・安倍首相に逆らった森友・籠池氏は6カ月間勾留、不正払い下げの財務省職員は栄転(Business Journal 2018年1月20日)
※昨年日本を騒がせた森友・加計学園、「もり・かけ」問題は、今年も初頭から引き続き国会やメディアで再燃することが確実視される。忘れてはならないのは、年末から初春にかけて、安倍晋三首相と夫人・昭恵氏の縁故者として当初は優遇措置を受けてきた森友学園元正副理事長の籠池泰典・諄子夫婦が、暖房のない拘置所に勾留され年を越したことだ。
籠池氏が安倍首相の縁故者から“敵対者”へ転換したきっかけは、単に寄付を受け取ったという事実を述べたことにすぎない。安倍首相が、“私や妻が森友問題に関与していれば安倍首相が議員を辞職する”と国会答弁したことに端を発し、籠池氏が昭恵夫人から100万円の寄付を受け取ったことを証言したことにある。籠池証言では、昭恵氏は首相から渡してほしいと言われたという。明らかに安倍首相夫妻の関与を示す内容だった。籠池氏は、偽証が犯罪に問われる国会で証人喚問に立ち、100万円を受け取った旨の証言した。それに対して昭恵夫人はその事実を否定しつつも、証人喚問はもちろん記者会見にさえ応じていない。その意味では客観的には、籠池氏の主張に軍配があがっている。
森友問題は国会で野党による追及が続いたが、政府は情報隠蔽を続けた。そうしたなかで数々の情報提供を行い、格安払い下げの森友問題の闇に光を当ててきたのは、籠池氏である。その情報提供する協力者である籠池氏を、なぜ大阪地検特捜部は逮捕・勾留するのか。たとえば元東京地検特捜部検事の郷原信郎弁護士は、詐取したとされる補助金は返却し、捜査資料は家宅捜査で根こそぎ持ち去りながら、籠池夫妻逮捕を罪証隠滅や逃亡の恐れで逮捕したことに疑問を投げかけている。
昨年7月31日、大阪地検は校舎建設費用への補助金を過大に請求したとして籠池夫妻を逮捕し、8月21日には幼稚園への補助金で詐取があったとして再逮捕した。しかしこの補助金は、森友学園の核心である国有地の格安払い下げの問題とは異なり、校舎建設に木質系素材を利用したことに関する補助である。また幼稚園運営の中での補助金も、自治体行政との問題であり、これまで行政指導が正しく行われてきたかなどの点検が先であり、巨悪を許さないための特捜検察が乗り出す問題なのか、先の郷原弁護士も批判している。つまり明らかに別件逮捕である。
不当逮捕の怖れがある容疑者を、猛暑の夏から厳寒の冬まで半年も拘置所に拘置しているのである。自由に発言し森友問題の裏が明かされるとまずいということで拘留を続けているとしたら、これはもう国家権力による弾圧といえる。
一方、森友問題で当時払い下げの承認権限を持つ財務省理財局長だった佐川宣寿氏は国税庁長官に就任し、当時財務省事務次官だった田中一穂氏は政府系金融機関の日本政策金融公庫総裁に就任している。すでに、森友問題は、会計検査院が財務省による格安払い下げの根拠について「根拠不十分」「不適切」と報告し、新たな局面に入った。何人もの官僚たちが法令に違反し不当に処分を行っていたことが、特別国会での会計検査院院長の答弁でも明らかになった。関与した財務省、国交省の官僚たちの行為は、財政法9条「国の財産を適正な対価なく、譲渡・貸付を行ってはならない」に違反する行為であることも、指摘されている。
ところが、これら官僚たちを訴えた告発状(背任罪と公用文書毀棄罪)は、東京地検特捜部で受理され、大阪地検特捜部に移送されているはずが、捜査や逮捕の動きはいまだ聞こえてこない。結局、安倍首相に逆らう者は逮捕し、恭順を示すものは恩賞にあずかるという不公平な采配に検察自体が加担し、放置しているようにみえる。森友問題を捜査する大阪地検特捜部は、籠池夫妻を拘置所に閉じ込め、不正関与の官僚たちは家族と共に正月を祝う。巨悪を許さない検察特捜部の存在すら問われる事態になっている。
なぜ大阪地検は事件解明の協力者、籠池氏を逮捕したのか
森友問題の捜査は、籠池氏を逮捕すれば道が開けるのであろうか。格安払い下げの権限は、財務省や国交省の官僚にあり、一民間人である籠池氏が左右できるものではない。籠池氏が企て要請したとしても、なぜ籠池氏に財務省、国交省の官僚たちが従い、ただ同然の払い下げが実現したのか。安倍昭恵氏が、森友学園が設立する小学校の名誉校長であったことや安倍首相の存在なくして実現するはずはない。
市民団体は、東京地検特捜部に以下の2点を訴える告発状を提出していた。
(1)背任罪の訴え:国有地払い下げの根拠となっていた2万トンの埋設ごみは、各種資料から考えて存在せず、埋設ごみを理由とする鑑定価格の9割引き、金額でいうと8億円の値引きは、国家財政を損なうものであり、なおかつ2万トンの埋設ごみがないことを官僚たちは知っていた。
(2)公用文書毀棄罪の訴え:森友関連の交渉経過を示す文書記録が廃棄され、また契約文書に関する資料なども廃棄されたとして公表されなかった。
昨年5月に両告発状が出されていたが、4カ月放置され、9月に東京地検の森本宏東京地検特捜部長が就任したその週の内に受理が決まり、森友問題を所管する大阪地検特捜部に移送されたが、大阪地検特捜部では再び放置されている。
森友問題が2017年の国会で論議されすでに1年近くになるが、それでもなお国民が関心をそらさず、世論調査でも安倍内閣による措置に納得しないが8割近くを占めている。国民が注目する問題として継続しているのは、下記の4点によると考えられる。
・あまりに非常識な値引きが、国有財産の払い下げで行われた。
・安倍首相が、昨年2月の福島伸享(民進党;当時)衆議院議員の質問に、「私や妻が関与していれば議員を辞める」旨の発言をした。
・昭恵氏が森友学園が設立する小学校の名誉校長に就任していた。
・籠池氏が上記小学校開校の見込みがなくなるなかで、安倍首相とは距離を置き、昭恵氏から100万円を受け取ったことを証言し、その後も縁故者として便宜供与を受けた立場から情報の提供を続けた。
籠池氏は、証人喚問での証言に加え、その後も格安払い下げの経過について民進党の調査チームで証言したり、ジャーナリストの菅野保氏を通して音声データ、メモ、メールの記録などの物証を公表し、菅野氏も「週刊朝日」(朝日新聞出版)などの媒体でそれを報告した。一方、国会論議で政府は「記録は廃棄された」「記憶にない」「払い下げは適切」といった隠蔽に終始した。
籠池氏の拘留の理由は、罪証隠滅と逃亡の怖れということであるが、証拠隠滅どころか次々と証拠を明らかにしてきたのである。また顔はすでに全国に知れ渡り、逃亡の可能性は低い、前出の郷原弁護士は「逮捕の理由はない」と指摘している。
安倍首相の不正にメス
東京地検特捜部は森本特捜部長の就任以来、前述のとおり森友問題をめぐる市民団体の告発状を受理し、昨年12月にはスーパーコンピュータ開発会社PEZY Computing社長の齊藤元章氏を補助金不正受給容疑で逮捕、そしてJR東海が進めるリニア新幹線をめぐりスーパーゼネコン4社による談合問題に、公正取引委員会と協力して、捜査に入っている。
齊藤氏の事業では、強姦の疑いで民事訴訟を起こされている元TBS記者の山口敬之氏が資金集めに関与していたと報じられているが、山口氏は以前より著作本「総理」を持ち歩き、安倍首相と親しい関係であることを公言している。また、リニア工事に国は財政投融資を3兆円投入しており、談合を仕切っていた大林組社長は安倍首相のゴルフ仲間であると日刊ゲンダイは報じている。
東京地検特捜部は、安倍首相が関与してきた数々の不正行為にメスを入れ始めたように見える。会計検査院に続き、公正取引委員会、そして東京地検特捜部が、行政が歪められている事態に対し動き出した。大阪地検特捜部もこの動きに追随し、森友問題の本格捜査に入ることを期待したい。
森友学園への国有地払い下げに当たって役所で決済や窓口の指導など直接関与していた職員が10人を下らない点を考えると、窓口職員が個々に違法行為を犯した刑事責任という意味合いを超え、上からの命令で動いた可能性が問われる森友疑獄事件へと発展する可能性がある。まさに巨悪を許さない特捜部の出番である。籠池氏の逮捕・勾留・接見禁止がこのまま続き、官僚たちの不正行為が放置されれば、法治国家が危機にさらされる事態になりかねない。
・森友文書、書き換えの疑い 財務省、問題発覚後か 交渉経緯など複数箇所(朝日新聞DIGITAL 2018年3月2日)
※学校法人・森友学園(大阪市)との国有地取引の際に財務省が作成した決裁文書について、契約当時の文書の内容と、昨年2月の問題発覚後に国会議員らに開示した文書の内容に違いがあることがわかった。学園側との交渉についての記載や、「特例」などの文言が複数箇所でなくなったり、変わったりしている。複数の関係者によると、問題発覚後に書き換えられた疑いがあるという。
内容が変わっているのは、2015~16年に学園と土地取引した際、同省近畿財務局の管財部門が局内の決裁を受けるために作った文書。1枚目に決裁の完了日や局幹部の決裁印が押され、2枚目以降に交渉経緯や取引の内容などが記されている。
朝日新聞は文書を確認。契約当時の文書と、国会議員らに開示した文書は起案日、決裁完了日、番号が同じで、ともに決裁印が押されている。契約当時の文書には学園とどのようなやり取りをしてきたのかを時系列で書いた部分や、学園の要請にどう対応したかを記述した部分があるが、開示文書ではそれらが項目ごとなくなったり、一部消えたりしている。
また、契約当時の文書では、学園との取引について「特例的な内容となる」「本件の特殊性」と表現。財務省は国会で学園との事前の価格交渉を否定し続けているが、「学園の提案に応じて鑑定評価を行い」「価格提示を行う」との記載もあった。開示された文書では、これらの文言もなくなっている。
昨年2月、大幅に値引きされて土地が学園に売却された問題を朝日新聞が報道。国会で野党が「学園に便宜が図られたのではないか」などと追及し、財務省は否定する答弁を繰り返していた。関係者によると、文書の内容が変わったのは、昨年2月下旬以降とみられる。これらの文書の一部は国会議員からの求めに応じて開示された。
土地取引の決裁文書は保存期間が最長30年。会計検査院の検査に提出を求められることもある。決裁後の変更は、意思決定の経緯を検証できるようにすることを求める公文書管理法の趣旨に反するおそれもある。
一連の問題をめぐっては、大阪地検特捜部が背任容疑の告発を受理して昨年9月以降、関係者への任意の事情聴取を本格化。文書管理をめぐる公用文書等毀棄(きき)容疑や証拠隠滅容疑の告発も受理している。
■出しているものだけ
財務省の中村稔・理財局総務課長は1日、決裁後に内容が変更されていないか、との朝日新聞の取材に対し、「我々が決裁文書として持っているものは、情報開示請求などに出しているものだけだ」と答えた。
・朝日の『森友文書改竄』報道、地検リークか 「大阪の記者が地検の検事から抜いてきた」(ZAKZAK 2018年3月16日)
※米森友学園をめぐる決裁文書の改竄問題は、朝日新聞が2日付朝刊の1面トップで「森友文書 書き換えの疑い」とスクープしたことが発端だ。「民主主義の危機」を暴いた特ダネの情報源について、15日発売の週刊文春と週刊新潮はともに「大阪地検」に触れている。
文春は、朝日新聞の大阪・東京社会部による合同チームによる取材努力を紹介し、官邸周辺の憶測として「大阪地検は近畿財務局から二種類の決裁文書を入手」「官邸は、朝日報道の根拠が捜査資料との見方を強めていた」などと報じた。
新潮は、朝日新聞の幹部社員の証言として「大阪の記者が地検の検事から抜いてきたと言われています」「伝統的に地検に強いんです」とした。
ジャーナリズムにとって「取材源の秘匿」は、重要な職業倫理である。
・森友問題対応の近畿財務局職員が自殺か(共同通信 2018年3月9日)
※森友学園の国有地売却問題を巡り、財務省近畿財務局の担当部署で対応に当たった男性職員が7日に神戸市の自宅で死亡していたことが9日、兵庫県警の捜査関係者などへの取材で分かった。自殺とみて調べている。
・森友問題:自殺の近畿財務局職員、遺書のような書き置き(毎日新聞 2018年3月9日)
※財務省近畿財務局の男性職員が神戸市内の自宅で自殺していたことが9日分かった。複数の関係者によると、男性は、近畿財務局で学校法人「森友学園」への国有地売却を担当する部署に所属していたという。遺書のような書き置きが見つかっている。
捜査関係者などによると、今月7日、神戸市灘区の自宅マンションの室内で自殺していたのが見つかった。兵庫県警は事実関係を明らかにしておらず、自殺した理由も分かっていない。
森友学園へは2016年6月に鑑定評価額から約8億円を引いた1億3400万円で大阪府豊中市の国有地が売却された。男性の役職は16年当時、近畿財務局の上席国有財産管理官。学園側との交渉にあたっていた統括国有財産管理官の部下で同じ職場だった。関係者によると、昨年秋以降、病気を理由に休んでいたという。
土地売却を巡っては大阪地検が背任容疑などの告発を受理して捜査を進めているほか、今月に入り、売却に関する近畿財務局の決裁文書が書き換えられたとする疑惑が浮上していた。
近畿財務局は取材に「個人情報に関することは答えられない」としている。
・佐川国税庁長官が辞任 森友疑惑でキーマン自殺「数日前に姿見たのに…」財務省に激震 安倍政権崩壊も(AERA.dot 2018年3月9日)
※安倍政権を昨年から揺るがしてきた森友学園疑惑で、ついに犠牲者が出てしまった。
森友学園との国有地売却交渉に関わっていた財務省近畿財務局の男性職員Aさんが、神戸市の自宅で自殺していたことが9日にわかった。亡くなったAさんは、学園側との交渉に当たっていた現場責任者の同省統括国有財産管理官(当時)の直属の部下だった。
Aさんの自殺が報じられた後、森友学園への国有地売却交渉の経緯を国会で説明していた当時の理財局長で現、国税庁長官の佐川宣寿氏はついに辞任した。
事件の真相を知るキーマンの自殺に永田町や財務省では衝撃が走っている。
自民党国対関係者はこう話す。
「森友問題に関係していた近畿財務局職員が自殺したという話で朝から野党が騒いで大混乱だ。森友絡みで昨年秋から仕事は休職していたようだ。えらいことになったな」
財務省関係者も動揺を隠せなかった。
「Aさんの休職は昨年の秋くらいからです。(昨年2月に)森友問題が発覚してからは、ずっと帰宅が深夜で、朝も早くから役所に来ていました。休職前もつらそうな顔で歩いていたので『大変ですね』と声をかけると、小声で『ええ』と返事が返ってきただけでした。正月明けに新年のあいさつで顔を出したそうですが……。大阪地検特捜部から事情を聞かれていたようで、その確認の意味もあって役所に来たようです」
Aさんは、今月2日に朝日新聞の報道で公文書"改ざん"疑惑が浮上した後、再び職場に顔を出したという。その時、「かなり体調がよくなってきました」と関係各所にあいさつしたが、2時間程度で帰ったという。
「朝日新聞の記事のように、もしウチ(近畿財務局)が改ざんに関わっていたなら、当然、国有財産管理官の部下であるAさんの名前は思い浮かびます。長期間休んでいることもあって、役所内では『隠蔽のようなことをやらされて、病気になってしまったのか』と噂話になっていました。自殺の連絡は昨夜、役所にあったそうです」(同)
Aさんの上司である統括国有財産管理官は、国有地売買の価格交渉を担う責任者とされる。2016年5月に行われた森友学園側との交渉の場では、「われわれの見込んでいる金額よりも、(撤去費が)少なくても、われわれは何も言わない」と述べていたことが、音声データにも残されていた。これは、国会で「価格交渉はしたことはない」と答弁した同省の佐川宣寿・前財務省理財局長(現国税庁長官)の説明と真っ向から対立するもので、野党から繰り返し追及を受けていた。
そもそも、森友学園側と近畿財務局の交渉は2015年半ばまで暗礁に乗り上げていた。財務省が今年2月に公開した資料によると、2015年4月には、学園側が軟弱な地盤を理由に貸付料の減額を求めてきたことに対し、省内で「『無理に本地を借りていただかなくてもよい』と投げかけることも考えている」と、学園との賃貸契約の破棄も検討していた。
ところが、安倍昭恵首相夫人が同年9月に小学校の名誉校長に就任したころから風向きが変わり始める。同年11月には、昭恵夫人付の政府職員が同省に「問い合わせ」のFAXを送付。その頃から交渉内容が一変した。
賃貸契約の破棄を検討していたはずが、同年12月には「国有地の売買価格の交渉」に変化。さらには、省内で法律関係の相談をした時は、方針が「売買価格を学校法人に提示して買い受けの可否を判断させるなどの調整が必要」となった。
同省は2016年6月に学園との売買契約を結んだが、朝日新聞(9日付)の報道では、売却契約の際の決裁文書には、事案の概要などを8項目で記した「調書」があったという。
だが、国会議員に公開された文書では「4.貸付契約までの経緯」が項目ごとなくなっていたという。契約当時の調書には、この項目で学園から「借り受けて、その後に購入したい」との要望があり、近畿財務局が「本省理財局に相談した」と記載してあったという。そして「学園の要請に応じざるを得ないとの結論」とも記載されていたが、国会議員に公表された文書にはこれらの文言はなくなっていた。
朝日新聞報道やAさんの自殺報道を受け、野党は9日、国会に同省理財局次長の富山一成氏ら幹部を呼んで野党合同ヒアリングを実施。
野党議員が「自殺したとされるAさんは家族に遺書を残していたというが、財務省が公開するなと圧力をかけたという話もある。本当なのか」と問い詰めたが、同省の幹部は「調査中なのでお答えできません」の一点ばりだった。
問題当時の近畿財務局長だった武内良樹氏が昨夜、官邸を訪問し、安倍首相、麻生財務相と対応を話し合ったとみられる。森友疑惑の真相は今後、明らかになるのか。
・森友文書の書き換え認める 財務省、12日に国会報告(共同通信 2018年3月10日)
・ついに辞任! 佐川国税庁長官のトンデモ発言の数々を総ざらいする(文春オンライン 2018年3月10日)
※佐川宣寿 財務省理財局長(当時)
「売買契約締結をもって事案は終了しているので、記録が残っていない。速やかに事業終了で廃棄していると思う」
朝日新聞デジタル 2017年3月19日
3月9日、これまで“逃亡”を続けてきた前財務省理財局長の佐川宣寿国税庁長官が辞任の意向を固めたことが明らかになった。森友学園問題に関して、財務省理財局長として国会で行った答弁が「虚偽だ」と指摘されており、混乱の責任を取った形だ。では、どのような言葉があったのか、あらためて振り返ってみたい。
佐川氏は昨年の国会で森友学園側との交渉記録は「廃棄した」と何度も答弁してきた。その最たるものが、昨年2月24日の衆院予算委員会で発せられた冒頭の発言だ。そして、「廃棄」とともに繰り返されたのが「適正」という言葉である。
「国有地は時価で売るのが基本で、適正な価格で売っている」
毎日新聞 2017年2月17日
「適正」だという根拠の交渉記録を求められると「廃棄した」と繰り返す。どうせいっちゅうねん。挙句の果てには、次のようなトンデモないことまで言い出した。
「(電子データは)短期間で自動的に消去されて、復元できないようなシステムになっている」
朝日新聞デジタル 2017年4月10日
この“自動証拠隠滅システム”についてはネット上でも話題になり、発言の4日後の4月7日に中尾睦理財局次長が「自動消去機能というのは基本的にございません」と訂正した(毎日新聞 2017年5月16日)。
また、佐川氏は昨年3月15日の衆院財務金融委員会では次のように答弁している。
「価格につきまして、こちらから提示したこともございませんし、先方から、いくらで買いたいといった希望があったこともない」
毎日新聞 2017年12月4日
佐川氏の答弁が虚偽だったことはすでに明らかだ。
佐川氏が「廃棄した」と答弁していた交渉関連記録は残されていた。財務省近畿財務局は今年1月、交渉に関連する文書5件を開示している。これらの文書には、「(新たなごみの)撤去費を反映させた評価額で買い取りたい」などとする学園側の要望事項や国の対応方針が明記されていた(朝日新聞デジタル 1月30日)。2月1日には佐川氏の後任の太田充理財局長が、これら以外にも内部文書が存在することを認めている。
また、森友学園の籠池泰典前理事長と財務省近畿財務局の担当者が事前に価格交渉していたとされる音声データの存在も明らかになった(日テレNEWS24 2017年11月27日)。売買交渉の中では、近畿財務局の職員が「1億3千を下回る金額というのはない」などと学園側に伝えていた(朝日新聞デジタル 2017年11月27日)。
ついに自殺者も……。そして擁護し続けた麻生氏は
昨年7月、佐川氏は国税庁長官に任命された。佐川氏は通例の就任に際する記者会見を開かず、“逃亡”を始める。「諸般の事情により行わないことにした」という国税庁の説明も話題を呼んだ(東京新聞 2017年8月9日)。
佐川氏が就任後、国税職員向けの訓示で「文書の徹底管理」を指示していたことも報じられた。
「綱紀の厳正な保持に努め、行政文書・情報の管理の徹底に特段の配意をしていただく」
朝日新聞デジタル 1月10日
「まずお前が文書を徹底管理しろよ!」と思った人は少なくあるまい。野党側は再三にわたって佐川氏の国会招致を求めてきたが、与党は断固拒否を続けている。特に、安倍晋三首相、麻生太郎副総理兼財務相は、徹底的に佐川氏を擁護し続けてきた。
麻生氏は佐川氏が国税庁長官に就任したことについて、堂々とこう言い放った。
麻生太郎 副総理兼財務相
「(佐川氏は国会で)丁寧な説明に努めてきた。適材だ」
毎日新聞 2017年7月22日
「丁寧な説明」に一番遠い人物をよりによって「丁寧な説明に努めてきた」と評してしまうのが麻生氏らしい。今年2月15日の衆院予算委員会では「極めて有能な役人だ」と評してみせた(共同通信 2月15日)。
また、佐川氏を国税庁長官のポストに任命した安倍首相は、昨年12月4日の参院本会議で野党に批判されると、次のように反論している。
安倍晋三首相
「それぞれのポストに最もふさわしい人材を適材適所で配置する、という考え方に基づいて行った」
時事ドットコムニュース 2017年2月4日
しかし、かつては野党に対して強気の姿勢を貫いた佐川氏を「さえている」(『週刊文春』2017年7月13日号)と評価していた安倍首相も、最近は「佐川も定年だしね」と更迭を示唆していたという。佐川氏に責任を押し付けて首を切り、一気に問題の解決を図っていたようだ(『週刊文春』3月15日号)。
もともと森友学園問題は、安倍昭恵首相夫人が国有地に建つ予定だった小学校の名誉校長に一時就任し、行政側が忖度して不可解な値引きにつながったのではないかという疑惑から始まったものだ。
3月2日には、森友学園との契約時に財務省が作成した決裁文書が改ざんされて国会に提出された疑いがあると朝日新聞がスクープした。報道によると、原本には記されていた、森友学園側からの要請という部分や、特例的な内容となるという文言が削除、あるいは修正されていたという。報道が事実なら、佐川氏と財務省は組織ぐるみで公文書を改ざんし、隠蔽工作を行っていたということになる。
3月9日には、近畿財務局で森友学園との交渉を担当した職員が自殺したという報道があった。この報道が佐川氏の辞任とどう関わっているかはわからない。だが、一連の問題が佐川氏の辞任で幕引きとはいかないことだけは確かである。
麻生太郎 副総理兼財務相
「理財局長時代の国会対応に丁寧さを欠き、混乱を招いた」
YOMIURI ONLINE 2018年3月9日
3月9日夜、緊急会見を開いた麻生氏が最初に挙げた佐川氏辞任の理由がコレ。自分で「丁寧な説明に努めてきた」って言ってたのに!
※財務省は10日、学校法人「森友学園」への国有地売却に関する決裁文書に書き換えがあったと認める方針を固めた。当初の記述を削除した例が複数判明したとの調査結果をまとめ、12日に国会に報告する。関与した近畿財務局の担当職員や本省幹部らの懲戒処分を検討する。野党は「政権の隠蔽体質」への批判を強める構えで、安倍晋三首相や麻生太郎副総理兼財務相の政治責任を問う声が与党で高まる可能性もある。
決裁文書の国会提出時に担当局長だった佐川宣寿国税庁長官が9日付で辞任するなど混乱が拡大。財務省自らが書き換えの事実を認めることで政権への打撃は大きく、森友問題は重大局面を迎えた。