・欧州の難民危機を煽るNGO
2016年12月29日 田中 宇
http://tanakanews.com/161229refugee.htm
※リビア(北アフリカ)からイタリアへの地中海をわたる経済難民(不法移民)の流入を、欧州のNGO群が支援している。リビアのマフィアがアフリカ全土から勧誘して有料で連れてきた不法移民をリビア沖の領海の外れまでゴムボートで運び、それをNGOの船が引き取ってイタリアの港まで運んで難民申請させ、NGOが欧州の難民危機を扇動している。このルートの難民流入は、トランプが当選した米大統領選の少し前から急増し、今年の流入は前年比2割増の17万人。最近は、その4割を26の欧州NGO群が運んでいる。
NGOのこの行為の真意は不明だ。NGOは「溺死防止という人道支援」だと言っているが、政治的な効果を考えると、別な意図が感じられる。難民流入が増えるほど「欧州リベラルエリート層の最後の希望」である独メルケル首相の人気が下がり、EU各国の反エリートな極右極左勢力が政治台頭する。難民をリビアから送り出すマフィアにはアルカイダやISも絡んでいる。NGOは、欧州のテロ頻発を煽っている。
▼リビアの密航業者を儲けさせている欧州の難民支援NGO
内戦で国家崩壊している北アフリカのリビアから、地中海対岸のイタリアにわたる海路は、トルコからギリシャの島へのルートと並び、欧州への難民流入の2大経路だ。リビアのマフィアが、リビア人だけでなく、隣接国のニジェールやアルジェリア、もっと遠くからの越境組も含め、経済難民(違法移民)として欧州にわたって金を稼ぎたい人々からカネをとり、リビアの海岸から漁船などに乗せて地中海に送り出す。以前は、リビアを出港した難民輸送船がそのままイタリアの港まで来たが、最近は、リビア沖の領海を外れたところでNGOの船が待っていて、難民たちは海上で船を乗り換え、NGOの船でイタリアに向かうことが多い。
今年の初めまで、リビアからイタリアに渡航してくる難民(違法移民)のうち、NGOの船に乗ってイタリアに入港する者は2-3%にすぎなかったが、今秋に急増して約40%にもなっている。NGOと密航業者の連携が強化された感じだ。リビア・イタリアルートの流入難民の総数も、秋から増加し、今年の総流入数は昨年比2割増になっている。地中海の海水温が低い秋冬は通常、難民の密航が減る時期であり、今秋からの増加は異様だと、欧州の外交官が言っている。リビアなどアフリカ側の難民送り出し業者が「間もなくリビア経由でイタリアに行く難民ルートが通れなくなるので、行きたい人は急いだ方がいい」と煽っているという。
EUの外交部門(EEAS)が作った報告書によると、リビア・イタリア海路に船を出して難民(違法移民)の渡航を助けているNGOは26組織ある。マルタに本拠地を置くMOAS(Migrant Offshore Aid Station)、ドイツの「Jugend Rettet」や「Sea-Watch.org」「Sea-Eye.org」、オランダの「Stichting Bootvluchteling(ボート難民基金)」、スペインの「Proactiva Open Arms」などだ。「国境なき医師団」や「セーブザチルドレン」も地中海を渡航する難民を助けている。いずれの団体も、欧州の「善意ある人々」からの寄付を募っている。
彼らは、国際海洋法が、航行中の船舶に対し、海上で困っている人がいたら助ける義務を課していることに依拠し、地中海に船を出し「偶然に遭遇」した難民船に乗っている困っている人々を自分たちの船に乗せてイタリアまで送り届けていると言っている。NGOの船が難民船に出会うリビア沖からは、イタリアよりチュニジアの方が近いが、難民をチュニジアの港に送り届けるとリビアに送還されて当局から人権侵害を受けかねないという理由で、遠くのイタリアまで運んでいる。いったんイタリアに上陸した違法移民たちは難民申請し、EUの国境検問廃止のシェンゲン体制を利用し、独仏など他のEU諸国に自由に行けるようになる。
NGOの難民救援は「人道支援」の体裁で貫かれているが、視野を広げると、そんなきれいごとでないとわかる。NGOの行動は、アフリカからEUへの違法移民の流入を扇動している。アフリカ側では、マフィア的な密航支援業者が、今ならカネさえ出せば簡単に欧州に出稼ぎに行けるぞと人々に宣伝し、各地からリビア沖にどんどん密航者を連れてくる。以前は、リビアを発った船でそのまま400キロもわたってイタリアまで行かねばならず、比較的大きな漁船などが必要だった。いったんイタリアに入港した船は伊当局に没収され、密航業者のところに戻ってこないので、業者が密航者から徴収する渡航費用も高かった。
だが今年に入り、上記のNGOの船がリビアの海岸から12海里(22キロ)の領海内の、すぐ外までやってきて、密航業者の船から密航者(難民)たちを引き取ってNGOの船に乗せてイタリアまで送り届けるようになった。NGOは合法な「人道支援」をしているので、船を没収されず、イタリアとリビア沖を往復し続けている。密航業者は、以前のようにイタリアまで行ける船を用意する必要がなくなり、12海里を航行できる安いゴムボートで密航者をNGOの船まで送り届け、そのままボートは海岸に戻り、次の密航者群を乗せてまた出発することを繰り返せるようになった。渡航費用が大幅に下がり、密航者(難民)の急増と、密航業者の利益急拡大が起きている。
リビアは内戦で無政府状態なので、領海の警備ができていない。NGOの船のいくつかはリビアの領海内に入り、密航業者のゴムボートの航行距離をさらに縮めることもやっている。密航業者はますます助かっている。EUは、NGOと密航業者が共謀していると見る傾向を強めている。
密航業者や密航者の中には、アルカイダやISもたくさん入り込んでいる。彼らは密航者を運ぶだけでなく、麻薬も難民船に乗せてイタリアに運んで儲けている。NGOは、密航者がテロリストでなく、麻薬も持っていないことを確認していないだろう。密航業者がイタリアの沿岸警備隊や入国審査官に贈賄しているという指摘もある。
(後半はブログ主の見解と異なるので省略)
・仕組まれた欧州難民危機
2017年6月1日 田中 宇
https://tanakanews.com/170601italia.htm
※5月下旬に行われたG7サミットの議長国だったイタリアが、開催地をイタリア最南部のシチリア島に定めた理由は、シチリア島がアフリカの対岸にあり、アフリカ(特に内戦中のリビア)からイタリアに多数の難民が渡航してくる「難民危機」を、G7共通の課題として強調する意図があった。リビアの海岸からイタリア南部へと、地中海を船で渡る経路は、トルコからギリシャへの経路が閉鎖された後、中東から欧州への最大の難民流入ルートだ。リビアからイタリアに押し寄せる難民数は、13年の4万人から、14年以降、毎年20万人前後に急増した。
欧州だけでなく、G7の先進諸国の全体で、難民の受け入れを増やすとか、アフリカ支援を強化して難民が流出してくる元凶(貧困、内戦)を減らすことで、近年特に欧州が苦しんでいる難民危機を緩和するのがイタリア政府の希望だった。
しかし調べていくと、イタリア政府は実のところ、リビアから渡海してくる難民を食い止めようとしてこなかったことがわかる。それだけでなく、イタリア政府やEU当局は、リビアからイタリアを通ってEU全体への難民や違法移民ができるだけ多く流入するよう、むしろ扇動する政策を何年も続けてきた。
▼違法移民の流入を煽り、どんどん国籍付与していたイタリア政府とEU
昨年末の記事で、欧州の26のNGOが、リビア沖の了解ぎりぎりの海域まで船を出し、リビアの海岸からゴムボートに難民(=違法移民)を満載して送り出してくるリビアの密航業者から難民を受け取り、NGOの船に乗せてイタリア南部の港に入港する作業を繰り返していることを書いた。密航業者は、リビアやサハラ以南に住む、欧州に行きたい人々からカネをもらって密航を請け負うマフィアだ。NGOの運搬作業によって、難民とマフィアにとって、リビアからイタリアへの密航にともなうリスクやコストが激減した。NGOは、難民の流入を扇動している。
昨年末の記事で書いたことは、リビアからイタリアへの難民渡航の全体像の一部にすぎなかった。欧州のNGOがリビアの密航業者を助けて難民のイタリア流入を扇動する前には、イタリア海軍や、EUの沿岸警備隊(フロンテックス)が、リビア沖まで軍艦を出し、密航業者から難民を引き取ってイタリアの港まで運んでいた。リビア内戦の激化により、リビアからイタリアへの難民渡海が増えた2013年10月から、イタリア軍が「地中海作戦(Operation Mare Nostrum)」と銘打って難民の引き受け作業を展開した。
財政難なイタリア政府は、EUが作業を肩代わりしてくれるよう頼み、14年11月からは、EUによる「トリトン作戦」に引き継がれた。EU諸国には、イタリアの軍艦がリビア沖の領海ぎりぎりのところまで出て行って難民を受け入れていることに批判的な声があった。そのためEUの沿岸警備隊は、領海ぎりぎりまで行かず本来の沿岸警備に徹し、代わりに「人道支援」を掲げるNGOが船を出してリビア沖まで行き、難民を引き取ってくる作業を開始した。私が昨年末に記事にしたのは、このNGOの作業の部分だけだった。それ以前には、イタリア政府やEUという国家機関自体が、リビアの密航業者から難民を引き取って「運び屋」をやり、難民流入を扇動していた。
それだけではない。イタリア政府は、難民流入が急増する前の2011年に移民難民受け入れ担当の新官庁(Ministry for Intrgration、統合省)を作り、難民を受け入れる市民運動を展開しているカトリック団体の指導者(Andrea Riccardi)を大臣に据えた。13年からは、自らもアフリカから来た移民で、移民にイタリア国籍を与える市民運動を展開している政治家(Cecile Kyenge)が大臣になった。この官庁は、リビアなどからどんどん流入する難民たちに対し、いかに早くイタリアの永住権や国籍を付与するかを考えるのが仕事だった。
2014年2月に首相がレッタからレンツィに代わるとともに、難民に対して安易にどんどん永住権や国籍を与える政策への反対が大きくなり、統合省は廃止されて内務省の一部に格下げされ、現在に至っている。だがその一方で、域内の国境検問を廃止したシェンゲン条約によって、リビアからイタリアに入国した違法移民たちは、簡単にドイツなどEU全土に移動して住むことができる状態が続いている。
リビアやシリア(トルコ経由)などからの流入者の中には、アルカイダやISを支持する勢力も多い。流入者の中には、内戦で殺されることから逃れてきた正真正銘の「難民」がいる半面、豊かな欧州で福祉金をもらって生活したい、仕事を探したいという、経済目的の違法移民も非常に多い。イタリア政府やEUは、このような構図を熟知しながら、人道問題を口実に密航者の全員を受け入れ、リビア領海ぎりぎりまで船を出すことで、より多くの人々が欧州に密航したがる事態を意図的に作っていた。
(同省略)
大金持ちの投資家ジョージ・ソロスは、イタリアからリビア沖まで違法移民たちを迎えに行く船を出している欧州のいくつかのNGOに資金を出していると指摘されている。彼は今年のダボス会議で、トランプ政権を潰すと宣言した。またソロスは、ルペンなど欧州大陸の極右極左の政治家の当選を阻止する活動をしているNGOにも資金を出している。
・著名投資家G・ソロス、難民・移民支援に500億円投資(Forbes 2016年9月21日)
※ヘッジファンド経営者で富豪のジョージ・ソロス(86)は20日、自身が設立したNPOを通じ、欧州などに流入する難民・移民の雇用機会を創出する事業に5億ドル(約509億円)を投資すると発表した。
ソロスは米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)に寄稿した意見記事で、「スタートアップや既存企業、ソーシャルインパクトイニシアチブ、そして移民・難民が自ら立ち上げた事業に投資する。私の関心は主に欧州に到着する移民・難民の支援にあるが、世界中の移民の手助けになるような良い投資アイデアを募集する」と述べている。
ソロス自身もまた、1946年に母国ハンガリーを逃れた移民だ。少年時代をロンドンで過ごし、鉄道の客室係やウエイターとして働きながらロンドン・スクール・オブ・エコノミクスを卒業。ニューヨークへと移り住み、ウォールストリートで働き始めた。1969年に1,200万ドルの資金を元手にヘッジファンド「クォンタム・ファンド」を設立。フォーブスは、ソロスの現在の総資産を249億ドルと推定している。
ソロスは以前にも、自身の財団「オープン・ソサイエティ」を通じ、生涯で110億ドル以上を寄付する意向を表明している。今回の5億ドルは寄付ではなく投資で、運用は自身のNPOが行うという。「この投資は、成功を前提としている。民間資本が移民支援に建設的な役割を果たせることを示したいからだ。利益は全てオープン・ソサイエティ財団のプログラム運営に充てられる。こうしたプログラムには、移民・難民支援も含まれる」とソロスは説明している。
ソロスはここ数年にわたり、移民支援団体への寄付を続けてきた。また、米大統領選で反移民的な発言を連発する共和党候補のドナルド・トランプに批判的な立場を取っており、3月にはヒスパニック系有権者にトランプ不支持を呼び掛ける政治活動委員会「Immigrant Voters Win PAC」を通じた500万ドルの寄付を表明している。
・独メルケル首相 難民受け入れ20万人上限(NHK NEWS web 2017年10月10日)
※先月行われたドイツの議会選挙で自身の率いる与党が大きく議席を減らしたメルケル首相は、寛容な難民受け入れ政策が右派政党の躍進を許したという批判を受けてこれまでの方針を転換し、難民の受け入れ人数に年間20万人の上限を設ける方針を明らかにしました。
ドイツに到着した難民や移民の数は、おととしは89万人、去年も28万人にのぼり、先月の連邦議会選挙では難民政策が主要な争点となりました。
選挙では、メルケル首相率いる与党キリスト教民主・社会同盟が、第1党は維持したものの議席を大きく減らした一方、難民の受け入れに反対する新興の右派政党「ドイツのための選択肢」は初めて議席を獲得しただけでなく第3党に躍進しました。
メルケル首相は、9日、首都ベルリンで記者会見し「ドイツが1年に受け入れる人の数が20万人を超えないようにする」と述べ、これまでの方針を転換し難民の受け入れ人数に上限を設ける方針を明らかにしました。今回の選挙結果を受けて与党内からは、首相の寛容な難民政策が右派政党の躍進を許したという批判が出ていました。
メルケル首相は、来週から中道右派の自由民主党や環境を重視する緑の党との連立交渉を始める方針ですが、緑の党は寛容な難民政策を続けるよう求めており、交渉は難航も予想されます。
※20万人でも多過ぎるわ!50年で1000万人じゃんか。しかも国内で自己増殖するし。最初に目標より大目に要求しておいて、後から減らすことで、妥協したように錯覚させて、国民を騙す手法だ。
2016年12月29日 田中 宇
http://tanakanews.com/161229refugee.htm
※リビア(北アフリカ)からイタリアへの地中海をわたる経済難民(不法移民)の流入を、欧州のNGO群が支援している。リビアのマフィアがアフリカ全土から勧誘して有料で連れてきた不法移民をリビア沖の領海の外れまでゴムボートで運び、それをNGOの船が引き取ってイタリアの港まで運んで難民申請させ、NGOが欧州の難民危機を扇動している。このルートの難民流入は、トランプが当選した米大統領選の少し前から急増し、今年の流入は前年比2割増の17万人。最近は、その4割を26の欧州NGO群が運んでいる。
NGOのこの行為の真意は不明だ。NGOは「溺死防止という人道支援」だと言っているが、政治的な効果を考えると、別な意図が感じられる。難民流入が増えるほど「欧州リベラルエリート層の最後の希望」である独メルケル首相の人気が下がり、EU各国の反エリートな極右極左勢力が政治台頭する。難民をリビアから送り出すマフィアにはアルカイダやISも絡んでいる。NGOは、欧州のテロ頻発を煽っている。
▼リビアの密航業者を儲けさせている欧州の難民支援NGO
内戦で国家崩壊している北アフリカのリビアから、地中海対岸のイタリアにわたる海路は、トルコからギリシャの島へのルートと並び、欧州への難民流入の2大経路だ。リビアのマフィアが、リビア人だけでなく、隣接国のニジェールやアルジェリア、もっと遠くからの越境組も含め、経済難民(違法移民)として欧州にわたって金を稼ぎたい人々からカネをとり、リビアの海岸から漁船などに乗せて地中海に送り出す。以前は、リビアを出港した難民輸送船がそのままイタリアの港まで来たが、最近は、リビア沖の領海を外れたところでNGOの船が待っていて、難民たちは海上で船を乗り換え、NGOの船でイタリアに向かうことが多い。
今年の初めまで、リビアからイタリアに渡航してくる難民(違法移民)のうち、NGOの船に乗ってイタリアに入港する者は2-3%にすぎなかったが、今秋に急増して約40%にもなっている。NGOと密航業者の連携が強化された感じだ。リビア・イタリアルートの流入難民の総数も、秋から増加し、今年の総流入数は昨年比2割増になっている。地中海の海水温が低い秋冬は通常、難民の密航が減る時期であり、今秋からの増加は異様だと、欧州の外交官が言っている。リビアなどアフリカ側の難民送り出し業者が「間もなくリビア経由でイタリアに行く難民ルートが通れなくなるので、行きたい人は急いだ方がいい」と煽っているという。
EUの外交部門(EEAS)が作った報告書によると、リビア・イタリア海路に船を出して難民(違法移民)の渡航を助けているNGOは26組織ある。マルタに本拠地を置くMOAS(Migrant Offshore Aid Station)、ドイツの「Jugend Rettet」や「Sea-Watch.org」「Sea-Eye.org」、オランダの「Stichting Bootvluchteling(ボート難民基金)」、スペインの「Proactiva Open Arms」などだ。「国境なき医師団」や「セーブザチルドレン」も地中海を渡航する難民を助けている。いずれの団体も、欧州の「善意ある人々」からの寄付を募っている。
彼らは、国際海洋法が、航行中の船舶に対し、海上で困っている人がいたら助ける義務を課していることに依拠し、地中海に船を出し「偶然に遭遇」した難民船に乗っている困っている人々を自分たちの船に乗せてイタリアまで送り届けていると言っている。NGOの船が難民船に出会うリビア沖からは、イタリアよりチュニジアの方が近いが、難民をチュニジアの港に送り届けるとリビアに送還されて当局から人権侵害を受けかねないという理由で、遠くのイタリアまで運んでいる。いったんイタリアに上陸した違法移民たちは難民申請し、EUの国境検問廃止のシェンゲン体制を利用し、独仏など他のEU諸国に自由に行けるようになる。
NGOの難民救援は「人道支援」の体裁で貫かれているが、視野を広げると、そんなきれいごとでないとわかる。NGOの行動は、アフリカからEUへの違法移民の流入を扇動している。アフリカ側では、マフィア的な密航支援業者が、今ならカネさえ出せば簡単に欧州に出稼ぎに行けるぞと人々に宣伝し、各地からリビア沖にどんどん密航者を連れてくる。以前は、リビアを発った船でそのまま400キロもわたってイタリアまで行かねばならず、比較的大きな漁船などが必要だった。いったんイタリアに入港した船は伊当局に没収され、密航業者のところに戻ってこないので、業者が密航者から徴収する渡航費用も高かった。
だが今年に入り、上記のNGOの船がリビアの海岸から12海里(22キロ)の領海内の、すぐ外までやってきて、密航業者の船から密航者(難民)たちを引き取ってNGOの船に乗せてイタリアまで送り届けるようになった。NGOは合法な「人道支援」をしているので、船を没収されず、イタリアとリビア沖を往復し続けている。密航業者は、以前のようにイタリアまで行ける船を用意する必要がなくなり、12海里を航行できる安いゴムボートで密航者をNGOの船まで送り届け、そのままボートは海岸に戻り、次の密航者群を乗せてまた出発することを繰り返せるようになった。渡航費用が大幅に下がり、密航者(難民)の急増と、密航業者の利益急拡大が起きている。
リビアは内戦で無政府状態なので、領海の警備ができていない。NGOの船のいくつかはリビアの領海内に入り、密航業者のゴムボートの航行距離をさらに縮めることもやっている。密航業者はますます助かっている。EUは、NGOと密航業者が共謀していると見る傾向を強めている。
密航業者や密航者の中には、アルカイダやISもたくさん入り込んでいる。彼らは密航者を運ぶだけでなく、麻薬も難民船に乗せてイタリアに運んで儲けている。NGOは、密航者がテロリストでなく、麻薬も持っていないことを確認していないだろう。密航業者がイタリアの沿岸警備隊や入国審査官に贈賄しているという指摘もある。
(後半はブログ主の見解と異なるので省略)
・仕組まれた欧州難民危機
2017年6月1日 田中 宇
https://tanakanews.com/170601italia.htm
※5月下旬に行われたG7サミットの議長国だったイタリアが、開催地をイタリア最南部のシチリア島に定めた理由は、シチリア島がアフリカの対岸にあり、アフリカ(特に内戦中のリビア)からイタリアに多数の難民が渡航してくる「難民危機」を、G7共通の課題として強調する意図があった。リビアの海岸からイタリア南部へと、地中海を船で渡る経路は、トルコからギリシャへの経路が閉鎖された後、中東から欧州への最大の難民流入ルートだ。リビアからイタリアに押し寄せる難民数は、13年の4万人から、14年以降、毎年20万人前後に急増した。
欧州だけでなく、G7の先進諸国の全体で、難民の受け入れを増やすとか、アフリカ支援を強化して難民が流出してくる元凶(貧困、内戦)を減らすことで、近年特に欧州が苦しんでいる難民危機を緩和するのがイタリア政府の希望だった。
しかし調べていくと、イタリア政府は実のところ、リビアから渡海してくる難民を食い止めようとしてこなかったことがわかる。それだけでなく、イタリア政府やEU当局は、リビアからイタリアを通ってEU全体への難民や違法移民ができるだけ多く流入するよう、むしろ扇動する政策を何年も続けてきた。
▼違法移民の流入を煽り、どんどん国籍付与していたイタリア政府とEU
昨年末の記事で、欧州の26のNGOが、リビア沖の了解ぎりぎりの海域まで船を出し、リビアの海岸からゴムボートに難民(=違法移民)を満載して送り出してくるリビアの密航業者から難民を受け取り、NGOの船に乗せてイタリア南部の港に入港する作業を繰り返していることを書いた。密航業者は、リビアやサハラ以南に住む、欧州に行きたい人々からカネをもらって密航を請け負うマフィアだ。NGOの運搬作業によって、難民とマフィアにとって、リビアからイタリアへの密航にともなうリスクやコストが激減した。NGOは、難民の流入を扇動している。
昨年末の記事で書いたことは、リビアからイタリアへの難民渡航の全体像の一部にすぎなかった。欧州のNGOがリビアの密航業者を助けて難民のイタリア流入を扇動する前には、イタリア海軍や、EUの沿岸警備隊(フロンテックス)が、リビア沖まで軍艦を出し、密航業者から難民を引き取ってイタリアの港まで運んでいた。リビア内戦の激化により、リビアからイタリアへの難民渡海が増えた2013年10月から、イタリア軍が「地中海作戦(Operation Mare Nostrum)」と銘打って難民の引き受け作業を展開した。
財政難なイタリア政府は、EUが作業を肩代わりしてくれるよう頼み、14年11月からは、EUによる「トリトン作戦」に引き継がれた。EU諸国には、イタリアの軍艦がリビア沖の領海ぎりぎりのところまで出て行って難民を受け入れていることに批判的な声があった。そのためEUの沿岸警備隊は、領海ぎりぎりまで行かず本来の沿岸警備に徹し、代わりに「人道支援」を掲げるNGOが船を出してリビア沖まで行き、難民を引き取ってくる作業を開始した。私が昨年末に記事にしたのは、このNGOの作業の部分だけだった。それ以前には、イタリア政府やEUという国家機関自体が、リビアの密航業者から難民を引き取って「運び屋」をやり、難民流入を扇動していた。
それだけではない。イタリア政府は、難民流入が急増する前の2011年に移民難民受け入れ担当の新官庁(Ministry for Intrgration、統合省)を作り、難民を受け入れる市民運動を展開しているカトリック団体の指導者(Andrea Riccardi)を大臣に据えた。13年からは、自らもアフリカから来た移民で、移民にイタリア国籍を与える市民運動を展開している政治家(Cecile Kyenge)が大臣になった。この官庁は、リビアなどからどんどん流入する難民たちに対し、いかに早くイタリアの永住権や国籍を付与するかを考えるのが仕事だった。
2014年2月に首相がレッタからレンツィに代わるとともに、難民に対して安易にどんどん永住権や国籍を与える政策への反対が大きくなり、統合省は廃止されて内務省の一部に格下げされ、現在に至っている。だがその一方で、域内の国境検問を廃止したシェンゲン条約によって、リビアからイタリアに入国した違法移民たちは、簡単にドイツなどEU全土に移動して住むことができる状態が続いている。
リビアやシリア(トルコ経由)などからの流入者の中には、アルカイダやISを支持する勢力も多い。流入者の中には、内戦で殺されることから逃れてきた正真正銘の「難民」がいる半面、豊かな欧州で福祉金をもらって生活したい、仕事を探したいという、経済目的の違法移民も非常に多い。イタリア政府やEUは、このような構図を熟知しながら、人道問題を口実に密航者の全員を受け入れ、リビア領海ぎりぎりまで船を出すことで、より多くの人々が欧州に密航したがる事態を意図的に作っていた。
(同省略)
大金持ちの投資家ジョージ・ソロスは、イタリアからリビア沖まで違法移民たちを迎えに行く船を出している欧州のいくつかのNGOに資金を出していると指摘されている。彼は今年のダボス会議で、トランプ政権を潰すと宣言した。またソロスは、ルペンなど欧州大陸の極右極左の政治家の当選を阻止する活動をしているNGOにも資金を出している。
・著名投資家G・ソロス、難民・移民支援に500億円投資(Forbes 2016年9月21日)
※ヘッジファンド経営者で富豪のジョージ・ソロス(86)は20日、自身が設立したNPOを通じ、欧州などに流入する難民・移民の雇用機会を創出する事業に5億ドル(約509億円)を投資すると発表した。
ソロスは米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)に寄稿した意見記事で、「スタートアップや既存企業、ソーシャルインパクトイニシアチブ、そして移民・難民が自ら立ち上げた事業に投資する。私の関心は主に欧州に到着する移民・難民の支援にあるが、世界中の移民の手助けになるような良い投資アイデアを募集する」と述べている。
ソロス自身もまた、1946年に母国ハンガリーを逃れた移民だ。少年時代をロンドンで過ごし、鉄道の客室係やウエイターとして働きながらロンドン・スクール・オブ・エコノミクスを卒業。ニューヨークへと移り住み、ウォールストリートで働き始めた。1969年に1,200万ドルの資金を元手にヘッジファンド「クォンタム・ファンド」を設立。フォーブスは、ソロスの現在の総資産を249億ドルと推定している。
ソロスは以前にも、自身の財団「オープン・ソサイエティ」を通じ、生涯で110億ドル以上を寄付する意向を表明している。今回の5億ドルは寄付ではなく投資で、運用は自身のNPOが行うという。「この投資は、成功を前提としている。民間資本が移民支援に建設的な役割を果たせることを示したいからだ。利益は全てオープン・ソサイエティ財団のプログラム運営に充てられる。こうしたプログラムには、移民・難民支援も含まれる」とソロスは説明している。
ソロスはここ数年にわたり、移民支援団体への寄付を続けてきた。また、米大統領選で反移民的な発言を連発する共和党候補のドナルド・トランプに批判的な立場を取っており、3月にはヒスパニック系有権者にトランプ不支持を呼び掛ける政治活動委員会「Immigrant Voters Win PAC」を通じた500万ドルの寄付を表明している。
・独メルケル首相 難民受け入れ20万人上限(NHK NEWS web 2017年10月10日)
※先月行われたドイツの議会選挙で自身の率いる与党が大きく議席を減らしたメルケル首相は、寛容な難民受け入れ政策が右派政党の躍進を許したという批判を受けてこれまでの方針を転換し、難民の受け入れ人数に年間20万人の上限を設ける方針を明らかにしました。
ドイツに到着した難民や移民の数は、おととしは89万人、去年も28万人にのぼり、先月の連邦議会選挙では難民政策が主要な争点となりました。
選挙では、メルケル首相率いる与党キリスト教民主・社会同盟が、第1党は維持したものの議席を大きく減らした一方、難民の受け入れに反対する新興の右派政党「ドイツのための選択肢」は初めて議席を獲得しただけでなく第3党に躍進しました。
メルケル首相は、9日、首都ベルリンで記者会見し「ドイツが1年に受け入れる人の数が20万人を超えないようにする」と述べ、これまでの方針を転換し難民の受け入れ人数に上限を設ける方針を明らかにしました。今回の選挙結果を受けて与党内からは、首相の寛容な難民政策が右派政党の躍進を許したという批判が出ていました。
メルケル首相は、来週から中道右派の自由民主党や環境を重視する緑の党との連立交渉を始める方針ですが、緑の党は寛容な難民政策を続けるよう求めており、交渉は難航も予想されます。
※20万人でも多過ぎるわ!50年で1000万人じゃんか。しかも国内で自己増殖するし。最初に目標より大目に要求しておいて、後から減らすことで、妥協したように錯覚させて、国民を騙す手法だ。