・コメント欄にはびこる嫌韓・嫌中 ヤフー・ニュース分析(朝日新聞DIGITAL 2017年4月28日)



(上)ヤフー・ニュースの硬派記事のコメントにみられる日中韓関連の言葉に出現頻度

※ネット上で配信されるニュースに対するコメントについて、立教大の木村忠正教授(ネットワーク社会論)とニュースサイトのヤフー・ニュースが共同で分析した。韓国や中国の人たちに対する「排斥意識」の強い言説が浮かび上がる。

ヤフー・ニュースでは月12万件の記事が配信され、閲覧者が意見や感想などをコメントとして投稿する。その数は月660万件に上る。今回、2015年4月の1週間に配信した政治や社会など硬派なテーマの記事約1万件と、それに対して投稿されたコメント数十万件を初めて調査した。

各コメントについて、人名や地名など様々な言葉で出現頻度を調べると、頻度の高い上位三つは「日本」「韓国」「中国」。10位までに「日本人」「韓」「朝鮮」がみられた。韓国絡みの言葉を含んだコメントが最も多くて全体の20%近く、中国関連とあわせると25%を占めた。その多くに「嫌韓」や「嫌中」の意識が色濃くみられたという。

慰安婦問題など歴史認識に関する言葉もよく登場。侮蔑的なコメントの8割を韓国関連が占めた。歴史、民族、領土、皇室、ナショナリズムといった記事に反応するコメントも多かった。

日本では10年ほど前から嫌韓や嫌中関連本の出版が相次ぎ、書店にコーナーができることもあった。差別的言説への批判や意識が高まり、15年ごろには下火となった。一方、ネット空間で排他的な言葉が飛び交っていることについて木村教授は「匿名で誹謗(ひぼう)中傷や極端な主張をしやすいため」とみる。

ヤフーは健全な言論空間づくりを目指して常時コメントを監視し、過度に悪質な投稿を削除したり、表示順位を下げたりする工夫を重ねているが、過激な内容を完全に排除することはできない。

今回の分析では1週間で100回以上コメントを投稿した人が全体の1%いた。この1%の人たちの投稿で全体のコメントの20%が形成されていた。一方、頻繁に投稿しない人のコメントにも嫌韓や嫌中の言葉が含まれていることがあり、昨年7月のデータを分析しても傾向はおおむね変わっていなかったという。

・北方領土へ来月にも調査団=共同経済活動を具体化―日ロ首脳会談(時事通信 2017年4月28日)

※安倍晋三首相は27日、ロシアのプーチン大統領とモスクワのクレムリン(大統領府)で会談した。

日本政府が北方領土問題解決への「重要な一歩」と位置付ける4島での共同経済活動を具体化するため、5月にも日ロ合同の官民調査団を派遣することで合意。元島民が初めて航空機を使っての特別墓参を6月に行い、出入域拠点も拡充することで一致した。

会談は約3時間10分に及び、うち50分間は通訳を交えて1対1で行われた。両首脳の会談は第1次安倍政権を含め通算17回目。

会談後の記者発表で、首相は共同経済活動で検討する事業として魚やウニの養殖、豊かな4島の自然を活用した「エコツーリズム」を例示。「北方四島に住むロシア人の生活水準や利便性を向上させることになる。4島で経済活動をする日本人にとっても多くの新しい可能性をつくり出す」と表明した。

また、官民調査団の派遣が「最初の一歩になる」と指摘。「協力を積み重ねる双方の努力の向こうに平和条約がある。両国民間の信頼を増進させ、ウラジーミル(プーチン氏)と私の間で平和条約を締結したい」と在任中の領土問題解決に強い意欲を示した。プーチン氏は「相互理解と信頼が深まっていくのは大変良いことだ」と語った。

元島民の高齢化を踏まえ、両首脳は6月の国後、択捉両島への墓参に航空機を活用するほか、現在、国後島・古釜布沖に限られている出入域拠点を増やしていくことで一致。8月にも歯舞群島付近に新たに拠点を設けることになった。

両首脳は7月上旬にドイツ・ハンブルクで開かれる20カ国・地域(G20)首脳会議に合わせて会談することでも合意。首相は、岸田文雄外相とシュワロフ第1副首相による貿易経済政府間委員会を適切な時期に開催したいと呼び掛けた。 

・3月の実質消費支出、13カ月連続で減少 食料や保健医療が低迷(日本経済新聞 2017年4月28日)



※総務省が28日発表した3月の家計調査によると、2人以上世帯の消費支出は1世帯あたり29万7942円で、物価変動を除いた実質で前年同月比1.3%減少した。13カ月連続で前年実績を下回った。QUICKがまとめた市場予想の中央値は0.5%減だった。食料関連の支出低迷が続いた。季節調整して前月と比べると2.0%減少した。総務省は消費支出について「弱い状況が続いている」とみている。

消費支出の内訳をみると、「食料」が実質で前年同月比2.0%減少した。イカなどの高騰で魚介類の支出が落ち込んだ。花見シーズンが4月にずれ込んだ影響で酒類も減った。前年にインフルエンザなどが流行した影響がなくなり、「保健医療」は9.7%減となった。「教育」も8.7%減だった。

高額で振れ幅が大きい住居と自動車を除いた実質支出は前年同月比1.9%減少した。勤労者(サラリーマン)世帯の1世帯あたりの消費支出は33万7075円と実質で前年同月比0.4%増となり、3カ月ぶりに増加した。

・派遣社員に仲介料非公開 大手9社中6社 本紙調査(東京新聞web 2017年4月30日)



※派遣労働者の賃金について、派遣先の企業が払う派遣料金から仲介手数料を差し引く割合(マージン率)を、多くの派遣会社が労働者本人に公開していないことが、本紙の調査で分かった。労働者一人一人のマージン率の公開が法律で義務付けられていないためで、公開は各社の自主判断。情報公開に後ろ向きな業界の姿勢が鮮明となった。

マージン率が30%の場合、企業が労働の対価として月三十万円の派遣料金を払っても、派遣会社が30%に当たる九万円を徴収し、労働者は二十一万円しか受け取れない。厚生労働省の調べによると、支店など事業所ごとのマージン率の平均値は、20~30%のところが多いという。

本紙が大手九社に書面と聞き取りで調査したところ、六社が個別の労働者のマージン率を本人にも教えていなかった。理由は「個人分は法律で公開義務の対象になっていない」(パソナ、テンプなど)と答えた会社が多い。

また、二〇一二年の労働者派遣法改正で、事業所ごとのマージン率の平均値については公開が義務付けられたが、労働者が事業所に出向かないと確認できないケースが大半だった。多くの社は一五年以降になってようやくホームページ(HP)で広く公開するようになり、最大手のパソナのHP公開は今年に入ってからだった。

政府は同一労働同一賃金を掲げ、非正規労働者の待遇改善を約束しているが、自分の労働に企業がいくら払っているかが分からなければ、賃上げ要求すら難しい。派遣会社にマージン率の公開を求めたが拒否されたという埼玉県の女性(43)は「マージン率が分かれば、待遇を含めて自分で仕事を選び、納得して働けるのに」と話す。

派遣ユニオンの関根秀一郎書記長は「派遣先の企業が賃上げのために派遣料金を上げたのに、派遣業者は労働者の賃金を上げなかったケースが実際にあった。個別に情報を公開させるとともに、マージン率の上限を定めることも必要だ」と指摘している。



・政治家・警察の犯罪を全て除外する「共謀罪」のデタラメ(日刊ゲンダイDIGITAL 2017年4月29日)

※28日、今村前復興相の暴言によって中断していた「共謀罪」の審議が再開された。キノコ狩りするだけでテロリストに認定されかねない共謀罪の危うさについて、国会の内外で指摘されているが、中でも法案のデタラメを鋭く突き、拍手喝采が上がっているのが、25日の衆院法務委員会で参考人質疑に臨んだ京大大学院の高山佳奈子教授(刑事法)だ。

高山教授は「このような不可解な法案に賛成するわけにはいかない」と真っ向から反対した。特に疑義を呈したのは、法案成立を目指す権力側が恣意的に対象犯罪を選別している疑いがある点だ。高山教授は「公権力を私物化するような犯罪が共謀罪の対象から除かれている」と指摘した上で、「公職選挙法、政治資金規正法、政党助成法違反は全て除外されている。警察などによる特別公務員職権濫用罪・暴行陵虐罪は重い犯罪なのに、除外されている」と批判した。

また、高山教授は経済犯罪が除外されている点も問題視。「一般に商業賄賂罪と呼ばれ、諸外国で規制が強化されてきているような会社法、金融商品取引法、商品先物取引法などの収賄罪が対象犯罪から外されている。主に組織による遂行が想定される酒税法違反や石油税法違反なども除外されている」と指摘した。

■会社法の除外は富裕層への配慮か

ジャーナリストの斎藤貴男氏が言う。

「政治家や警察など、権力側にとって不都合な活動を法案の処罰対象から除外しようとしている点に、共謀罪の本質が表れています。表向きテロ対策をうたっていますが、共謀罪は国家が一般国民に絶対服従を強いることを目的とした法案です。だから権力側が自分たちに不利になりかねない対象犯罪を除外しようとするのは当然といえます。もちろん、公職選挙法など政治家や警察官を対象にした法律を共謀罪に含めれば済む話ではありませんが、“外し方”があまりにもロコツです」

会社法などを対象外にするのは富裕層に配慮しているからだろう。国民が政府の言いなりにさせられる悪法の成立は、絶対に阻止しなければならない。

・海自艦、初の米艦防護へ 四国沖まで、安保法制に基づき(朝日新聞DIGITAL 2017年4月30日)

※2015年に成立した安全保障関連法に基づいて、平時から自衛隊が米軍の艦船などを守る「武器等防護」を実施するよう、稲田朋美防衛相が初めて自衛隊に命じたことが分かった。米海軍の補給艦が防護対象という。複数の政府関係者が明らかにした。

米軍からのニーズが高かった任務で、自衛隊法に基づき、防護のために自衛官は必要最小限の範囲で武器を使える。昨年11月から12月にかけて南スーダンの国連平和維持活動(PKO)に派遣された陸上自衛隊の部隊に「駆けつけ警護」の任務が加えられたのに続き、安保法制に基づく自衛隊の任務が本格化する。

政府関係者によると、海上自衛隊の護衛艦「いずも」が5月1日午前に横須賀基地(神奈川県)を出港。房総半島沖周辺で米海軍の補給艦と合流し、四国沖までこの補給艦を守りながら一緒に航行する計画とされる。

この補給艦は、北朝鮮による弾道ミサイル発射への警戒をはじめ、日本近海で情報収集などをしている米太平洋艦隊の艦船に補給する見通し。29日に対馬海峡から日本海に入った米海軍原子力空母カールビンソンの艦隊に補給する可能性もあるという。カールビンソンは北朝鮮のさらなる挑発を抑えるため、同日から日本海で韓国海軍と合同訓練を始めた。訓練には韓国海軍のイージス駆逐艦「世宗大王」や哨戒機などが参加している。

・極右思想のドイツ軍中尉、難民に成り済まし襲撃計画(AFPBB 2017年5月1日)

※ドイツで極右思想を持つ陸軍中尉(28)がシリア難民に成り済まして襲撃を起こし、それを難民の犯行に仕立てようとしていた疑いが発覚し、波紋を広げている。ウルズラ・フォンデアライエン(Ursula von der Leyen)国防相は4月30日、軍内部の極右思想は一切容認しないと言明した。

「フランコ A(Franco A)」と伝えられるこの陸軍中尉は、銃を使った襲撃を計画したとして4月26日に逮捕された。イタリア人の父親とドイツ人の母親を持つが、検察によるとシリア難民に成り済まして「二重生活」を送っていた。

ドイツ週刊誌シュピーゲル(Der Spiegel)が容疑者は2014年の学術論文で極右的な見解を表明していたが、懲戒処分は受けていなかったと報じたことで、スキャンダルがさらに広がっていた。同誌によると、ドイツの情報機関は現在、極右思想に共感している疑いがあるとして軍内部で約280人を調査しているという。

フォンデアライエン国防相は地元テレビ局ZDFに「多くのことを許容しているが、政治的、右翼的、宗教的な過激主義は別だ」と述べた。

容疑者は「難民」としては、ユダヤ人を祖先に持つカトリック教徒の「David Benjamin」と名乗っていた。シリアの首都ダマスカス(Damascus)で果物を売っていたが、イスラム過激派組織「イスラム国(IS)」から逃れてきたと説明していたという。

検察によると、容疑者はドイツ国内の難民収容施設に登録し、政治亡命も申請していた。信じがたいことに、アラビア語を話せないにもかかわらず申請は受理されていた。2016年1月から難民向けの宿泊施設に滞在し、毎月400ユーロ(約4万9000円)支給されていた。

地元日刊紙ビルト(Bild)によると、容疑者が作成した「死のリスト」も警察によって見つかっており、左派や反ファシストの活動家の名前も含まれていたという。

※ばれるまでがお仕事です、かな?

・「条約、対テロ目的でない」 国連指針を執筆・米教授 「共謀罪」政府説明と矛盾(朝日新聞DIGITAL 2017年5月5日)

※国際組織犯罪防止条約(TOC条約)締結のために政府が必要としている「共謀罪」法案(組織的犯罪処罰法改正案)をめぐり、国連の「立法ガイド」の執筆者が朝日新聞社の取材に応じ、「テロ対策は条約の目的ではない」と明言した。条約の目的について「テロ対策」を強調する日本政府とは異なる見解が示された。

取材に答えたのは、米ノースイースタン大のニコス・パッサス教授。国際刑法の専門家で、2000年に国連総会で採択された同条約に関連し、各国が立法作業をするための指針を示した「立法ガイド」の執筆で中心的役割を担った。滞在先の欧州から、電話やメールで取材に応じた。

安倍晋三首相は4月6日の衆院本会議で、「(TOC条約は)テロを含む幅広い国際的な犯罪組織を一層効果的に防止するための国際的な枠組み」と述べた。しかし、パッサス氏は「イデオロギーに由来する犯罪のためではない」とし、「利益目的の組織犯罪を取り締まるための条約だ」と話した。

パッサス氏は「テロの資金規制は、法的拘束力を持つ国連憲章第7章に基づく国連安保理の決議などがある」との見方を示した。

国会審議では、条約に加わるには法案の創設が必要とする政府の主張と、現行法で足りないものを補うことで対応できるという野党の主張が対立している。

「新規立法が必要か」との質問に、パッサス氏は条約に加わるために(1)組織的犯罪集団が関与する重大な犯罪行為への合意(2)組織的な犯罪集団に参加――のいずれかを処罰する法律が必要だと説明したうえで、「既存法で加盟の条件を満たすのであれば、新法の必要はない」と語った。ただ、日本の既存法がこの条件を満たすかどうかについては、答える立場にないとした。

・巡航ミサイル導入を本格検討 政府、北朝鮮脅威に対処(共同通信47NEWS 2017年5月6日)

※政府は北朝鮮による相次ぐ弾道ミサイル発射や核開発継続を受け、日米同盟の対処能力を強化するため、巡航ミサイルの将来的な導入に向けた本格検討に入った。北朝鮮の脅威は新たな段階になったとして、発射拠点を巡航ミサイルなどにより破壊する「敵基地攻撃能力」の保有を目指す。早ければ、来年度予算案に調査費などを計上したい意向だ。政府関係者が5日、明らかにした。

敵基地攻撃を目的とした装備を持つことは、「専守防衛」という日本の防衛の基本方針から逸脱しかねないとの懸念が根強い。政府、与党内にも慎重論がある。安倍政権は「反撃能力」と位置付ける方針だが、野党からの反発は必至だ。

・“極右の女神”櫻井よしこは「神社」に住んでいた! 神社本庁と改憲運動の一方、神社の所有地に520㎡の豪邸(LITERA 2017年5月6日)

※「別冊正論」特集がふれなかった櫻井よしこの自宅がある場所

櫻井よしこといえば、安倍首相応援団の筆頭で、様々な民間右派組織の顔をつとめる“極右のマドンナ”。最近、その櫻井氏を丸ごと一冊特集した雑誌が発売されたのをご存知だろうか。

産経新聞発行の「正論」の姉妹誌「別冊正論」。表紙には〈一冊まるごと櫻井よしこさん。〉、その内容はまさに“アイドル本”と呼ぶにふさわしい。櫻井氏の論文や対談記事のまとめはもとより、櫻井氏の私生活にもスポットライトを当てているのが特徴だ。

しかし、そんな〈一冊まるごと櫻井よしこさん〉の大特集にはひとつだけ、不自然にも書かれていないことがある。それは、櫻井よしこが“どこに住んでいるのか”ということだ。

一つだけそれらしき記述はある。〈東京都心ながら静かで緑の多い住宅地〉。前述の一週間密着レポではそう書いているが、これは事実ではない。実は、櫻井氏は住宅地でなく、“神社のなか”に住んでいるのだ。

東京・港区の一等地にある赤坂氷川神社。素盞嗚尊(すさのおのみこと)などを御祭神とする有名な神社だが、そんな赤坂氷川神社の木々茂る東側入り口から境内に入ると、社殿の方へと向かう道脇に、衝立で囲われた一軒家がある。白を基調とした外観の巨大な鉄筋コンクリート造の建物。表札こそ見当たらないが、ここが「櫻井良子」の自宅である。

登記簿によれば、地上2階地下1階、総床面積約520平方メートルに及ぶ、個人の邸宅とは思えないような超のつく豪邸。ちなみにこの建物には建築した2004年の翌年、2005年に1億7000万円の根抵当権がついているが、わずか6年で抹消されている。

櫻井よしこと神社本庁の関係、境内での改憲署名活動の「顔」にも

問題はその豪邸が建っている土地だ。こちらも登記簿をみてみると、なんとH神社の所有なのである。つまり、櫻井氏は赤坂氷川神社の境内の一角を借りて、この巨大な建物を建てた、そういうことらしい。

となると、頭をよぎるのは、櫻井氏の政治活動と神社の関係だ。周知のように、櫻井氏は少し前から、全国で約7万9000の神社を統括している宗教法人・神社本庁とタッグを組んで、改憲や歴史修正主義的活動に取り組んできた。

たとえば、そのひとつが、神社の境内で行われた憲法改正実現のための「1000万人」署名運動。これは神社本庁が、改憲団体「美しい日本の憲法をつくる国民の会」の運動の一環として行っていたものだ。同団体は神社本庁も参加するあの日本会議のフロント団体だが、櫻井よしこはその共同代表をつとめている。

その際一昨年、改憲署名活動が行われた神社には、櫻井氏の顔が大きく写し出されたポスターが貼られ、「国民の手でつくろう美しい日本の憲法」「ただいま、1000万人賛同者を募集しています。ご協力下さい」なる文言とともに笑みを浮かべていた。

そんな櫻井氏が、神社の敷地内で生活しているなんて、これはちょっと生臭い匂いがしてくるではないか。実際、一昨年には、櫻井氏が住んでいる赤坂氷川神社でも改憲署名活動が行われ、拝殿や社務所に通じる門には櫻井氏のポスターが貼られていた。

櫻井氏のこうした神社界(神社本庁)と一体化した政治言論活動と、神社の土地を借り、巨大な建物を建てているということは何か関係があるのではないか。

もちろん、寺社が敷地を借地にしているケースは珍しくはないが、借地上の建物は「非堅固建物に限る」「木造家屋に限る」という条件が付いているケースも多く、個人にこんな巨大なコンクリート造の建物を建てさせるというのは珍しい。しかも、櫻井氏の周辺からは「土地はただではないが、かなり格安で借りているらしい」という情報も入ってきた。

そこで、まず、土地を貸している赤坂氷川神社に電話で問い合わせてみた。すると、電話口の担当者は、櫻井氏の自宅の土地が神社の所有物であることは認めたが、「櫻井先生の自宅以外にも境内に3つのお家が建てられております。いずれも地代をいただいています」と無償提供ではないという。また、櫻井氏の言論活動と関係があるのではないか?という質問については「当神社と櫻井さんに個人的なつながりがあるからとか、櫻井先生が神社界に力をいれているから土地を貸しているということではない」と強く否定した。

ところどころ、櫻井氏のことを「櫻井先生」と呼んでいることが気になるが、赤坂氷川神社は櫻井氏を敷地内に住まわせていることと櫻井氏の活動は無関係だというのだ。

しかし一方で、櫻井氏は、自らの言論活動のなかで、赤坂氷川神社とその国家神道礼賛の主張を、土地を借りていることは隠したまま、PRしたことがある。

櫻井氏に質問状! 右傾化、神社本庁の急接近は自宅の土地と無関係か 

櫻井氏が連載している「週刊新潮」(新潮社)のコラム「日本ルネッサンス」で、この赤坂氷川神社のことを大々的に取り上げ、元旦に開かれる歳旦祭で、赤坂氷川神社の惠川義昭宮司が「天皇陛下は、私たちよりずっと早く、陽も上がらない時間に、国民全員のために祈って下さっています。有難いことだと感謝せずにはいられません」とあいさつしたことを紹介。

http://yoshiko-sakurai.jp/2011/01/13/2322

そのうえで、GHQが「神社神道を国教とする制度を廃止し、政教分離の原則を確立し、宗教と教育から軍国主義と超国家主義を除去」したと批判し、宮司のあいさつが「皇室の祈りは天皇家の私的行事に矮小化されて現在にいたっている」ことを嘆くものだと解説していた。

また、櫻井氏の言論が地主への利益誘導ではなかったとしても、思想的な影響はどうなのか。櫻井氏はかなり前から改憲を主張していたし、タカ派的な論客ではあったが、90年代頃まではここまで戦前回帰、国家主義的な思想を声高にがなりたててはいなかった。むしろ、薬害エイズ事件などでは、国家犯罪を追及する姿勢も見せていた。

それが、2000年代に入ると、GHQによる神道指令は誤りだったとの論陣を張って、極端な国家主義や歴史修正主義を声高に叫び始め、その思想をどんどんエスカレートさせていった。赤坂氷川神社の敷地に家を建てたのは、その極端な右傾化のまっただなかのことだ。ここに何かしらの“縁”がなかったと、はたして言い切れるのだろうか。

ここはやはり、櫻井氏本人に聞いてみるしかないと、以下のような内容の質問状(要約)を送った。

・ご自宅の土地は赤坂氷川神社の所有ですが、地代はいくらですか。

・赤坂氷川神社所有の土地を借りることになった経緯をおしえてください。

・「別冊正論」の3月発売号〈一冊まるごと櫻井よしこさん。〉に登場し、プライベートについても公開されていますが、神社の敷地内に住んでいることを隠し、〈東京都心ながら静かで緑の多い住宅地〉に住んでいるとしています。その理由はなんですか。

・神社本庁および神社が担っている改憲や戦前回帰運動に協力し、その主張と内容を一にする言論活動を行なっていることに、神社から土地を貸与され、敷地内に建物を建てているという関係が影響を及ぼしているのではないですか。

・直接的な影響はなかったとしても、利害関係にある宗教団体の運動に協力し、その主張に沿った言論を展開することは、ジャーナリストとしての独立性、倫理に反していると考えますが、いかがですか。

・言論活動を検証してみると、以前は、ここまで右翼的、戦前回帰的な主張はしていませんでした。この主張の変化に、赤坂氷川神社との関係、もしくは神社本庁との関係が影響を及ぼしているのではないですか。

鈴木邦男氏も驚く櫻井氏の極端な右傾化の背景には…

しかし残念ながら、締め切り期限を過ぎても、櫻井氏からの返事はなかった。

ただ、少なくとも櫻井氏が神社の境内の土地を借りるというある種の利害関係にあること、その言論や活動がこの十数年の間に急速に右傾化し、いまや神社本庁と完全に歩調を一にしていることはまぎれもない事実だ。

新右翼団体「一水会」元顧問の鈴木邦男氏が、ウェブマガジン「マガジン9」の連載コラムで、「櫻井よしこさんの思い出」と題して、その思想の変化を書いたことがある。80年代初期、鈴木氏が他の新右翼過激派とともに運動に没頭していたころ、当時「クリスチャン・サイエンス・モニター」の記者だった櫻井氏から外国人記者仲間との飲み会に誘われた時の思い出をひきながら、こう書いている。

〈「この人が鈴木さん。日本の過激な新右翼なのよ。怖いんです」と皆に僕を紹介する。「オー、ノー」とか、「テリブル」という声が上がる。それだけを覚えている。他は全て忘れたが。しかし、30年経った今、櫻井さんの方が怖いし、過激だ。〉

〈あの頃は、櫻井さんは中立だったし、やや左だったかもしれない。それなのに今は僕を飛び越えて右に進み、保守陣営の女神さまだ。〉

(「マガジン9」第123回 13年4月17日より)

新右翼の鈴木氏が〈怖いし、過激だ〉といういまの櫻井氏の思想はどこからきているのか。なぜ、ジャーナリストが神社本庁や日本会議と濃密な関係を築き、極右の女神的存在になってしまったのか。少なくとも、その主張がいったい誰を利するのかを、われわれはよく見定める必要があるだろう。

・憲法改正 20年施行目標…首相インタビュー(読売新聞 2017年5月3日)

※安倍首相(自民党総裁)は、3日で施行70周年を迎える憲法をテーマに読売新聞のインタビューに応じ、党総裁として憲法改正を実現し、2020年の施行を目指す方針を表明した。改正項目については、戦争放棄などを定めた現行の9条1項、2項を維持した上で、憲法に規定がない自衛隊に関する条文を追加することを最優先させる意向を示した。自民党で具体的な改正案の検討を急ぐ考えも明らかにした。

9条に自衛隊明記…教育無償化 前向き

インタビューは4月26日、首相官邸で約40分間行った。首相は自民党が憲法改正を党是としてきたことに触れ、「東京五輪・パラリンピックが開催される20年を日本が新しく生まれ変わる大きなきっかけにすべきだ。20年を『新しい憲法』が施行される年にしたい」と述べた。

具体的な改正項目を巡っては、9条に自衛隊の根拠規定を設けることを挙げた。首相は「自衛隊が全力で任務を果たす姿に対し国民の信頼は9割を超えている一方、多くの憲法学者は『違憲』と言っている」と指摘。「北朝鮮情勢が緊迫し、安全保障環境が一層厳しくなっている中、『違憲かもしれないが、何かあれば命を張ってくれ』というのはあまりにも無責任」と述べ、「私の世代は自衛隊を『合憲化』することが使命」との考えを示した。

9条は1項で「戦争放棄」、2項で「戦力の不保持」を規定している。自民党が12年に作成した憲法改正草案では、9条を大幅に加筆・修正し、「国防軍」を保持すると明記されているが、首相は「党の改正草案にこだわるべきではない」と明言。「1項、2項をそのまま残し、自衛隊の存在を記述するということを議論してもらいたい」と語った。

また、日本維新の会が改正項目として主張する教育無償化について、「憲法において国の未来像を議論する上で、教育は極めて重要なテーマだ。維新の積極的な提案を歓迎する」と前向きな考えを示した。大規模災害時に備えた緊急事態条項創設に関しては、「『衆院議員が不在となる場合があるのでは』という指摘は重要な論点だ。国会のあり方や役割、民主主義の根幹に関わることでもあり、国会でよく議論してほしい」と語った。

首相は改正に向けた具体的なスケジュールについて「途中経過についてプランがあるわけではない」と述べるにとどめたが、「自民党は(衆参両院の)憲法審査会で積極的な役割を果たす考えだ。速やかに自民党の改正案を提出できるよう党内の検討を急がせたい」と述べた。自民党の改正案は「9条」と「教育無償化」を優先して作成する考えを示した。

首相インタビューのポイント

▽憲法改正を実現し、東京五輪・パラリンピックが開かれる2020年の施行を目指す
▽自民党の改正案を衆参両院の憲法審査会に速やかに提案できるよう、党内の検討を急がせたい
▽9条の1項、2項を残したまま、新たに自衛隊の存在を明記するよう議論を求める
▽憲法において教育は極めて重要なテーマで、(教育無償化に関する)日本維新の会の提案を歓迎する

[憲法考]施行70年 安倍首相インタビュー全文

自衛隊の合憲化 使命

安倍首相(自民党総裁)が読売新聞のインタビューで、憲法改正の期限を「2020年施行」と区切り、9条改正に取り組むべきだとの考えを表明した。改正論議の進め方や、目指す国家像を聞いた。(聞き手 政治部長 前木理一郎)

2020年 日本生まれ変わる

――憲法施行70年を迎えた。改めて憲法改正にかける思いを。

自民党は立党以来、憲法改正が悲願だったと言ってもいい。それを歴代総裁が受け継いできたが、国民的な支持を得る上で困難な道だったのも事実だ。

10年前、憲法施行60年の節目の年も私は首相だったが、この年に国民投票法が成立し、改正に向けた一歩をしるすことができた。衆参の憲法審査会には、日本がどういう国を目指すか、国の未来像について大いに議論してもらいたい。憲法改正を最終的に決めるのは国民投票だが、その発議は国会にしかできないわけで、私たち国会議員は大きな責任をかみしめるべきだ。発議案を国民に提示するための具体的な議論を始めてもらいたい。

――現在、憲法改正に前向きな議員が衆参両院とも3分の2を超えている。一方で衆院議員の任期は2018年12月まで。次期参院選は19年夏だ。改正に向けたスケジュールをどう描いているか。

発議のタイミングは、衆参の憲法審査会での審議の結果として決まるものだ。自民党総裁として「この方向で」と言って私が決められるものではないが、私はかねがね、半世紀ぶりに日本で五輪が開催される2020年を、未来を見据えながら日本が新しく生まれ変わる大きなきっかけにすべきだと申し上げてきた。

かつて日本は1964年の東京五輪を目指して、新幹線、首都高速、ゴミのない美しい街並みなど、大きく生まれ変わった。私は当時10歳だったが、世界の強豪と肩を並べて活躍する日本選手の姿を見て、「やればできる」という大きな自信を持った。(五輪は)先進国へ急成長していく原動力となった。

2020年も、今、日本人にとって共通の目標の年だ。例えば、政府は20年に指導的役割の3割以上を女性にする、という野心的な目標も掲げている。20年を新しい憲法が施行される年にしたい。新しい日本を作っていくこの年に、新たな憲法の施行を目指すのはふさわしい。

――国政選挙と国民投票を同時に行う考えは。

途中経過については今、私の中にプランがあるわけではない。国民的な議論が盛り上がっていかなければこの目的は達成できない。

「違憲かもしれないが命張れ」では無責任 国民の目の前で具体的な議論していく
――改正項目について、総理が優先して取り組みたいものは何か。

憲法審査会で議論を収斂しゅうれんさせていくべきだが、自民党は圧倒的第1党として議論をリードしていく責任がある。憲法改正は自民党の歴史的使命だ。

9条の改正にも正面から取り組んでもらいたい。平和安全法制をめぐる議論の中で、ある調査によれば、憲法学者のうち自衛隊を合憲としたのはわずか2割余りにとどまり、7割以上が違憲の疑いを持っていた。これには多くの人たちが驚いたと思う。また、共産党は一貫して自衛隊は違憲との立場を取り続けている。

私は毎年、防衛大学校の卒業式に出席し、服務宣誓を受けるが、「事に臨んでは危険を顧みず、身をもって責務の完遂に務め、もって国民の負託に応えることを誓う」との言葉の重みを(自衛隊の)最高指揮官として毎回かみしめている。

自然災害では、二次災害の危険も顧みずに真っ先に現場に飛び込む。安全保障環境が厳しさを増す中、24時間365日体制で、領土、領海、領空、日本人の命を守り抜いてきている。

自衛隊が全力で任務を果たす姿に対し、国民の信頼は今や9割を超えている。一方、多くの憲法学者は違憲だと言っている。教科書には、自衛隊の活躍ぶりが書かれる中、違憲との指摘も必ずといっていいほど書かれている。命をかけて頑張っている自衛隊員の子どもたちが、その教科書で学んでいる現状がある。

北朝鮮を巡る情勢が緊迫し、安全保障環境が一層厳しくなっている中、「違憲かもしれないけれど、何かあれば命を張ってくれ」というのはあまりにも無責任だ。行政府の長としてではなく、国会議員として申し上げれば、立法府でこうした問題について真剣に議論していくことが、国会議員の責任だろうと思う。

9条については、平和主義の理念はこれからも堅持していく。そこで例えば、1項、2項をそのまま残し、その上で自衛隊の記述を書き加える。そういう考え方もある中で、現実的に私たちの責任を果たしていく道を考えるべきだ。それは国民的な議論に値するだろう。私の世代が何をなし得るかと考えれば、自衛隊を合憲化することが使命ではないかと思う。

――自民党の憲法改正草案は、集団的自衛権や集団安全保障などを可能にする内容になっている。

党の目指すべき改正はあの通りだが、政治は現実であり、結果を出していくことが求められる。改正草案にこだわるべきではない。(衆参両院で)3分の2の賛成を得て、かつ国民投票で過半の賛成を得なければならない中、党として責任を果たしていくことを考えるべきだ。9条1項、2項をそのまま残し、そして自衛隊の存在を記述する。どのように記述するかを議論してもらいたい。自民党は(衆参両院の)憲法審査会で積極的な役割を果たす考えだ。速やかに党の改正案を提出できるよう党内の検討を急がせたい。

――緊急事態条項の創設は。

大規模災害などの緊急時に国民の安全を守るため、国や国民がどのような役割を果たし、国難を乗り越えていくかを憲法にどう位置づけるかというのは極めて重く大切な課題だ。特に緊急事態に際し、衆院議員が不在となってしまう場合があるのではないか、との指摘は現実的で重要な論点だ。国会のあり方や役割、民主主義の根幹に関わることでもあり、国会でよく議論をしてほしい。

教育「1億総活躍」に役割

――日本維新の会は、教育無償化のため憲法26条の改正を訴えている。

子どもたちこそ国の未来であり、憲法で国の未来像を議論する上で、教育は極めて重要なテーマだ。日本維新の会の積極的な提案を歓迎する。これまでも安倍内閣は給付型奨学金の創設や幼児教育の無償化に取り組んできたが、世代を超えた貧困の連鎖を断ち切り、1億総活躍社会を実現する上で教育が果たすべき役割は極めて大きい。

70年前、憲法が普通教育の無償化を定め、小中学校も9年間の義務教育制度が始まった。我が国が戦後発展していく大きな原動力になった。しかし、70年の時を経て経済も社会も大きく変化した。子どもたちがそれぞれの夢を追いかけるため、高等教育も全ての国民に真に開かれたものとしなければならない。

中学を卒業して社会人になる場合、高校を卒業してなる場合、大学を卒業してなる場合。それぞれの平均賃金には相当の差がある。より高い教育を受ける機会をみんなが同じように持てなければならない。維新の提案を受けて多くの自民党員が刺激された。速やかに自民党改正案を提案できるようにしたい。

――「強すぎる参院」や参院選での合区の問題が指摘されている。二院制のあり方はどう考えるか。

選挙制度改革は議会政治の根幹に関わる課題であり、参院特有の事情も踏まえながら、参院で検討が進むことを期待したい。

――天皇制と憲法についてどう考えるか。

自民党で今、議論すべき課題であるとは誰もとらえていないと思う。

――衆院解散の制限の議論も出ている。野党には69条の衆院解散に限るべきだとの意見がある。

私は総理大臣として解散する立場だ。意見を述べることは差し控える。

――3分の2の形成に向けて民進党の一部とも合意を目指すか。

そういう作業は私は全くオープンだ。案を示し、賛成していただける方なら、どなたでも賛成してもらいたい。

――憲法改正に向けた国民の理解を深めるため、どう取り組んでいくか。

この10年で国民投票法が制定され、三つの宿題も解決し、憲法への国民的関心も高まってきた。かつて憲法には指一本触れてはならないといった議論もあったが、「不磨の大典」と考える人は少なくなってきた。だからこそ「護憲派」は、憲法審査会で具体的な議論に入ることを恐れていると思う。大切なことはしっかりと国民の目の前で具体的な議論をしていくことだ。

自民党の憲法改正草案は党の公式文書だが、その後の議論の深化も踏まえ、草案をそのまま審査会に提案することは考えていない。発議する上で何をテーブルの上に上げていくか、柔軟に考えるべきだ。国民的な議論を深めていく役割も、政党は担っている。国民の皆さんの中に入って議論すべきだ。視線を上げて世界、未来を見つめながら、どういう国にしていきたいのか、平和で安全で繁栄している日本をどう守っていくのか、どう理想に近づけていくのか、それぞれが考える憲法論議にしていきたい。


◆ 国民投票法 =憲法改正の具体的手続きを定めた法律。第1次安倍内閣の2007年5月に成立した。18歳以上に国民投票の投票権を認めている。付則では〈1〉選挙権年齢や成人年齢引き下げ〈2〉公務員の憲法改正への意見表明を可能にする〈3〉国民投票前に国民の意見を聞く「予備的国民投票」導入を検討――の3課題(三つの宿題)に結論を出すよう求めた。14年6月に3課題に対応する改正法が成立した。

◆ 自民党憲法改正草案 =野党時代の2012年にまとめた。9条の平和主義を堅持しつつ、「国防軍」の保持を明記したほか、天皇を「元首」とし、家族尊重の規定の導入を盛り込むなど保守色の強い内容となっている。

◆ 69条の衆院解散 =衆院で内閣不信任決議が可決された場合の衆院解散。憲法69条が「(内閣は)10日以内に衆院が解散されない限り、総辞職をしなければならない」と規定する。現行憲法下の解散23回のうち「69条解散」は4例のみ。19回は、解散を天皇の国事行為として定めた憲法7条による「7条解散」。国事行為は「内閣の助言と承認により」行われることから、時の首相が事実上、政権の延命を狙うケースなど政局の判断で解散できることになっている。

・憲法改正「2020年に施行したい」 首相がメッセージ(朝日新聞DIGITAL 2017年5月3日)

※安倍晋三首相は3日、憲法改正を求める集会にビデオメッセージを寄せ、「2020年を新しい憲法が施行される年にしたい」と表明した。首相は改正項目として9条を挙げて「1項、2項を残しつつ、自衛隊を明文で書き込むという考え方は国民的な議論に値する」との考えを示した。

18年秋の自民党総裁選での3選を前提に、自らの悲願である憲法改正の実現に意欲を示した。野党の反発は必至だ。

首相がメッセージを寄せたのは、日本会議が主導する美しい日本の憲法をつくる国民の会などの改憲集会。

首相はメッセージで「憲法改正は自民党の立党以来の党是」とした上で、「憲法を改正するか否かは最終的には国民投票だが、発議は国会にしかできない。私たち国会議員は大きな責任をかみしめるべきだ」と強調。20年に東京五輪・パラリンピックが開催されることについて「日本人共通の大きな目標。新しく生まれ変わった日本がしっかり動き出す年」として20年に改正憲法の施行を目指す考えを示した。

憲法9条について、首相は「多くの憲法学者や政党には自衛隊を違憲とする議論が今なお存在する。あまりにも無責任だ」として、自衛隊の根拠規定を9条に追加すべきとの考えを強調。さらに「改憲勢力」と位置づける日本維新の会が改正項目に掲げる教育無償化についても「一億総活躍社会を実現する上で教育が果たすべき役割は極めて大きい」と前向きな姿勢を示した。

首相のメッセージに対して、米ハワイ・ホノルルを訪問中の自民党の二階俊博幹事長は2日午後(日本時間3日午後)、「総理がそういうことを熱烈に希望しているなら、安倍内閣を支持している以上、積極的に支持、協力していくことが当然ではないか」と同行記者団に語った。

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安倍晋三首相が3日、憲法改正を求める集会に寄せたメッセージの全文は以下の通り。

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第19回公開憲法フォーラム(5月3日)

安倍晋三自由民主党総裁メッセージ


ご来場の皆様、こんにちは。「自由民主党」総裁の安倍晋三です。

憲法施行70年の節目の年に、「第19回公開憲法フォーラム」が盛大に開催されましたことに、まずもって、お慶(よろこ)びを申し上げます。憲法改正の早期実現に向けて、それぞれのお立場で、精力的に活動されている皆様に、心から敬意を表します。

憲法改正は、自由民主党の立党以来の党是です。自民党結党者の悲願であり、歴代の総裁が受け継いでまいりました。私が総理・総裁であった10年前、施行60年の年に国民投票法が成立し、改正に向けての一歩を踏み出すことができましたが、憲法はたった一字も変わることなく、施行70年の節目を迎えるに至りました。

憲法を改正するか否かは、最終的には、国民投票によって、国民が決めるものですが、その発議は国会にしかできません。私たち国会議員は、その大きな責任をかみしめるべきであると思います。

次なる70年に向かって日本がどういう国を目指すのか。今を生きる私たちは、少子高齢化、人口減少、経済再生、安全保障環境の悪化など、我が国が直面する困難な課題に対し、真正面から立ち向かい、未来への責任を果たさなければなりません。

憲法は、国の未来、理想の姿を語るものです。私たち国会議員は、この国の未来像について、憲法改正の発議案を国民に提示するための、「具体的な議論」を始めなければならない、その時期に来ていると思います。

我が党、自由民主党は、未来に、国民に責任を持つ政党として、憲法審査会における、「具体的な議論」をリードし、その歴史的使命を果たしてまいりたい、と思います。

例えば、憲法9条です。今日、災害救助を含め、命懸けで、24時間、365日、領土、領海、領空、日本人の命を守り抜く、その任務を果たしている自衛隊の姿に対して、国民の信頼は9割を超えています。しかし、多くの憲法学者や政党の中には、自衛隊を違憲とする議論が、今なお存在しています。「自衛隊は、違憲かもしれないけれども、何かあれば、命を張って守ってくれ」というのは、あまりにも無責任です。

私は、少なくとも、私たちの世代の内に、自衛隊の存在を憲法上にしっかりと位置づけ、「自衛隊が違憲かもしれない」などの議論が生まれる余地をなくすべきである、と考えます。

もちろん、9条の平和主義の理念については、未来に向けて、しっかりと、堅持していかなければなりません。そこで、「9条1項、2項を残しつつ、自衛隊を明文で書き込む」という考え方、これは、国民的な議論に値するのだろう、と思います。

教育の問題。子どもたちこそ、我が国の未来であり、憲法において、国の未来の姿を議論する際、教育は極めて重要なテーマだと思います。誰もが生きがいを持って、その能力を存分に発揮できる「一億総活躍社会」を実現する上で、教育が果たすべき役割は極めて大きい。

世代を超えた貧困の連鎖を断ち切り、経済状況にかかわらず、子どもたちが、それぞれの夢に向かって頑張ることができる、そうした日本でありたいと思っています。

70年前、現行憲法の下で制度化された、小中学校9年間の義務教育制度、普通教育の無償化は、まさに、戦後の発展の大きな原動力となりました。

70年の時を経て、社会も経済も大きく変化した現在、子どもたちがそれぞれの夢を追いかけるためには、高等教育についても、全ての国民に真に開かれたものとしなければならないと思います。これは、個人の問題にとどまりません。人材を育てることは、社会、経済の発展に、確実につながっていくものであります。

これらの議論の他にも、この国の未来を見据えて議論していくべき課題は多々あるでしょう。

私は、かねがね、半世紀ぶりに、夏季のオリンピック、パラリンピックが開催される2020年を、未来を見据えながら日本が新しく生まれ変わる大きなきっかけにすべきだと申し上げてきました。かつて、1964年の東京五輪を目指して、日本は、大きく生まれ変わりました。その際に得た自信が、その後、先進国へと急成長を遂げる原動力となりました。

2020年もまた、日本人共通の大きな目標となっています。新しく生まれ変わった日本が、しっかりと動き出す年、2020年を、新しい憲法が施行される年にしたい、と強く願っています。私は、こうした形で国の未来を切り拓(ひら)いていきたいと考えています。

本日は、自由民主党総裁として、憲法改正に向けた基本的な考え方を述べました。これを契機に、国民的な議論が深まっていくことを切に願います。自由民主党としても、その歴史的使命を、しっかりと果たしていく決意であることを改めて申し上げます。

最後になりましたが、国民的な議論と理解を深めていくためには、皆様方、「民間憲法臨調」、「美しい日本の憲法をつくる国民の会」のこうした取組みが不可欠であり、大変心強く感じております。

憲法改正に向けて、ともに頑張りましょう。

・JR東日本 東京駅にイスラム教徒の礼拝室を設置へ(NHK NEWS web 2017年5月9日)

※JR東日本は、日本を訪れるイスラム教徒の外国人旅行者が増えていることから来月、東京駅の構内に礼拝を行うための専用の部屋を設置することになりました。

イスラム教徒が多い東南アジアのインドネシアやマレーシアから日本を訪れる外国人旅行者は去年、前の年に比べて30%程度増加し、今後も拡大が見込まれています。

このためJR東日本は、来月5日、イスラム教徒が礼拝を行うための専用の部屋を東京駅の構内に設けることになりました。

部屋は2人が入れるほどのおよそ8平方メートルの大きさで、礼拝の前に手や足を清めるための水道が設置されます。

こうした礼拝を行う部屋は、羽田空港や成田空港などにはすでに設置されているほか、JR西日本も大阪駅につながる商業施設の中に設けていますが、JR東日本としては初めてとなります。

JR東日本の冨田哲郎社長は、記者会見で「インドネシアやマレーシアからは今後さらに多くの人が日本を訪れると考えられ、環境の整備が必要だと考えている」と述べました。