・化学兵器使用か シリア北西部 空爆で58人死亡(NHK NEWS web 2017年4月5日)
※内戦が続くシリアの北西部で4日、反政府勢力の支配地域が空爆を受けて、子どもを含む市民ら少なくとも58人が死亡し、人権団体は市民の症状などから化学兵器が使われた疑いがあるとしています。
シリアの内戦の情報を集めているシリア人権監視団によりますと、北西部イドリブ県の反政府勢力が支配する地域で4日朝、空爆があり、子どもを含む市民ら少なくとも58人が死亡したほか、多くのけが人が出ているということです。
病院で手当てを受けている市民らは呼吸障害など、化学兵器の使用が疑われる症状を訴えているということで、医療関係者が市民らにマスクをするなどして手当てをしていました。
国連とOPCW=化学兵器禁止機関はアサド政権が4年前に化学兵器の廃棄に応じたあとも、内戦で化学兵器を使った攻撃を行っていると指摘していて、人権監視団は今回の攻撃も政権側によるものだとしています。
これについて、反政府勢力の「シリア国民連合」は声明を出し、「恐ろしい犯罪行為だ」と非難したうえで、国連の安全保障理事会に緊急の調査を行うよう求めました。
一方、アサド政権は一貫して化学兵器の使用を否定してきましたが、今回の攻撃については、今のところ、コメントしていません。
シリアの内戦は、ここ数か月、アサド政権に圧倒的に優位な状況となっていますが、イドリブ県では今も反政府勢力が広い地域を支配していて、激しい戦闘が続いています。
・シリア 化学兵器使用か 67人死亡 政権側は否定(NHK NEWS web 2017年4月5日)
※内戦が続くシリアで空爆が行われたあと、多くの市民が化学兵器の使用が疑われる症状を訴え、これまでに子どもを含む67人が死亡し、およそ200人が病院で手当てを受けています。反政府勢力はアサド政権側が化学兵器を使ったと非難していますが、政権側は、これを否定し、反政府勢力による自作自演だとしています。
シリア北西部イドリブ県の反政府勢力が支配する町で4日、激しい空爆があり、その後、付近にいた市民の多くが呼吸障害など化学兵器の使用が疑われる症状を訴えました。
シリア国内で医療機関を支援しているNGOによりますと、これまでに子どもを含む67人が死亡し、およそ200人が呼吸困難などを訴えて、病院で手当てを受けています。
シリアでは、アサド政権が4年前に化学兵器の廃棄に応じたあとも、塩素ガスなどを使った攻撃を続けていると指摘されていて、今回も、反政府勢力は政権側によるものだと非難していますが、政権側は国営通信を通じて、これを否定し、反政府勢力による自作自演だと反論しています。
シリアの内戦でアサド政権側が優勢となる中、イドリブ県は今も反政府勢力の数少ない拠点となっており、去年12月に政権側が北部のアレッポを制圧したあと、次の標的になることが懸念されていました。
国連人権理事会が設けたシリアの人道状況を調べている調査団は4日、声明を出し、「攻撃を実行した者を特定しなければならない」として、国連が主体となり現地調査を行う必要性を強調しました。
国連安保理 緊急会合開催へ
ニューヨークの国連本部では4日、イギリスとフランスが安保理で緊急の会合を開くよう議長国のアメリカに要請しました。
これを受けて、アメリカのヘイリー国連大使は記者団に、「シリアで起きた化学兵器による攻撃は極めて深刻な事態だ」と述べ、5日午前10時(日本時間5日午後11時)に緊急の会合を開催することを明らかにしました。
また、国連のデュジャリック報道官は4日の定例の記者会見で、「化学兵器の使用は、いかなる場合も世界の平和と安全にとって、重大な脅威であり、国際法の深刻な違反だ」と述べ、厳しく非難しました。
英外相「紛れもない戦争犯罪」
イギリスのジョンソン外相は4日、ロンドンで開かれた記者会見で、「この攻撃にアサド政権が関わっていたことが証明されれば、この政権が憎むべき存在だということが改めて、はっきりするだろう」と非難したうえで、「市民に対する攻撃に化学兵器を使用することは紛れもなく戦争犯罪に当たり、責任追及は免れない」と述べました。
仏大統領「アサド政権支持の国は重い責任」
フランスの大統領府は4日、オランド大統領の声明を発表し、「2013年の時のように、アサド大統領は国際社会で禁じられた手段で市民を攻撃した」として、4年前にシリアの首都ダマスカスの郊外で化学兵器が使われ多数の死傷者が出たことにも言及し、アサド政権を非難しました。
そして、「アサド政権は証拠を否定し、同盟国を頼りに罰を免れようとするだろうが、政権を支持する国は政治的にも人道的にも重い責任を負うことを改めて思い知るだろう」と述べ、アサド政権を擁護するロシアを暗に批判しました。
また、エロー外相も4日、声明を発表し、「国際社会が、この問題に注目し、責任を明確にして化学兵器の使用を根絶しなければならない」と述べ、国連の安全保障理事会でこの問題を協議するよう呼びかけました。
薗浦外務副大臣「英仏と連携」
薗浦外務副大臣は4日、滞在先のロンドンで記者団に対し、「イギリスやフランスなどと連携して、事実関係をまず確認したい」と述べ、国連の安全保障理事会の緊急会合の開催を求めたイギリスやフランスと連携して、対応していきたい考えを示しました。
そのうえで、こうした非人道的な状況が繰り返される事態を防ぎたいとして、シリアの化学兵器の廃棄をめぐる国際社会の取り組みに関与していく姿勢を示しました
ロシア国防省 関与を否定
シリア北西部での空爆に化学兵器が使われた可能性が出ていることについて、ロシア国防省は4日、「この地域で空爆は行っていない」として、ロシア軍の関与を否定しました。
ロシア軍は、シリアを拠点とする過激派組織IS=イスラミックステートをせん滅するとして、おととし9月からシリアでアサド政権の政府軍を支援して軍事作戦を続けています。
しかし、去年12月にアサド政権の政府軍とともに北部の要衝アレッポを制圧した際には、反政府勢力側の多くの市民が犠牲になったとして、欧米などから厳しい批判を受けています。
・シリア 67人死亡 サリンなど神経ガス使用か(NHK NEWS web 2017年4月5日)
※内戦が続くシリアで空爆が行われたあと、多くの市民が化学兵器の使用が疑われる症状を訴え、これまでに子どもを含む67人が死亡、およそ200人が病院で手当てを受けています。現地で活動しているNGOは、被害を受けた人々の症状から猛毒のサリンなどの神経ガスが使われた可能性が高いという見方を示しました。
シリア北西部イドリブ県の反政府勢力が支配する町で4日、激しい空爆があり、その後、付近にいた市民の多くが呼吸障害やおう吐、けいれんなど、化学兵器の使用が疑われる症状を訴えました。
シリア国内で医療機関を支援しているNGOによりますと、これまでに子どもを含む67人が死亡し、およそ200人が病院で手当てを受けています。
このNGOはNHKの取材に対し、被害を受けた人々は瞳孔が収縮するなどの症状を見せており、猛毒のサリンなどの神経ガスが使われた可能性が高いという見方を示しました。
シリアではアサド政権が4年前に化学兵器の廃棄に応じたあとも、塩素ガスなどを使った攻撃を続けていると指摘されていて、今回も反政府勢力は政権側によるものだと非難していますが、政権側は国営通信を通じて、これを否定し、反政府勢力による自作自演だと反論しています。
国連人権理事会が設けたシリアの人道状況を調べている調査団は4日、声明を出し、「攻撃を実行した者を特定しなければならない」として、国連が主体となり、現地調査を行う必要性を強調しました。
国連安保理 緊急会合へ
ニューヨークの国連本部では4日、イギリスとフランスが安保理で緊急の会合を開くよう議長国のアメリカに要請しました。
これを受けて、アメリカのヘイリー国連大使は記者団に、「シリアで起きた化学兵器による攻撃は極めて深刻な事態だ」と述べ、5日午前10時(日本時間5日午後11時)に緊急の会合を開催することを明らかにしました。
また、国連のデュジャリック報道官は4日の定例の記者会見で、「化学兵器の使用は、いかなる場合も世界の平和と安全にとって、重大な脅威であり、国際法の深刻な違反だ」と述べ、厳しく非難しました。
米 攻撃を非難
シリア北西部での空爆で化学兵器が使用された可能性が出ていることについて、アメリカのトランプ大統領は4日、声明を出し、アサド政権による攻撃だとの見方を示したうえで、「女性や子どもを含む無実の市民に対する化学兵器を使った攻撃は無視できない。アメリカは同盟国とともにこの耐え難い行為を非難する」としています。
一方、ホワイトハウスのスパイサー報道官は、大統領が補佐官と対応を協議しているとしながらも、「これからどこに向かうのかに踏み込みたくない」と述べ、具体的な対応への言及は避けました。
アメリカのオバマ前政権は、アサド大統領の退陣を強く求めてきましたが、トランプ政権の高官は「シリアの人たちが自分で決めることだ」などと発言していて、アメリカが方針を転換する可能性があると受け止められています。
さらにスパイサー報道官は、2013年にもシリアで化学兵器が使用された際、オバマ前政権がシリアへの軍事行動の可能性を示唆しながら結局は見送ったことに触れ、「今回の攻撃もオバマ前政権の弱さと優柔不断さが招いた結果だ」と述べ、オバマ前政権に批判の矛先を向けました。
・シリア アサド政権の軍事施設に 米軍が巡航ミサイルで攻撃(NHK NEWS web 2017年4月7日)
※アメリカのトランプ政権はシリアで化学兵器の使用が疑われる攻撃で多数の死傷者が出たことへの対抗措置として、シリア国内にあるアサド政権の軍事施設を巡航ミサイルで攻撃しました。シリアの内戦が始まって以降、アメリカがアサド政権への攻撃に踏み切ったのは初めてです。
シリアでは今月4日、北西部イドリブ県の、反政府勢力が支配する町で空爆があり、少なくとも72人が死亡したほか、住民の多くに呼吸困難やけいれんなどの症状がみられ、猛毒のサリンのような神経ガスや塩素ガスなどの化学兵器が使われた疑いが強まっています。
これを受けてトランプ政権は、アサド政権による攻撃だとして6日、対抗措置としてシリア国内にあるアサド政権の軍事施設を巡航ミサイルで攻撃しました。
トランプ大統領は、滞在先の南部フロリダ州で声明を発表し「シリアの独裁者、アサドが無実の市民に対して化学兵器を使って攻撃を行った。このとても残虐な攻撃でかわいい赤ちゃんたちも無慈悲に殺害された」とと述べました。
そのうえで「シリアの空軍基地に対する軍事攻撃を指示した。この攻撃は化学兵器の使用と拡散をやめさせるためアメリカの安全保障上、非常に重要な国益だ」と述べ、シリアへの攻撃に理解を求めました。
アメリカ国防総省によりますと、地中海に展開するアメリカ軍の駆逐艦からシリア軍の飛行場に対して巡航ミサイル59発を発射したということです。
アメリカはシリアで過激派組織IS=イスラミックステートに対して空爆を続けてきましたが、アサド政権への攻撃に踏み切ったのは今回が初めてです。
この攻撃について、シリアの反政府勢力はアサド政権が化学兵器を使ったと強く非難していますが、アサド政権とその後ろ盾のロシアはこれを否定し、双方の主張は真っ向から対立しています。
米国防総省の声明 空軍基地にミサイル発射
アメリカ国防総省の声明によりますと、トランプ大統領の指示を受けて、アメリカ軍が日本時間の7日午前9時40分ごろ、シリアのシャイラート空軍基地に対し巡航ミサイルを発射したということです。
巡航ミサイルは、地中海に展開するアメリカ海軍の駆逐艦「ポーター」と「ロス」の2隻から、シリアの空軍機、燃料や弾薬施設、それにレーダーや防空施設を標的に合わせて59発が発射されたということです。
また、シャイラート空軍基地は、化学兵器の貯蔵に使われていたとしていて、アメリカの情報機関はこの基地を離陸した空軍機が化学兵器の攻撃を実施したと判断したとしています。
また、空軍基地にいるロシアとシリアの人員が被害を受ける可能性を最小限にするため、アメリカ軍の攻撃について事前にロシア軍に通報したとしています。
アメリカ国防総省は、現在、今回の攻撃の結果を調べていますが、現時点では、シャイラート空軍基地にある空軍機や設備に大きな損害を与え、シリア政府による化学兵器の使用能力が低下したとしています。
シリア 反政府勢力「攻撃を歓迎」
アメリカがシリア国内にあるアサド政権の軍事施設を巡航ミサイルで攻撃したことについて、アサド政権と戦闘を続けるシリアの反政府勢力、シリア国民連合の広報担当者は、フランスのAFP通信の取材に対し、「攻撃を歓迎する。アメリカ政府がアサド政権の空爆能力を無力化させるよう求める」と述べました。
シリア国営通信 化学兵器使用の疑惑自体がねつ造
アメリカのトランプ政権が、シリア国内にあるアサド政権の軍事施設を巡航ミサイルで攻撃したことについて、シリアの国営通信は「アメリカの侵略行為は、イドリブ県で起きたことをめぐる、多くのテロ支援国によるプロパガンダのあと行われた」と伝え、アサド政権が化学兵器を使ったという疑惑自体が、アメリカなどの反政府勢力の支援国によってねつ造されたものだと強調しました。
「空軍基地1か所が攻撃受けた」
シリア国営通信は「きょう7日の明け方に空軍基地1か所がアメリカ軍が発射したミサイルによって攻撃を受け、被害が出た」と伝えました。
また、ロイター通信によりますと、シリアの国営テレビは、シリア軍関係者の話として「アメリカによるミサイル攻撃によって、シャイラート空軍基地に損害が出ている」と伝えています。
一方、ロイター通信は、アメリカ国防総省の話として「アメリカが標的にしたのは、ロシアが駐留しているとされている場所ではない」と伝えています。
岸田外相「事実関係の確認に全力」
岸田外務大臣は衆議院の外務委員会で「情報は承知しており、現在、わが国としても事実関係の確認に全力で取り組んでいる。シリアについては、化学兵器が使われたのではないかという事案が発生した後、安全保障理事会で議論が行わていたところであり、日本としても、まずは安保理の場で、国際社会の対応、議論にしっかり貢献していかなければならないと考えている。国連の場などを通じて情報収集、分析に努めたい」と述べました。
また、岸田外務大臣は7日正午すぎ、外務省で記者団に対し、「わが国としては、まず事実関係の確認と調査を進めている。事実関係を確認したうえで、日本政府としての考えを明らかにしなければならない」と述べました。
また、記者団が「アメリカの対応を支持するのか」と質問したのに対し、岸田大臣は「日米間で意思疎通は緊密に行っているが、詳細は控える」と述べました。
外務省の杉山事務次官は7日午後1時半ごろ総理大臣官邸を出る際、記者団が「安倍総理大臣に状況説明を行ったのか」と質問したのに対し、「そうだ。谷内国家安全保障局長を中心に、外務省、防衛省などから」と答えました。また記者団が、「日本政府の対応はちかぢか発表するのか」と質問したのに対し、「そう遠くない将来、明らかにする」と述べました。
自民 高村氏「レッドライン越えたと判断し攻撃したか」
自民党の高村副総裁は、党本部で記者団に対し「トランプ大統領としては、化学兵器を使用したという確証を得て、『レッドライン』を越えたと判断し、攻撃したのだろう。オバマ政権で、現実に化学兵器を使用しても何もしなかったことが、アサド政権を増長させた面があった。アサド政権や、過激派組織IS=イスラミックステート、それに、世界の『ならず者国家』に対しても、一定の抑制効果があればいい。北朝鮮が、『シリアがやられたのは、核やミサイルを持っていないからだ』と間違った考えをしないよう願いたい」と述べました。
そして、高村氏は「日本としては、アメリカとロシアの関係をよく見ていく必要がある。政府は、世界全体への影響などを十分検討して対応を決めてもらいたいが、最低でも、『今回のトランプ政権の判断を理解する』ということになるのではないか」と述べました。
少なくとも2種類の化学兵器使用か
シリア北西部イドリブ県では、4日、反政府勢力の支配地域が空爆を受け、子どもを含む少なくとも72人が死亡し、数百人が病院で手当てを受けています。現地で活動する国際NGO国境なき医師団は、患者の症状から、少なくとも2種類の化学兵器が使用された疑いがあるとしています。
現地の病院に医療チームを派遣している国際NGO、「国境なき医師団」は5日、声明を出し、治療した患者から瞳孔の収縮や筋肉のけいれんなど猛毒のサリンのような神経ガスに特徴的な症状が見られたと明らかにしています。
さらに、別の病院に運ばれたほかの患者からは、塩素にさらされた可能性があることを示す漂白剤のような臭いが確認されたということで、少なくとも2つの種類の化学兵器が使われた疑いがあるという見方を示しました。
この攻撃について、シリアの反政府勢力はアサド政権が化学兵器を使ったと強く非難していますが、アサド政権はこれを否定し、双方の主張は真っ向から対立しています。WHO=世界保健機関は、専門家チームを派遣し、犠牲者の検視に立ち合うなどして攻撃に使われた物質を特定する調査に乗り出しました。
また、国連安全保障理事会は、5日、緊急会合を開き、欧米各国は、攻撃を行ったのは、アサド政権だと厳しく非難しましたが、ロシアは真っ向から対立したため、真相究明を求める欧米が共同で提出した決議案は採決が見送られています。アサド政権は4年前、国内の化学兵器の廃棄に応じましたが、その際、廃棄の対象とはならなかった塩素ガスなどによる攻撃を続けていると国連などから指摘されていました。
トランプ氏 急速にアサド政権への強硬発言
アメリカのトランプ大統領は、シリアで化学兵器が使われた疑いが強まっていることをめぐり、ここ数日急速にアサド政権に対する強硬な発言が目立つようになっていました。
このうち5日には、「罪もない市民に対する化学兵器を使った攻撃は恐ろしいことでこのようなアサド政権による凶行は許容されてはならない」と述べて厳しく非難しました。
そのうえで許容できない一線、いわゆるレッドラインを越えたのかという質問に対し「私にとっては『レッドライン』の域を越え、いくつもの線を越えている」と述べて何らかの行動を取る可能性を示唆していました。
さらに、トランプ大統領は、6日南部フロリダ州に向かう飛行機の中で同行の記者団に対して「アサド大統領がまだシリアで取りしきっている。何かが起きるべきだ」と述べ何らかの対抗措置が必要だという考えを示し、強硬な姿勢を示していました。
プーチン政権はアサド政権の政府軍を支援
シリアのアサド政権を擁護してきたロシアのプーチン政権は、2013年、アメリカのオバマ前政権が、シリアのアサド政権が化学兵器を使ったとしてシリアへの軍事行動に踏み切ろうとした際、シリアの化学兵器を国際管理下に置く提案を行い、アメリカ軍による軍事行動を断念させました。
ロシアは、おととし9月からアサド政権からの要請を受け、シリアを拠点とする過激派組織IS=イスラミックステートをせん滅するとして、シリアでアサド政権の政府軍を支援して軍事作戦に踏み切りました。
今回、シリア北西部で化学兵器が使われたと見られることについて、ロシア国防省は、ロシア軍の関与を否定したうえで、化学兵器は反政府勢力のものだとの見方を示していました。
これまでロシア軍が軍事行動を続けてきたシリアで反政府勢力を支援するアメリカが軍事行動に踏み切ったとことでアメリカとロシアの間でシリア問題をめぐる対立が一層先鋭化することが予想され代理戦争になるおそれも懸念されます。
・攻撃を命じたトランプ大統領の声明 全文(NHK NEWS web 2017年4月7日)
※アメリカのトランプ大統領がシリアへの攻撃を命じたあと出した声明の全文です。
アメリカ国民の皆さん、シリアの独裁者アサドが火曜日、おそろしい神経ガスの化学兵器を使って罪のない市民を攻撃した。アサドは無力な男性、女性、子どもの息の根をとめた。多くの人が時間をかけて残虐に殺された。この非常に野蛮な攻撃によってかわいい赤ちゃんたちさえ残酷に殺害された。どんな子どももこのような恐怖によって苦しむべきではない。
化学兵器による攻撃を実施したシリアの飛行場を標的とした軍事攻撃を、今夜、命令した。化学兵器の使用と拡散を防ぐことはアメリカの安全保障上の重要な利益だ。
シリアが化学兵器禁止条約の義務に違反し、国連安全保障理事会の求めを無視して禁止された化学兵器を使ったことには議論の余地がない。アサドの行動を変えさせるための何年にもわたるこれまでの取り組みは大きな失敗に終わった。その結果、難民危機は深まり、地域の不安定な状況は続き、アメリカや同盟国の脅威となっている。
私は今夜、シリアでの虐殺と流血の事態とあらゆるテロ行為を終わらせるため、すべての文明国に協力を求める。われわれは非常に問題の多い世界の難局に直面している。傷つき亡くなった人たちに祈りをささげ、アメリカが正義の側にいるかぎり、最後には平和と調和が勝利することを望む。おやすみなさい、そしてアメリカと全世界に神の恵みを。ありがとう。
・米軍がシリア アサド政権へミサイル攻撃 ロシアは強く反発(NHK NEWS web 2017年4月7日)
※アメリカのトランプ政権はシリアのアサド政権が化学兵器を使用したと断定し、対抗措置として、アサド政権の軍事施設を巡航ミサイルで攻撃しました。これに対して、アサド政権とそれを支援するロシアは強く反発していて、シリア情勢の混迷がさらに深まる可能性も出ています。
アメリカ国防総省は、地中海に展開するアメリカ軍の駆逐艦2隻から現地時間の7日午前4時40分ごろ、日本時間の7日午前9時40分ごろ、巡航ミサイル「トマホーク」59発を発射し、シリア中部のシャイラート空軍基地を攻撃したことを明らかにしました。
シリアでは今月4日、北西部イドリブ県の反政府勢力が支配する町が空爆を受け少なくとも72人が死亡し、猛毒のサリンなどの化学兵器が使われた疑いが強まっています。
トランプ大統領は6日、滞在先の南部フロリダ州で声明を発表し、「シリアの独裁者アサドがおそろしい神経ガスの化学兵器を使って罪のない市民を攻撃した」とアサド政権が化学兵器を使用したと断定したうえで、「化学兵器の使用と拡散を防ぐことはアメリカの安全保障上の重要な利益だ」として、対抗措置として攻撃に踏み切ったことを明らかにしました。国防総省は、化学兵器を使った攻撃にはシャイラート空軍基地から飛び立った航空機が関わっていたとしています。
シリアで内戦が始まってからアメリカは過激派組織IS=イスラミックステートに対して空爆を続けてきましたが、アサド政権を攻撃したのは今回が初めてです。
これに対してシリア政府軍は7日、国営テレビを通じて声明を発表し、攻撃で6人が死亡したことを明らかにしたうえで「露骨な侵略行為だ」とアメリカの軍事行動を強く非難しました。
また、アサド政権を支援するロシアの大統領府のペスコフ報道官は、「プーチン大統領は今回の攻撃について、主権国家への侵略行為で、国際法違反だと考えている」と述べ、プーチン大統領が強く反発していることを明らかにしました。
アメリカは、今回の攻撃についてロシアには事前に通告したとしていますが、ロシアはシリアとともに強く反発しており、シリア情勢の混迷がさらに深まる可能性も出ています。
シャイラート空軍基地とは
アメリカ軍が攻撃したシャイラート空軍基地は、シリア中部の都市ホムスから南東におよそ25キロ離れた位置にあります。アメリカメディアは、このシャイラート空軍基地は、化学兵器の使用が疑われる攻撃に関わった戦闘機が離陸した基地だと伝えています。
また、内戦の情報を集めているシリア人権監視団によりますと、シャイラート空軍基地はシリアで2番目に大きな基地とみられ、ロシア製の戦闘機などが配備されているということです。
シリア大統領府「不当で傲慢な侵略行為」
シリア大統領府は7日、国営通信を通じて声明を出し、「アメリカがけさ行ったことは不当で傲慢な侵略行為であり、無責任な行動以外の何ものでもない」と激しく非難しました。そのうえで、「主権国家の基地を標的にするという愚かな行動によって、われわれの政策を変えることはできない。シリア政府はこの侵略行為によって、テロリストを壊滅する意志をさらに強くした」として、今後もテロとの戦いを掲げて、反政府勢力への攻撃を続ける姿勢を強調しました。
シリア政府軍「6人死亡 露骨な侵略行為だ」
シリア政府軍は7日、国営テレビを通じて声明を発表し、攻撃で6人が死亡したことを明らかにしたうえで「露骨な侵略行為だ」とアメリカの軍事行動を強く非難しました。
この中で政府軍は、空軍基地の1つがアメリカ軍による攻撃を受け、6人が死亡し、多くのけが人が出ているほか、施設に大きな損害が出たことを明らかにしました。
そのうえでアメリカ軍の軍事行動を「露骨な侵略行為だ」と非難し、アメリカは、政権側が戦う過激派組織IS=イスラミックステートやアルカイダ系のイスラム過激派などのテロ組織の側についたと主張しました。そして、今後もテロ組織の壊滅に向けた作戦を続け、シリア全土の平和と安全を取り戻すと強調しました。
ロシア報道官 プーチン大統領は強く反発
ロシア大統領府のペスコフ報道官は記者団に対し、「プーチン大統領は今回の攻撃について、主権国家への侵略行為で、国際法違反だと考えている」と述べ、プーチン大統領が強く反発していることを明らかにしました。
そのうえでペスコフ報道官は、プーチン大統領の考えとして「こうした行為は、すでにひどい状態にある米ロ関係に重大な損害をもたらすことになる」と指摘しました。さらにペスコフ報道官は「シリア軍は化学兵器を所有していない。武装勢力が化学兵器を使用したという事実を全く無視することは、状況を一層難しいものにするだけだ」と述べ、アメリカがアサド政権が化学兵器を所有しているという証拠がないまま、空爆に踏み切ったとして批判しました。
また、ロシア外務省は声明を発表しました。この中で「アメリカは詳しい状況を把握しないまま、国際テロリズムと戦っている国に対して武力を誇示した」として、アメリカは、アサド政権が化学兵器を使用したという根拠がないまま攻撃に踏み切ったと批判しました。そのうえで「アメリカはこれまでも考え足らずの方法で国際問題を複雑にし、国際的な安全保障に脅威を作り上げている」として、アメリカがかつてイラクやリビアに軍事介入を行って政権を崩壊させ、この地域のイスラム過激派の台頭を許してきたと指摘しました。
さらに「今回の攻撃は主権国家シリアへの明確な侵略行為で、米ロ関係を一段と破壊するものだ。ロシアは、合法的なシリア政府に対する不法行為を決して容認することはできない」として、米ロ関係のさらなる悪化は避けられないとしています。
また、ロシア外務省は、シリアでの軍事作戦に関して、偶発的な衝突を防ぐため、アメリカとの間で結んでいる覚書の履行を一時的に停止することを明らかにしました。
イラン「テロリストを利する行動」と非難
イランの外務省は7日、声明を発表し「化学兵器が使われた疑いを一方的な軍事行動の口実とすることは危険で破壊的、そして国際法に違反する。このような行動は、シリア国内のテロリストを利するもので、シリア情勢の複雑化を招くことになる」などとして、アメリカを強く非難しました。
内戦が続くシリアで、イランはロシアとともにアサド政権を支援していて、精鋭部隊の革命防衛隊の幹部らを軍事顧問などとして派遣しています。
シリアの反政府勢力 アメリカの攻撃全面支持
反政府勢力の主要グループ、「最高交渉委員会」の幹部のジョージ・サブラ氏はNHKの電話取材に対し、「アサド政権によって行われてきた犯罪を止めるための前向きな一歩だ。同盟国のイランやロシアに対しても、シリアでやりたいことが何でもできるわけではないということを示すメッセージになると思う」と述べ、アメリカの攻撃を全面的に支持する姿勢を示しました。
トルコ「アサド政権は罰せられるべき」と歓迎
アメリカとともにアサド政権の退陣を強く求めているトルコのクルトゥルムシュ副首相は、地元のテレビ局に対し「アメリカ軍の基地に対する攻撃は重要で意味のあるものだ。アサド政権は完全に罰せられるべきだ」と述べて歓迎しました。
そのうえで、今回の対抗措置がアサド政権の野蛮な行為を止め、和平プロセスの加速につながるよう期待を示しました。
サウジアラビア「トランプ大統領の決断評価」
中東のサウジアラビアは7日、国営通信を通じて攻撃を全面的に支持する声明を発表しました。声明は外務省の高官による見解だとしたうえで「サウジアラビアはシリアの軍事的な拠点に対するアメリカの軍事作戦を全面的に支持する。攻撃は、シリアの政権が多くの罪のない市民を殺害した化学兵器を使用したことに応じたもので、アメリカのトランプ大統領の勇気ある決断を評価する」としています。
サウジアラビアはイランなどが支援するアサド政権と対立し、アメリカとともにシリアの反政府勢力に対する支援を続けています。
イスラエル「米大統領は明確なメッセージ送った」
アメリカの同盟国でシリアと国境を接するイスラエルの首相府は攻撃を歓迎する声明を発表しました。声明で首相府は「トランプ大統領はきょう、その言葉と行動で化学兵器の使用と拡散は容認しないという強く明確なメッセージを送った。イスラエルはトランプ大統領の決断を完全に支持する」としています。
そのうえで「アサド政権の恐るべき行為に対する決意あるメッセージがダマスカスだけでなく、テヘランやピョンヤンにも響き渡ることを望む」としており、今回の攻撃がシリアを支援するイランや、ミサイルの発射を繰り返す北朝鮮のけん制につながることに期待感を示しました。
また、イスラエルのメディアは、政府高官の話として今回の攻撃は事前にイスラエルに通告されていたと報じています。
独仏首脳が声明「すべての責任はアサド政権に」
ドイツのメルケル首相とフランスのオランド大統領は7日、電話で協議したあと共同で声明を発表しました。
この中で両首脳は「こうした事態を招いたすべての責任はアサド政権にある」として、アサド政権を非難するとともにアメリカの攻撃に理解を示しました。そのうえで「フランスとドイツは国際社会のほかのパートナーとともに国連の枠組みの中でアサド大統領の責任を追及する努力を続けていく」として、あくまでも国際法に基づいてアサド政権の責任を追及していく姿勢を強調しました。
フランスのオランド大統領は7日、フランス南部で演説し、アメリカ側から事前に通知があったとしたうえで、「アサド政権が化学兵器を使ったのは今回が初めてではない。アメリカ軍の攻撃はアサド政権への回答だと受け止めている」と述べ、攻撃を支持する姿勢を示しました。そしてこれ以上の化学兵器の使用を避けるためにも、国連の枠組みの中でアサド政権の責任を追及し、政権移行に向けてドイツなどとともに協議を進めるよう努める考えを示しました。
また、来週、イタリアで開かれるG7=主要7か国外相会合の議長を務めるアルファノ外相は7日、声明を出し「アメリカ軍の行動は化学兵器の使用という受け入れがたい罪への対処として、またアサド政権による将来の化学兵器の使用を抑止するものとして、適切な対応だ」と述べ、支持する姿勢を示しました。
イギリス首相報道官「野蛮な攻撃への対処として適切」
イギリスの首相報道官は声明を出し「シリアの政権が行った化学兵器による野蛮な攻撃への対処としては適切であり、将来の使用を抑止するものだ。イギリス政府は全面的に支持する」と述べました。
オーストラリア首相 アメリカの攻撃を全面支持
アメリカがシリア国内にあるアサド政権の軍事施設を巡航ミサイルで攻撃したことについて、アメリカの同盟国、オーストラリアのターンブル首相は声明を発表し「どんな状況であれ、化学兵器の使用は戦争犯罪だ。迅速な対抗措置はアサド政権へのメッセージだ」として、攻撃を全面的に支持しました。
また、ターンブル首相は、今回の攻撃にはオーストラリアは直接、関与していないものの、アメリカから事前に連絡を受けていたことを明らかにし、今後もシリア情勢でアメリカと緊密に連携する考えを強調しました。
中国外務省 調査待たずに攻撃したアメリカを批判
中国外務省の華春瑩報道官は7日の記者会見で、「このほどシリアで起きた化学兵器を使った攻撃を強く非難する」としたうえで、「国連の関係機関が今回の事件を独立した立場で全面的に調査し明確な証拠をもって、歴史的な検証に耐えられる結論を導き出すことを支持する」と述べ、アメリカが国連による調査を待たずに攻撃に踏み切ったことを間接的に批判しました。
そのうえで華報道官は「当面、急務なのは、事態をこれ以上悪化させず、やっと手に入れた政治的解決のプロセスを維持することだ」と述べ、アメリカなど関係国に自制を呼びかけました。
アサド政権の化学兵器使用 たびたび取り沙汰
内戦が続くシリアでは、アサド政権による化学兵器の使用がたびたび取り沙汰されてきました。
アメリカのオバマ前大統領は、アサド政権が化学兵器を使用した場合には「一線を越えた」と見なし、対シリア政策を大きく転換すると警告していましたが、その後も北部のアレッポなど反政府勢力の支配地域で化学兵器を使ったと見られる攻撃が相次ぎました。
2013年8月には、国連の調査団が化学兵器をめぐる調査のためシリア入りしているさなかに、ダマスカス郊外の反政府勢力の支配地域で化学兵器を使ったと見られる大規模な攻撃があり、数百人が死亡したとされています。
当時アサド政権は反政府勢力による自作自演だと主張しましたが、アメリカは政権側による攻撃だと断定し軍事行動に踏み切る構えを見せます。また、フランスは、アメリカに同調して軍事行動への参加を決める一方で、イギリスは議会の反対を理由に軍事行動に参加しない意向を表明しました。
これに対してロシアは政権側の主張を擁護したうえで、シリアが保有するすべての化学兵器の破棄を提案。アメリカとロシアは、国連とOPCW=化学兵器禁止機関の監視のもとでシリアの化学兵器を廃棄することで合意し、アメリカの軍事行動はぎりぎりのところで回避されました。その後、国連とOPCWは、すべての化学兵器をシリア国外に運び出し、去年1月、廃棄が完了したと発表します。
ところが、シリアではその後も反政府勢力が支配していたアレッポなどへの攻撃で、有毒の塩素ガスなどが使われた疑いがたびたび報告され、誰がこうした攻撃を続けているのか、国連が調査に乗り出します。
国連は去年8月になって報告書をまとめ、2014年の4月と2015年の3月にはシリアの空軍が有毒ガスを使った攻撃を行い、2015年の4月には過激派組織IS=イスラミックステートが化学兵器の一種のマスタードガスを使用したと、結論づけました。
これについて当時のアメリカのパワー国連大使は、「長い間疑われてきたアサド政権による化学兵器の使用が初めて裏付けられた」として政権を改めて非難したのに対し、シリアのジャファリ国連大使は「報告書は証拠に欠けており結論とは言えない」と反論しました。
こうした中、今回再び化学兵器を使ったと見られる大規模な攻撃が行われたことで、アメリカやロシアをはじめとする国際社会がどのような対応を取るのかが、焦点となっていました。
米連邦議会議員には賛否
連邦議会の議員からは、攻撃を支持する声が上がる一方、議会と緊密に連携を取るよう求める意見が出ています。
与党・共和党の重鎮、マケイン上院議員は、グラハム上院議員と共同で声明を発表し「最高司令官であるトランプ大統領の指示の下、アメリカ軍は、ロシアのプーチン大統領の支援を受けたアサド政権が、無実のシリア人を化学兵器で虐殺するのを黙って見ていることはしないという重要なメッセージを送った」としています。そのうえで「トランプ政権はオバマ前政権と違い、極めて重要な時期に行動を起こした」として攻撃を支持しています。
また、野党・民主党の上院トップ、シューマー院内総務は声明を発表し「アサド大統領に、卑劣で残虐な行為をすればその代償を払わないといけないということを知らしめるのは、正しいことだ」として、攻撃を評価しました。そのうえで「トランプ政権には、戦略を立て、それを実行する前に議会の意見を聞く必要がある」として、今後、議会と緊密に連携をとるよう求めました。
一方、共和党のポール上院議員はツイッターに「トランプ大統領が軍事行動を起こすためには、憲法で定められているように議会の承認を得る必要がある。アメリカがこれまでにこの地域に介入した結果、アメリカの安全が高まったことはなく、今回も同じ結果になるだろう」と投稿し、攻撃に批判的な考えを示しています。
・安倍首相 米政府の決意を支持(NHK NEWS web 2017年4月7日)
※安倍総理大臣は記者団に対し、アメリカ軍がシリア国内にあるアサド政権の軍事施設を巡航ミサイルで攻撃したことについて、化学兵器の拡散と使用は絶対に許さないというアメリカ政府の決意を日本政府として支持する考えを示しました。
政府は、アメリカ軍がシリア国内にあるアサド政権の軍事施設を巡航ミサイルで攻撃したことを受けて、午後3時すぎから総理大臣官邸で、安倍総理大臣や岸田外務大臣、それに稲田防衛大臣らが出席してNSC=国家安全保障会議の閣僚会合を開きました。
このあと、安倍総理大臣は記者団に対し、「シリアにおいて再び化学兵器によってなんの罪も無い多くの一般人が犠牲となった。幼い子どもたちも犠牲となった惨状を目の当たりにして国際社会は大きな衝撃を受けている」と述べました。
そのうえで、安倍総理大臣は「極めて非人道的であり、国連決議にも反する。化学兵器の拡散と使用は絶対に許さないという米国政府の決意を日本政府は支持する。今回の米国の行動は、これ以上の事態の深刻化を防ぐための措置と理解している」と述べました。
そして、安倍総理大臣は「東アジアでも大量破壊兵器の脅威は深刻さを増している。その中で、国際秩序の維持と、同盟国と世界の平和と安全に対するトランプ大統領の強い関与を日本は高く評価する。今後、米国をはじめ国際社会と連携しながら、世界の平和と安定のために日本が果たすべき役割をしっかり果たしていく」と述べました。
自民 下村氏「党として政府の方向性を支持」
自民党の下村幹事長代行は党本部で記者団に対し、「安倍総理大臣が、トランプ大統領との信頼関係の中で、アメリカを支持するとコメントしたということであれば、党としては当然、政府の方向性を支持したい。アメリカとロシアとの関係は非常に危惧する部分があるが、政府には、日本とロシアの関係がマイナスにならない視点で対応してほしい。北朝鮮に対しては、一定の抑止力になる部分もあるのではないかと考えている」と述べました。
共産 笠井氏「アメリカ支持 直ちに改めるべき」
共産党の笠井政策委員長は、記者会見で「化学兵器の使用は、人道と国際法に違反する重大で許されない行為だが、国連安全保障理事会の決議もないままに、アメリカが一方的に攻撃を強行したとなると、国連憲章や国際法に反する。そうした中で、安倍総理大臣が『支持する』と言ったことは、極めて重大なことだ。軍事攻撃により、シリア内戦をさらに悪化させることになるし、日本政府や安倍総理自身も、悪化させる側に立つということになるので、そういう態度は直ちに改めるべきだ」と述べました。
・バノン氏影響力低下か…シリア攻撃反対通らず(YOMIURI ONLINE 2017年4月9日)
※シリア空軍基地へのミサイル攻撃を巡り、トランプ米政権内の内紛が表面化した。米メディアによると、トランプ氏の最側近だったバノン大統領上級顧問・首席戦略官がシリア攻撃に反対する一方、トランプ氏の娘婿クシュナー大統領上級顧問が実施を求めたという。攻撃の実現は、バノン氏のホワイトハウス内での影響力低下を示している可能性がありそうだ。
・トランプ大統領の娘婿クシュナー氏、「黒幕」バノン氏外しに一役買う(The Huffington Post 2017年4月8日)
※ドナルド・トランプ大統領は4月5日、安全保障の政策決定機関「国家安全保障会議」(NSC)から、保守系ニュースサイト「ブライトバート」元会長で首席戦略補佐官のスティーブ・バノン氏を常任メンバーから外した。この背景には、トランプ氏の娘婿ジャレッド・クシュナー氏が助言していた。
この更迭人事は、トランプ氏が署名したイスラム圏からの入国を禁止する大統領令が相次いで差し止めとなり、健康保険制度改革法(オバマケア)撤廃が失敗したことを受けて、ホワイトハウス内でバノン氏の影響力が弱まったことが理由と考えられていた。
しかし政治ニュースサイト「ポリティコ」が複数の匿名情報筋から得た情報によると、バノン氏の左遷劇の裏の立役者はクシュナー氏だったという。
そもそも初めから、バノン氏のポピュリズム的政治手法と、「行政国家を解体する」という願望を公言してはばからない姿勢は、政権運営に関して比較的官僚的な姿勢のクシュナー氏と対立状態にあった。
クシュナー氏は最近ホワイトハウスの同僚に、「バノン氏の国家主義的な思想がトランプ氏にダメージを与えている」と語っていたとされる。さらにバノン氏の極右的思想が、トランプ氏が持つ資質のなかでも最悪の部分を引き出していることを懸念しているという。
トランプ氏は就任後最初の10週間で政権運営に弾みを付けようとしたが、ホワイトハウス高官の陰謀、選挙陣営とロシアとの接触に関する度重なる捜査、目玉政策の失敗がたたり、行き詰まっている。
「国家主義者と『ホワイトハウス内部の民主党員』の間で激しい主導権争いが起きている」と、ある政府高官はポリティコに語った。
バノン氏が衝突した相手はクシュナー氏だけではない。ゲーリー・コーン経済担当大統領補佐官も同様に対立している。コーン補佐官は、ゴールドマン・サックスの前社長でクシュナー氏とは親しい間柄だ。
マイク・ペンス副大統領もバノン氏とは距離を置いた動きをしている。3月に共和党が提出した健康保険制度改革法案(トランプケア)をめぐり、バノン氏は下院共和党の保守派「下院自由議員連盟」(フリーダム・コーカス)の議員に、「いいか諸君。これは話し合いではない。討論でもない。この法案に賛成票を投じる以外、君たちに選択肢はない」と、高圧的に最後通告を突きつけたが、裏目に出て保守派の離反を招いた。するとペンス氏は、連邦議会に出向き、溝を修復しようと折衝を重ねた。
バノン氏自身は、ホワイトハウス内で非主流派に甘んじるというそぶりはまだ一切見せていない。それどころか、「NSCに出席できなくなったら辞めてやる」と脅しをかけたという噂が数多く流れている。
ホワイトハウス内のバノン氏支持派は、「バノン氏は元々NSCには数カ月だけ留まるつもりだった」「NSCのメンバーに任命されたのは、大統領補佐官を辞任したマイク・フリン元陸軍中将を監視するためだ」などと、彼がNSCの常任メンバーから外されたことを正当化する言い訳を続けている。
「スーザン・ライス(バラク・オバマ大統領の国家安全保障補佐官)が、オバマ前政権時にNSCを機能不全に陥れた」と、バノン氏は5日の声明で述べた。「私がフリン将軍とNSCに加わったのは、適切に機能するよう元に戻すためだった。マクマスター将軍がNSCに戻り、適切に機能するようになっている」
バノン氏が、ライス元補佐官がNSCを「機能不全にした」と述べた時、その具体的な根拠は示さなかった。したがって、バノン氏がNSCの「機能を回復する」ために何をしたのかは謎だ。
フリン氏の辞任に伴い、トランプ大統領はH.R.マクマスター陸軍中将を新たに国家安全保障補佐官に任命した。マクマスター氏は就任直後から、フリン氏が連れてきたメンバーをNSCから追放した。追放されたメンバーたちは、クシュナー氏よりバノン氏との関係が強かった。
中国の習近平国家主席が訪米したことで、バノン氏とクシュナー氏が再び衝突することになりそうだ。バノン氏のポピュリズム的思想こそが、トランプ氏の過激な発言の源泉となっている。2016年の大統領選で、トランプ氏が「アメリカが中国の貿易政策に翻弄されている」と演説した内容に、バノン氏の思想が大きく反映されている。
一方クシュナー氏は、ホワイトハウスと中国側との関係構築で中心的な役割を果たしてきている。クシュナー氏も、フロリダ州パームビーチにあるトランプ大統領所有のリゾート施設「マール・ア・ラーゴ」での米中首脳会談に同席した。
※内戦が続くシリアの北西部で4日、反政府勢力の支配地域が空爆を受けて、子どもを含む市民ら少なくとも58人が死亡し、人権団体は市民の症状などから化学兵器が使われた疑いがあるとしています。
シリアの内戦の情報を集めているシリア人権監視団によりますと、北西部イドリブ県の反政府勢力が支配する地域で4日朝、空爆があり、子どもを含む市民ら少なくとも58人が死亡したほか、多くのけが人が出ているということです。
病院で手当てを受けている市民らは呼吸障害など、化学兵器の使用が疑われる症状を訴えているということで、医療関係者が市民らにマスクをするなどして手当てをしていました。
国連とOPCW=化学兵器禁止機関はアサド政権が4年前に化学兵器の廃棄に応じたあとも、内戦で化学兵器を使った攻撃を行っていると指摘していて、人権監視団は今回の攻撃も政権側によるものだとしています。
これについて、反政府勢力の「シリア国民連合」は声明を出し、「恐ろしい犯罪行為だ」と非難したうえで、国連の安全保障理事会に緊急の調査を行うよう求めました。
一方、アサド政権は一貫して化学兵器の使用を否定してきましたが、今回の攻撃については、今のところ、コメントしていません。
シリアの内戦は、ここ数か月、アサド政権に圧倒的に優位な状況となっていますが、イドリブ県では今も反政府勢力が広い地域を支配していて、激しい戦闘が続いています。
・シリア 化学兵器使用か 67人死亡 政権側は否定(NHK NEWS web 2017年4月5日)
※内戦が続くシリアで空爆が行われたあと、多くの市民が化学兵器の使用が疑われる症状を訴え、これまでに子どもを含む67人が死亡し、およそ200人が病院で手当てを受けています。反政府勢力はアサド政権側が化学兵器を使ったと非難していますが、政権側は、これを否定し、反政府勢力による自作自演だとしています。
シリア北西部イドリブ県の反政府勢力が支配する町で4日、激しい空爆があり、その後、付近にいた市民の多くが呼吸障害など化学兵器の使用が疑われる症状を訴えました。
シリア国内で医療機関を支援しているNGOによりますと、これまでに子どもを含む67人が死亡し、およそ200人が呼吸困難などを訴えて、病院で手当てを受けています。
シリアでは、アサド政権が4年前に化学兵器の廃棄に応じたあとも、塩素ガスなどを使った攻撃を続けていると指摘されていて、今回も、反政府勢力は政権側によるものだと非難していますが、政権側は国営通信を通じて、これを否定し、反政府勢力による自作自演だと反論しています。
シリアの内戦でアサド政権側が優勢となる中、イドリブ県は今も反政府勢力の数少ない拠点となっており、去年12月に政権側が北部のアレッポを制圧したあと、次の標的になることが懸念されていました。
国連人権理事会が設けたシリアの人道状況を調べている調査団は4日、声明を出し、「攻撃を実行した者を特定しなければならない」として、国連が主体となり現地調査を行う必要性を強調しました。
国連安保理 緊急会合開催へ
ニューヨークの国連本部では4日、イギリスとフランスが安保理で緊急の会合を開くよう議長国のアメリカに要請しました。
これを受けて、アメリカのヘイリー国連大使は記者団に、「シリアで起きた化学兵器による攻撃は極めて深刻な事態だ」と述べ、5日午前10時(日本時間5日午後11時)に緊急の会合を開催することを明らかにしました。
また、国連のデュジャリック報道官は4日の定例の記者会見で、「化学兵器の使用は、いかなる場合も世界の平和と安全にとって、重大な脅威であり、国際法の深刻な違反だ」と述べ、厳しく非難しました。
英外相「紛れもない戦争犯罪」
イギリスのジョンソン外相は4日、ロンドンで開かれた記者会見で、「この攻撃にアサド政権が関わっていたことが証明されれば、この政権が憎むべき存在だということが改めて、はっきりするだろう」と非難したうえで、「市民に対する攻撃に化学兵器を使用することは紛れもなく戦争犯罪に当たり、責任追及は免れない」と述べました。
仏大統領「アサド政権支持の国は重い責任」
フランスの大統領府は4日、オランド大統領の声明を発表し、「2013年の時のように、アサド大統領は国際社会で禁じられた手段で市民を攻撃した」として、4年前にシリアの首都ダマスカスの郊外で化学兵器が使われ多数の死傷者が出たことにも言及し、アサド政権を非難しました。
そして、「アサド政権は証拠を否定し、同盟国を頼りに罰を免れようとするだろうが、政権を支持する国は政治的にも人道的にも重い責任を負うことを改めて思い知るだろう」と述べ、アサド政権を擁護するロシアを暗に批判しました。
また、エロー外相も4日、声明を発表し、「国際社会が、この問題に注目し、責任を明確にして化学兵器の使用を根絶しなければならない」と述べ、国連の安全保障理事会でこの問題を協議するよう呼びかけました。
薗浦外務副大臣「英仏と連携」
薗浦外務副大臣は4日、滞在先のロンドンで記者団に対し、「イギリスやフランスなどと連携して、事実関係をまず確認したい」と述べ、国連の安全保障理事会の緊急会合の開催を求めたイギリスやフランスと連携して、対応していきたい考えを示しました。
そのうえで、こうした非人道的な状況が繰り返される事態を防ぎたいとして、シリアの化学兵器の廃棄をめぐる国際社会の取り組みに関与していく姿勢を示しました
ロシア国防省 関与を否定
シリア北西部での空爆に化学兵器が使われた可能性が出ていることについて、ロシア国防省は4日、「この地域で空爆は行っていない」として、ロシア軍の関与を否定しました。
ロシア軍は、シリアを拠点とする過激派組織IS=イスラミックステートをせん滅するとして、おととし9月からシリアでアサド政権の政府軍を支援して軍事作戦を続けています。
しかし、去年12月にアサド政権の政府軍とともに北部の要衝アレッポを制圧した際には、反政府勢力側の多くの市民が犠牲になったとして、欧米などから厳しい批判を受けています。
・シリア 67人死亡 サリンなど神経ガス使用か(NHK NEWS web 2017年4月5日)
※内戦が続くシリアで空爆が行われたあと、多くの市民が化学兵器の使用が疑われる症状を訴え、これまでに子どもを含む67人が死亡、およそ200人が病院で手当てを受けています。現地で活動しているNGOは、被害を受けた人々の症状から猛毒のサリンなどの神経ガスが使われた可能性が高いという見方を示しました。
シリア北西部イドリブ県の反政府勢力が支配する町で4日、激しい空爆があり、その後、付近にいた市民の多くが呼吸障害やおう吐、けいれんなど、化学兵器の使用が疑われる症状を訴えました。
シリア国内で医療機関を支援しているNGOによりますと、これまでに子どもを含む67人が死亡し、およそ200人が病院で手当てを受けています。
このNGOはNHKの取材に対し、被害を受けた人々は瞳孔が収縮するなどの症状を見せており、猛毒のサリンなどの神経ガスが使われた可能性が高いという見方を示しました。
シリアではアサド政権が4年前に化学兵器の廃棄に応じたあとも、塩素ガスなどを使った攻撃を続けていると指摘されていて、今回も反政府勢力は政権側によるものだと非難していますが、政権側は国営通信を通じて、これを否定し、反政府勢力による自作自演だと反論しています。
国連人権理事会が設けたシリアの人道状況を調べている調査団は4日、声明を出し、「攻撃を実行した者を特定しなければならない」として、国連が主体となり、現地調査を行う必要性を強調しました。
国連安保理 緊急会合へ
ニューヨークの国連本部では4日、イギリスとフランスが安保理で緊急の会合を開くよう議長国のアメリカに要請しました。
これを受けて、アメリカのヘイリー国連大使は記者団に、「シリアで起きた化学兵器による攻撃は極めて深刻な事態だ」と述べ、5日午前10時(日本時間5日午後11時)に緊急の会合を開催することを明らかにしました。
また、国連のデュジャリック報道官は4日の定例の記者会見で、「化学兵器の使用は、いかなる場合も世界の平和と安全にとって、重大な脅威であり、国際法の深刻な違反だ」と述べ、厳しく非難しました。
米 攻撃を非難
シリア北西部での空爆で化学兵器が使用された可能性が出ていることについて、アメリカのトランプ大統領は4日、声明を出し、アサド政権による攻撃だとの見方を示したうえで、「女性や子どもを含む無実の市民に対する化学兵器を使った攻撃は無視できない。アメリカは同盟国とともにこの耐え難い行為を非難する」としています。
一方、ホワイトハウスのスパイサー報道官は、大統領が補佐官と対応を協議しているとしながらも、「これからどこに向かうのかに踏み込みたくない」と述べ、具体的な対応への言及は避けました。
アメリカのオバマ前政権は、アサド大統領の退陣を強く求めてきましたが、トランプ政権の高官は「シリアの人たちが自分で決めることだ」などと発言していて、アメリカが方針を転換する可能性があると受け止められています。
さらにスパイサー報道官は、2013年にもシリアで化学兵器が使用された際、オバマ前政権がシリアへの軍事行動の可能性を示唆しながら結局は見送ったことに触れ、「今回の攻撃もオバマ前政権の弱さと優柔不断さが招いた結果だ」と述べ、オバマ前政権に批判の矛先を向けました。
・シリア アサド政権の軍事施設に 米軍が巡航ミサイルで攻撃(NHK NEWS web 2017年4月7日)
※アメリカのトランプ政権はシリアで化学兵器の使用が疑われる攻撃で多数の死傷者が出たことへの対抗措置として、シリア国内にあるアサド政権の軍事施設を巡航ミサイルで攻撃しました。シリアの内戦が始まって以降、アメリカがアサド政権への攻撃に踏み切ったのは初めてです。
シリアでは今月4日、北西部イドリブ県の、反政府勢力が支配する町で空爆があり、少なくとも72人が死亡したほか、住民の多くに呼吸困難やけいれんなどの症状がみられ、猛毒のサリンのような神経ガスや塩素ガスなどの化学兵器が使われた疑いが強まっています。
これを受けてトランプ政権は、アサド政権による攻撃だとして6日、対抗措置としてシリア国内にあるアサド政権の軍事施設を巡航ミサイルで攻撃しました。
トランプ大統領は、滞在先の南部フロリダ州で声明を発表し「シリアの独裁者、アサドが無実の市民に対して化学兵器を使って攻撃を行った。このとても残虐な攻撃でかわいい赤ちゃんたちも無慈悲に殺害された」とと述べました。
そのうえで「シリアの空軍基地に対する軍事攻撃を指示した。この攻撃は化学兵器の使用と拡散をやめさせるためアメリカの安全保障上、非常に重要な国益だ」と述べ、シリアへの攻撃に理解を求めました。
アメリカ国防総省によりますと、地中海に展開するアメリカ軍の駆逐艦からシリア軍の飛行場に対して巡航ミサイル59発を発射したということです。
アメリカはシリアで過激派組織IS=イスラミックステートに対して空爆を続けてきましたが、アサド政権への攻撃に踏み切ったのは今回が初めてです。
この攻撃について、シリアの反政府勢力はアサド政権が化学兵器を使ったと強く非難していますが、アサド政権とその後ろ盾のロシアはこれを否定し、双方の主張は真っ向から対立しています。
米国防総省の声明 空軍基地にミサイル発射
アメリカ国防総省の声明によりますと、トランプ大統領の指示を受けて、アメリカ軍が日本時間の7日午前9時40分ごろ、シリアのシャイラート空軍基地に対し巡航ミサイルを発射したということです。
巡航ミサイルは、地中海に展開するアメリカ海軍の駆逐艦「ポーター」と「ロス」の2隻から、シリアの空軍機、燃料や弾薬施設、それにレーダーや防空施設を標的に合わせて59発が発射されたということです。
また、シャイラート空軍基地は、化学兵器の貯蔵に使われていたとしていて、アメリカの情報機関はこの基地を離陸した空軍機が化学兵器の攻撃を実施したと判断したとしています。
また、空軍基地にいるロシアとシリアの人員が被害を受ける可能性を最小限にするため、アメリカ軍の攻撃について事前にロシア軍に通報したとしています。
アメリカ国防総省は、現在、今回の攻撃の結果を調べていますが、現時点では、シャイラート空軍基地にある空軍機や設備に大きな損害を与え、シリア政府による化学兵器の使用能力が低下したとしています。
シリア 反政府勢力「攻撃を歓迎」
アメリカがシリア国内にあるアサド政権の軍事施設を巡航ミサイルで攻撃したことについて、アサド政権と戦闘を続けるシリアの反政府勢力、シリア国民連合の広報担当者は、フランスのAFP通信の取材に対し、「攻撃を歓迎する。アメリカ政府がアサド政権の空爆能力を無力化させるよう求める」と述べました。
シリア国営通信 化学兵器使用の疑惑自体がねつ造
アメリカのトランプ政権が、シリア国内にあるアサド政権の軍事施設を巡航ミサイルで攻撃したことについて、シリアの国営通信は「アメリカの侵略行為は、イドリブ県で起きたことをめぐる、多くのテロ支援国によるプロパガンダのあと行われた」と伝え、アサド政権が化学兵器を使ったという疑惑自体が、アメリカなどの反政府勢力の支援国によってねつ造されたものだと強調しました。
「空軍基地1か所が攻撃受けた」
シリア国営通信は「きょう7日の明け方に空軍基地1か所がアメリカ軍が発射したミサイルによって攻撃を受け、被害が出た」と伝えました。
また、ロイター通信によりますと、シリアの国営テレビは、シリア軍関係者の話として「アメリカによるミサイル攻撃によって、シャイラート空軍基地に損害が出ている」と伝えています。
一方、ロイター通信は、アメリカ国防総省の話として「アメリカが標的にしたのは、ロシアが駐留しているとされている場所ではない」と伝えています。
岸田外相「事実関係の確認に全力」
岸田外務大臣は衆議院の外務委員会で「情報は承知しており、現在、わが国としても事実関係の確認に全力で取り組んでいる。シリアについては、化学兵器が使われたのではないかという事案が発生した後、安全保障理事会で議論が行わていたところであり、日本としても、まずは安保理の場で、国際社会の対応、議論にしっかり貢献していかなければならないと考えている。国連の場などを通じて情報収集、分析に努めたい」と述べました。
また、岸田外務大臣は7日正午すぎ、外務省で記者団に対し、「わが国としては、まず事実関係の確認と調査を進めている。事実関係を確認したうえで、日本政府としての考えを明らかにしなければならない」と述べました。
また、記者団が「アメリカの対応を支持するのか」と質問したのに対し、岸田大臣は「日米間で意思疎通は緊密に行っているが、詳細は控える」と述べました。
外務省の杉山事務次官は7日午後1時半ごろ総理大臣官邸を出る際、記者団が「安倍総理大臣に状況説明を行ったのか」と質問したのに対し、「そうだ。谷内国家安全保障局長を中心に、外務省、防衛省などから」と答えました。また記者団が、「日本政府の対応はちかぢか発表するのか」と質問したのに対し、「そう遠くない将来、明らかにする」と述べました。
自民 高村氏「レッドライン越えたと判断し攻撃したか」
自民党の高村副総裁は、党本部で記者団に対し「トランプ大統領としては、化学兵器を使用したという確証を得て、『レッドライン』を越えたと判断し、攻撃したのだろう。オバマ政権で、現実に化学兵器を使用しても何もしなかったことが、アサド政権を増長させた面があった。アサド政権や、過激派組織IS=イスラミックステート、それに、世界の『ならず者国家』に対しても、一定の抑制効果があればいい。北朝鮮が、『シリアがやられたのは、核やミサイルを持っていないからだ』と間違った考えをしないよう願いたい」と述べました。
そして、高村氏は「日本としては、アメリカとロシアの関係をよく見ていく必要がある。政府は、世界全体への影響などを十分検討して対応を決めてもらいたいが、最低でも、『今回のトランプ政権の判断を理解する』ということになるのではないか」と述べました。
少なくとも2種類の化学兵器使用か
シリア北西部イドリブ県では、4日、反政府勢力の支配地域が空爆を受け、子どもを含む少なくとも72人が死亡し、数百人が病院で手当てを受けています。現地で活動する国際NGO国境なき医師団は、患者の症状から、少なくとも2種類の化学兵器が使用された疑いがあるとしています。
現地の病院に医療チームを派遣している国際NGO、「国境なき医師団」は5日、声明を出し、治療した患者から瞳孔の収縮や筋肉のけいれんなど猛毒のサリンのような神経ガスに特徴的な症状が見られたと明らかにしています。
さらに、別の病院に運ばれたほかの患者からは、塩素にさらされた可能性があることを示す漂白剤のような臭いが確認されたということで、少なくとも2つの種類の化学兵器が使われた疑いがあるという見方を示しました。
この攻撃について、シリアの反政府勢力はアサド政権が化学兵器を使ったと強く非難していますが、アサド政権はこれを否定し、双方の主張は真っ向から対立しています。WHO=世界保健機関は、専門家チームを派遣し、犠牲者の検視に立ち合うなどして攻撃に使われた物質を特定する調査に乗り出しました。
また、国連安全保障理事会は、5日、緊急会合を開き、欧米各国は、攻撃を行ったのは、アサド政権だと厳しく非難しましたが、ロシアは真っ向から対立したため、真相究明を求める欧米が共同で提出した決議案は採決が見送られています。アサド政権は4年前、国内の化学兵器の廃棄に応じましたが、その際、廃棄の対象とはならなかった塩素ガスなどによる攻撃を続けていると国連などから指摘されていました。
トランプ氏 急速にアサド政権への強硬発言
アメリカのトランプ大統領は、シリアで化学兵器が使われた疑いが強まっていることをめぐり、ここ数日急速にアサド政権に対する強硬な発言が目立つようになっていました。
このうち5日には、「罪もない市民に対する化学兵器を使った攻撃は恐ろしいことでこのようなアサド政権による凶行は許容されてはならない」と述べて厳しく非難しました。
そのうえで許容できない一線、いわゆるレッドラインを越えたのかという質問に対し「私にとっては『レッドライン』の域を越え、いくつもの線を越えている」と述べて何らかの行動を取る可能性を示唆していました。
さらに、トランプ大統領は、6日南部フロリダ州に向かう飛行機の中で同行の記者団に対して「アサド大統領がまだシリアで取りしきっている。何かが起きるべきだ」と述べ何らかの対抗措置が必要だという考えを示し、強硬な姿勢を示していました。
プーチン政権はアサド政権の政府軍を支援
シリアのアサド政権を擁護してきたロシアのプーチン政権は、2013年、アメリカのオバマ前政権が、シリアのアサド政権が化学兵器を使ったとしてシリアへの軍事行動に踏み切ろうとした際、シリアの化学兵器を国際管理下に置く提案を行い、アメリカ軍による軍事行動を断念させました。
ロシアは、おととし9月からアサド政権からの要請を受け、シリアを拠点とする過激派組織IS=イスラミックステートをせん滅するとして、シリアでアサド政権の政府軍を支援して軍事作戦に踏み切りました。
今回、シリア北西部で化学兵器が使われたと見られることについて、ロシア国防省は、ロシア軍の関与を否定したうえで、化学兵器は反政府勢力のものだとの見方を示していました。
これまでロシア軍が軍事行動を続けてきたシリアで反政府勢力を支援するアメリカが軍事行動に踏み切ったとことでアメリカとロシアの間でシリア問題をめぐる対立が一層先鋭化することが予想され代理戦争になるおそれも懸念されます。
・攻撃を命じたトランプ大統領の声明 全文(NHK NEWS web 2017年4月7日)
※アメリカのトランプ大統領がシリアへの攻撃を命じたあと出した声明の全文です。
アメリカ国民の皆さん、シリアの独裁者アサドが火曜日、おそろしい神経ガスの化学兵器を使って罪のない市民を攻撃した。アサドは無力な男性、女性、子どもの息の根をとめた。多くの人が時間をかけて残虐に殺された。この非常に野蛮な攻撃によってかわいい赤ちゃんたちさえ残酷に殺害された。どんな子どももこのような恐怖によって苦しむべきではない。
化学兵器による攻撃を実施したシリアの飛行場を標的とした軍事攻撃を、今夜、命令した。化学兵器の使用と拡散を防ぐことはアメリカの安全保障上の重要な利益だ。
シリアが化学兵器禁止条約の義務に違反し、国連安全保障理事会の求めを無視して禁止された化学兵器を使ったことには議論の余地がない。アサドの行動を変えさせるための何年にもわたるこれまでの取り組みは大きな失敗に終わった。その結果、難民危機は深まり、地域の不安定な状況は続き、アメリカや同盟国の脅威となっている。
私は今夜、シリアでの虐殺と流血の事態とあらゆるテロ行為を終わらせるため、すべての文明国に協力を求める。われわれは非常に問題の多い世界の難局に直面している。傷つき亡くなった人たちに祈りをささげ、アメリカが正義の側にいるかぎり、最後には平和と調和が勝利することを望む。おやすみなさい、そしてアメリカと全世界に神の恵みを。ありがとう。
・米軍がシリア アサド政権へミサイル攻撃 ロシアは強く反発(NHK NEWS web 2017年4月7日)
※アメリカのトランプ政権はシリアのアサド政権が化学兵器を使用したと断定し、対抗措置として、アサド政権の軍事施設を巡航ミサイルで攻撃しました。これに対して、アサド政権とそれを支援するロシアは強く反発していて、シリア情勢の混迷がさらに深まる可能性も出ています。
アメリカ国防総省は、地中海に展開するアメリカ軍の駆逐艦2隻から現地時間の7日午前4時40分ごろ、日本時間の7日午前9時40分ごろ、巡航ミサイル「トマホーク」59発を発射し、シリア中部のシャイラート空軍基地を攻撃したことを明らかにしました。
シリアでは今月4日、北西部イドリブ県の反政府勢力が支配する町が空爆を受け少なくとも72人が死亡し、猛毒のサリンなどの化学兵器が使われた疑いが強まっています。
トランプ大統領は6日、滞在先の南部フロリダ州で声明を発表し、「シリアの独裁者アサドがおそろしい神経ガスの化学兵器を使って罪のない市民を攻撃した」とアサド政権が化学兵器を使用したと断定したうえで、「化学兵器の使用と拡散を防ぐことはアメリカの安全保障上の重要な利益だ」として、対抗措置として攻撃に踏み切ったことを明らかにしました。国防総省は、化学兵器を使った攻撃にはシャイラート空軍基地から飛び立った航空機が関わっていたとしています。
シリアで内戦が始まってからアメリカは過激派組織IS=イスラミックステートに対して空爆を続けてきましたが、アサド政権を攻撃したのは今回が初めてです。
これに対してシリア政府軍は7日、国営テレビを通じて声明を発表し、攻撃で6人が死亡したことを明らかにしたうえで「露骨な侵略行為だ」とアメリカの軍事行動を強く非難しました。
また、アサド政権を支援するロシアの大統領府のペスコフ報道官は、「プーチン大統領は今回の攻撃について、主権国家への侵略行為で、国際法違反だと考えている」と述べ、プーチン大統領が強く反発していることを明らかにしました。
アメリカは、今回の攻撃についてロシアには事前に通告したとしていますが、ロシアはシリアとともに強く反発しており、シリア情勢の混迷がさらに深まる可能性も出ています。
シャイラート空軍基地とは
アメリカ軍が攻撃したシャイラート空軍基地は、シリア中部の都市ホムスから南東におよそ25キロ離れた位置にあります。アメリカメディアは、このシャイラート空軍基地は、化学兵器の使用が疑われる攻撃に関わった戦闘機が離陸した基地だと伝えています。
また、内戦の情報を集めているシリア人権監視団によりますと、シャイラート空軍基地はシリアで2番目に大きな基地とみられ、ロシア製の戦闘機などが配備されているということです。
シリア大統領府「不当で傲慢な侵略行為」
シリア大統領府は7日、国営通信を通じて声明を出し、「アメリカがけさ行ったことは不当で傲慢な侵略行為であり、無責任な行動以外の何ものでもない」と激しく非難しました。そのうえで、「主権国家の基地を標的にするという愚かな行動によって、われわれの政策を変えることはできない。シリア政府はこの侵略行為によって、テロリストを壊滅する意志をさらに強くした」として、今後もテロとの戦いを掲げて、反政府勢力への攻撃を続ける姿勢を強調しました。
シリア政府軍「6人死亡 露骨な侵略行為だ」
シリア政府軍は7日、国営テレビを通じて声明を発表し、攻撃で6人が死亡したことを明らかにしたうえで「露骨な侵略行為だ」とアメリカの軍事行動を強く非難しました。
この中で政府軍は、空軍基地の1つがアメリカ軍による攻撃を受け、6人が死亡し、多くのけが人が出ているほか、施設に大きな損害が出たことを明らかにしました。
そのうえでアメリカ軍の軍事行動を「露骨な侵略行為だ」と非難し、アメリカは、政権側が戦う過激派組織IS=イスラミックステートやアルカイダ系のイスラム過激派などのテロ組織の側についたと主張しました。そして、今後もテロ組織の壊滅に向けた作戦を続け、シリア全土の平和と安全を取り戻すと強調しました。
ロシア報道官 プーチン大統領は強く反発
ロシア大統領府のペスコフ報道官は記者団に対し、「プーチン大統領は今回の攻撃について、主権国家への侵略行為で、国際法違反だと考えている」と述べ、プーチン大統領が強く反発していることを明らかにしました。
そのうえでペスコフ報道官は、プーチン大統領の考えとして「こうした行為は、すでにひどい状態にある米ロ関係に重大な損害をもたらすことになる」と指摘しました。さらにペスコフ報道官は「シリア軍は化学兵器を所有していない。武装勢力が化学兵器を使用したという事実を全く無視することは、状況を一層難しいものにするだけだ」と述べ、アメリカがアサド政権が化学兵器を所有しているという証拠がないまま、空爆に踏み切ったとして批判しました。
また、ロシア外務省は声明を発表しました。この中で「アメリカは詳しい状況を把握しないまま、国際テロリズムと戦っている国に対して武力を誇示した」として、アメリカは、アサド政権が化学兵器を使用したという根拠がないまま攻撃に踏み切ったと批判しました。そのうえで「アメリカはこれまでも考え足らずの方法で国際問題を複雑にし、国際的な安全保障に脅威を作り上げている」として、アメリカがかつてイラクやリビアに軍事介入を行って政権を崩壊させ、この地域のイスラム過激派の台頭を許してきたと指摘しました。
さらに「今回の攻撃は主権国家シリアへの明確な侵略行為で、米ロ関係を一段と破壊するものだ。ロシアは、合法的なシリア政府に対する不法行為を決して容認することはできない」として、米ロ関係のさらなる悪化は避けられないとしています。
また、ロシア外務省は、シリアでの軍事作戦に関して、偶発的な衝突を防ぐため、アメリカとの間で結んでいる覚書の履行を一時的に停止することを明らかにしました。
イラン「テロリストを利する行動」と非難
イランの外務省は7日、声明を発表し「化学兵器が使われた疑いを一方的な軍事行動の口実とすることは危険で破壊的、そして国際法に違反する。このような行動は、シリア国内のテロリストを利するもので、シリア情勢の複雑化を招くことになる」などとして、アメリカを強く非難しました。
内戦が続くシリアで、イランはロシアとともにアサド政権を支援していて、精鋭部隊の革命防衛隊の幹部らを軍事顧問などとして派遣しています。
シリアの反政府勢力 アメリカの攻撃全面支持
反政府勢力の主要グループ、「最高交渉委員会」の幹部のジョージ・サブラ氏はNHKの電話取材に対し、「アサド政権によって行われてきた犯罪を止めるための前向きな一歩だ。同盟国のイランやロシアに対しても、シリアでやりたいことが何でもできるわけではないということを示すメッセージになると思う」と述べ、アメリカの攻撃を全面的に支持する姿勢を示しました。
トルコ「アサド政権は罰せられるべき」と歓迎
アメリカとともにアサド政権の退陣を強く求めているトルコのクルトゥルムシュ副首相は、地元のテレビ局に対し「アメリカ軍の基地に対する攻撃は重要で意味のあるものだ。アサド政権は完全に罰せられるべきだ」と述べて歓迎しました。
そのうえで、今回の対抗措置がアサド政権の野蛮な行為を止め、和平プロセスの加速につながるよう期待を示しました。
サウジアラビア「トランプ大統領の決断評価」
中東のサウジアラビアは7日、国営通信を通じて攻撃を全面的に支持する声明を発表しました。声明は外務省の高官による見解だとしたうえで「サウジアラビアはシリアの軍事的な拠点に対するアメリカの軍事作戦を全面的に支持する。攻撃は、シリアの政権が多くの罪のない市民を殺害した化学兵器を使用したことに応じたもので、アメリカのトランプ大統領の勇気ある決断を評価する」としています。
サウジアラビアはイランなどが支援するアサド政権と対立し、アメリカとともにシリアの反政府勢力に対する支援を続けています。
イスラエル「米大統領は明確なメッセージ送った」
アメリカの同盟国でシリアと国境を接するイスラエルの首相府は攻撃を歓迎する声明を発表しました。声明で首相府は「トランプ大統領はきょう、その言葉と行動で化学兵器の使用と拡散は容認しないという強く明確なメッセージを送った。イスラエルはトランプ大統領の決断を完全に支持する」としています。
そのうえで「アサド政権の恐るべき行為に対する決意あるメッセージがダマスカスだけでなく、テヘランやピョンヤンにも響き渡ることを望む」としており、今回の攻撃がシリアを支援するイランや、ミサイルの発射を繰り返す北朝鮮のけん制につながることに期待感を示しました。
また、イスラエルのメディアは、政府高官の話として今回の攻撃は事前にイスラエルに通告されていたと報じています。
独仏首脳が声明「すべての責任はアサド政権に」
ドイツのメルケル首相とフランスのオランド大統領は7日、電話で協議したあと共同で声明を発表しました。
この中で両首脳は「こうした事態を招いたすべての責任はアサド政権にある」として、アサド政権を非難するとともにアメリカの攻撃に理解を示しました。そのうえで「フランスとドイツは国際社会のほかのパートナーとともに国連の枠組みの中でアサド大統領の責任を追及する努力を続けていく」として、あくまでも国際法に基づいてアサド政権の責任を追及していく姿勢を強調しました。
フランスのオランド大統領は7日、フランス南部で演説し、アメリカ側から事前に通知があったとしたうえで、「アサド政権が化学兵器を使ったのは今回が初めてではない。アメリカ軍の攻撃はアサド政権への回答だと受け止めている」と述べ、攻撃を支持する姿勢を示しました。そしてこれ以上の化学兵器の使用を避けるためにも、国連の枠組みの中でアサド政権の責任を追及し、政権移行に向けてドイツなどとともに協議を進めるよう努める考えを示しました。
また、来週、イタリアで開かれるG7=主要7か国外相会合の議長を務めるアルファノ外相は7日、声明を出し「アメリカ軍の行動は化学兵器の使用という受け入れがたい罪への対処として、またアサド政権による将来の化学兵器の使用を抑止するものとして、適切な対応だ」と述べ、支持する姿勢を示しました。
イギリス首相報道官「野蛮な攻撃への対処として適切」
イギリスの首相報道官は声明を出し「シリアの政権が行った化学兵器による野蛮な攻撃への対処としては適切であり、将来の使用を抑止するものだ。イギリス政府は全面的に支持する」と述べました。
オーストラリア首相 アメリカの攻撃を全面支持
アメリカがシリア国内にあるアサド政権の軍事施設を巡航ミサイルで攻撃したことについて、アメリカの同盟国、オーストラリアのターンブル首相は声明を発表し「どんな状況であれ、化学兵器の使用は戦争犯罪だ。迅速な対抗措置はアサド政権へのメッセージだ」として、攻撃を全面的に支持しました。
また、ターンブル首相は、今回の攻撃にはオーストラリアは直接、関与していないものの、アメリカから事前に連絡を受けていたことを明らかにし、今後もシリア情勢でアメリカと緊密に連携する考えを強調しました。
中国外務省 調査待たずに攻撃したアメリカを批判
中国外務省の華春瑩報道官は7日の記者会見で、「このほどシリアで起きた化学兵器を使った攻撃を強く非難する」としたうえで、「国連の関係機関が今回の事件を独立した立場で全面的に調査し明確な証拠をもって、歴史的な検証に耐えられる結論を導き出すことを支持する」と述べ、アメリカが国連による調査を待たずに攻撃に踏み切ったことを間接的に批判しました。
そのうえで華報道官は「当面、急務なのは、事態をこれ以上悪化させず、やっと手に入れた政治的解決のプロセスを維持することだ」と述べ、アメリカなど関係国に自制を呼びかけました。
アサド政権の化学兵器使用 たびたび取り沙汰
内戦が続くシリアでは、アサド政権による化学兵器の使用がたびたび取り沙汰されてきました。
アメリカのオバマ前大統領は、アサド政権が化学兵器を使用した場合には「一線を越えた」と見なし、対シリア政策を大きく転換すると警告していましたが、その後も北部のアレッポなど反政府勢力の支配地域で化学兵器を使ったと見られる攻撃が相次ぎました。
2013年8月には、国連の調査団が化学兵器をめぐる調査のためシリア入りしているさなかに、ダマスカス郊外の反政府勢力の支配地域で化学兵器を使ったと見られる大規模な攻撃があり、数百人が死亡したとされています。
当時アサド政権は反政府勢力による自作自演だと主張しましたが、アメリカは政権側による攻撃だと断定し軍事行動に踏み切る構えを見せます。また、フランスは、アメリカに同調して軍事行動への参加を決める一方で、イギリスは議会の反対を理由に軍事行動に参加しない意向を表明しました。
これに対してロシアは政権側の主張を擁護したうえで、シリアが保有するすべての化学兵器の破棄を提案。アメリカとロシアは、国連とOPCW=化学兵器禁止機関の監視のもとでシリアの化学兵器を廃棄することで合意し、アメリカの軍事行動はぎりぎりのところで回避されました。その後、国連とOPCWは、すべての化学兵器をシリア国外に運び出し、去年1月、廃棄が完了したと発表します。
ところが、シリアではその後も反政府勢力が支配していたアレッポなどへの攻撃で、有毒の塩素ガスなどが使われた疑いがたびたび報告され、誰がこうした攻撃を続けているのか、国連が調査に乗り出します。
国連は去年8月になって報告書をまとめ、2014年の4月と2015年の3月にはシリアの空軍が有毒ガスを使った攻撃を行い、2015年の4月には過激派組織IS=イスラミックステートが化学兵器の一種のマスタードガスを使用したと、結論づけました。
これについて当時のアメリカのパワー国連大使は、「長い間疑われてきたアサド政権による化学兵器の使用が初めて裏付けられた」として政権を改めて非難したのに対し、シリアのジャファリ国連大使は「報告書は証拠に欠けており結論とは言えない」と反論しました。
こうした中、今回再び化学兵器を使ったと見られる大規模な攻撃が行われたことで、アメリカやロシアをはじめとする国際社会がどのような対応を取るのかが、焦点となっていました。
米連邦議会議員には賛否
連邦議会の議員からは、攻撃を支持する声が上がる一方、議会と緊密に連携を取るよう求める意見が出ています。
与党・共和党の重鎮、マケイン上院議員は、グラハム上院議員と共同で声明を発表し「最高司令官であるトランプ大統領の指示の下、アメリカ軍は、ロシアのプーチン大統領の支援を受けたアサド政権が、無実のシリア人を化学兵器で虐殺するのを黙って見ていることはしないという重要なメッセージを送った」としています。そのうえで「トランプ政権はオバマ前政権と違い、極めて重要な時期に行動を起こした」として攻撃を支持しています。
また、野党・民主党の上院トップ、シューマー院内総務は声明を発表し「アサド大統領に、卑劣で残虐な行為をすればその代償を払わないといけないということを知らしめるのは、正しいことだ」として、攻撃を評価しました。そのうえで「トランプ政権には、戦略を立て、それを実行する前に議会の意見を聞く必要がある」として、今後、議会と緊密に連携をとるよう求めました。
一方、共和党のポール上院議員はツイッターに「トランプ大統領が軍事行動を起こすためには、憲法で定められているように議会の承認を得る必要がある。アメリカがこれまでにこの地域に介入した結果、アメリカの安全が高まったことはなく、今回も同じ結果になるだろう」と投稿し、攻撃に批判的な考えを示しています。
・安倍首相 米政府の決意を支持(NHK NEWS web 2017年4月7日)
※安倍総理大臣は記者団に対し、アメリカ軍がシリア国内にあるアサド政権の軍事施設を巡航ミサイルで攻撃したことについて、化学兵器の拡散と使用は絶対に許さないというアメリカ政府の決意を日本政府として支持する考えを示しました。
政府は、アメリカ軍がシリア国内にあるアサド政権の軍事施設を巡航ミサイルで攻撃したことを受けて、午後3時すぎから総理大臣官邸で、安倍総理大臣や岸田外務大臣、それに稲田防衛大臣らが出席してNSC=国家安全保障会議の閣僚会合を開きました。
このあと、安倍総理大臣は記者団に対し、「シリアにおいて再び化学兵器によってなんの罪も無い多くの一般人が犠牲となった。幼い子どもたちも犠牲となった惨状を目の当たりにして国際社会は大きな衝撃を受けている」と述べました。
そのうえで、安倍総理大臣は「極めて非人道的であり、国連決議にも反する。化学兵器の拡散と使用は絶対に許さないという米国政府の決意を日本政府は支持する。今回の米国の行動は、これ以上の事態の深刻化を防ぐための措置と理解している」と述べました。
そして、安倍総理大臣は「東アジアでも大量破壊兵器の脅威は深刻さを増している。その中で、国際秩序の維持と、同盟国と世界の平和と安全に対するトランプ大統領の強い関与を日本は高く評価する。今後、米国をはじめ国際社会と連携しながら、世界の平和と安定のために日本が果たすべき役割をしっかり果たしていく」と述べました。
自民 下村氏「党として政府の方向性を支持」
自民党の下村幹事長代行は党本部で記者団に対し、「安倍総理大臣が、トランプ大統領との信頼関係の中で、アメリカを支持するとコメントしたということであれば、党としては当然、政府の方向性を支持したい。アメリカとロシアとの関係は非常に危惧する部分があるが、政府には、日本とロシアの関係がマイナスにならない視点で対応してほしい。北朝鮮に対しては、一定の抑止力になる部分もあるのではないかと考えている」と述べました。
共産 笠井氏「アメリカ支持 直ちに改めるべき」
共産党の笠井政策委員長は、記者会見で「化学兵器の使用は、人道と国際法に違反する重大で許されない行為だが、国連安全保障理事会の決議もないままに、アメリカが一方的に攻撃を強行したとなると、国連憲章や国際法に反する。そうした中で、安倍総理大臣が『支持する』と言ったことは、極めて重大なことだ。軍事攻撃により、シリア内戦をさらに悪化させることになるし、日本政府や安倍総理自身も、悪化させる側に立つということになるので、そういう態度は直ちに改めるべきだ」と述べました。
・バノン氏影響力低下か…シリア攻撃反対通らず(YOMIURI ONLINE 2017年4月9日)
※シリア空軍基地へのミサイル攻撃を巡り、トランプ米政権内の内紛が表面化した。米メディアによると、トランプ氏の最側近だったバノン大統領上級顧問・首席戦略官がシリア攻撃に反対する一方、トランプ氏の娘婿クシュナー大統領上級顧問が実施を求めたという。攻撃の実現は、バノン氏のホワイトハウス内での影響力低下を示している可能性がありそうだ。
・トランプ大統領の娘婿クシュナー氏、「黒幕」バノン氏外しに一役買う(The Huffington Post 2017年4月8日)
※ドナルド・トランプ大統領は4月5日、安全保障の政策決定機関「国家安全保障会議」(NSC)から、保守系ニュースサイト「ブライトバート」元会長で首席戦略補佐官のスティーブ・バノン氏を常任メンバーから外した。この背景には、トランプ氏の娘婿ジャレッド・クシュナー氏が助言していた。
この更迭人事は、トランプ氏が署名したイスラム圏からの入国を禁止する大統領令が相次いで差し止めとなり、健康保険制度改革法(オバマケア)撤廃が失敗したことを受けて、ホワイトハウス内でバノン氏の影響力が弱まったことが理由と考えられていた。
しかし政治ニュースサイト「ポリティコ」が複数の匿名情報筋から得た情報によると、バノン氏の左遷劇の裏の立役者はクシュナー氏だったという。
そもそも初めから、バノン氏のポピュリズム的政治手法と、「行政国家を解体する」という願望を公言してはばからない姿勢は、政権運営に関して比較的官僚的な姿勢のクシュナー氏と対立状態にあった。
クシュナー氏は最近ホワイトハウスの同僚に、「バノン氏の国家主義的な思想がトランプ氏にダメージを与えている」と語っていたとされる。さらにバノン氏の極右的思想が、トランプ氏が持つ資質のなかでも最悪の部分を引き出していることを懸念しているという。
トランプ氏は就任後最初の10週間で政権運営に弾みを付けようとしたが、ホワイトハウス高官の陰謀、選挙陣営とロシアとの接触に関する度重なる捜査、目玉政策の失敗がたたり、行き詰まっている。
「国家主義者と『ホワイトハウス内部の民主党員』の間で激しい主導権争いが起きている」と、ある政府高官はポリティコに語った。
バノン氏が衝突した相手はクシュナー氏だけではない。ゲーリー・コーン経済担当大統領補佐官も同様に対立している。コーン補佐官は、ゴールドマン・サックスの前社長でクシュナー氏とは親しい間柄だ。
マイク・ペンス副大統領もバノン氏とは距離を置いた動きをしている。3月に共和党が提出した健康保険制度改革法案(トランプケア)をめぐり、バノン氏は下院共和党の保守派「下院自由議員連盟」(フリーダム・コーカス)の議員に、「いいか諸君。これは話し合いではない。討論でもない。この法案に賛成票を投じる以外、君たちに選択肢はない」と、高圧的に最後通告を突きつけたが、裏目に出て保守派の離反を招いた。するとペンス氏は、連邦議会に出向き、溝を修復しようと折衝を重ねた。
バノン氏自身は、ホワイトハウス内で非主流派に甘んじるというそぶりはまだ一切見せていない。それどころか、「NSCに出席できなくなったら辞めてやる」と脅しをかけたという噂が数多く流れている。
ホワイトハウス内のバノン氏支持派は、「バノン氏は元々NSCには数カ月だけ留まるつもりだった」「NSCのメンバーに任命されたのは、大統領補佐官を辞任したマイク・フリン元陸軍中将を監視するためだ」などと、彼がNSCの常任メンバーから外されたことを正当化する言い訳を続けている。
「スーザン・ライス(バラク・オバマ大統領の国家安全保障補佐官)が、オバマ前政権時にNSCを機能不全に陥れた」と、バノン氏は5日の声明で述べた。「私がフリン将軍とNSCに加わったのは、適切に機能するよう元に戻すためだった。マクマスター将軍がNSCに戻り、適切に機能するようになっている」
バノン氏が、ライス元補佐官がNSCを「機能不全にした」と述べた時、その具体的な根拠は示さなかった。したがって、バノン氏がNSCの「機能を回復する」ために何をしたのかは謎だ。
フリン氏の辞任に伴い、トランプ大統領はH.R.マクマスター陸軍中将を新たに国家安全保障補佐官に任命した。マクマスター氏は就任直後から、フリン氏が連れてきたメンバーをNSCから追放した。追放されたメンバーたちは、クシュナー氏よりバノン氏との関係が強かった。
中国の習近平国家主席が訪米したことで、バノン氏とクシュナー氏が再び衝突することになりそうだ。バノン氏のポピュリズム的思想こそが、トランプ氏の過激な発言の源泉となっている。2016年の大統領選で、トランプ氏が「アメリカが中国の貿易政策に翻弄されている」と演説した内容に、バノン氏の思想が大きく反映されている。
一方クシュナー氏は、ホワイトハウスと中国側との関係構築で中心的な役割を果たしてきている。クシュナー氏も、フロリダ州パームビーチにあるトランプ大統領所有のリゾート施設「マール・ア・ラーゴ」での米中首脳会談に同席した。