・中国、かつてない監視社会に 信用履歴で家族も縛る(日本経済新聞 2017年6月9日)
※4月。深圳の外資系企業に勤める鍾さんは、出張のため航空券を買おうとして仰天した。
「黒名単(ブラックリスト)に載っているので買えません」との通知を受けたのだ。調べると知らぬうちに父親が経営する企業の株主になっており、その企業が債務不履行に陥っているためと分かった。
■「失信被執行人」認定で移動を制限
鍾さんについた不名誉なタイトルは「失信被執行人」。判決や和解に従わず賠償金などを滞納した人を主な対象に、裁判所が認定する。「株主は有限責任ではないのか?」。釈然としない思いを抱きながらも、鍾さんは父親が放置していた債務40万元(650万円)を納めるため裁判所に足を運ばざるを得なかった。
約束を守る。借りた金は返す。当たり前のことを大義名分に、中国がこれまでにない監視社会を構築しつつある。2014年に公表した「社会信用体系建設規画綱要」が事の始まりだった。拍車をかけたのが、16年に最高人民法院(最高裁)が中国人民銀行(中央銀行)や公安省、国土資源省、交通運輸省、中国鉄路総公司など40を超す省庁や部局、国有企業と結んだ「備忘録」だ。
備忘録の中身は苛烈だ。
備忘録を結んだ省庁や企業が「失信被執行人」の情報を共有し、様々な制限を科す。項目をいくつか箇条書きにすると以下のようになる。
(1)換金性の高い保険商品の購入制限
(2)企業の取締役などへの就任の制限
(3)航空機や高速鉄道の利用制限
(4)四つ星以上のホテルやゴルフ場などの利用制限
(5)不動産の購入制限
(6)ツアー旅行などの利用制限
(7)子女の私立学校への就学制限
(8)出国の制限
(9)パスポートや婚姻状況、保有する車両などの情報を調査
■アリペイ残高を差し押さえる実例も
借金の踏み倒しや判決を守らないことはもちろん非難されるべきだ。ただ、ペナルティーは犯した不正の重さに見合う内容になるべきで、ここまで厳しい懲罰が必要かはよくよく考える必要がある。あからさまに移動の自由を制限したり、子女にまで累が及ぶようにしたりする必要はあるのか。しかし、最高人民法院長(最高裁長官)の周強氏は3月の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)で「飛行機628万人、高速鉄道で229万人の利用を制限した」と発表、新しい仕組みが機能していることをむしろ誇った。
不気味なことはまだある。政府が、民間のデータベースにまで触手を伸ばしていることだ。
40超の省庁などと備忘録を結んだのと前後し、最高人民法院はアリババ傘下で個人の信用評価システムを手掛ける「芝麻信用」とも協力関係を構築した。
ネット取引だけでなく、スマートフォンを介した電子決済の「支付宝(アリペイ)」や余資運用など、アリババは中国人の暮らしのあらゆる場面に根を下ろしている。アリババに「失信被執行人」の情報を流し、サービスの利用を制限すればペナルティーの実効性は一段と増す。
芝麻信用の評価に一喜一憂する利用者は多い
16年にはアリペイの残高を差し押さえる実例も発生した。裁判所の情報提供を受けたアリババがサービスから閉め出すだけでなく、アリババが裁判所に利用者の情報を提供している可能性が浮かぶ。
芝麻信用は個人の信用度を350~950点でポイント化する。信用度が高いと与信枠や金利などで優遇されるだけに、様々な情報を入力し、かつ決済をアリペイに集中するユーザーは多い。これらの情報を当局も容易に共有できるとすれば――。中国政府は4月末、急速に普及するシェアサイクルとも情報を共有すると発表している。
何より気がかりなのが、経済事件を起こした人への罰則ともいえる「失信被執行人」の仕組みを超え、あらゆるデータを国民の監視や統制に活用する動きが現実になりつつあることだ。
14年の「社会信用体系建設規画綱要」には「全国で自然人の信用記録をカバーする」「公務員や企業の代表者、弁護士、会計士、上場企業幹部、医療従事者、教師、マスコミ、旅行ガイドなどの『職業信用報告』の利用を広げる」「自然人、法人を統一した『社会信用コード』を整備する」といった言葉が並ぶ。具体的な内容は定かではないが、十数億人という人口はもはや制約ではなくなった。デジタルデータに残るすべての情報を一人ひとりにひも付け、監視することは不可能ではない。
■交通規則違反も個人信用履歴と関連づけ
すでに上海市はスピード違反などの交通規則違反を個人の信用履歴と関連づける方針を表明している。通貨当局は海外でわずか1000元以上の利用、引き出し履歴を収集すると発表した。
信用といえば聞こえはいいが、何が「よい振る舞い」で、何が「とがめられる行為」か決めるのは国だ。罰則も国が決める。山東省徳州市は「失信被執行人」の氏名、生年月日、戸籍の所在地、顔写真すべてをネット上で開示し、見かけた人に通報を呼びかける電話番号まで掲載した。「社会信用体系建設規画綱要」が掲げる目標年次は2020年。わずか3年後だ。「約束破りのペナルティーが重くなれば、悪さをする人も減るはずだ」と安穏としていられるのはいつまでだろうか。
・中国の監視体制強化と習近平神聖化 共産主義から個人崇拝へ
2017年06月15日
http://www.thutmosev.com/archives/71358321.html
※中国の言論弾圧強化
中国で再び人権弾圧が強化され、大勢の活動家が拘束され、ネットの言論規制も強化されている。
そして最高指導者の習近平を初代指導者の毛沢東と同格とする、習近平の神格化が進められている。
中国では2015年7月に、人権派弁護士100人以上を拘束し、このうち数人は現在も消息不明のままになっている。
中国における「逮捕」の概念は他の国と大きく異なり、大抵は公安や警察がドアをノックする事から始まる。
ドアが開けられない場合は工具などを用いて破壊し、どちらにしても1分程度で室内に突入してくる。
容疑や逮捕の理由は告げられず、裁判所の逮捕状なども提示されず、「遠いところに行く」「旅行に行く事になる」などと説明する。
公安は自分の身分を明かさず、拘束や逮捕した事実を公表しないので、その場に証人がいなければ「失踪」として扱われる。
警察に逮捕されたまま、逮捕された事実が公表されず、そのまま行方不明者になる人が非常に多い。
最近では日本人旅行者数人が中国で「行方不明」になり、7人がスパイとして中国公安に逮捕されているのが、中国政府によって発表された。
この例でも中国政府が公表しなければ、失踪者として永遠に闇に葬られた筈だが、恐らく中国は日本政府に圧力を掛けるために、わざわざ公表した。
2007年に起きた「餃子事件」など大きな話題になった事件は裁判が開かれ、経緯や判決が公開されるが、通常なんの発表もしない。
逮捕して裁判を開かず刑務所や収容所に送ったり、人知れず「始末」する事など朝飯前です。
2015年に弁護士300人を逮捕
因みに餃子事件は7年後の2014年に地裁で無期懲役を言い渡されたが、審理の経緯は非公開で結果だけが報告された。
餃子に毒を入れたのは実は共産党関係者だとか、工場幹部だったなどの噂が絶えず、真実は永遠に分からない。
こうした結果発表すら中国では異例中の異例であり、日本向けの大サービスだった。
2012年には貴州省畢節市という街で、5人のホームレスの子供が、ゴミ箱の中で寒さをしのいで、翌朝なくなるという事件が起きた。
写真を撮影してネットで公開したカメラマンは行方不明になり、公安に連行されたと噂されている。
中国では新聞記者や報道関係者は国家資格であり、無資格で報道をすると逮捕され消される。
人権派と呼ばれる市民寄りの記者やカメラマンの大半は国家資格を剥奪されたり逮捕され、報道に関わる事を禁止された。
2015年7月に拘束された弁護士120人(実際は300人と言われている)のうち、数人を詐欺罪などで起訴し有罪にした。
ほとんどの弁護士は短期間で釈放され、逮捕前とは人が変わったように、政府や共産党を称賛するようになった。
そして公安に連行された弁護士数人が失踪したままで、政府は連行した事実そのものを否定している。
2017年5月には、拘束された弁護士を支援する活動をしていた弁護士の江天勇が、国家政権転覆扇動で逮捕された。
中国はネット監視体制を強化していて、既に匿名でネットに書き込むことは出来なくなっている。
ネット監視体制を強化
法律で匿名のネット利用は禁止され、掲示板やSNSも実名で登録しない限り書き込めなくなっている。
さらに2016年からはネット上と現実の信用情報をリンクさせて、13億人の人民をランク付けする制度が始まった。
例えば政府批判や共産党批判の書き込みをネットですると、クレジットカードが停止されるような事です。
実際に車を買おうとした人が信用情報を理由にローンを断られたり、銀行取引を停止されたりしている。
裁判所、鉄道、公安、国有企業や大企業も参加し、信用度が低い人はネット接続も拒否される。
制限は多岐に渡り、鉄道や飛行機の利用、ホテルの利用、投資商品の売買、不動産の購入、旅行、家族の公立学校就学、出国が禁止される。
電子マネーや銀行口座差し押さえなども行われていて、しかも違反者はネット上で実名と住所氏名生年月日を公開され社会から排除される。
信用情報と連動するのは交通違反、ネット上の煽動、悪口、党や政府批判、現実世界の法律違反などだが、何が連動するか公表されていない。
例えば2015年夏に中国株が暴落したとき、株を売った人間が「犯人」として逮捕され資産を没収された。
どこで因縁をつけられるか分からず、ネットに何気なく書いた一言で「国家転覆を煽動した」ことになるかも知れない。
習近平思想による個人崇拝
2010年から去年までに、中国公安は米国CIAの協力者12人を拘束し、人知れず始末したと報道されている。
むろん逮捕状や逮捕したという発表も無く、ある日連れ去ってどこかで「始末」した。
こんな中国が最近力を入れているのが、習近平最高指導者の神格化で、習近平語録や習近平思想を強要している。
習近平名義で出版された書籍はすべてベストセラーになり、地方政府や役所が大量購入して、公務員に押し付けている。
習近平の個人崇拝や習近平への忠誠心が重視され、今までのような集団を重視する考えを変更している。
共産党の全党員に習主席の「重要講話」を学習させ、エリート候補には習近平の故郷である陝西省延安市で思想教育が義務つけられた。
北朝鮮の金一族神格化を連想させるこれらの出来事は、中国が個人独裁に向かっているのを示している。
・Facebookより優秀な「顔認証技術」中国・メグビー...双子も見破り公安も活用(ROBOTEER 2017年4月14日)
※米マサチューセッツ工科大学(MIT)が刊行する科学技術誌「MITテクノロジー・レビュー」が顔認証決済システムを「10大革新技術」に挙げ、中国のあるスタートアップに注目している。 その企業とは、顔認証ソフトウェアである「フェイスプラスプラス(Face++:以下フェイス++)」を開発した「メグビー(Megvii Technology Inc)」だ。メグビーは中国で顔認証技術を代表する企業である。
世界的に見ても、顔認証技術の商用化において断然中国がリードしており、活用分野も決済はもちろん、サービスの確認や犯罪者追跡とさまざまだ。 中でも、中国大手の「アリババグループ」は自社が提供するオンライン決済サービス「アリペイ」にこの会社の技術を真っ先に導入した。アリペイのユーザー数は4億5000万といわれ、モバイル決済シェアの王者である。また、中国大手配車サービス会社である「ディディチュシン(Didi Chuxing・滴滴出行)」もメグビーのソフトウェアを導入し、正当なドライバーかどうかを確認できるようにしている。
一方で中国公安は、同技術をパトカーに搭載しており、 無人カメラによって映し出される一般人の顔を人工知能で判読し、半径60m内で犯罪容疑者を探すことが可能だ。
当然ながら、メグビーへの投資の勢いも拡大の一途をたどっている。世界の経済や金融に関するニュースを発信している米ブルームバーグによると、昨年12月米アップル製品の組み立て最大手である台湾のフォックスコン・テクノロジー・グループや中国の四大商業銀行の1つである中国建設銀行がメグビーに1億ドル(約111億1111万円)を投資している。報道によると、資金は顔認証技術をさらに精巧化する一方、金融分野やスマートシティ、ロボティクス開発など、あらゆる分野に使われていると補足されている。
顔認証技術は、大手グローバル企業も目をつけている分野だ。 グーグルは顔認証技術を活用したショッピング決済サービス「ハンズフリー」を準備中だ。 アマゾンやフェイスブック、バイドゥ(百度)もスマホの「自撮り写真」で顔認証決済が可能なサービスの開発に注力している。マイクロソフトは、ウィンドウズ10に「ウィンドウズハロー(WindowsHello)」と呼ばれる顔認証機能を取り入れた。近赤外線 (IR) イメージング用に構成されたカメラを利用して認証を行いながら、デバイスのロック解除やストアでの買い物などがパスワード入力いらずとなる。
顔のひげや化粧など、外見の多少の変化にも対応しており、さまざまな照明条件のもとでも一貫性のある画像を提供することができるのだとか。
サムソン電子が先月末に新たに公開した新製品「ギャラクシーS8」にも既存の指紋認証や虹彩認証機能に加え、顔認証機能が追加されている。しかし、こちらでは画面ロック解除用だけに使われており、決済など他サービスには使われていない。
分野を問わず、数多くのグローバル企業に革新をもたらしているメグビー。もともと、同社・最高技術責任者(CTO)である唐文斌(タン・ウェンビン:Wenbin Tang)氏は2011年当時、清華大学に在学していた。彼は学校主催のビジネスプランコンテストのために数人の同級生とともに、あるゲームを開発した。顔認証技術を取り入れた同ゲームはコンテストで特等賞を受賞。アップルストア(中国地域・2012年基準)ゲームのダウンロード数においてランキング5位に名を連ねた。
このゲームを開発した大学の開発チームは、中国の起業支援企業「イノベーション工場」(Innovation Works:創新工場)から数百万ドルの資金を得た。清華大学卒業後には米ニューヨークコロンビア大学へ留学し、 3Dコンピューター映像分野の修士・博士課程を踏みながら研究を続けた。
2014年、世界で最も権威のある顔認証評価システムLFW(LabeledFaces in the Wild)テストにおいて、当時「フェイス++」の顔認証率は97.27%の精度を誇ったという。 これは97.25%を記録した業界トップのフェイスブック社の精度をリードした結果だった。彼らは創業からわずか2年足らずで世界一の技術と評されたのである。
格別な精度の背景には彼らだけが持つ人工知能(AI)技術があった。 唐氏は「まずは、顔をきちんと認識することから始まる」とし、「数多くの顔の目・鼻、口などをビックデータで作って、分析する過程を繰り返す。これを通じて認識結果を正確に出すのがアルゴリズムの核心だ」とした。
通常、顔認証ツールは、目、鼻、口角など5点を分析するのが主流だが、メグビーの顔認証技術は顔から83点の特徴を読み取りながら、双子まで明確に判別する水準に達している。
昨年にはすでに5000万ドル(約55億5500万円)以上の投資金を受け、メグビーの会社価値は2億ドル(約222億2200万円)を上回っている。これに合わせて、中国の関連市場も急速に成長している。 市場調査会社ガートナーによると、指紋認証・顔認証など生体認証を含めた世界のモバイル電子決済市場規模は昨年6200億ドル(約68兆8888億円)で、2019年には1兆800億ドル(約120兆円)まで増える展望だ。
もちろんセキュリティ問題など、議論の余地はある。しかし、今後も様々な業態において、顔認証システムの導入が拡大されていくと予想されている。
・中国のAI犯罪者追跡システム「天網」に物議...2000万台の監視カメラとDBが連動(ROBOTEER 2017年9月28日)
最近、中国・都心部の様子が映された約9秒のとある動画がインターネット上にUPされ、ネットユーザーたちの論争の的となった。動画内では通行人、バイク、自動車などを監視カメラが徹底的に追跡。「男性-40歳-黒のスーツ」、「白-SUV」など詳細なキャプションを添える姿が映し出されていた。
しばらくすると、その動画の“真実”が明らかになった。動画の正体は、中国公安当局が2000万台にもおよぶAI監視カメラをベースに構築した犯罪者追跡システム「天網」のキャプチャー動画だったのだ。
中国国営放送「CCTV」は過去に、習近平国家主席の業績を公表するドキュメンタリー番組で、天網の存在を紹介したことがある。曰く「(同システムは)国民の安全を守る『目』の役割を果たしている」というのだ。しかし、中国ネットユーザーたちはそれを信じていない。「安堵感」よりも、ジョージ・オーウェルの小説「1984」に登場する「ビッグブラザー」が出現したとして「恐怖」を感じているという。
反腐敗・反犯罪を標榜した中国が、2015年から構築を開始した天網は、動くものを追跡・判別するAI監視カメラと、犯罪容疑者のデータベースが連動したシステムとなっている。 AI監視カメラにはGPS、顔認識装置が取り付けられており「信号を無視した車」、「いきなり走り出す通行人」などを捕捉した後、その姿を拡大して“認証”をはじめる。もし対象が指名手配者リストに載った人物だと判明すれば、即座に警報が鳴る仕組みだ。
中国の一部の地方公安当局では、この天網を通じて指名手配者を検挙した“成功例”を報告しているのだが、中国のネット上では「天網があるのに、なぜ多くの子供がいまだ誘拐されているのか」「(すべて)政府の監視下に置かれプライバシーがない」など批判が続出しているという。仏国際ラジオ(RFI)も、「監視カメラ2000万台で構成された監視網の存在は、国民を保護するという名分の下、プライバシーを侵害している」と批判している。
リアル空間だけではなく、オンライン空間でも中国当局の監視網はますます厳しくなる傾向がある。「環球時報」によると、中国インターネット情報弁公室は9月25日、WeChat(メッセンジャーアプリ)や微博(中国版ツイッター)、バイドゥーのインターネット掲示板など、中国の3大IT企業が運営するSNSサービスに対して「不純な情報の管理が不十分」という理由で莫大な罰金(約860万円)を課した。わいせつな情報やテロ情報、民族間の憎悪を煽る情報やコメントなどを広めた責任を、IT企業側に負わせた形だ。
先だって9月23日からは、世界最大のオンラインメッセンジャーである米「WhatsApp」が中国で全面遮断された。なお、中国でWhatsAppが全面遮断されたのは今回が初めて。フェイスブック、インスタグラム、ツイッター、グーグルに続き、WhatsAppが中国政府公認のブロックリストに載ったことになる。
AIやその他のテクノロジーの力が増すにつれ、今後も中国の監視網やより強化・拡大していくだろう。次世代テクノロジーが、単なる国民監視のツールに成り下がらないよう祈るばかりだ。
※中国政府は文化大革命時代のようなプロパガンダ教育を行っています。小中学生向けの2017年の国家安全教育アニメーションは「国家の安全を守り、まわりにスパイがいないか警戒し、家族の言動に注意し、公安に自首を勧めよう」と、家族までも密告するよう奨励しています。まるで文革時代に戻ったようだと批判の声が上がっています。
「陽陽さんが演説する番です。」「私は最近、新しい言葉を学びました。前は知らなかったけれど、最近お父さんが経験したある出来事が、国家の安全とは何かを教えてくれました。」
これは中国政府がこの度発表した「全国小中学生2017年国家安全教育アニメーション」で、「国家の安全を守り、まわりにスパイがいないか警戒し、家族の言動に注意し、公安に自首を勧めよう」と呼びかけます。
「国を信じて、国家安全機関に正直に通報しよう。今すぐ正直にスパイ行為を通報すれば、功績と寛大な処置を得ることができる。」
アニメーションに出てくる父親は、日ごろからインターネットに文章や写真を投稿していましたが、これが国家機密の漏洩と見なされたのです。
フリージャーナリスト 劉逸明氏:「いったい何が国家機密に当たるのか、中国には明確な基準がないので、当局はこの罪名でもって、メディア従事者など意見を述べる勇気のある人を規制しています。」
フリージャーナリストの劉逸明(りゅう いつめい)氏は、こうした教育は、相互に密告し合い、疑い合う問題を孕んでおり、子供の成長に良くない影響を及ぼすと考えています。
フリージャーナリスト 劉逸明氏:「子供は国家機密のことなどほとんど知りませんし、それを判断する能力もありません。こうした教育アニメーションは、子供に家族を密告するよう奨励するもので、倫理に悖るものです。夫婦や親子も密告し合うのは文革時代への逆戻りです。」
このアニメーションは文革時代に流行した、少女が祖父を密告する漫画を連想させます。
中国の元歴史教授 劉因全氏:「このアニメーションは文革を思い出させます。当時毛沢東は階級闘争によって青少年に悪い影響を与えました。若者に親や家族を密告し、批判するよう強いて、中国社会から一切の道徳をなくしてしまったのです。親は親でなく、子は子ではない社会になりました。その禍根は今にも続いており、失われた道徳は取り戻せません。そして今またもや文革のようなことをやっているのです。」
劉因全氏:「紅衛兵を養成しようとしているのです。毛沢東の文革時代、紅衛兵は青少年を煽動して、毛沢東の階級闘争を刷り込み、毛沢東の独裁政権のため、毛沢東個人の目的のために働かせたのです。」
中国の元歴史教授の劉因全(りゅう いんぜん)氏は、中国政府は真実を知らない子供たちを煽動し、ファシズム政権のために働かせようとしていることは歴史的な後退であると考えています。