公文書書き換え問題1.5 | 低脳劣等民族日本人に告ぐ 2
    ・大阪地検、籠池氏への告発状受理 小学校建設で金額違う3契約書(東京新聞web 2017年3月30日)
     
    ※大阪市の学校法人「森友学園」が大阪府豊中市の旧国有地で計画していた小学校の建設で、金額の異なる工事請負契約書を国や大阪府などに提出していた問題を巡り、学園の籠池泰典氏が国の補助金を不正に受給したとする補助金適正化法違反容疑の告発状を、大阪地検特捜部が受理したことが二十九日、捜査関係者への取材で分かった。

     

    特捜部は、学園側から関連資料の提出を求めるほか、籠池氏からも契約書の作成過程を聴くなどして、捜査を本格化させるとみられる。

     

    学園は国土交通省に対し、校舎建築費の補助金申請のため、請負代金を約二十三億八千四百万円とする契約書を提出。約五千六百万円の補助金を受給していたが、二十九日までに全額返還した。

     

    一方、大阪府には学校設置の認可申請に際し、財務状況を説明するための資料として約七億五千万円と記載された契約書を提出。関西エアポートへの防音対策などの助成金申請では約十五億五千万円とする契約書を出した。契約書の日付は三つとも二〇一五年十二月の同じ日だった。

     

    施工業者は、関西エアポート提出分が正しい契約書と主張。籠池氏は十日の記者会見では三通とも正しいと説明したが、二十三日の国会での証人喚問では「刑事訴追の可能性があるので答弁を差し控える」と繰り返し、証言を拒否していた。

     

    大阪府は、学園側が財務状況を良く見せかける目的で、建築費を過少申告した疑いもあるとして、私文書偽造容疑などでの刑事告発を検討している。松井一郎府知事は二十九日夜、特捜部が告発状を受理したことに関し、大阪地検から協力要請があった場合「言われればする」と記者団に語った。

     

    ・籠池氏「告発」をめぐる“二つの重大な謎”(

     

    https://nobuogohara.com/2017/03/30/%E7%B1%A0%E6%B1%A0%E6%B0%8F%E3%80%8C%E5%91%8A%E7%99%BA%E3%80%8D%E3%82%92%E3%82%81%E3%81%90%E3%82%8B%E4%BA%8C%E3%81%A4%E3%81%AE%E9%87%8D%E5%A4%A7%E3%81%AA%E8%AC%8E/

     

    ※3月23日の衆参両院予算委員会の証人喚問での証言が社会的注目を集め、「時の人」となっている籠池泰典氏をめぐって、3月29日から30日にかけて、二つの「告発をめぐる動き」があった。いずれも、不可解極まりないもので、凡そ理解できないものだ。このような告発をめぐる不可解な動きが行われる背景に、一体何があるのだろうか。

     

    一つは、3月28日に、「籠池氏偽証告発」に向けての調査結果が公表されたことだ。

     

    同日夜、自民党の西村康稔総裁特別補佐が、西田昌司参議院議員、葉梨康弘衆議院議員とともに、党本部で緊急の記者会見を行い、衆参両院で証人喚問を受けた森友学園の籠池泰典氏による複数の発言に虚偽の疑いが濃厚だとして「国政調査権の発動も必要だ。精査を進めたい」と述べ、その上で、議院証言法に基づく偽証罪での告発について「偽証が確定すれば考えたい」などと述べた。

     

    そしてもう一つは、翌日29日の夕刻になって、大阪地検が、籠池氏に対する補助金適正化法違反での告発を受理したことだ。NHKは、次のように報じている。

    大阪の学校法人「森友学園」が小学校の建設をめぐって金額が異なる契約書を提出し、国から補助金を受けていた問題で、大阪地検特捜部は29日、籠池理事長に対する告発状を受理し、今後、補助金の受給が適正だったかどうか捜査を進める

     

    今回の告発受理公表の特異性

     

    まず、二つ目の「補助金適正化法違反の告発受理」であるが、刑事訴訟法上、告発というのは、何人も行うことができる。告発人の一方的なアクションである。告発が行われたからと言って、その事件が起訴されるか、ましてや、告発事実が真実なのか、犯罪に当たるのか全く不明なので、告発やその受理が、当局の側から積極的に公表されることはほとんどない。告発人が、自らのリスクで公表し、マスコミがそれを報じることがあるだけだ。

     

    ところが、今回の「籠池氏告発受理」の報道は、明らかに検察サイドの情報によって行われている。マスコミ各社の報道の多くは、告発人が誰かということすら報じていない。「告発状を受理し」と書かれているだけだ。この補助金適正化法違反が刑事事件として立件されるのは容易ではないと考えられた。しかも、3月28日に、森友学園は、問題となっていた国土交通省からの補助金全額を返還したとされている。通常であれば、起訴の可能性はほとんどなくなったので、告発状を引き取ってもらうことになるはずだ。それにも関わらず、「告発受理」が報じられるというのは誠に不可解だ。

     

    この二つの不可解な「籠池氏告発」をめぐる動きが、相次いで起きたことの背景には、この森友学園問題をめぐって大混乱に陥っている首相官邸の意向があるように思える。

     

    補助金適正化法違反による起訴の可能性はゼロに等しい

     

    まず、大阪地検による「籠池氏告発受理」の“謎”について考えてみたい。

     

    森友学園が設置をめざしていた小学校の建設工事に関しては、金額の異なる3つの請負契約書が作成され、そのうち最も高い約23億円の契約書が提出された国から5000万円余の補助金が学園に支払われた事実がある。この契約書が、国から補助金を受けるための虚偽の契約書だったとすれば、「偽りその他不正の手段」によって補助金の交付を受けた「補助金適正化法違反」が成立する可能性がある。

     

    しかし、請負契約書が虚偽だったとしても、国の側で審査した結果、適正な補助金を交付したのであれば、「偽りその他不正」は行われたが、それによって補助金が不正に交付されたのではない、ということになる。詐欺罪であれば未遂罪が成立するが、補助金適正化法違反では未遂は処罰の対象とされていないので、犯罪は不成立となる。(補助金適正化法が適用される国の補助金の不正受給については、詐欺罪・同未遂罪は成立しない。)この点について、

    専門家を交えた検討の結果、補助対象の設計費と工事費はおよそ15億2000万円と算定され、6194万円を助成することになり、先月までに5644万円余りが支払われている。

    との報道があった。(NHK)

     

    森友学園が受給していた国土交通省の「サスティナブル建築物先導事業に対する補助金」というのは、「先導的な設計・施工技術が導入される大規模な建築物の木造化・木質化を実現する事業計画の提案を公募し、そのうち上記の目的に適う優れた提案に対し、予算の範囲内において、国が当該事業の実施に要する費用の一部を補助」するもので、木造化・木質化が審査され、それに応じて建設代金の一部について補助金が交付されるものである。森友学園の件については、虚偽の請負契約書が提出されていても、森友学園が交付を受けていた補助金のうち、国交省の審査で、適正とされた部分を控除した「不正」受給金額は、少額になる可能性がある。また、審査の結果、認定された金額によっては、適正な金額が認定されており、不正受給がないという可能性もある。

     

    しかも、森友学園は既に補助金を全額返還したというのである。過去の事例を見ても、よほど多額の補助金不正受給でなければ、全額返還済みの事案で起訴されることはない。

     

    このように考えると、少なくとも今回の籠池氏の補助金適正化法違反の事実については、起訴の可能性はほとんどないと考えざるを得ない。そのような事件で、告発の受理の話が、告発人側とは異なる方向から表に出て、大々的に報道されるというのは、全く不可解であり、何か、特別の意図が働いているように思える。

     

    大阪地検が、この事件を起訴する方向で捜査していく方針であれば、「告発受理」を公表することなどあり得ない。告発は捜査着手の要件でも、起訴の要件でもない。本気で行う捜査であれば密行性が重要であり、「告発受理」をマスコミに報道させるなどということはあり得ない。

     

    実は、私自身も、この補助金適正化法違反の告発に関しては、3月中旬に、マスコミ関係者を通じて事前に相談を受け、告発状案にも目を通していた。単に、既にマスコミが報道しているような事実を、補助金適正化法違反で構成して告発状を提出しただけであって、捜査を行っていく上で特別の情報を含んでいるわけではない。

     

    今回の告発受理の件については、昨日午前、大阪地検から告発人に突然連絡があり、その後、告発人に、大阪の記者が確認してきたとのことだが、その記者が「大阪地検告発受理」の情報を得たのは、東京の記者からだという。つまり、東京サイド(最高検ないし法務省)が「告発受理」の情報源だと考えられる。

     

    いずれにしても、大阪地検の現場の動きではなく、何らかの意図があって、東京側主導で、「籠池氏の告発受理」が大々的に報道されることになったようだ。

     

    自民党調査での籠池氏偽証告発はありえない

     

    次に、「偽証告発」をめぐる動きであるが、籠池氏の証人喚問での証言を偽証告発するというのはもともと無理筋だった。自民党が籠池氏の「安倍首相からの100万円寄付」の発言の直後に、拙速に証人喚問に打って出たこと自体が、「拙劣極まりない危機対応」だったのであり、予想どおり、証人喚問は「籠池氏の独演会」に終わり、しかも、籠池氏が証人喚問で明らかにした昭恵夫人付職員からのファックスで、昭恵夫人が国有地の売却に関わっていた疑いが生じるなど、自民党、首相官邸はますます窮地に追い込まれることになった。

     

    偽証の疑いがあるとして、告発をめざす調査の対象とされている事項は、

     

    ①籠池氏は、「学園の職員が払込取扱票の振込人欄に“安倍晋三”と書き、郵便局に持参した」などと証言したが、「安倍晋三」の筆跡が籠池氏の妻が書いたとされる字に似ていることから、郵便局に行ったのは、職員ではなく籠池夫人ではないか。

    ②寄付依頼書に「安倍晋三小学校」の記載がある払込取扱票を同封して使用した期間について、籠池氏は、「(安倍首相が)衆院議員時代、つまり総理就任、24年12月以前」であり、「使用してきたのは、ほんの一瞬」と午前の参議院予算員会で証言し、衆議院では「5カ月余り」と訂正したが、平成26年3月にも配っている。27年9月7日の100万円の振込に使われた払込取扱票にも「安倍晋三小学校」が記載されていることから、もっと長期にわたって使用していたのではないか。

     

    の2点のようだ。

     

    しかし、これらの事項に関して、国会議員が独自に調査した結果に基づいて籠池氏を偽証で告発することは極めて困難であり、現実的にはその可能性はほとんど考えられない。

     

    まず、①で問題にされている籠池氏の発言は、参議院予算委員会での自民党の西田昌司議員の質問に対して答えたものだが、その前に、山本一太委員長の質問に対して、

    その日は土曜日でございましたので、中身を確認し100万円であることを確認し金庫の中に入れました。そして、月曜、すぐ近くの新北の郵便局の方へまいったということでございます。その後、私は金庫に入れましたところあたりからは伝聞でございますので、私は直接いたしておりません。

    と証言し、昭恵夫人から受け取った100万円を職員室の金庫に納めるところまでは自分がやったが、その後のことは「伝聞だ」と証言している。したがって、その後の西田議員の質問に対する籠池氏の証言は、自分が直接経験したことではなく、「伝聞」であることが前提になっている。「伝聞」であれば、聞いた話が間違っていれば、本人の認識も間違うのは当然のことだ。森友学園側で、100万円の振込の手続について、籠池氏の妻や学園職員からその時のことを聞いたのであろうが、当初の話が違っていたことがわかれば、それに応じて籠池氏の認識も変わることになる。証人喚問の時点では、籠池氏は、「学園職員が郵便局に行って手続をした」と聞き、そのように思っていたが、その後、郵便局に行ったのが実は籠池氏の妻だったことが判明したということであれば、籠池氏の「認識が間違っていた」だけで、「記憶に反して意図的に虚偽の証言をした」ことにはならない。籠池氏が、妻が郵便局に行ったことを知っていて、それを隠すために意図的に虚偽の供述をする理由があれば別だが、郵便局に行ったのが職員なのか妻なのかは、籠池氏にとってはどちらでも良い話であり、嘘をつく理由も考えられない。

     

    すなわち、①の点について籠池氏に偽証罪が成立する可能性は限りなくゼロに等しい。このような問題で、籠池氏を偽証告発するために、払込取扱票の振込人欄の筆跡鑑定を行うというのは、全く馬鹿げていると言わざるを得ない。

     

    次に、②の点については、籠池氏は、「安倍首相が総理大臣に就任する前」と証言し、その期間も「5ヶ月余り」と証言しているが、どの程度の期間使っていたのかという点についての籠池氏の証言が、客観的事実に反している可能性があることは確かである。しかし、「安倍晋三小学校」の記載がある払込取扱票が、どの程度の期間使われていたのかというようなことが、国政調査権によって明らかにすべき「国政上重要な事項」なのであろうか。

     

    国会での証人喚問は、憲法62条に基づく「国政調査権」の手段として、国政上の重要事項に関して、偽証の制裁を科して証言を求め、真実を究明するために行われるものである。そこで、仮に、事実に反する証言が「故意に」行われたとしても、すべてが「偽証告発」の対象となるものではない。「偽証に対する制裁として刑事罰を科すこと」が、国政調査権の目的を達するために不可欠と判断された場合に、偽証告発が行われる。当然、国政にとっての重要事項を証人喚問によって明らかにしようとしたところ偽証が行われた、ということが証拠上明らかとなった場合に、偽証告発が行われることになるのである。

     

    過去に偽証告発が行われた事例のほとんどが、その問題が検察等の捜査の対象となり、捜査の結果、偽証が明らかになった場合だけである。典型的なのは、閣僚、政府高官、国会議員等に関して何らかの疑惑が持ち上がり、それに関して国会として真相解明のために、当事者の証人喚問が行われ、そこで、疑惑を否定する証言が行われたが、後日、検察等の捜査で、偽証であったことが明らかになった場合である。

     

    そのような形で偽証告発に至った2000年以降の事例として、鈴木宗男議員、守屋武昌防衛事務次官のケースがある。この場合、疑惑は、その後刑事事件に発展する可能性があるのであるから、証人喚問において「刑事訴追を受ける可能性がある」ということで証言拒否することは可能である。しかし、証人喚問されたのが国会議員、政府高官の場合、もし証言を拒絶すれば疑惑が一層高まることになるので、「自らのリスク」で疑惑を否定する証言をすることもあり得る。その証言が、その後の捜査で否定され、なおかつ、意図的な偽証であることが明らかになれば、その事実について偽証告発が行われることになるのである。

     

    実際のところ、「国政上の重要事項」は、刑事事件に関連するものである場合が多い。「刑事訴追を受ける可能性がある」と証言拒絶されてしまえばそれまでなのだが、政府高官、国会議員は、証言拒否によって疑惑が深まるから拒否することもできない、ということで、証人喚問することに意味があるのである。籠池氏が、証人喚問の後の外国人特派員協会での記者会見で、「いきなり民間人が証人喚問されるというのは、あり得ないこと」と怒りを露わにしていたが、民間人であれば、犯罪事実に関することを聞いても、当然、証言拒否をすることになるので、証人喚問をすることの意味がないのである。

     

    今回の証人喚問で籠池氏が述べた100万円の寄付自体は、違法な寄付ではない。それがあろうとなかろうと「国政上重要な事項」ではない。その寄付の事実に関して、仮に、意図的な虚偽の証言があったとしても、国政調査権の目的が達せられないなどとは言えないので、偽証告発の対象になどならない。ましてや、「安倍晋三小学校と記載された払込用紙をどの程度の期間使って寄付を募っていたのか」という点も、国政調査で明らかにすべき事項とは考えられない。

     

    証拠面でも、偽証告発というのは著しく困難だ。籠池氏は、証人喚問で、

    総裁になられて、(「安倍晋三小学校」を)お断りになられた後に、振込用紙が残っていて、少しの期間使われたことがあった

    と証言し、その後、振込用紙がどのように使われているのかはわからなかったというのが籠池氏の弁解のようだ。証言内容が、仮に、客観的事実と異なっていたとしても、意図的に虚偽の証言をしたのでなければ、偽証とは言えない。

     

    籠池氏の証言については、①、②いずれについても、意図的な偽証を明らかにできる証拠が収集されるとは思えないし、そもそも偽証の起訴価値もないので、偽証告発などあり得ないのである。

     

    「二つの謎」の背景に何があるのか

     

    大阪地検特捜部の不祥事で批判非難を受けたことで、それまでの「ストーリー通りの調書をとるための不当な取調べ」を中心としてきた特捜捜査の手法が使えなくなり、検察捜査は著しく弱体化した。「絵に描いたようなあっせん利得」の甘利元大臣の事件の捜査でも、為すすべなく敗北、東芝の歴代社長の告発をめざす証券取引等監視委員会に対しても告発を断念させることに懸命になっている。そのような今の検察にできることは、起訴の可能性のほとんどない補助金適正化法違反を「告発受理」するという「単なる手続」を行って、それを「籠池事件捜査着手」とマスコミにぶち上げて大々的に報道させることぐらいなのだろうか。

     

    一方で、自民党議員による調査はほとんど無駄であり、偽証告発が可能になるとは思えないにもかかわらず、首相官邸側は、調査を肯定する異例のコメントをしている。自民党本部で偽証告発をめざす調査の記者会見が行われた28日午前の参議院決算委員会で、菅義偉官房長官は、齋藤議員の「虚偽証言で告発をすると、こういうことでしょうか。」との質問に答えて、「事実と違ったら、そのようになるという風に思っています。ですから、客観的な内容について、今私ども精査しています。」と答弁し、記者会見でも、証人喚問での籠池理事長の証言を巡り自民党が偽証罪での告発も検討していることについて、「真相究明の動きだ」などと評価する発言をした。

     

    政府側のスポークスマンである官房長官が、国会での国政調査権に関して、偽証告発を肯定するような発言をするというのはあり得ないことだが、それに加え、既に述べたような全くの「無理筋」である籠池氏偽証告発に向けての調査まで肯定する発言を敢えて行っているのである。

     

    今後、東京地検特捜部は、何らかの「無理筋」の事件を無理やり仕立て挙げて捜査を行い、偽証告発に向けての動きをアシストするというようなこともあり得るのであろうか。そして、検察庁を所管する法務省は、これからテロ等準備罪と称する「共謀罪」の国会審議が本格化する中で、与党サイドの全面協力を得る必要がある。

     

    このような状況において、籠池氏の「告発」をめぐって起きた「2つの不可解な動き」には、何やら不気味なものを感じる。

     

    ・籠池理事長逮捕は官邸=検察による口封じだ! 安倍夫妻、財務省が絡む国有地売却の捜査は潰されていた(LITERA 2017年8月1日)


    ※とうとう森友学園・籠池泰典前理事長夫妻が大阪地検特捜部に逮捕された。籠池前理事長は逮捕前、検察の動きを「国策捜査だ」と批判していたが、たしかに、これは安倍政権と財務省の疑惑を隠蔽し、籠池氏を口封じするための逮捕としか思えない。

     

    というのも、国会が開かれていないという安倍政権にとってもっとも都合のいいタイミングでの逮捕であることに加え、容疑は本丸の国有地売却問題と全く関係のない補助金詐欺容疑だからだ。

     

    たしかに、籠池前理事長は、国有地を取得して開設を目指した小学校舎の建設にあたり、金額の異なる契約書を作成。木材を使った先進的な建築に対して支給される国の補助金計約5600万円を不正受給した疑いで告発されていた。また、大阪府からも、幼稚園の教員数と、障害のある園児数に応じて交付される補助金計約6200万円を不正に得たとして、告発を受けていた。


    しかし、これらはそれこそ、森友問題の核心部分をごまかし、籠池前理事長の口封じをするための容疑であり、事件の枝葉末節に過ぎない。

     

    森友問題の核心であり端緒は、当たり前だが、国有地が約8億円も値引きされタダ同然で払い下げられたことであり、その過程に、当時の武内良樹近畿財務局長(現国際局長)、財務省で国有地を直轄する最高責任者である当時の迫田英典理財局長、さらには内閣総理大臣である安倍首相や昭恵夫人がどう関与したか、だ。

     

    だいたい、籠池前理事長が補助金詐取をしていたとしても、それは財務省から国有地をタダ同然で売却してもらってはじめて行えるものだ。近畿財務局の8億円の値引きがないと、森友学園はそもそも土地を取得できず、小学校建設もできなかった。順番からいっても、最初に国有地8億円値引き売却の問題を捜査すべきなのである。

     

    潰された近畿財務局への強制捜査、背後に官邸と検察の密約

     

    しかし、検察はその核心部分については捜査する気がまったくないようだ。国有地8億円値引きは、この7月13日にも弁護士ら246人が「交渉に当たった財務省近畿財務局が土地を不当に安く売って国に損害を与えた」として近畿財務局長らを背任で告発。大阪地検特捜部は告発状を受理し、マスコミも「いよいよ近畿財務局を背任容疑で捜査か」と煽っていた。しかし、実状はまったく違う。司法担当記者が語る。

     

    「検察は表向き、国策捜査という批判を受けないために告訴状を受理し、捜査に前向きな姿勢を示していますが、国有地売却の捜査はすでに、潰されているんです」

     

    実は近畿財務局に対する告発は今年3月にも豊中市議らが行っており、大阪地検特捜部は6月に、森友学園への強制捜査とセットで、近畿財務局を背任容疑でガサ入れすることを考えていたという。ところが、蓋を開けてみたら、結局、森友学園への補助金適正化法違反、補助金詐欺での強制捜査だけになっていたのだ。

     

    「大阪地検特捜部は2009年の村木厚子(厚生労働省局長)さんの冤罪逮捕・証拠改ざん事件を引き起こして以降、信用は地に落ちたまま。他省庁の不正を単独で捜査する力はない。最後のチャンスが森友へのガサ入れの時に一緒にやることだった。現場はそれで証拠をつかめば、一気にやれるかも、と考えていた。ところが地検上層部が頑として首をたてにふらなかったんです」(前出・司法担当記者)

     

    検察は国税庁と連携して脱税摘発する関係なので、もともと財務省には弱く、20年前、東京地検特捜部が大蔵省接待汚職を摘発したことで、関係が悪化したトラウマもある。

     

    だが、今回、地検上層部が近畿財務局へのガサ入れを止め、国有地払い下げ問題に触れさせないようにしたのはやはり、安倍首相や昭恵夫人が捜査対象になる可能性があるからだ。

     

    「法務省から大阪地検には相当なプレッシャーがあったようです。地検幹部が毎日のように本省から連絡が入ってくる、とぼやいていましたから」(検察関係者)

     

    しかも、今回の籠池前理事長夫妻逮捕も、官邸の意向に沿った「国策捜査」として近いうちに行われるだろうという見方が前々からささやかれていた。

     

    森友問題で次から次へと疑惑が噴出していた時期、永田町では、法務省と官邸をめぐるある密約の情報がかけめぐっていた。

    「法務事務次官の黒川弘務氏と菅義偉官房長官の間で、法務省の悲願だった共謀罪の成立とバーターで、籠池理事長の口封じ逮捕の密約が交わされたという情報が駆けめぐったんです。共謀罪とのバーター説については、眉唾なところもありますが、黒川氏は甘利明前経済再生相の賄賂事件の捜査をつぶした“官邸の代理人”といわれている法務官僚。官邸の意向を受けて、森友捜査をコントロールしようとしていたのは間違いありません」(全国紙政治部記者)

     

    松井知事の疑惑隠し告発から始まって捜査、逮捕された籠池

     

    さらにもうひとつ噂されていたのが、今回、籠池逮捕という結果を生み出した補助金詐欺告発の動きだ。数カ月前、安倍官邸と松井一郎大阪府知事の間で、「大阪府が籠池理事長を口封じするため刑事告発する」という裏取引があったといわれているのだ。

     

    「3月頃、松井一郎大阪府知事が「小学校設置は近畿財務局の要請。国は相当親切」「安倍首相は忖度を認めよ」などと批判、橋下徹氏もテレビ番組で「国から相当の圧力を受けたらしい」と口にするなど、国に責任を押し付けていた。これに官邸が激怒したという情報も流れ、両者の間は相当にぎくしゃくしていた。ところが、4月に入って、両者が手打ち。安倍首相が関与する国有地問題にさわらせないために、大阪府が籠池理事長の刑事告発を引き受けて、大阪府の補助金詐欺事件として処理させる、という約束が交わされたんじゃないかといわれていいます」(在阪の社会部記者)

     

    実際、松井知事は4月に入って、突如、森友学園への刑事告訴の検討を表明するのだが、それ以降、国や安倍首相を批判する言動を一切封印している。一方、政府は4月11日に2025年万博の大阪誘致を閣議了解している。また、この前後、維新側は悲願であるカジノ構想での協力などを取り付け、官邸は共謀罪法案での維新の協力を確かなものとすることで手打ちにしたとの見方が広がっていた。

     

    実際、共謀罪が成立して、国会が終わった直後、官邸や昭恵夫人に触らなくてもすむ大阪府の補助金詐欺に、国交省の補助金的適正化法違反を加えるかたちで、森友学園への強制捜査が行われた。そして今回、加計問題の閉会中審査が終わったのを見計らったように、まず国交省の補助金詐欺容疑のほうで籠池前理事長を逮捕したのである。これが「口封じ逮捕」でなくなんだというのか。

     

    「検察はこのあと、大阪府の補助金の件でも詐取で再逮捕する予定です。そうやって籠池理事長を黙らせたあと、マスコミにどんどん籠池氏の詐欺実態をリークしていくでしょう。それで“詐欺師が勝手に安倍首相の名前を使ってやっただけ”というイメージを拡散していくはずです」(前出・司法担当記者)

     

    ただ、こうした状況をくつがえせる可能性はゼロではない。数日前、NHKが国有地売却をめぐって近畿財務局と籠池理事長側が売却金額について事前協議し、財務局側が分割払いも提案していたことをスクープしたが、これは明らかに政府内部のリークであり、財務省や検察内部にも国有地問題の解明を求める職員や検事がいることの証明である。

     

    安倍一強体制が崩れつつあるいま、国策捜査を批判し、真相解明を求める声が広がっていけば、検察も動かざるをえなくなる。そのためにも、国民とメディアは諦めずに声をあげ続ける必要がある。

    ・検察はなぜ”常識外れの籠池夫妻逮捕”に至ったのか)2017年8月1日)

    https://nobuogohara.com/2017/08/01/%E6%A4%9C%E5%AF%9F%E3%81%AF%E3%81%AA%E3%81%9C%E5%B8%B8%E8%AD%98%E5%A4%96%E3%82%8C%E3%81%AE%E7%B1%A0%E6%B1%A0%E5%A4%AB%E5%A6%BB%E9%80%AE%E6%8D%95%E3%81%AB%E8%87%B3%E3%81%A3%E3%81%9F/

     

    ※昨日、籠池泰典氏夫妻が、大阪地検特捜部に、「詐欺」の容疑で逮捕された。

     

    驚くべきことに、この「詐欺」の容疑は、今年3月下旬に大阪地検が告発を受理した「補助金適正化法違反」の事実と同じ、森友学園が受給していた国土交通省の「サスティナブル建築物先導事業に対する補助金」の不正受給であり、「補助金適正化法違反」を、「詐欺罪」の事実に構成して逮捕したということなのである。

     

    詐欺罪と補助金適正化法違反の関係は、「一般法と特別法の関係」というのが常識的な理解だ。一つの事象に対して一般的に適用される法律があるのに、適用範囲が狭い特別の法律が定められている場合は、法の趣旨として、その特別法が適用され、一般法の適用が排除されるというのが「一般法と特別法」の関係だ。

     

    補助金を騙し取る行為は、形式上は詐欺罪が成立する。しかし、国の補助金は本来、当局による十分な審査を経て支給されるものであり、不正な補助金交付を行ったとすると、国の側にも問題がなかったとは言えないこと、国からの補助金の不正は地方自治体等の公的な機関でも行われることなどから、補助金適正化法は、不正受給の法定刑を、詐欺罪の「10年以下の懲役」より軽い「5年以下の懲役・罰金」とし、「未遂罪」が設けられている詐欺罪と異なり、未遂を処罰の対象外としたものだ。つまり、あえて「詐欺罪」より罪が軽い「補助金適正化法違反」という犯罪を定めたものだといえる。

     

    このような法律の趣旨からすると、国の補助金の不正受給である限り、詐欺罪が適用される余地はない。しかし、それなのに、なぜ、大阪地検特捜部は、「小学生レベル」とも思える誤った逮捕を行ったのか。

     

    3月29日に、NHKを始めとするマスコミが「大阪地検が、籠池氏に対する補助金適正化法違反での告発を受理した」と大々的に報じた。その経過からして、その報道が、明らかに検察サイドの情報を基に行われたこと、そしてその情報は、何らかの政治的な意図があって、東京の法務・検察の側が流したもので、それによって「籠池氏の告発受理」が大々的に報道されることになったとしか考えられない。

     

    しかも、私自身が、その補助金適正化法違反の告発に関して、3月中旬に、マスコミ関係者を通じて事前に相談を受け、告発状案にも目を通したうえで、その後の報道で「請負契約書が虚偽だったとしても、国の側で審査した結果、適正な補助金を交付した」と報じられており、偽りその他不正は行われたものの、それによって補助金が不正に交付されたのではないと考えられること、「森友学園は既に補助金を全額返還したこと」と報じられており、過去の事例を見ても、よほど多額の補助金不正受給でなければ、全額返還済みの事案で起訴された例はないことなどから、「籠池氏の補助金適正化法違反による起訴の可能性はゼロに等しい」と明言した。

     

    そのような、起訴の可能性のほとんどない事件の「告発受理」が、法務・検察幹部のリークと思える経過で大々的に報道された時点で、「この件で、検察は、大変な事態に追い込まれることになるのではないか」という予感がしていた。

     

    本来、詐欺罪が適用されるはずのない「国の補助金の不正受給」に対して、詐欺の被疑事実で逮捕したのは、余程の事情があるからであろう。

     

    上記のとおり、国交省側の審査の結果、適正な金額を算定したので、結果的には「不正な補助金支給」が認められず「未遂」にとどまっていて、補助金適正化法違反では不可罰であること、同法違反では不正受給額が「正規に受給できる金額と実際に受給した金額」の差額になるが、詐欺であれば支給された全額が形式上の被害額となるので、マスコミ向けに金額をアピールできること、の2つがその「事情」として考えられる。そこで、逮捕事実を「水増し」するために、敢えて詐欺罪を適用した可能性が指摘できる。

     

    しかも、籠池氏夫妻に逮捕の要件である「逃亡のおそれ」「罪証隠滅のおそれ」が認められるのか。前者がないことは明らかだし、この国交省の補助金受給をめぐる事実関係については主要な物証は大部分が押収され、関係者の取調べも実質的に終わっているはずだ。敢えて罪証隠滅の可能性があるとすれば、籠池氏の「夫婦間の口裏合わせ」だが、それなら、先週木曜日(7月27日)に初めて任意聴取した段階で逮捕すればよかったはずだ。その時点で「罪証隠滅のおそれ」がないと判断して帰宅させたのに、なぜ、その4日後に「逮捕」ということになるのか。

     

    法務・検察の幹部が関わっているとしか考えられない「告発受理」の大々的な報道の後始末として、何らかの形で事件を立件して籠池夫妻を逮捕せざるを得なくなったとすると、「検察が追い込まれた末」の籠池夫妻逮捕だということになる。それは、法務検察幹部が政治的意図で告発受理を大々的に報じさせたことが発端となって、自ら招いた事態だと言わざるを得ない。

     

    それは、検察の常識として凡そあり得ない逮捕であり、過去に繰り返してきた数々の検察不祥事にも匹敵する「暴挙」だと言わざるを得ない。このような無茶苦茶な捜査からは直ちに撤退すべきである。

     

    ・森友学園の籠池夫妻を再逮捕 大阪府の補助金詐取容疑で(朝日新聞DIGITAL 2017年8月21日)

    ※学校法人森友学園(大阪市)への国の補助金をだまし取った容疑で逮捕された前理事長の籠池泰典(やすのり)容疑者(64)と妻諄子(じゅんこ)容疑者(60)について、大阪地検特捜部は21日、2人を大阪府の補助金詐欺と同未遂の両容疑で再逮捕し、発表した。認否明らかにしていない。
     
    特捜部によると、両容疑者は共謀し、2011~16年度、学園が運営する塚本幼稚園(大阪市淀川区)で、勤務実態のない教員名を申告したほか、障害のある園児に特別な支援をしたと虚偽申請し、府の補助金計約9254万円を詐取するなどした疑いがある。

     

    当時、泰典容疑者は学園の理事長、諄子容疑者は幼稚園の副園長で補助金申請に関わっていた。府が補助金の返還を求め、告訴していた。泰典容疑者は府などの補助金申請について逮捕前の取材に「欠落点があったことは、おわび申し上げないかん」と、故意ではないと述べていた。

     

    特捜部は21日、小学校建設に絡む国の補助金約5640万円について、2人を詐欺罪で起訴した。