・トータリズム(全体主義)としてのグローバリズム
京都大学大学院教授
京都大学レジリエンス研究ユニット長
内閣官房参与
藤井聡
グローバル資本主義を超えるために...
まずは...「グローバル資本主義」(=「国境」の意義を低下させた上で展開する資本主義)とは一体何なのかを、しっかりと理解しなければならない。
グローバル資本主義の帰結
・経済の不安定化
(金融経済における急激なマネー集中と散逸)
(実体経済における慢性的なデフレ化)
・「格差」の「拡大と固定」
(例:国家間、大企業vs中小企業、グローバ企業ルvs地域企業、資本家vs労働者等)
→貧困の深刻化 →人々の不満蓄 →政治的不安定
・「危機」のグローバル化
・「金銭」の影響力増進と、それ以外の価値の衰退(=ニヒリズム/虚無主義の蔓延)
→長期的合理性の衰弱=社会の脆弱化(僅かな危機で深刻な事態に →民主主義の衰弱/国民国家の解体 →文化、美徳、伝統、倫理の蒸発=文化・文明の低俗化等
グローバル資本主義の起源
人類の福祉にとって、これだけ大きな「問題/デメリット」をもたらしているグローバル資本主義は、なぜかくも進展してきたのか...?
全体主義とは何か?
【定義】
〈個〉に対する〈全体〉の優位を徹底的に追求しようとする思想・運動・体制改訂新版世界大百科事典(平凡社)より
【用例】
イタリアのファシズム、ドイツのナチズム、ソビエトのスターリン体制の基本的な特質を表現する概念として活用
【代表著作】
『大衆の国家』(エミール・レーデラー 1940)
『大衆国家と独裁』(シグマンド・ノイマン 1941)
『全体主義の起源』(ハンナ・アーレント 1951)
等
ハンナ・アーレントが示唆する「全体主義」の特徴
■単なる思想ではなく、それに基づく運動/体制/社会現象を含意
■思想の「内容」は問わない.どんなものでも任意に選ばれる
→様々な「社会的な俗情」(嫉妬,貪欲,恐怖心等)に基づいて選ばれ
→その後、その俗情を隠蔽するために、「ご都合主義的」な理屈が(無意識的に)「ねつ造」されたり、「ご都合主義的」なイデオロギー・理論が(無意識的に)選ばれ、喧伝/プロパガンダに活用され
→(必然的に)論理的、倫理的な一貫性が不在となり
→(必然的に)人々は「思考停止」
→(必然的に)「凡庸な人々」は、様々な工夫を重ねながら、真面目に、より効率的に全体主義を敷衍していく
“本当の悪は、平凡な人間が行う悪です。これを、「悪の凡庸さ」と名付けました“(映画「ハンナ・アーレント」のメインメッセージ)
→(必然的に)「思考する人々」(=体制外の人々)は圧殺されていく
→(必然的に)破滅的な帰結をもたらす
(例)ナチスにおける全体主義
(全体主義をつくった社会的な俗情 Inドイツ)
(貪欲)
“過剰供給”の処理=資本家の強欲(→帝国主義)
(虚栄)
一部の人々の名誉欲
(恐怖)
反ナチズムへの弾圧に対する恐怖
(存在論的不安/ルサンチマン)
社会崩壊によってアトム化した“大衆”が,自らの居場所を与える“全体主義”を希求
(プロパガンダに活用された理論)
人種差別、選民思想(血の論理)
(悪をなした凡庸な人々)
思考停止した、ナチス支持の一般人々
思考停止し、粛々と命令に従う真面目な官僚達(例:アイヒマン)
(圧殺される人々)ユダヤ人、反ナチスト
(破滅的な帰結)
欧州における大量の死者,数々の街・風土の破壊
祖国ドイツそのものの自滅 →東西分裂
つまり...「全体主義」理論とは、政治経済学的、歴史学的、社会学的、社会心理学的な、社会科学的解釈論である。
「グローバリズム」について、「全体主義」分析、「社会科学的解釈」を行うと...
現代のグローバリズムにおける全体主義
(全体主義をつくった社会的な俗情 In1%の勝者集団)
(貪欲)
“過剰供給”の処理=資本家の強欲(→新帝国主義)
(虚栄)
一部の人々(政治家、経済学者、エコノミスト)の名誉欲
(恐怖)
反グローバリズムに対する抑圧に対する恐怖
(存在論不安/ルサンチマン)社会崩壊によってアトム化した先進国の高学歴or資本家の“大衆”が、自らの居場所を与える“全体主義”を希求
(プロパガンダに活用された理論)
(新自由主義的)経済理論(マネタリズム含む)
ブラッセル(EU)ウォール街(USA)霞ヶ関・丸ノ内(日本)等の選民思想(エリート主義)
(悪をなした凡庸な人々)
思考停止した、グローバリズム支持の(悪しき)一般エリート層
思考停止し、粛々と命令に従う真面目な官僚達
(圧殺される人々)
格差社会の弱者側(途上国,非グローバル企業&農家、労働者等)
反グローバリスト
(破滅的な帰結)
弱者側における貧困と大量の死者、数々の街・風土の破壊
世界中の国民の祖国そのものの解体
つまり...今日の「グローバリズム」は、
世界全体の「勝者集団」(ジョセフ・スティグリッツが言う「1%」の集団)が互いに結託した社会において進行する、
・「敗者集団」(各国,法人内に存在:99%集団)からの「搾取構造」を持ち、
・彼等の「存在論的不安」を隠蔽し、
・それらのために、新古典派経済学とエリート主義を利用する、
「全体主義」に他ならないのである。
おわりに~グローバル資本主義を超えるために
①グローバル資本主義/グローバリズムの支配の進行は、世界に強烈な“破壊”をもたらす。
②その流れについての総合的な社会科学分析に基づけば、「グローバル化全体主義(globalization totalitarianism)」の存在が浮かび上がる。
③したがって、その処方箋は、「既往の全体主義対策の議論」が大いに参照できる。
(1)まずは「1%の勝者達による“全体主義”運動の存在」を知るべし
(2)そして,その崩壊には「外部からの力」が不可欠な事を知るべし
(『全体主義の起源』より)
(3)かくして「99%の弱者達」による、各々の伝統文化を背景とした、「国民主義(nationalism)」と、「国際主義(internationalism)」で対抗すべし。
京都大学大学院教授
京都大学レジリエンス研究ユニット長
内閣官房参与
藤井聡
グローバル資本主義を超えるために...
まずは...「グローバル資本主義」(=「国境」の意義を低下させた上で展開する資本主義)とは一体何なのかを、しっかりと理解しなければならない。
グローバル資本主義の帰結
・経済の不安定化
(金融経済における急激なマネー集中と散逸)
(実体経済における慢性的なデフレ化)
・「格差」の「拡大と固定」
(例:国家間、大企業vs中小企業、グローバ企業ルvs地域企業、資本家vs労働者等)
→貧困の深刻化 →人々の不満蓄 →政治的不安定
・「危機」のグローバル化
・「金銭」の影響力増進と、それ以外の価値の衰退(=ニヒリズム/虚無主義の蔓延)
→長期的合理性の衰弱=社会の脆弱化(僅かな危機で深刻な事態に →民主主義の衰弱/国民国家の解体 →文化、美徳、伝統、倫理の蒸発=文化・文明の低俗化等
グローバル資本主義の起源
人類の福祉にとって、これだけ大きな「問題/デメリット」をもたらしているグローバル資本主義は、なぜかくも進展してきたのか...?
全体主義とは何か?
【定義】
〈個〉に対する〈全体〉の優位を徹底的に追求しようとする思想・運動・体制改訂新版世界大百科事典(平凡社)より
【用例】
イタリアのファシズム、ドイツのナチズム、ソビエトのスターリン体制の基本的な特質を表現する概念として活用
【代表著作】
『大衆の国家』(エミール・レーデラー 1940)
『大衆国家と独裁』(シグマンド・ノイマン 1941)
『全体主義の起源』(ハンナ・アーレント 1951)
等
ハンナ・アーレントが示唆する「全体主義」の特徴
■単なる思想ではなく、それに基づく運動/体制/社会現象を含意
■思想の「内容」は問わない.どんなものでも任意に選ばれる
→様々な「社会的な俗情」(嫉妬,貪欲,恐怖心等)に基づいて選ばれ
→その後、その俗情を隠蔽するために、「ご都合主義的」な理屈が(無意識的に)「ねつ造」されたり、「ご都合主義的」なイデオロギー・理論が(無意識的に)選ばれ、喧伝/プロパガンダに活用され
→(必然的に)論理的、倫理的な一貫性が不在となり
→(必然的に)人々は「思考停止」
→(必然的に)「凡庸な人々」は、様々な工夫を重ねながら、真面目に、より効率的に全体主義を敷衍していく
“本当の悪は、平凡な人間が行う悪です。これを、「悪の凡庸さ」と名付けました“(映画「ハンナ・アーレント」のメインメッセージ)
→(必然的に)「思考する人々」(=体制外の人々)は圧殺されていく
→(必然的に)破滅的な帰結をもたらす
(例)ナチスにおける全体主義
(全体主義をつくった社会的な俗情 Inドイツ)
(貪欲)
“過剰供給”の処理=資本家の強欲(→帝国主義)
(虚栄)
一部の人々の名誉欲
(恐怖)
反ナチズムへの弾圧に対する恐怖
(存在論的不安/ルサンチマン)
社会崩壊によってアトム化した“大衆”が,自らの居場所を与える“全体主義”を希求
(プロパガンダに活用された理論)
人種差別、選民思想(血の論理)
(悪をなした凡庸な人々)
思考停止した、ナチス支持の一般人々
思考停止し、粛々と命令に従う真面目な官僚達(例:アイヒマン)
(圧殺される人々)ユダヤ人、反ナチスト
(破滅的な帰結)
欧州における大量の死者,数々の街・風土の破壊
祖国ドイツそのものの自滅 →東西分裂
つまり...「全体主義」理論とは、政治経済学的、歴史学的、社会学的、社会心理学的な、社会科学的解釈論である。
「グローバリズム」について、「全体主義」分析、「社会科学的解釈」を行うと...
現代のグローバリズムにおける全体主義
(全体主義をつくった社会的な俗情 In1%の勝者集団)
(貪欲)
“過剰供給”の処理=資本家の強欲(→新帝国主義)
(虚栄)
一部の人々(政治家、経済学者、エコノミスト)の名誉欲
(恐怖)
反グローバリズムに対する抑圧に対する恐怖
(存在論不安/ルサンチマン)社会崩壊によってアトム化した先進国の高学歴or資本家の“大衆”が、自らの居場所を与える“全体主義”を希求
(プロパガンダに活用された理論)
(新自由主義的)経済理論(マネタリズム含む)
ブラッセル(EU)ウォール街(USA)霞ヶ関・丸ノ内(日本)等の選民思想(エリート主義)
(悪をなした凡庸な人々)
思考停止した、グローバリズム支持の(悪しき)一般エリート層
思考停止し、粛々と命令に従う真面目な官僚達
(圧殺される人々)
格差社会の弱者側(途上国,非グローバル企業&農家、労働者等)
反グローバリスト
(破滅的な帰結)
弱者側における貧困と大量の死者、数々の街・風土の破壊
世界中の国民の祖国そのものの解体
つまり...今日の「グローバリズム」は、
世界全体の「勝者集団」(ジョセフ・スティグリッツが言う「1%」の集団)が互いに結託した社会において進行する、
・「敗者集団」(各国,法人内に存在:99%集団)からの「搾取構造」を持ち、
・彼等の「存在論的不安」を隠蔽し、
・それらのために、新古典派経済学とエリート主義を利用する、
「全体主義」に他ならないのである。
おわりに~グローバル資本主義を超えるために
①グローバル資本主義/グローバリズムの支配の進行は、世界に強烈な“破壊”をもたらす。
②その流れについての総合的な社会科学分析に基づけば、「グローバル化全体主義(globalization totalitarianism)」の存在が浮かび上がる。
③したがって、その処方箋は、「既往の全体主義対策の議論」が大いに参照できる。
(1)まずは「1%の勝者達による“全体主義”運動の存在」を知るべし
(2)そして,その崩壊には「外部からの力」が不可欠な事を知るべし
(『全体主義の起源』より)
(3)かくして「99%の弱者達」による、各々の伝統文化を背景とした、「国民主義(nationalism)」と、「国際主義(internationalism)」で対抗すべし。