々は脅されている。このような行動には代償が伴うと、我々は警告していた。その責任の全ては米政府、英政府、仏政府にある」と表明した。
ダンフォード議長は、米国はロシアの人的被害を「軽減する」標的を意識的に選んだと述べた。一方で国防総省は、空爆対象をロシアに事前通知した事実はないと説明している。
テリーザ・メイ英首相は英軍が参加していることを確認し、「武力行使に代わる実用的な選択肢がなかった」と述べた。一方で首相は、英米仏連合による攻撃は、シリアの「体制変換」を目指したものではないと慎重な姿勢を示した。
英国防省は、ホムス近くの軍事施設を、英トルネード戦闘機4機が空爆したと明らかにした。対象の施設は、化学兵器製造の材料を保管していたと考えられている。
エマニュエル・マクロン仏大統領も、仏軍の作戦参加を認め、「何十人もの男性、女性、子供たちが化学兵器で虐殺された」、「越えてはならない一線を越えてしまった」とアサド政権を批判した。
BBC外報プロデューサーのリアム・ダラティは、「ダマスカスからの映像に、対空ミサイルが発射される様子が映っている」とツイートした。
シリアは、ドゥーマを化学兵器で攻撃した事実はないと否定している。ロシアは、欧米諸国が軍事行動に出れば、戦争が始まるおそれがあると警告していた。
ドゥーマの住民や医療関係者、複数の支援団体は、7日の攻撃の結果、化学兵器の使用が疑われる症状で500人以上が治療施設に運ばれ、数十人が死亡したと主張している。
米軍は昨年4月、シリア北西部イドリブ県に対してサリンとされる化学兵器攻撃があったことを受けて、巡航ミサイル攻撃を実施した。
米政府関係者はロイター通信に対して、今回の空爆ではトマホーク巡航ミサイルがシリア国内の複数の標的に使われていると述べた。同通信はさらに、ダマスカスにいる目撃者が「少なくとも6回の大きな爆発」が聞こえたと話していると伝えた。
シリア国営テレビも、ダマスカスへの爆撃があったと伝えた。国の防空システムが発動しているという。
ロンドンにある民間団体「シリア人権監視団」も、複数の軍事施設のほか、ダマスカスにあるシリア科学研究施設が爆撃されたと話している。
・トランプ米大統領がシリアから軍隊を撤退させると語ると、有力メディアから石油を手放す気かと批判 2018.04.02
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/201804020000/
※ドナルド・トランプ大統領は3月29日、アメリカ軍をシリアから引き揚げるという意思を明らかにした。政府内でも同じ指示を出しているという。昨年(2017年)7月にトランプ大統領はバラク・オバマ政権が始めたCIAの秘密作戦を中止する決断をしたと伝えられたが、周囲からの圧力の中、その考え方は変化しなかったようだ。
オバマ政権はシリアのバシャール・アル・アサド政権を倒すために「穏健派」を支援しているとしていたが、アメリカ軍の情報機関DIA(国防情報局)は2012年8月にホワイトハウスへ出した報告の中で、反シリア政府軍の戦闘員はサラフィ主義者(ワッハーブ派)、ムスリム同胞団、AQIだとしていた。この当時、DIAの局長を務めていたのがマイケル・フリン中将、つまりトランプ大統領が最初に国家安全保障補佐官に選んだ人物だ。
AQIはイラクのアルカイダを意味し、シリアで活動していたアル・ヌスラの実態もAQIだと指摘している。実際、AQIもアル・ヌスラもタグに過ぎず、中身は確かに同じだ。オバマ大統領が主張していた「穏健派」は存在しないということでもある。
DIAの報告はシリアの東部(ハサカやデリゾール)にサラフィ主義者の支配国が作られる可能性があるとも警告しているが、これはダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)という形で現実になった。ダーイッシュもAQIやアル・ヌスラと本質的な違いはない。
DIAが予測していたにもかかわらずダーイッシュの出現を防げなかった責任をフリンは退役後の2015年8月、アル・ジャジーラの番組で問われたが、ダーイッシュの勢力を拡大させた政策を実行すると決めたのはオバマ政権だと反論している。
報告が提出された後もフリン局長はジハード勢力を支援するのは危険だとオバマ政権に警告し続けたが、無視される。そして2014年1月にイラクのファルージャで「イスラム首長国」の建国を宣言、6月にはファルージャやモスルを制圧している。このとき、アメリカ軍はダーイッシュの制圧作戦、示威行進を黙認していた。ファルージャやモスルが制圧された2カ月後にフリンはDIA局長の職を解かれた。
当時の統合参謀本部もDIAと基本的に同じ考え方をしていたのだが、2015年9月25日に統合参謀本部議長はマーチン・デンプシーからジョセフ・ダンフォードに交代になった。同年2月には国防長官も戦争に消極的だったチャック・ヘイゲルから好戦派のアシュトン・カーターへ入れ替えられている。
オバマ政権は自らが売り出したダーイッシュを口実にしてアメリカ軍にシリアを攻撃させる。勿論、シリア政府は軍事介入を承認していない。つまりアメリカによるシリア侵略だ。アメリカ軍の主なターゲットはシリア政府軍やシリアのインフラで、ダーイッシュは打撃は受けていない。アル・カイダ系武装勢力やダーイッシュの支配地域が急速に縮小するのは2015年9月30日、アメリカの統合参謀本部議長が交代になった5日後にシリア政府の要請を受けてロシア軍が介入してからだ。
アル・カイダ系武装集団やダーイッシュが敗走するとアメリカはクルドを新たな手先にするが、これによってトルコとアメリカとの関係が険悪化、アメリカの目論見通りには進んでいない。
新たな武装勢力を編成する動きがあるほか、フランス政府が軍隊をシリアへ派遣するという情報が流れている。言うまでもなく、これも侵略だ。3月29日にはクルド系のDFS(シリア民主軍)の代表がフランスのエマニュエル・マクロン大統領と会談したという。アメリカ政府内でネオコンの力が衰える中、ロスチャイルドと近い関係にあるマクロンが前面に出てきた。
アメリカ、イスラエル、サウジアラビアの三国同盟、イギリスとフランスのサイクス-ピコ協定コンビ、オスマン帝国の復活を夢見るトルコ、天然ガスのパイプライン建設を拒否されたカタールなどが始めたシリア侵略だが、トルコやカタールは離脱済み。アメリカが軍隊を撤退させるなら、イギリスやフランスが出てこざるをえないのだろう。
シリアを侵略する理由はいくつかある。イスラエルの現政権の大イスラエル構想、さらにユーラシア大陸の周辺からロシアや中国を締め上げ、最終的には支配するという長期的な戦略もある。
シリアとイランを制圧して中東を完全な支配下に置いてエネルギーを支配するという計画、石油支配はドルを基軸通貨とする支配システムの防衛にもつながる。ワシントン・ポスト紙にシリア侵略の目的は石油支配にあり、アメリカ軍の撤退は支配権をイランへ渡すことだとトランプ大統領を批判する記事が掲載されたが、本音だろう。
・化学兵器の使用を口実にして熱戦に突入するのか、神経薬物による攻撃を口実にして冷戦に入るのか? 2018.03.21
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/201803200000/
※生物化学兵器の使用がアメリカ軍の直接的な軍事介入のレッドラインだとバラク・オバマが大統領として発言したのは2012年8月のことだった。シリア政府軍と戦っている戦闘集団の中心はサラフィ主義者、ムスリム同胞団、そしてアル・カイダ系武装集団のAQI(アル・ヌスラ)だとDIAがホワイトハウスへ報告したのと同じ月だ。
2001年9月11日以来、アメリカ政府は「アル・カイダ」をテロリストの象徴として描き、そのテロリストを殲滅するという口実で他国を侵略している。ところがシリアでは、そのテロリストを守るためにアメリカはシリアへ軍事介入するというわけだ。
シリアより1カ月早い2011年2月に侵略戦争が始まったリビアでは、その年の10月にNATOとアル・カイダ系武装集団のLIFGの連合軍がムアンマル・アル・カダフィの体制を破壊、カダフィ自身を惨殺している。その直後から戦闘員と武器/兵器を侵略勢力はシリアへ集中させ、リビアと同じようにバシャール・アル・アサド政権をオバマ政権は倒そうとしたわけだ。その口実が生物化学兵器。
2012年5月にホムスで住民が虐殺されると西側はシリア政府に責任があると宣伝するが、すぐに嘘だと発覚する。例えば、現地を調査した東方カトリックの修道院長は反政府軍のサラフ主義者や外国人傭兵が実行したと報告、「もし、全ての人が真実を語るならば、シリアに平和をもたらすことができる。1年にわたる戦闘の後、西側メディアの押しつける偽情報が描く情景は地上の真実と全く違っている。」と語っている。
政府軍による住民虐殺という筋書きで軍事介入を正当化しようとしてアメリカは失敗、化学兵器の話に切り替えたわけだ。イラクを先制攻撃する前の大量破壊兵器話と同じだ。
2012年12月になるとヒラリー・クリントン国務長官はアサド大統領が化学兵器を使う可能性があると発言、13年1月29日付けのデイリー・メール紙は、シリアで化学兵器を使ってアサド政権に責任をなすりつけて軍事行動へ向かうという作戦をオバマ大統領は許可したと伝えている。(すぐに記事はサイトから削除された。)
実際、2013年3月19日にアレッポの近くで化学兵器が使われるが、その5日後にイスラエルのハーレツ紙は化学兵器を使ったのは政府軍ではなく反政府軍だった可能性が高いと報道、5月になると攻撃を調べていた国連の独立調査委員会のメンバー、カーラ・デル・ポンテも政府軍でなく反政府軍が使用した可能性が高いと発言する。
8月21日にはダマスカスに近いグータで再び化学兵器が使用され、アメリカをはじめとする西側の政府や有力メディアはシリア政府に責任をなすりつける宣伝を展開、23日にアメリカのネットワーク局CBSのチャーリー・ケイは、アメリカ海軍の司令官はシリアを巡航ミサイルで攻撃するため、艦船に対してシリアへ近づくように命じたとツイッターに書き込んだ。
8月29日にはサウジアラビアが化学兵器を反政府軍に提供したと報道されているのだが、9月3日に地中海からシリアへ向かって2発のミサイルが発射されるが、途中、海中へ墜落してしまった。その直後にイスラエル国防省はアメリカと合同でミサイル発射実験を実施したと発表したが、事前に周辺国(少なくともロシア)へ通告はなく、シリアに向かって発射された可能性が高い。何らかの電子戦用兵器が使われたと推測する人もいる。
早い段階からロシアは侵略軍が化学兵器を使ったと主張していたが、調査ジャーナリストのシーモア・ハーシュの記事、あるいは国連の元兵器査察官のリチャード・ロイドとマサチューセッツ工科大学のセオドール・ポストル教授の分析でもシリア政府軍が化学兵器を使ったという主張は否定されている。そのほかにも同じ趣旨の報告が相次いだ。こうした展開をアメリカ側は予想、そうした反論が出てくる前に攻撃したのだろうが、失敗したということだろう。
アメリカは別のストーリーを考える余裕がないのか、その後も同じシナリオで直接的な軍事介入を目論んできた。そして今年3月1日、ウラジミル・プーチン大統領はロシアやロシアの友好国が国の存続を揺るがすような攻撃を受けた場合、ロシア軍は攻撃してきた拠点を含めて反撃すると宣言する。地中海に配備されたアメリカの艦船からミサイルが発射されたなら、その艦船を撃沈するということだと理解されている。
プーチン演説の3日後、イギリスで神経薬物の騒動が引き起こされた。元GRU(ロシア軍の情報機関)大佐のセルゲイ・スクリパリとその娘のユリアがイギリスのソールズベリーで倒れているところを発見され、神経薬物(サリン、またはVXだとされている)が原因だとされている。テレサ・メイ英首相はロシア政府が実行したかのように発言しているが、証拠は示されていない。
イギリス政府がロシアとの関係を悪化させようとしていることは明白であり、EUを巻き込もうともしている。イギリスの化学戦部隊はロシアがそうした薬物を使った証拠を見つけていない。イギリス政府は担当者に圧力をかけて証拠を捏造させるか、何も示さずに「我々を信じろ」と言い続けるしかない。ロシア側は証拠を示すか、謝罪しろと要求している。
・偽旗作戦を実行する前に武装勢力は化学兵器を政府軍に押さえられたが、米海軍は戦争体制 2018.03.22
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/201803220000/
※シリアの首都ダマスカスの郊外に位置する東グータを政府軍が制圧しつつある。その東ゴータで「穏健派」の、つまりアメリカが手先として使っている武装勢力が3月21日に買い物客で賑わうマーケットをミサイルで攻撃、20名以上とも35名以上とも言われる人々が死亡したと伝えられている。
制圧作戦の過程で政府軍は武装勢力が化学兵器を製造していた作業場を発見、内部の映像が公表された。シリア側の説明によると、装置はサウジアラビアから持ち込まれ、薬品や防護服は西側から持ち込まれたという。武装勢力が逃げる際に放置していった有害物質は40トン以上になるとロシア国防省は語っている。
バラク・オバマが大統領だった当時からアメリカは化学兵器の使用を口実としてアメリカ/NATO軍が直接軍事介入してバシャール・アル・アサド政権を倒そうとしてきた。今年2月上旬にアメリカ国務省のヘザー・ナウアート報道官はシリア政府軍が化学兵器を使用したと根拠を示さず一方的に主張している。
それに対し、アメリカ国防省のダナ・ホワイト報道官はそうしたことを示す証拠を見たことがないと発言、ジェームズ・マティス国防長官は化学兵器を政府軍が使ったとするNGOや武装勢力の主張を裏付ける証拠は確認していないとしていた。化学兵器の使用を口実にした直接的な軍事介入の目論みを主導しているのはCIA/国務省だと言えるだろう。
ロシア参謀本部は3月17日、アメリカ海軍が艦隊を紅海、地中海、そしてペルシャ湾に配置、シリア攻撃の準備を整えたと警告している。また同じ3月17日にセルゲイ・ラブロフ露外相は、アメリカ、イギリス、フランスを含む国々の特殊部隊がシリア国内へ侵入、すでに「代理戦争」の段階ではなくなっていると語った。アメリカなどはこうした主張を否定したようだが、2011年3月にシリアへの侵略が始まった直後から西側諸国は特殊部隊を潜入させていると言われている。
言うまでもなく、こうした動きをロシア側は前から察知していたはずで、だからこそウラジミル・プーチン露大統領は今年3月1日、アメリカとその同盟国がロシアやその友好国に対して存亡の機を招くような攻撃を受けたなら反撃するとロシア連邦議会で演説したのだ。ウクライナの東部やクリミア、シリア、イランなど攻撃すればロシア軍との戦争になるという警告だ。
・シリア侵略の手先である武装勢力を支援するため、化学兵器話を再三再四使う侵略勢力 2018.04.09
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/201804080000/
※シリア侵略部隊がダマスカス攻撃の拠点にしてきた東グータの大半を政府軍が制圧、武装解除された戦闘員の脱出も進む中、ドゥーマで政府軍が化学兵器で住民70名以上を殺したと宣伝されている。その情報源はサウジアラビアを後ろ盾とし、アル・カイダ系のアル・ヌスラと連携しているジャイシュ・アル・イスラム、そしてアル・カイダ系武装集団と一心同体の白いヘルメット。つまり、アル・カイダ系武装集団の主張に基づく宣伝だ。
ロシア政府は反シリア政府軍が化学兵器を使おうとしていると再三警告、東グータでは化学兵器の製造場所がいくつか発見されている。今回の攻撃も西側は政府軍が化学兵器を使ったことを示す証拠を明らかにしていない。自分たちの主張を信用させようという熱意すら失ったように見える。
2003年3月に実行したイラクへの先制攻撃では事前に大量破壊兵器という嘘を広めていたが、シリアでは化学兵器。
政府による住民虐殺という主張が現地調査で否定され、偽情報の発信源も露見した後の2012年8月、アメリカ大統領だったバラク・オバマはNATO軍/アメリカ軍による直接的な軍事介入の「レッド・ライン」は生物化学兵器の使用だと宣言している。
オバマが宣言した月にアメリカ軍の情報機関DIAはホワイトハウスにシリア情勢に関する報告書を提出、その中で反シリア政府軍の戦闘員はサラフィ主義者(ワッハーブ派)やムスリム同胞団、あるいはAQI(イラクのアル・カイダ)が中心だとしている。アル・カイダ系武装集団の中心はサラフィ主義者やムスリム同胞団だ。
その当時、シリアではアル・ヌスラという武装勢力の名前が流れていたが、その実態はAQIと同じだとDIAは指摘している。バラク・オバマ大統領はそうした勢力を支援していた。そこでシリアの東部(ハサカやデリゾール)にサラフィ主義者の支配国が作られる可能性があるとDIAは報告書の中で警告、これはダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)という形で現実になった。
シリアで侵略戦争が始まる1カ月前、2011年2月にリビアが侵略されている。その黒幕はシリアと基本的に同じで、アメリカ、イスラエル、サウジアラビアの三国同盟、イギリスとフランスのサイクス-ピコ協定コンビ、カタールなど。リビアのムアンマル・アル・カダフィ体制はその年の10月の崩壊、カダフィ自身も惨殺された。
その段階でNATO軍とアル・カイダ系武装集団のLIFGとの連携が明確になっている。リビアを破壊した侵略勢力は戦闘員や兵器/武器をシリアへ運ぶが、その際に化学兵器もリビアから持ち出したと言われている。
2012年12月になると、自暴自棄になったシリアのバシャール・アル・アサド大統領が化学兵器を使う可能性があると国務長官だったヒラリー・クリントンが主張する。そして翌年の1月、アメリカのオバマ政権はシリアでの化学兵器の使用を許可し、その責任をシリア政府へ押しつけてアサド体制を転覆させようとしているとイギリスのデイリー・メール紙が報道した。
そして2013年3月、ダーイッシュがラッカを制圧した頃にアレッポで化学兵器が使われ、西側はその責任をシリア政府に押しつけて非難した。ところがこの化学兵器話に対する疑問はすぐに噴出し、5月には国連の調査官だったカーラ・デル・ポンテが化学兵器を使用したのは反政府軍だと語っている。
この年には8月にも化学兵器が使用され、アメリカは9月上旬に攻撃すると見られていたが、地中海から発射されたミサイルが海中に墜落、軍事侵攻はなかった。その件も、シリア政府が化学兵器を使用したことを否定する報道、分析が相次いだ。
早い段階でロシア政府は国連で証拠を示しながらアメリカ側の主張が正しくないことを説明しているが、8月29日にミントプレスはサウジアラビアが化学兵器使用の黒幕だとする記事を掲載した。記者に圧力がかかって執筆を否定する談話を発表するが、編集長が反論、記者との遣り取りは記録されているとしている。記者からの再反論はなかった。
10月に入ると「ロシア外交筋」からの情報として、グータで化学兵器を使ったのはサウジアラビアがヨルダン経由で送り込んだ秘密工作チームだという話が流れた。
12月には調査ジャーナリストのシーモア・ハーシュもこの問題に関する記事を発表、反政府軍はサリンの製造能力を持ち、実際に使った可能性があるとしている。国連の元兵器査察官のリチャード・ロイドとマサチューセッツ工科大学のセオドール・ポストル教授も化学兵器をシリア政府軍が発射したとするアメリカ政府の主張を否定する報告書を公表している。ミサイルの性能を考えると、科学的に成り立たないという。
このほか、トルコの国会議員エレン・エルデムらは捜査記録などに基づき、化学兵器の材料になる物質はトルコからシリアへ運び込まれ、そこでダーイッシュが調合して使ったと主張している。この事実を公表した後、エルデム議員らは起訴の脅しをかけられた。
西側の政府や有力メディアが流した化学兵器話は崩壊したのだが、その後も似たような話が繰り返し宣伝されてきた。
2017年4月4日にも化学兵器の使用が宣伝された。マイク・ポンペオCIA長官は7月11日、INSA(情報国家安全保障連合)の夕食会でその出来事について語った。それによると、ドナルド・トランプ大統領から4月4日の攻撃について6日に質問され、シリアの体制側が化学兵器を使ったというCIAの結論を伝えたとしている。
その報告に基づいてトランプは攻撃を決断、6日の夜にアメリカ海軍の駆逐艦、ポーターとロスから巡航ミサイル(トマホーク)59機をシリアのシャイラット空軍基地に向けて発射している。そのうち目標に到達したのは23発で、5発は地上に落下、残りは地中海へ落ちたのではないかとみられている。
しかし、ジャーナリストのロバート・パリーによると、4月6日の早朝、トランプ大統領はポンペオCIA長官から私的に化学兵器の使用を否定する説明を受けていたとする内部からの情報があるという。
また、6月25日には、ジャーナリストのシーモア・ハーシュが同じ内容の記事をドイツのメディアに書いている。ハーシュによると、4月4日に聖戦主義者の幹部が会議を開くという情報をつかんだロシアとシリアは攻撃計画を立て、その内容をアメリカ側へ伝えたとしている。CIAにも直接、ロシアから攻撃に関する情報が伝えられていた。攻撃の前からアメリカ側はロシアから情報を知らされていたことになる。
その記事が出る3日前、6月22日にはフランスのエマニュエル・マクロン大統領がシリア政府による化学兵器の使用は根拠がないと話している。
アメリカには、ロシアと全面戦争になってもシリアを破壊したいと考えている勢力が存在、大統領も逆らえない力を持っているように見える。
・理屈に合わないシリアの化学兵器話が宣伝される中、疑問を投げかけたFOXニュースのキャスター 2018.04.11
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/201804100001/
※ドナルド・トランプ米大統領がシリアから軍隊を撤退させると表明した直後、そのシリアで化学兵器が使用されたという話が流された。シリア政府による化学兵器使用の話はその撤退計画を御破算にした。
奇妙な話だが、そもそも東グータをほぼ制圧した政府軍が化学兵器を使う理由がない。これだけでも化学兵器話が胡散臭いことは明白だが、アメリカをはじめ西側の有力メディアは奇妙な化学兵器話を受け入れている。
非論理的な化学兵器話の発信源はアル・カイダ系武装集団と一心同体の白いヘルメットとアル・カイダ系武装集団と連携しているジャイシュ・アル・イスラムだ。ジャイシュ・アル・イスラムもアル・カイダ系武装集団やそこから派生したダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)と同じように残虐だ。こうした集団の情報を否定する赤新月社(イスラム諸国における赤十字)の証言を西側の有力メディアは無視する。
・東グータを政府軍は制圧、侵略勢力はWHOというタグを使って軍事介入を狙う 2018.04.13
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/201804120000/
※シリアに侵略戦争を仕掛けた勢力は手先のジハード傭兵部隊が敗走、この勢力が支配していた東グータは政府軍によって解放されたことで焦っている。シリアでの戦闘はリビアのムアンマル・アル・カダフィ体制が破壊されて傭兵と武器/兵器がシリアへ移動してから激しくなった。その頃から東グータはアル・カイダ系武装集団が支配している。この集団は2013年からジャイシュ・アル・イスラム(イスラム軍)というタグをつけた。
ロビン・クック元英外相が指摘しているように「アル・カイダ」とはCIAから軍事訓練を受けた「ムジャヒディン」のコンピュータ・ファイル。アル・カイダはアラビア語で「ベース」を意味し、「データベース」の訳語としても使われている。クックはこの指摘をした翌月、保養先のスコットランドで心臓発作に襲われ、59歳で死亡した。
登録されているムジャヒディンの多くはサラフィ主義者(ワッハーブ派、タクフィール主義者)やムスリム同胞団で、リビアやシリアへの侵略戦争に参加した部隊の中心もこうした人々で、ジハードなる看板を掲げているものの、実態は傭兵。1970年代から80年代にアフガニスタンでの工作に参加していた当時の雇い主はサウジアラビアだったが、シリアではいくつかの系統がある。
シリアの侵略戦争を仕掛けたのはアメリカ、イスラエル、サウジアラビアの三国同盟、イギリスとフランスのサイクス-ピコ協定コンビ、オスマン帝国の復活を夢想したトルコ、天然ガスのパイプライン建設をシリアに拒否されたカタールなど。シリアでの戦闘が長引き、侵略側に不利な戦況になるとトルコやカタールは離脱、傭兵も分裂を始めた。
掃討作戦を展開中のシリア政府軍は傭兵の化学兵器の製造工場を発見する一方、アメリカが軍事介入の口実として掲げているような化学兵器の攻撃を示す痕跡はないと報告されている。現地で活動してきた赤新月社(イスラム世界における赤十字)も同じ見解だ。政府軍の進撃は侵略勢力が予想したより早く、化学兵器を使った偽旗作戦を実行する余裕がなく、侵略勢力にとって都合の悪い証拠を残してしまったのではないかと推測する人もいる。
東グータから武装集団はダマスカスを砲撃、そのターゲットにはロシア大使館も含まれていた。そうした行為をいつまでも放置することはないとウラジミル・プーチン露大統領は警告し、今年(2018年)2月25日から始まった東ゴータの武装集団に対する攻撃にはロシア軍の地上部隊が同行したとも伝えられている。重要な拠点に政府軍が迫るとアメリカ軍に攻撃されていたが、今回はそうしたことがなかった。ロシア軍を直接攻撃できなかったという見方がある。
東グータはCIAの影響力が強かったが、ジャイシュ・アル・イスラムを指揮していたのはイギリスの特殊部隊SASやフランスの情報機関DGSEのメンバーで、MSF(国境なき医師団)が隠れ蓑として使われてきたとも報告されている。
今回、WHOは化学兵器の使用で多くの犠牲者が出ているとする声明を出したが、情報源が怪しい。WHOがパートナーと呼ぶ団体の中にはMSFが含まれているのだが、このMSFはアル・カイダ系武装勢力と一心同体の関係にある「白いヘルメット」を訓練している。西側は「白いヘルメット」を善玉として売り出しているが、その主張は事実に反している。東グータが解放された後、こうしたグループの宣伝用映像の撮影現場も見つかっている。
MSFは1971年12月に設立されたが、創設者のひとりであるベルナー・クシュネは2011年3月にリビアへの内政干渉を肯定する意見をガーディアン紙に寄稿した人物。リビアへの軍事侵略はその前月に始まった。シリアでもMSFは軍事侵略を支援する偽情報を発信した。
WHOは東グータの情報を「パートナー」から得ているが、そのパートナーは白いヘルメットを情報源にしている。つまり、WHOの話は白いヘルメットの偽情報にWHOというタグをつけただけだ。
・OPCWのチームが調査を始める直前、米英仏はシリアをミサイル攻撃 2018.04.14
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/201804140000/
※アメリカ、イギリス、フランスの3カ国はシリアを4月14日早朝に攻撃した。
これらの国々は2011年3月からシリアを侵略、バシャール・アル・アサド政権の打倒を目指してきたが、送り込んだジハード傭兵は敗走、新たな手先にしたクルドとの関係も微妙で、リビアと同じように直接的な軍事侵攻を目論んできた。
今回の攻撃は「化学兵器の使用」だが、そうした事実はなかった可能性が高い。過去、何度か同じ主張をしているが、いずれも嘘だったことが判明している。今回、米英仏の主張が正しいかどうかを検証するため、OPCW(化学兵器禁止機関)のチームがダマスカスへ入ったところだった。
この機関をアメリカは完全にコントロールできていないようで、調査が行われればアメリカ側の嘘が明らかになったと見られている。ロシア政府は化学兵器を使った偽旗作戦にイギリスの情報機関が関与していると主張していた。攻撃には証拠隠滅の狙いもあるだろう。
イスラエルやサウジアラビアからの圧力もあり、アメリカの国務省やCIAは戦争を始めたがっていた。こうした勢力が国防総省を押し切った形だ。
アメリカ軍は好戦派をなだめるために攻撃してみせただけだという見方もあるが
、今回、ロシアが自重すれば米英仏は増長して好戦的な政策をさらに進め、ロシアが反撃すれば大規模な戦争に発展する可能性がある。偽情報を掲げながらイラクを先制攻撃した際、統合参謀本部の抵抗で開戦が1年ほど延びたと言われている。アメリカで最も好戦的な勢力は「肘掛け椅子」に腰掛けながら机上で戦争を妄想している「文民」だ。
・米英仏がシリア攻撃に使ったミサイルの7割をシリア軍が撃墜したと露国防省 2018.04.15
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/201804140001/
※OPCW(化学兵器禁止機関)のチームが東グータへ入る直前、4月14日未明にアメリカ、イギリス、フランスの3カ国はシリアを巡航ミサイルで攻撃した。このチームが東グータへ入ることを拒否されたとアメリカ政府は弁明しているが、ロシア政府はそれを否定している。OPCWの調査を求めていたのはシリアやロシアであり、チームが現地へ入ることを拒否されたとする情報はない。
アメリカ国防総省の発表によると、攻撃のターゲットはバルザー化学兵器研究開発センター(76機)、ヒム・シンシャー化学兵器貯蔵施設(22機)、ヒム・シンシャー化学兵器(7機)。ミサイルは合計105機で、すべてが命中したとしている。
しかし、シリアの化学兵器はOPCWが立ち会って廃棄済み。シリア側の説明によると、破壊されたのは抗癌剤の製造工場だという。
ロシア国防省によると、攻撃されたのはダマスカス国際空港(4機。全て撃墜)、アル・ドゥマイル軍用空港(12機。全て撃墜)、バリー軍用空港(18機。全て撃墜)、サヤラト軍用空港(12機。全て撃墜)、メゼー軍用空港(9機。うち5機を撃墜)、ホムス軍用空港(16機。うち13機を撃墜)、バザーやジャラマニの地域(30機。うち7機を撃墜)。そのほかターゲット不明の2機があるようだ。
軍事施設には短距離防空システムのパーンツィリ-S1が配備されていると言われ、その能力はすでに確認済みだが、バシャール・アル・アサド大統領はソ連によって1970年代に製造された防衛システムを賞賛している。
化学兵器の使用を口実にしてシリアをアメリカ軍が直接攻撃するというプランが表面化したのは2012年8月のこと。バラク・オバマ大統領はNATO軍/アメリカ軍による直接的な軍事介入の「レッド・ライン」は生物化学兵器の使用だと宣言したのだ。
同じ月に、アメリカ軍の情報機関DIAはシリア情勢に関する報告書をホワイトハウスに提出、その中でバラク・オバマ政権に対して反シリア政府軍の主力はサラフィ主義者、ムスリム同胞団、そしてアル・カイダ系武装集団だと指摘、バラク・オバマ政権が宣伝していた「穏健派」は存在しないと書いている。
さらに、東部シリア(ハサカやデリゾール)にサラフィ主義者の支配国が作られる可能性があるともDIAは警告していた。つまり、ダーイッシュの出現を見通していたのだ。この報告書が作成された当時のDIA局長がマイケル・フリン中将。ドナルド・トランプ政権の最初の国家安全保障補佐官だ。
この年の12月になると、自暴自棄になったシリアのバシャール・アル・アサド大統領が化学兵器を使う可能性があると国務長官だったヒラリー・クリントンは主張する。翌年の1月には、アメリカ政府がシリアでの化学兵器の使用を許可、その責任をシリア政府へ押しつけてアサド体制を転覆させるというプランの存在をイギリスのデイリー・メール紙が伝えている。
そして2013年3月、ダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)がラッカを制圧した頃にアレッポで化学兵器が使われ、西側はシリア政府を非難したが、この化学兵器話に対する疑問はすぐに噴出する。
例えば、イスラエルのハーレツ紙は攻撃されたのがシリア政府軍の検問所だと指摘、死亡したのはシリア軍の兵士だということから反政府軍が使ったと推測している。5月には国連独立調査委員会メンバー国連の調査官だったカーラ・デル・ポンテが化学兵器を使用したのは反政府軍だと語っている。
この年には8月にも化学兵器が使用され、アメリカは9月上旬に攻撃すると見られていたが、地中海から発射されたミサイルが海中に墜落、軍事侵攻はなかった。その件も、シリア政府が化学兵器を使用したことを否定する報道、分析が相次いだ。
昨年(2017年)4月にも化学兵器話が持ち上がった。4日に政府軍が化学兵器を使ったというのだが、コントラの麻薬取引を明るみに出したことで有名なジャーナリストのロバート・パリーによると、4月6日にマイク・ポンペオCIA長官は分析部門の評価に基づき、致死性の毒ガスが環境中に放出された事件にバシャール・アル・アサド大統領は責任がなさそうだとトランプ大統領に説明していたと彼の情報源は語ったという。6月25日にはソンミ事件を明らかにしたことで有名なジャーナリストのシーモア・ハーシュもパリーと同じ内容の話を記事にしている。
そして今回の化学兵器話とアメリカ、イギリス、フランスによるシリア攻撃。これはオバマ政権の時代に作られた軍事侵略のシナリオであり、イスラエルやサウジアラビアから実行を強く求められていた。
・アル・カイダ系武装集団の幹部は攻撃が不十分だと失望を表明、米の好戦派も納得していないだろう 2018.04.16
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/201804160000/
※シリアに対する4月14日のミサイル攻撃では艦船のほかB-1B爆撃機、F-15戦闘機、F-16戦闘機、トルネード戦闘機が使われ、迎撃したのはシリア軍のS-125とS-200で、ロシア軍は動いていないようだ。アメリカ側はすべて命中したと発表しているが、ロシア国防省によると103機のうち71機をシリア政府軍が撃ち落としたという。
今年2月に領空を侵犯したイスラエル軍のF-16をシリア軍は撃墜、4月9日にはイスラエル軍のF-15戦闘機がレバノン上空からシリアのT4空軍基地に向かってミサイル8機を発射、そのうち5機が撃墜されている。これからロシアがどう反応するか不明だが、今回程度の攻撃ならシリア軍だけで対応できることを示したとは言える。
今回の攻撃に対し、アル・カイダ系武装集団ジャイシュ・アル・イスラムの幹部、モハマド・アルーシュは失望したと表明している。バシャール・アル・アサド政権を倒さなかったことが不満らしいが、そうした攻撃を実行すれば確実にロシア軍が攻撃に参加した艦船や航空機を破壊、全面戦争へ突入する可能性が高く、そうした展開を望んでいるということになる。
このジャイシュ・アル・イスラムはCIAの影響下にあり、同じアル・カイダ系のアル・ヌスラと連携(タグの違い)、イギリスの特殊部隊SASやフランスの情報機関DGSEのメンバーが指揮していると報告されている。MSF(国境なき医師団)が隠れ蓑として使われてきたともいう。
シリア政府軍が化学兵器を使用したと主張しているのはこのジェイシュ・アル・イスラムと白いヘルメット。この白いヘルメットがアル・カイダ系武装集団と一心同体の関係にある。WHOの情報源も同じだ。
赤新月社や2012年のはじめにシリアの住民虐殺現場を調査したカトリックの司教たちの証言を無視、侵略部隊に組み込まれている白いヘルメットを賞賛してきたのが西側の有力メディアやハリウッド。騙されているわけではないだろう。ボスが同じなのだ。
・ドゥーマを取材した英有力紙の特派員は毒ガスでなく粉塵による呼吸困難で患者は運び込まれたと報告 2018.04.18
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/201804170001/
※ドゥーマで政府軍が化学兵器を使ったと主張している人々にとって不都合は記事がイギリスのインディペンデント紙に掲載された。同紙のロバート・フィスク特派員が攻撃があったとされる地域へ入って医師らを取材、患者は毒ガスではなく粉塵による呼吸困難が原因で担ぎ込まれたという説明を受けている。毒ガス攻撃があったことを示す痕跡はないという。
そうした患者を治療している最中、「白いヘルメット」のメンバーが「ガスだ」と叫んだことからパニックが始まったというが、ドゥーマで政府軍が化学兵器を使って住民70名以上を殺したと宣伝しているのはその「白いヘルメット」とアル・カイダ系武装集団のジャイシュ・アル・イスラム。「白いヘルメット」はアル・カイダ系武装集団と一心同体の関係にある。
ジャイシュ・アル・イスラムはCIAの影響下にあり、同じアル・カイダ系のアル・ヌスラと連携(タグの違い)、イギリスの特殊部隊SASやフランスの情報機関DGSEのメンバーが指揮していると報告されている。MSF(国境なき医師団)が隠れ蓑として使われてきたとも言われている。
カネと人を抱えている西側の有力メディアに実態を調べる能力があることはフィスクの取材でも明らか。つまり、ほかの西側メディアは取材せずアル・カイダ系集団の宣伝をそのまま垂れ流してきたわけだ。西側の政府も同じこと。ドゥーマで化学兵器が使われたという話が嘘だということは西側の政府も有力メディアも知っていたのだろう。
メディアであろうと学者であろうと、体制の中でそれなりの地位と収入を確保して安穏な生活を送ろうとすれば、言動は体制が定めた枠組みの中に留めることは必要だ。その枠組みの中で「左翼キャラ」や「右翼キャラ」を演じていれば波風は立たない。そうした中から「戦争は良くないが、化学兵器を使うのも良くない」というような発言も出てくる。化学兵器話が嘘だと口にしたり書いたりすることは枠組みからはみ出す行為なのだろう。
アメリカやイギリスはロシアがロンドンで化学兵器を使ったと証拠を示すことなく主張している。そのターゲットだとされているのはGRU(ロシア軍の情報機関)の元大佐であるセルゲイ・スクリパリとその娘のユリア。ふたりは3月4日にソールズベリーで倒れているところを発見されたとされている。
セルゲイはスペインに赴任中の1995年にイギリスの情報機関MI6に雇われ、99年に退役するまでイギリスのスパイとして働いていた。そうした事実が退役後に発覚して2004年12月に逮捕され、06年には懲役13年が言い渡されているが、10年7月にスパイ交換で釈放された。それ以来、ソールズベリーで生活している。本名を名乗ってきた。娘のユリアは2014年にロシアへ戻っている。
ユリアは4月9日に退院、当局の「保護下」にあるというが、本人の口からの説明はなく、どういう状況にあるのかは不明。ロシアに住むユリアの従姉妹ビクトリアはふたりを心配してイギリスへ行こうとしたが、ビザが下りなかった。ユリアが自分の意思で身を隠しているのかどうかも不明だ。
イギリス政府はセルゲイとユリアに対して「ノビチョク(初心者)」という有毒物質が使われたと断定したが、元ウズベキスタン駐在イギリス大使のクレイグ・マリーによると、イギリス軍の化学兵器研究機関であるポート・ダウンの科学者は使われた神経ガスがロシアで製造されたものだと特定できなかったと語っている。後にこの情報の正しさが確認されている。
ノビチョクとは1971年から93年にかけてソ連/ロシアで開発されていた神経物質の総称で、ロシアでこの名称が使われることはないと指摘する人もいる。イギリス政府がこの名称を使った理由はロシアとの関係を強調したいからだった可能性が高い。使われた化学物質はA-234という神経物質だとも言われているが、旧ソ連では2017年までにこうした物質や製造設備は処分された。それに対し、スイスの研究所は無力化ガスの3-キヌクリジニルベンジラート(BZ)が使われたと報告している。この分析が正しければ、ユリアの回復を説明しやすい。
※ドナルド・トランプ米大統領は東部時間13日午後9時(日本時間14日午前10時)、ホワイトハウスでテレビ演説を行い、シリア・アサド政権の「化学兵器施設」に対する局所攻撃を命じたと発表した。首都ダマスカス郊外東グータ・ドゥーマに対してシリア政府軍が化学兵器を使用したと疑われている攻撃に対応するもので、英仏軍との合同作戦が「すでに始まっている」と述べた。国防総省によると、ダマスカスのほか、西部ホムス近郊の施設が標的になった。
トランプ大統領はホワイトハウスで会見し、アサド政権の「化学兵器使用能力に関連する標的」への局所攻撃を命じたと述べた。さらに、「シリア政権が禁止されている化学物質の使用をやめるまで、我々はこの対応を持続する用意がある」と強調した。
大統領は、攻撃の目的は「化学兵器の製造・拡散・使用に対して強力な抑止力を確立すること」だと説明。アサド政権が「化学攻撃をエスカレート」させ、ドゥーマに対する化学攻撃で罪のない市民を「大虐殺した」と断定し、それを命じたバッシャール・アル・アサド大統領について、「人間のやることではない。むしろ、化け物による犯罪だ」と強い調子で糾弾した。さらに、「犯罪的」アサド政権を支援するイランとロシアを非難し、アサド政権が化学攻撃を繰り返しているのは、ロシアがそれを容認しているからだと非難した。
トランプ氏は、イランとロシアに対して、「罪のない男性や女性や子供の大量殺人に関わっていたいというのは、いったいどのような国なのか」と問いただした。
大統領発表に続き、ジェイムズ・マティス国防長官とジョセフ・ダンフォード統合参謀本部議長が国防総省で記者会見した。会見でダンフォード議長(海兵隊大将)は、3つの標的を爆撃したと説明した。
◾ダマスカスの科学研究施設(生物化学兵器の製造に関わるとみられる)
◾ホムス西部の化学兵器保管施設
◾ホムス近くの化学兵器材料保管・主要司令拠点
シリア国営テレビは、政府軍は10基以上のミサイルを迎撃したと伝えた。
マティス長官は記者団に、撃墜された報告はないと述べた。大統領は攻撃継続の用意があると表明したが、国防長官は攻撃の第一波は終了したと述べ、「今のところ、これは一度限りの攻撃で、非常に強力なメッセージを相手に伝えたと思っている」と述べた。
シリア国営テレビはさらに、被害を受けたのはダマスカスの研究施設のみだが、ホムスでは民間人3人が負傷したと伝えた。

(上)シリア国内の空軍基地(Airbase)と化学兵器製造拠点と思われる施設(Suspected chemical weapons sites)、空爆地点(Airstrike)
国営シリア・アラブ通信(SANA)は、米英仏の攻撃を「はなはだしい国際法違反」と呼び、「シリアに対する米仏英の侵略は失敗する」と伝えた。
シリア大統領府は空爆から一夜明けた14日午前、午前9時に大統領府に出勤するアサド大統領の様子だという映像をツイートした。スーツ姿でブリーフケースを手にしたアサド大統領が歩いてくる様子を、「ゆるぎない朝」表現している。
シリア政府は一貫して、ドゥーマ攻撃への関与を否定している。
化学兵器禁止機関(OPCW)はドゥーマに調査団を派遣しており、14日にも現地調査を始める予定。
ロシア政府はアナトリー・アントノフ駐米大使を通じて声明を発表。「あらかじめ計画済みのシナリオが実施されている。またしても我々は脅されている。このような行動には代償が伴うと、我々は警告していた。その責任の全ては米政府、英政府、仏政府にある」と表明した。
ダンフォード議長は、米国はロシアの人的被害を「軽減する」標的を意識的に選んだと述べた。一方で国防総省は、空爆対象をロシアに事前通知した事実はないと説明している。
テリーザ・メイ英首相は英軍が参加していることを確認し、「武力行使に代わる実用的な選択肢がなかった」と述べた。一方で首相は、英米仏連合による攻撃は、シリアの「体制変換」を目指したものではないと慎重な姿勢を示した。
英国防省は、ホムス近くの軍事施設を、英トルネード戦闘機4機が空爆したと明らかにした。対象の施設は、化学兵器製造の材料を保管していたと考えられている。
エマニュエル・マクロン仏大統領も、仏軍の作戦参加を認め、「何十人もの男性、女性、子供たちが化学兵器で虐殺された」、「越えてはならない一線を越えてしまった」とアサド政権を批判した。
BBC外報プロデューサーのリアム・ダラティは、「ダマスカスからの映像に、対空ミサイルが発射される様子が映っている」とツイートした。
シリアは、ドゥーマを化学兵器で攻撃した事実はないと否定している。ロシアは、欧米諸国が軍事行動に出れば、戦争が始まるおそれがあると警告していた。
ドゥーマの住民や医療関係者、複数の支援団体は、7日の攻撃の結果、化学兵器の使用が疑われる症状で500人以上が治療施設に運ばれ、数十人が死亡したと主張している。
米軍は昨年4月、シリア北西部イドリブ県に対してサリンとされる化学兵器攻撃があったことを受けて、巡航ミサイル攻撃を実施した。
米政府関係者はロイター通信に対して、今回の空爆ではトマホーク巡航ミサイルがシリア国内の複数の標的に使われていると述べた。同通信はさらに、ダマスカスにいる目撃者が「少なくとも6回の大きな爆発」が聞こえたと話していると伝えた。
シリア国営テレビも、ダマスカスへの爆撃があったと伝えた。国の防空システムが発動しているという。
ロンドンにある民間団体「シリア人権監視団」も、複数の軍事施設のほか、ダマスカスにあるシリア科学研究施設が爆撃されたと話している。
・トランプ米大統領がシリアから軍隊を撤退させると語ると、有力メディアから石油を手放す気かと批判 2018.04.02
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/201804020000/
※ドナルド・トランプ大統領は3月29日、アメリカ軍をシリアから引き揚げるという意思を明らかにした。政府内でも同じ指示を出しているという。昨年(2017年)7月にトランプ大統領はバラク・オバマ政権が始めたCIAの秘密作戦を中止する決断をしたと伝えられたが、周囲からの圧力の中、その考え方は変化しなかったようだ。
オバマ政権はシリアのバシャール・アル・アサド政権を倒すために「穏健派」を支援しているとしていたが、アメリカ軍の情報機関DIA(国防情報局)は2012年8月にホワイトハウスへ出した報告の中で、反シリア政府軍の戦闘員はサラフィ主義者(ワッハーブ派)、ムスリム同胞団、AQIだとしていた。この当時、DIAの局長を務めていたのがマイケル・フリン中将、つまりトランプ大統領が最初に国家安全保障補佐官に選んだ人物だ。
AQIはイラクのアルカイダを意味し、シリアで活動していたアル・ヌスラの実態もAQIだと指摘している。実際、AQIもアル・ヌスラもタグに過ぎず、中身は確かに同じだ。オバマ大統領が主張していた「穏健派」は存在しないということでもある。
DIAの報告はシリアの東部(ハサカやデリゾール)にサラフィ主義者の支配国が作られる可能性があるとも警告しているが、これはダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)という形で現実になった。ダーイッシュもAQIやアル・ヌスラと本質的な違いはない。
DIAが予測していたにもかかわらずダーイッシュの出現を防げなかった責任をフリンは退役後の2015年8月、アル・ジャジーラの番組で問われたが、ダーイッシュの勢力を拡大させた政策を実行すると決めたのはオバマ政権だと反論している。
報告が提出された後もフリン局長はジハード勢力を支援するのは危険だとオバマ政権に警告し続けたが、無視される。そして2014年1月にイラクのファルージャで「イスラム首長国」の建国を宣言、6月にはファルージャやモスルを制圧している。このとき、アメリカ軍はダーイッシュの制圧作戦、示威行進を黙認していた。ファルージャやモスルが制圧された2カ月後にフリンはDIA局長の職を解かれた。
当時の統合参謀本部もDIAと基本的に同じ考え方をしていたのだが、2015年9月25日に統合参謀本部議長はマーチン・デンプシーからジョセフ・ダンフォードに交代になった。同年2月には国防長官も戦争に消極的だったチャック・ヘイゲルから好戦派のアシュトン・カーターへ入れ替えられている。
オバマ政権は自らが売り出したダーイッシュを口実にしてアメリカ軍にシリアを攻撃させる。勿論、シリア政府は軍事介入を承認していない。つまりアメリカによるシリア侵略だ。アメリカ軍の主なターゲットはシリア政府軍やシリアのインフラで、ダーイッシュは打撃は受けていない。アル・カイダ系武装勢力やダーイッシュの支配地域が急速に縮小するのは2015年9月30日、アメリカの統合参謀本部議長が交代になった5日後にシリア政府の要請を受けてロシア軍が介入してからだ。
アル・カイダ系武装集団やダーイッシュが敗走するとアメリカはクルドを新たな手先にするが、これによってトルコとアメリカとの関係が険悪化、アメリカの目論見通りには進んでいない。
新たな武装勢力を編成する動きがあるほか、フランス政府が軍隊をシリアへ派遣するという情報が流れている。言うまでもなく、これも侵略だ。3月29日にはクルド系のDFS(シリア民主軍)の代表がフランスのエマニュエル・マクロン大統領と会談したという。アメリカ政府内でネオコンの力が衰える中、ロスチャイルドと近い関係にあるマクロンが前面に出てきた。
アメリカ、イスラエル、サウジアラビアの三国同盟、イギリスとフランスのサイクス-ピコ協定コンビ、オスマン帝国の復活を夢見るトルコ、天然ガスのパイプライン建設を拒否されたカタールなどが始めたシリア侵略だが、トルコやカタールは離脱済み。アメリカが軍隊を撤退させるなら、イギリスやフランスが出てこざるをえないのだろう。
シリアを侵略する理由はいくつかある。イスラエルの現政権の大イスラエル構想、さらにユーラシア大陸の周辺からロシアや中国を締め上げ、最終的には支配するという長期的な戦略もある。
シリアとイランを制圧して中東を完全な支配下に置いてエネルギーを支配するという計画、石油支配はドルを基軸通貨とする支配システムの防衛にもつながる。ワシントン・ポスト紙にシリア侵略の目的は石油支配にあり、アメリカ軍の撤退は支配権をイランへ渡すことだとトランプ大統領を批判する記事が掲載されたが、本音だろう。
・化学兵器の使用を口実にして熱戦に突入するのか、神経薬物による攻撃を口実にして冷戦に入るのか? 2018.03.21
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/201803200000/
※生物化学兵器の使用がアメリカ軍の直接的な軍事介入のレッドラインだとバラク・オバマが大統領として発言したのは2012年8月のことだった。シリア政府軍と戦っている戦闘集団の中心はサラフィ主義者、ムスリム同胞団、そしてアル・カイダ系武装集団のAQI(アル・ヌスラ)だとDIAがホワイトハウスへ報告したのと同じ月だ。
2001年9月11日以来、アメリカ政府は「アル・カイダ」をテロリストの象徴として描き、そのテロリストを殲滅するという口実で他国を侵略している。ところがシリアでは、そのテロリストを守るためにアメリカはシリアへ軍事介入するというわけだ。
シリアより1カ月早い2011年2月に侵略戦争が始まったリビアでは、その年の10月にNATOとアル・カイダ系武装集団のLIFGの連合軍がムアンマル・アル・カダフィの体制を破壊、カダフィ自身を惨殺している。その直後から戦闘員と武器/兵器を侵略勢力はシリアへ集中させ、リビアと同じようにバシャール・アル・アサド政権をオバマ政権は倒そうとしたわけだ。その口実が生物化学兵器。
2012年5月にホムスで住民が虐殺されると西側はシリア政府に責任があると宣伝するが、すぐに嘘だと発覚する。例えば、現地を調査した東方カトリックの修道院長は反政府軍のサラフ主義者や外国人傭兵が実行したと報告、「もし、全ての人が真実を語るならば、シリアに平和をもたらすことができる。1年にわたる戦闘の後、西側メディアの押しつける偽情報が描く情景は地上の真実と全く違っている。」と語っている。
政府軍による住民虐殺という筋書きで軍事介入を正当化しようとしてアメリカは失敗、化学兵器の話に切り替えたわけだ。イラクを先制攻撃する前の大量破壊兵器話と同じだ。
2012年12月になるとヒラリー・クリントン国務長官はアサド大統領が化学兵器を使う可能性があると発言、13年1月29日付けのデイリー・メール紙は、シリアで化学兵器を使ってアサド政権に責任をなすりつけて軍事行動へ向かうという作戦をオバマ大統領は許可したと伝えている。(すぐに記事はサイトから削除された。)
実際、2013年3月19日にアレッポの近くで化学兵器が使われるが、その5日後にイスラエルのハーレツ紙は化学兵器を使ったのは政府軍ではなく反政府軍だった可能性が高いと報道、5月になると攻撃を調べていた国連の独立調査委員会のメンバー、カーラ・デル・ポンテも政府軍でなく反政府軍が使用した可能性が高いと発言する。
8月21日にはダマスカスに近いグータで再び化学兵器が使用され、アメリカをはじめとする西側の政府や有力メディアはシリア政府に責任をなすりつける宣伝を展開、23日にアメリカのネットワーク局CBSのチャーリー・ケイは、アメリカ海軍の司令官はシリアを巡航ミサイルで攻撃するため、艦船に対してシリアへ近づくように命じたとツイッターに書き込んだ。
8月29日にはサウジアラビアが化学兵器を反政府軍に提供したと報道されているのだが、9月3日に地中海からシリアへ向かって2発のミサイルが発射されるが、途中、海中へ墜落してしまった。その直後にイスラエル国防省はアメリカと合同でミサイル発射実験を実施したと発表したが、事前に周辺国(少なくともロシア)へ通告はなく、シリアに向かって発射された可能性が高い。何らかの電子戦用兵器が使われたと推測する人もいる。
早い段階からロシアは侵略軍が化学兵器を使ったと主張していたが、調査ジャーナリストのシーモア・ハーシュの記事、あるいは国連の元兵器査察官のリチャード・ロイドとマサチューセッツ工科大学のセオドール・ポストル教授の分析でもシリア政府軍が化学兵器を使ったという主張は否定されている。そのほかにも同じ趣旨の報告が相次いだ。こうした展開をアメリカ側は予想、そうした反論が出てくる前に攻撃したのだろうが、失敗したということだろう。
アメリカは別のストーリーを考える余裕がないのか、その後も同じシナリオで直接的な軍事介入を目論んできた。そして今年3月1日、ウラジミル・プーチン大統領はロシアやロシアの友好国が国の存続を揺るがすような攻撃を受けた場合、ロシア軍は攻撃してきた拠点を含めて反撃すると宣言する。地中海に配備されたアメリカの艦船からミサイルが発射されたなら、その艦船を撃沈するということだと理解されている。
プーチン演説の3日後、イギリスで神経薬物の騒動が引き起こされた。元GRU(ロシア軍の情報機関)大佐のセルゲイ・スクリパリとその娘のユリアがイギリスのソールズベリーで倒れているところを発見され、神経薬物(サリン、またはVXだとされている)が原因だとされている。テレサ・メイ英首相はロシア政府が実行したかのように発言しているが、証拠は示されていない。
イギリス政府がロシアとの関係を悪化させようとしていることは明白であり、EUを巻き込もうともしている。イギリスの化学戦部隊はロシアがそうした薬物を使った証拠を見つけていない。イギリス政府は担当者に圧力をかけて証拠を捏造させるか、何も示さずに「我々を信じろ」と言い続けるしかない。ロシア側は証拠を示すか、謝罪しろと要求している。
・偽旗作戦を実行する前に武装勢力は化学兵器を政府軍に押さえられたが、米海軍は戦争体制 2018.03.22
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/201803220000/
※シリアの首都ダマスカスの郊外に位置する東グータを政府軍が制圧しつつある。その東ゴータで「穏健派」の、つまりアメリカが手先として使っている武装勢力が3月21日に買い物客で賑わうマーケットをミサイルで攻撃、20名以上とも35名以上とも言われる人々が死亡したと伝えられている。
制圧作戦の過程で政府軍は武装勢力が化学兵器を製造していた作業場を発見、内部の映像が公表された。シリア側の説明によると、装置はサウジアラビアから持ち込まれ、薬品や防護服は西側から持ち込まれたという。武装勢力が逃げる際に放置していった有害物質は40トン以上になるとロシア国防省は語っている。
バラク・オバマが大統領だった当時からアメリカは化学兵器の使用を口実としてアメリカ/NATO軍が直接軍事介入してバシャール・アル・アサド政権を倒そうとしてきた。今年2月上旬にアメリカ国務省のヘザー・ナウアート報道官はシリア政府軍が化学兵器を使用したと根拠を示さず一方的に主張している。
それに対し、アメリカ国防省のダナ・ホワイト報道官はそうしたことを示す証拠を見たことがないと発言、ジェームズ・マティス国防長官は化学兵器を政府軍が使ったとするNGOや武装勢力の主張を裏付ける証拠は確認していないとしていた。化学兵器の使用を口実にした直接的な軍事介入の目論みを主導しているのはCIA/国務省だと言えるだろう。
ロシア参謀本部は3月17日、アメリカ海軍が艦隊を紅海、地中海、そしてペルシャ湾に配置、シリア攻撃の準備を整えたと警告している。また同じ3月17日にセルゲイ・ラブロフ露外相は、アメリカ、イギリス、フランスを含む国々の特殊部隊がシリア国内へ侵入、すでに「代理戦争」の段階ではなくなっていると語った。アメリカなどはこうした主張を否定したようだが、2011年3月にシリアへの侵略が始まった直後から西側諸国は特殊部隊を潜入させていると言われている。
言うまでもなく、こうした動きをロシア側は前から察知していたはずで、だからこそウラジミル・プーチン露大統領は今年3月1日、アメリカとその同盟国がロシアやその友好国に対して存亡の機を招くような攻撃を受けたなら反撃するとロシア連邦議会で演説したのだ。ウクライナの東部やクリミア、シリア、イランなど攻撃すればロシア軍との戦争になるという警告だ。
・シリア侵略の手先である武装勢力を支援するため、化学兵器話を再三再四使う侵略勢力 2018.04.09
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/201804080000/
※シリア侵略部隊がダマスカス攻撃の拠点にしてきた東グータの大半を政府軍が制圧、武装解除された戦闘員の脱出も進む中、ドゥーマで政府軍が化学兵器で住民70名以上を殺したと宣伝されている。その情報源はサウジアラビアを後ろ盾とし、アル・カイダ系のアル・ヌスラと連携しているジャイシュ・アル・イスラム、そしてアル・カイダ系武装集団と一心同体の白いヘルメット。つまり、アル・カイダ系武装集団の主張に基づく宣伝だ。
ロシア政府は反シリア政府軍が化学兵器を使おうとしていると再三警告、東グータでは化学兵器の製造場所がいくつか発見されている。今回の攻撃も西側は政府軍が化学兵器を使ったことを示す証拠を明らかにしていない。自分たちの主張を信用させようという熱意すら失ったように見える。
2003年3月に実行したイラクへの先制攻撃では事前に大量破壊兵器という嘘を広めていたが、シリアでは化学兵器。
政府による住民虐殺という主張が現地調査で否定され、偽情報の発信源も露見した後の2012年8月、アメリカ大統領だったバラク・オバマはNATO軍/アメリカ軍による直接的な軍事介入の「レッド・ライン」は生物化学兵器の使用だと宣言している。
オバマが宣言した月にアメリカ軍の情報機関DIAはホワイトハウスにシリア情勢に関する報告書を提出、その中で反シリア政府軍の戦闘員はサラフィ主義者(ワッハーブ派)やムスリム同胞団、あるいはAQI(イラクのアル・カイダ)が中心だとしている。アル・カイダ系武装集団の中心はサラフィ主義者やムスリム同胞団だ。
その当時、シリアではアル・ヌスラという武装勢力の名前が流れていたが、その実態はAQIと同じだとDIAは指摘している。バラク・オバマ大統領はそうした勢力を支援していた。そこでシリアの東部(ハサカやデリゾール)にサラフィ主義者の支配国が作られる可能性があるとDIAは報告書の中で警告、これはダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)という形で現実になった。
シリアで侵略戦争が始まる1カ月前、2011年2月にリビアが侵略されている。その黒幕はシリアと基本的に同じで、アメリカ、イスラエル、サウジアラビアの三国同盟、イギリスとフランスのサイクス-ピコ協定コンビ、カタールなど。リビアのムアンマル・アル・カダフィ体制はその年の10月の崩壊、カダフィ自身も惨殺された。
その段階でNATO軍とアル・カイダ系武装集団のLIFGとの連携が明確になっている。リビアを破壊した侵略勢力は戦闘員や兵器/武器をシリアへ運ぶが、その際に化学兵器もリビアから持ち出したと言われている。
2012年12月になると、自暴自棄になったシリアのバシャール・アル・アサド大統領が化学兵器を使う可能性があると国務長官だったヒラリー・クリントンが主張する。そして翌年の1月、アメリカのオバマ政権はシリアでの化学兵器の使用を許可し、その責任をシリア政府へ押しつけてアサド体制を転覆させようとしているとイギリスのデイリー・メール紙が報道した。
そして2013年3月、ダーイッシュがラッカを制圧した頃にアレッポで化学兵器が使われ、西側はその責任をシリア政府に押しつけて非難した。ところがこの化学兵器話に対する疑問はすぐに噴出し、5月には国連の調査官だったカーラ・デル・ポンテが化学兵器を使用したのは反政府軍だと語っている。
この年には8月にも化学兵器が使用され、アメリカは9月上旬に攻撃すると見られていたが、地中海から発射されたミサイルが海中に墜落、軍事侵攻はなかった。その件も、シリア政府が化学兵器を使用したことを否定する報道、分析が相次いだ。
早い段階でロシア政府は国連で証拠を示しながらアメリカ側の主張が正しくないことを説明しているが、8月29日にミントプレスはサウジアラビアが化学兵器使用の黒幕だとする記事を掲載した。記者に圧力がかかって執筆を否定する談話を発表するが、編集長が反論、記者との遣り取りは記録されているとしている。記者からの再反論はなかった。
10月に入ると「ロシア外交筋」からの情報として、グータで化学兵器を使ったのはサウジアラビアがヨルダン経由で送り込んだ秘密工作チームだという話が流れた。
12月には調査ジャーナリストのシーモア・ハーシュもこの問題に関する記事を発表、反政府軍はサリンの製造能力を持ち、実際に使った可能性があるとしている。国連の元兵器査察官のリチャード・ロイドとマサチューセッツ工科大学のセオドール・ポストル教授も化学兵器をシリア政府軍が発射したとするアメリカ政府の主張を否定する報告書を公表している。ミサイルの性能を考えると、科学的に成り立たないという。
このほか、トルコの国会議員エレン・エルデムらは捜査記録などに基づき、化学兵器の材料になる物質はトルコからシリアへ運び込まれ、そこでダーイッシュが調合して使ったと主張している。この事実を公表した後、エルデム議員らは起訴の脅しをかけられた。
西側の政府や有力メディアが流した化学兵器話は崩壊したのだが、その後も似たような話が繰り返し宣伝されてきた。
2017年4月4日にも化学兵器の使用が宣伝された。マイク・ポンペオCIA長官は7月11日、INSA(情報国家安全保障連合)の夕食会でその出来事について語った。それによると、ドナルド・トランプ大統領から4月4日の攻撃について6日に質問され、シリアの体制側が化学兵器を使ったというCIAの結論を伝えたとしている。
その報告に基づいてトランプは攻撃を決断、6日の夜にアメリカ海軍の駆逐艦、ポーターとロスから巡航ミサイル(トマホーク)59機をシリアのシャイラット空軍基地に向けて発射している。そのうち目標に到達したのは23発で、5発は地上に落下、残りは地中海へ落ちたのではないかとみられている。
しかし、ジャーナリストのロバート・パリーによると、4月6日の早朝、トランプ大統領はポンペオCIA長官から私的に化学兵器の使用を否定する説明を受けていたとする内部からの情報があるという。
また、6月25日には、ジャーナリストのシーモア・ハーシュが同じ内容の記事をドイツのメディアに書いている。ハーシュによると、4月4日に聖戦主義者の幹部が会議を開くという情報をつかんだロシアとシリアは攻撃計画を立て、その内容をアメリカ側へ伝えたとしている。CIAにも直接、ロシアから攻撃に関する情報が伝えられていた。攻撃の前からアメリカ側はロシアから情報を知らされていたことになる。
その記事が出る3日前、6月22日にはフランスのエマニュエル・マクロン大統領がシリア政府による化学兵器の使用は根拠がないと話している。
アメリカには、ロシアと全面戦争になってもシリアを破壊したいと考えている勢力が存在、大統領も逆らえない力を持っているように見える。
・理屈に合わないシリアの化学兵器話が宣伝される中、疑問を投げかけたFOXニュースのキャスター 2018.04.11
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/201804100001/
※ドナルド・トランプ米大統領がシリアから軍隊を撤退させると表明した直後、そのシリアで化学兵器が使用されたという話が流された。シリア政府による化学兵器使用の話はその撤退計画を御破算にした。
奇妙な話だが、そもそも東グータをほぼ制圧した政府軍が化学兵器を使う理由がない。これだけでも化学兵器話が胡散臭いことは明白だが、アメリカをはじめ西側の有力メディアは奇妙な化学兵器話を受け入れている。
非論理的な化学兵器話の発信源はアル・カイダ系武装集団と一心同体の白いヘルメットとアル・カイダ系武装集団と連携しているジャイシュ・アル・イスラムだ。ジャイシュ・アル・イスラムもアル・カイダ系武装集団やそこから派生したダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)と同じように残虐だ。こうした集団の情報を否定する赤新月社(イスラム諸国における赤十字)の証言を西側の有力メディアは無視する。
・東グータを政府軍は制圧、侵略勢力はWHOというタグを使って軍事介入を狙う 2018.04.13
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/201804120000/
※シリアに侵略戦争を仕掛けた勢力は手先のジハード傭兵部隊が敗走、この勢力が支配していた東グータは政府軍によって解放されたことで焦っている。シリアでの戦闘はリビアのムアンマル・アル・カダフィ体制が破壊されて傭兵と武器/兵器がシリアへ移動してから激しくなった。その頃から東グータはアル・カイダ系武装集団が支配している。この集団は2013年からジャイシュ・アル・イスラム(イスラム軍)というタグをつけた。
ロビン・クック元英外相が指摘しているように「アル・カイダ」とはCIAから軍事訓練を受けた「ムジャヒディン」のコンピュータ・ファイル。アル・カイダはアラビア語で「ベース」を意味し、「データベース」の訳語としても使われている。クックはこの指摘をした翌月、保養先のスコットランドで心臓発作に襲われ、59歳で死亡した。
登録されているムジャヒディンの多くはサラフィ主義者(ワッハーブ派、タクフィール主義者)やムスリム同胞団で、リビアやシリアへの侵略戦争に参加した部隊の中心もこうした人々で、ジハードなる看板を掲げているものの、実態は傭兵。1970年代から80年代にアフガニスタンでの工作に参加していた当時の雇い主はサウジアラビアだったが、シリアではいくつかの系統がある。
シリアの侵略戦争を仕掛けたのはアメリカ、イスラエル、サウジアラビアの三国同盟、イギリスとフランスのサイクス-ピコ協定コンビ、オスマン帝国の復活を夢想したトルコ、天然ガスのパイプライン建設をシリアに拒否されたカタールなど。シリアでの戦闘が長引き、侵略側に不利な戦況になるとトルコやカタールは離脱、傭兵も分裂を始めた。
掃討作戦を展開中のシリア政府軍は傭兵の化学兵器の製造工場を発見する一方、アメリカが軍事介入の口実として掲げているような化学兵器の攻撃を示す痕跡はないと報告されている。現地で活動してきた赤新月社(イスラム世界における赤十字)も同じ見解だ。政府軍の進撃は侵略勢力が予想したより早く、化学兵器を使った偽旗作戦を実行する余裕がなく、侵略勢力にとって都合の悪い証拠を残してしまったのではないかと推測する人もいる。
東グータから武装集団はダマスカスを砲撃、そのターゲットにはロシア大使館も含まれていた。そうした行為をいつまでも放置することはないとウラジミル・プーチン露大統領は警告し、今年(2018年)2月25日から始まった東ゴータの武装集団に対する攻撃にはロシア軍の地上部隊が同行したとも伝えられている。重要な拠点に政府軍が迫るとアメリカ軍に攻撃されていたが、今回はそうしたことがなかった。ロシア軍を直接攻撃できなかったという見方がある。
東グータはCIAの影響力が強かったが、ジャイシュ・アル・イスラムを指揮していたのはイギリスの特殊部隊SASやフランスの情報機関DGSEのメンバーで、MSF(国境なき医師団)が隠れ蓑として使われてきたとも報告されている。
今回、WHOは化学兵器の使用で多くの犠牲者が出ているとする声明を出したが、情報源が怪しい。WHOがパートナーと呼ぶ団体の中にはMSFが含まれているのだが、このMSFはアル・カイダ系武装勢力と一心同体の関係にある「白いヘルメット」を訓練している。西側は「白いヘルメット」を善玉として売り出しているが、その主張は事実に反している。東グータが解放された後、こうしたグループの宣伝用映像の撮影現場も見つかっている。
MSFは1971年12月に設立されたが、創設者のひとりであるベルナー・クシュネは2011年3月にリビアへの内政干渉を肯定する意見をガーディアン紙に寄稿した人物。リビアへの軍事侵略はその前月に始まった。シリアでもMSFは軍事侵略を支援する偽情報を発信した。
WHOは東グータの情報を「パートナー」から得ているが、そのパートナーは白いヘルメットを情報源にしている。つまり、WHOの話は白いヘルメットの偽情報にWHOというタグをつけただけだ。
・OPCWのチームが調査を始める直前、米英仏はシリアをミサイル攻撃 2018.04.14
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/201804140000/
※アメリカ、イギリス、フランスの3カ国はシリアを4月14日早朝に攻撃した。
これらの国々は2011年3月からシリアを侵略、バシャール・アル・アサド政権の打倒を目指してきたが、送り込んだジハード傭兵は敗走、新たな手先にしたクルドとの関係も微妙で、リビアと同じように直接的な軍事侵攻を目論んできた。
今回の攻撃は「化学兵器の使用」だが、そうした事実はなかった可能性が高い。過去、何度か同じ主張をしているが、いずれも嘘だったことが判明している。今回、米英仏の主張が正しいかどうかを検証するため、OPCW(化学兵器禁止機関)のチームがダマスカスへ入ったところだった。
この機関をアメリカは完全にコントロールできていないようで、調査が行われればアメリカ側の嘘が明らかになったと見られている。ロシア政府は化学兵器を使った偽旗作戦にイギリスの情報機関が関与していると主張していた。攻撃には証拠隠滅の狙いもあるだろう。
イスラエルやサウジアラビアからの圧力もあり、アメリカの国務省やCIAは戦争を始めたがっていた。こうした勢力が国防総省を押し切った形だ。
アメリカ軍は好戦派をなだめるために攻撃してみせただけだという見方もあるが
、今回、ロシアが自重すれば米英仏は増長して好戦的な政策をさらに進め、ロシアが反撃すれば大規模な戦争に発展する可能性がある。偽情報を掲げながらイラクを先制攻撃した際、統合参謀本部の抵抗で開戦が1年ほど延びたと言われている。アメリカで最も好戦的な勢力は「肘掛け椅子」に腰掛けながら机上で戦争を妄想している「文民」だ。
・米英仏がシリア攻撃に使ったミサイルの7割をシリア軍が撃墜したと露国防省 2018.04.15
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/201804140001/
※OPCW(化学兵器禁止機関)のチームが東グータへ入る直前、4月14日未明にアメリカ、イギリス、フランスの3カ国はシリアを巡航ミサイルで攻撃した。このチームが東グータへ入ることを拒否されたとアメリカ政府は弁明しているが、ロシア政府はそれを否定している。OPCWの調査を求めていたのはシリアやロシアであり、チームが現地へ入ることを拒否されたとする情報はない。
アメリカ国防総省の発表によると、攻撃のターゲットはバルザー化学兵器研究開発センター(76機)、ヒム・シンシャー化学兵器貯蔵施設(22機)、ヒム・シンシャー化学兵器(7機)。ミサイルは合計105機で、すべてが命中したとしている。
しかし、シリアの化学兵器はOPCWが立ち会って廃棄済み。シリア側の説明によると、破壊されたのは抗癌剤の製造工場だという。
ロシア国防省によると、攻撃されたのはダマスカス国際空港(4機。全て撃墜)、アル・ドゥマイル軍用空港(12機。全て撃墜)、バリー軍用空港(18機。全て撃墜)、サヤラト軍用空港(12機。全て撃墜)、メゼー軍用空港(9機。うち5機を撃墜)、ホムス軍用空港(16機。うち13機を撃墜)、バザーやジャラマニの地域(30機。うち7機を撃墜)。そのほかターゲット不明の2機があるようだ。
軍事施設には短距離防空システムのパーンツィリ-S1が配備されていると言われ、その能力はすでに確認済みだが、バシャール・アル・アサド大統領はソ連によって1970年代に製造された防衛システムを賞賛している。
化学兵器の使用を口実にしてシリアをアメリカ軍が直接攻撃するというプランが表面化したのは2012年8月のこと。バラク・オバマ大統領はNATO軍/アメリカ軍による直接的な軍事介入の「レッド・ライン」は生物化学兵器の使用だと宣言したのだ。
同じ月に、アメリカ軍の情報機関DIAはシリア情勢に関する報告書をホワイトハウスに提出、その中でバラク・オバマ政権に対して反シリア政府軍の主力はサラフィ主義者、ムスリム同胞団、そしてアル・カイダ系武装集団だと指摘、バラク・オバマ政権が宣伝していた「穏健派」は存在しないと書いている。
さらに、東部シリア(ハサカやデリゾール)にサラフィ主義者の支配国が作られる可能性があるともDIAは警告していた。つまり、ダーイッシュの出現を見通していたのだ。この報告書が作成された当時のDIA局長がマイケル・フリン中将。ドナルド・トランプ政権の最初の国家安全保障補佐官だ。
この年の12月になると、自暴自棄になったシリアのバシャール・アル・アサド大統領が化学兵器を使う可能性があると国務長官だったヒラリー・クリントンは主張する。翌年の1月には、アメリカ政府がシリアでの化学兵器の使用を許可、その責任をシリア政府へ押しつけてアサド体制を転覆させるというプランの存在をイギリスのデイリー・メール紙が伝えている。
そして2013年3月、ダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)がラッカを制圧した頃にアレッポで化学兵器が使われ、西側はシリア政府を非難したが、この化学兵器話に対する疑問はすぐに噴出する。
例えば、イスラエルのハーレツ紙は攻撃されたのがシリア政府軍の検問所だと指摘、死亡したのはシリア軍の兵士だということから反政府軍が使ったと推測している。5月には国連独立調査委員会メンバー国連の調査官だったカーラ・デル・ポンテが化学兵器を使用したのは反政府軍だと語っている。
この年には8月にも化学兵器が使用され、アメリカは9月上旬に攻撃すると見られていたが、地中海から発射されたミサイルが海中に墜落、軍事侵攻はなかった。その件も、シリア政府が化学兵器を使用したことを否定する報道、分析が相次いだ。
昨年(2017年)4月にも化学兵器話が持ち上がった。4日に政府軍が化学兵器を使ったというのだが、コントラの麻薬取引を明るみに出したことで有名なジャーナリストのロバート・パリーによると、4月6日にマイク・ポンペオCIA長官は分析部門の評価に基づき、致死性の毒ガスが環境中に放出された事件にバシャール・アル・アサド大統領は責任がなさそうだとトランプ大統領に説明していたと彼の情報源は語ったという。6月25日にはソンミ事件を明らかにしたことで有名なジャーナリストのシーモア・ハーシュもパリーと同じ内容の話を記事にしている。
そして今回の化学兵器話とアメリカ、イギリス、フランスによるシリア攻撃。これはオバマ政権の時代に作られた軍事侵略のシナリオであり、イスラエルやサウジアラビアから実行を強く求められていた。
・アル・カイダ系武装集団の幹部は攻撃が不十分だと失望を表明、米の好戦派も納得していないだろう 2018.04.16
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/201804160000/
※シリアに対する4月14日のミサイル攻撃では艦船のほかB-1B爆撃機、F-15戦闘機、F-16戦闘機、トルネード戦闘機が使われ、迎撃したのはシリア軍のS-125とS-200で、ロシア軍は動いていないようだ。アメリカ側はすべて命中したと発表しているが、ロシア国防省によると103機のうち71機をシリア政府軍が撃ち落としたという。
今年2月に領空を侵犯したイスラエル軍のF-16をシリア軍は撃墜、4月9日にはイスラエル軍のF-15戦闘機がレバノン上空からシリアのT4空軍基地に向かってミサイル8機を発射、そのうち5機が撃墜されている。これからロシアがどう反応するか不明だが、今回程度の攻撃ならシリア軍だけで対応できることを示したとは言える。
今回の攻撃に対し、アル・カイダ系武装集団ジャイシュ・アル・イスラムの幹部、モハマド・アルーシュは失望したと表明している。バシャール・アル・アサド政権を倒さなかったことが不満らしいが、そうした攻撃を実行すれば確実にロシア軍が攻撃に参加した艦船や航空機を破壊、全面戦争へ突入する可能性が高く、そうした展開を望んでいるということになる。
このジャイシュ・アル・イスラムはCIAの影響下にあり、同じアル・カイダ系のアル・ヌスラと連携(タグの違い)、イギリスの特殊部隊SASやフランスの情報機関DGSEのメンバーが指揮していると報告されている。MSF(国境なき医師団)が隠れ蓑として使われてきたともいう。
シリア政府軍が化学兵器を使用したと主張しているのはこのジェイシュ・アル・イスラムと白いヘルメット。この白いヘルメットがアル・カイダ系武装集団と一心同体の関係にある。WHOの情報源も同じだ。
赤新月社や2012年のはじめにシリアの住民虐殺現場を調査したカトリックの司教たちの証言を無視、侵略部隊に組み込まれている白いヘルメットを賞賛してきたのが西側の有力メディアやハリウッド。騙されているわけではないだろう。ボスが同じなのだ。
・ドゥーマを取材した英有力紙の特派員は毒ガスでなく粉塵による呼吸困難で患者は運び込まれたと報告 2018.04.18
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/201804170001/
※ドゥーマで政府軍が化学兵器を使ったと主張している人々にとって不都合は記事がイギリスのインディペンデント紙に掲載された。同紙のロバート・フィスク特派員が攻撃があったとされる地域へ入って医師らを取材、患者は毒ガスではなく粉塵による呼吸困難が原因で担ぎ込まれたという説明を受けている。毒ガス攻撃があったことを示す痕跡はないという。
そうした患者を治療している最中、「白いヘルメット」のメンバーが「ガスだ」と叫んだことからパニックが始まったというが、ドゥーマで政府軍が化学兵器を使って住民70名以上を殺したと宣伝しているのはその「白いヘルメット」とアル・カイダ系武装集団のジャイシュ・アル・イスラム。「白いヘルメット」はアル・カイダ系武装集団と一心同体の関係にある。
ジャイシュ・アル・イスラムはCIAの影響下にあり、同じアル・カイダ系のアル・ヌスラと連携(タグの違い)、イギリスの特殊部隊SASやフランスの情報機関DGSEのメンバーが指揮していると報告されている。MSF(国境なき医師団)が隠れ蓑として使われてきたとも言われている。
カネと人を抱えている西側の有力メディアに実態を調べる能力があることはフィスクの取材でも明らか。つまり、ほかの西側メディアは取材せずアル・カイダ系集団の宣伝をそのまま垂れ流してきたわけだ。西側の政府も同じこと。ドゥーマで化学兵器が使われたという話が嘘だということは西側の政府も有力メディアも知っていたのだろう。
メディアであろうと学者であろうと、体制の中でそれなりの地位と収入を確保して安穏な生活を送ろうとすれば、言動は体制が定めた枠組みの中に留めることは必要だ。その枠組みの中で「左翼キャラ」や「右翼キャラ」を演じていれば波風は立たない。そうした中から「戦争は良くないが、化学兵器を使うのも良くない」というような発言も出てくる。化学兵器話が嘘だと口にしたり書いたりすることは枠組みからはみ出す行為なのだろう。
アメリカやイギリスはロシアがロンドンで化学兵器を使ったと証拠を示すことなく主張している。そのターゲットだとされているのはGRU(ロシア軍の情報機関)の元大佐であるセルゲイ・スクリパリとその娘のユリア。ふたりは3月4日にソールズベリーで倒れているところを発見されたとされている。
セルゲイはスペインに赴任中の1995年にイギリスの情報機関MI6に雇われ、99年に退役するまでイギリスのスパイとして働いていた。そうした事実が退役後に発覚して2004年12月に逮捕され、06年には懲役13年が言い渡されているが、10年7月にスパイ交換で釈放された。それ以来、ソールズベリーで生活している。本名を名乗ってきた。娘のユリアは2014年にロシアへ戻っている。
ユリアは4月9日に退院、当局の「保護下」にあるというが、本人の口からの説明はなく、どういう状況にあるのかは不明。ロシアに住むユリアの従姉妹ビクトリアはふたりを心配してイギリスへ行こうとしたが、ビザが下りなかった。ユリアが自分の意思で身を隠しているのかどうかも不明だ。
イギリス政府はセルゲイとユリアに対して「ノビチョク(初心者)」という有毒物質が使われたと断定したが、元ウズベキスタン駐在イギリス大使のクレイグ・マリーによると、イギリス軍の化学兵器研究機関であるポート・ダウンの科学者は使われた神経ガスがロシアで製造されたものだと特定できなかったと語っている。後にこの情報の正しさが確認されている。
ノビチョクとは1971年から93年にかけてソ連/ロシアで開発されていた神経物質の総称で、ロシアでこの名称が使われることはないと指摘する人もいる。イギリス政府がこの名称を使った理由はロシアとの関係を強調したいからだった可能性が高い。使われた化学物質はA-234という神経物質だとも言われているが、旧ソ連では2017年までにこうした物質や製造設備は処分された。それに対し、スイスの研究所は無力化ガスの3-キヌクリジニルベンジラート(BZ)が使われたと報告している。この分析が正しければ、ユリアの回復を説明しやすい。