・「テロ等準備罪」新設法案を閣議決定(NHK NEWS web 2017年3月21日)
※政府は21日の閣議で、「共謀罪」の構成要件を改めて、「テロ等準備罪」を新設する法案を決定しました。テロ組織などの組織的犯罪集団が重大な犯罪を計画し、メンバーのうちの誰かが犯罪の準備行為を行った場合などに、計画に合意した全員が処罰の対象になるとしています。
政府は、テロなどの組織犯罪を未然に防ぐためには一定の要件が満たされた場合に、犯罪の実行前の段階での処罰が可能となる法整備が必要だとして、過去3回廃案となった共謀罪の構成要件を改めて、テロ等準備罪を新設する、組織犯罪処罰法の改正案を閣議決定しました。
法案では、一定の犯罪の実行を目的とする「テロリズム集団その他の組織的犯罪集団」が団体の活動として、重大な犯罪の実行を計画し、計画したうちの誰かが、資金または物品の手配、関係場所の下見など、犯罪を実行するための準備行為を行った場合などに、計画に合意した全員を処罰するとしています。
処罰の対象になる重大な犯罪は組織的な殺人や、ハイジャックなど、テロの実行に関連する110の犯罪や、覚醒剤や大麻の輸出入といった薬物に関する29の犯罪など、277の犯罪が明示されていて、政府は、組織的犯罪集団が関与することが現実的に想定されるものに限定したとしています。
また、罰則については、死刑や10年を超える懲役や禁錮が科せられる犯罪を計画し、準備行為を行った場合、5年以下の懲役か禁錮とするなどとしています。
一方、自民・公明両党の国会対策委員長らが国会内で会談し、「共謀罪」の構成要件を改めて「テロ等準備罪」を新設する法案が衆議院法務委員会で審議される際には、審議を充実させるため、法務省の林刑事局長の委員会への出席を認めるよう、野党側に働きかけていく方針を確認しました。
官房長官「共謀罪とは別物 丁寧に説明尽くす」
菅官房長官は閣議のあとの記者会見で「対象犯罪を明確化し、組織的犯罪集団の関与が現実的に想定される277の犯罪に限定した。法案に対する懸念や不安を払拭(ふっしょく)する内容となっており、かつての『共謀罪』と明らかに別物だ」と述べました。
そのうえで菅官房長官は「国民に法案の必要性や重要性をご理解いただき、与党だけでなく野党にも幅広くご支持をいただけるよう、国会で分かりやすく丁寧に説明を尽くし、1日も早い法案の成立を目指したい」と述べました。
また、菅官房長官は、記者団から「捜査機関の裁量で、組織的犯罪集団の認定が拡大解釈されるおそれも指摘されているが」と問われたのに対し、「犯罪の計画行為に加え、テロ等の実行準備行為があって初めて処罰することにしている。そこは問題なくできると思う」と述べました。
菅官房長官は午後の記者会見で、「テロを未然に防止するため極めて重要なのは情報であり、『国際テロ情報収集ユニット』を新設し、官邸直轄で情報を収集・集約し、分析を行う態勢を強化している」と述べました。そのうえで、菅官房長官は、記者団が「証拠収集の手段のため、例えば通信傍受の対象を拡大する必要性をどう考えるか」と質問したのに対し、「今回の『テロ等準備罪』を新たに設けることに伴って、通信傍受の対象犯罪とすることは全く考えていない」と述べました。
法相「速やかな成立を」
金田法務大臣は、閣議のあと記者団に対し「法案は処罰の対象となる団体を明文で『組織的犯罪集団』に限定することで、一般の会社や市民団体といった正当な活動を行っている団体が適用対象とならないことを、一層、明確にしているなど、これまでに示された不安や懸念といったものが払拭(ふっしょく)される内容となっている」と述べました。
そのうえで、金田大臣は「法案が閣議決定されたので、具体的な成案の内容に基づいてしっかりと誠実に説明していく。3年後に迫った東京オリンピック・パラリンピックの開催を控え、国際組織犯罪防止条約の締結のための法整備は重要で急務であり、国会において十分に審議し、法案を速やかに成立させていただきたい」と述べました。
外相「五輪控えるわが国にとって重要」
岸田外務大臣は閣議のあと、記者団に対し、「国際組織犯罪防止条約は、すでに187か国が締結しており、条約を締結し、テロを含む組織犯罪と闘うことは2019年のラグビーワールドカップ、2020年の東京オリンピック・パラリンピックを控える、わが国にとって、重要なことだ」と述べました。
そのうえで、岸田大臣は「条約の締結に必要なテロ等準備罪を創設することで、テロを含む組織犯罪を未然に防ぐことが可能になるほか、国際協力が促進され、深刻化するテロを含む国際的な組織犯罪に対する取り組みが強化されることになり、大変大きな意義がある。重要な条約を締結するための重要な法律で、政府としても、成立に向けて努力を続けたい」と述べました。
自民 二階氏「今の国会で成立目指すのは当然」
自民党の二階幹事長は記者会見で、「今の国会も、だんだんと日程は詰まってきているが、審議しようとして、できない日程ではなく、成立を目指して頑張るのは当然だ。テロが発生してからでは遅く、あらかじめ対応していくのが、政府・与党の責任として当然のことだ。審議中にも、いろいろな意見が出されると思うが、政府・与党としてしっかり対応していきたい」と述べました。
公明 山口氏「丁寧な対応で臨む」
公明党の山口代表は記者会見で、「政府・与党で慎重に議論を重ね、最終的に、対象となる犯罪を大きく絞り込んで、必要不可欠なものに限定した。今の国会での成立を目指して、法案を国会に提出する運びになったので、政府・与党挙げて、国民の理解が進むように丁寧な対応で臨みたい」と述べました。
民進 山井氏「成立阻止のため闘う」
民進党の山井国会対策委員長は記者団に対し、「これまでの国会審議で、この法案に、うそがあることが国民に明らかになったにもかかわらず、閣議決定を強行したことは非常に残念だ。『テロ等準備罪』という名前だが、これまで3度廃案になった『共謀罪』と本質的には変わっておらず、日本が一億総監視社会になるかもしれないという大きなリスクをはらんでいる。この国会での成立を阻止するために、闘っていく」と述べました。
共産 小池氏「本質は全く変わっていない」
共産党の小池書記局長は記者会見で、「『共謀罪』を『テロ等準備罪』に名前を変えたが、本質は全く変わっていない。多数の一般人を盗聴や監視の対象にし、国民の思想・信条の自由を侵すもので、法案の撤回と成立の阻止に全力を尽くしていく」と述べました。
維新 馬場氏「不十分な点 党の対案に反映」
日本維新の会の馬場幹事長は記者会見で、「わが党は、法案自体は、日本として必要なものだという基本的な立場だが、容疑者の取り調べの『見える化』を担保する姿勢が、政府にあるかどうかなどが重要なポイントになる。法案の全体を見たうえで、不十分な点は党の対案に反映させていく」と述べました。
自由 小沢氏「権力者の運用でどうにでもなる」
自由党の小沢代表は記者会見で、「この種の法律は、国民の基本的人権をいろいろな形で規制するものだ。国民の権利を侵害しないように作っても、権力者の運用によってどうにでもなる。権力の乱用を躊躇(ちゅうちょ)しない今の安倍政権が、そのような法律を作るということは、仮に、内容がある程度妥当なものであっても危険だ」と述べました。
社民 又市氏「廃案勝ち取るべく全力」
社民党の又市幹事長は記者会見で、「これまでに3度、廃案になった法案と同じ趣旨のものであり、市民や労働団体のさまざまな抗議行動が監視や弾圧される危険性が非常に高い。個人の内心の自由を、日ごろから監視するもので、平成の治安維持法と言わなければいけない。野党4党が協力して、廃案を勝ち取るべく全力を挙げて頑張っていきたい」と述べました。
テロ等準備罪とは
政府は、2020年の東京オリンピック・パラリンピックなどを控え、テロなどの組織犯罪を未然に防ぐために、一定の要件が満たされた場合には犯罪の実行前の段階でも処罰できるよう、テロ等準備罪を新設することが必要だとしています。
また、テロ等準備罪を新設すれば、重大な犯罪を行うことで合意した場合などの処罰を可能とする法整備を各国に求めている、「国際組織犯罪防止条約」の締結が可能になり、他国の捜査当局との間で直接、情報交換できるケースが大幅に増えるほか、現在は犯罪人の引き渡しに応じない国に対して、条約を根拠に引き渡しを求めやすくなると説明しています。
法務省によりますと、国連加盟国の中で条約を締結していない国は日本、イラン、ブータンなど11か国で、政府はテロ等準備罪を新設して条約を締結し、国際的な組織犯罪捜査の穴を埋めたいとしています。
テロ等準備罪は、かつて政府が導入を目指して、3回、廃案になった共謀罪の構成要件を改め、一定の犯罪の実行を目的とする「組織的犯罪集団」が団体の活動として、重大な犯罪の実行を計画し、計画したうちの誰かが犯罪を実行するための準備行為を行った場合などに、計画に合意した全員を処罰するとしています。
組織的犯罪集団にはテロ組織や暴力団、薬物密売組織などが含まれるほか、当初は別の目的で設けられても、その後、犯罪を目的とする団体に一変した場合には組織的犯罪集団と認定される可能性があるとしています。
また、処罰の対象になる重大な犯罪は、組織的犯罪集団が関与することが現実的に想定されるものに限定したとしていて、組織的な殺人やハイジャックなど、テロの実行に関連する110の犯罪や、覚醒剤や大麻の輸出入といった、薬物に関する29の犯罪など、277の犯罪が明示されています。
さらに処罰するために必要な準備行為の具体例として、資金または物品の手配、関係場所の下見などが法案の条文に明記され、政府は、テロ組織のメンバーが化学テロを計画し、必要な物質を調達した場合などが当てはまるとしています。
一方で、政府は組織的犯罪集団が重大な犯罪の実行を計画しても、準備行為を行っていない段階では処罰されないとしています。
テロ等準備罪めぐる争点
政府が締結を目指す国際組織犯罪防止条約は、殺人などの重大な犯罪を行うことで合意した場合などに処罰できるよう各国に法整備を求めています。
法務省によりますと、現在の国内法で、重大な犯罪を行うことで合意した場合に処罰できる規定としては、爆発物取締罰則など13の法規に設けられた共謀罪や、内乱罪など国の存立に関わるような8つの重い罪について、仲間と計画を立てたことを処罰する陰謀罪があります。
ただ、政府は、こうした現行の規定について、対象の犯罪が少なすぎて条約を結ぶ条件を満たせないとして、テロ等準備罪を新設し、より広範囲に取り締まれるようにすべきだとしています。
これに対して、民進党などは、罪の新設は憲法が保障する内心の自由を侵害する可能性が極めて高いとしたうえで、現行の法制度の下でも条約を締結することは可能だと主張しています。
具体的には共謀罪や陰謀罪に加えて、殺人予備罪など37ある「予備罪」や、「通貨偽造等準備罪」をはじめ、8つの「準備罪」などの適用で対応すれば、新たな法整備は必要ないとしています。
政府は、組織的犯罪集団には犯罪を行うことを目的に作られたテロ組織や暴力団、薬物密売組織、振り込め詐欺集団などが含まれるほか、当初は別の目的で設けられても、その後、犯罪を目的とする団体に一変した場合には組織的犯罪集団と認定される可能性があるとしています。
これに対し、民進党などは組織的犯罪集団は幅の広い概念であるのに加え、一般の団体がどのような状態になれば、「組織的犯罪集団に一変した」と見なすのかが不透明で、恣意(しい)的な判断により一般市民も処罰の対象になりかねないと指摘しています。
また、テロ組織などは暴力団と異なり、外部から組織的犯罪集団と判断するのは難しいことから、捜査機関が認定を目指す過程で、捜査の権限を乱用するおそれがあるという懸念も出ています。
政府は組織的犯罪集団の2人以上のメンバーが重大な犯罪の実行を計画することを構成要件の1つとしています。
メンバーの計画への合意は顔を合わさなくても、電話や電子メールなどを通じて成立するとしています。ただ、犯罪の計画などがメーリングリストなどを通じて、複数の人に一斉に送られた場合に単に閲覧しただけでは、合意に当たらないという見解を示しています。
これに対して、民進党などは、捜査機関が合意の有無を確かめるために電話やメールの内容などを広範囲に捜査し、プライバシーの侵害につながるおそれがあると批判しています。
どんな場合に適用される?
法務省は、国会での議論などで、今の法制度の下では適切に対処できず、テロ等準備罪の新設を必要とする具体例を複数、示しています。
まず、テロ組織が、複数の飛行機を乗っ取って高層ビルに突入するテロを計画し、メンバーの1人が、航空機のチケットを予約したというケースです。法務省は、この程度の準備行為では「客観的に相当な危険性がある」とは認められず、ハイジャック防止法の予備罪を適用できない可能性があり、計画した犯罪を実行するための準備行為が行われれば処罰できる、テロ等準備罪の新設が必要だとしています。
次に地下鉄サリン事件を念頭に置いたケースで、テロ組織が殺傷能力の高い化学薬品を製造して、同時多発的に大量殺人を行うことを計画し、原料の一部を入手した場合です。民進党などは、地下鉄サリン事件を受けて制定された「サリン防止法」にある予備罪で対処できると指摘していますが、法務省は、テロ組織が入手した原料の一部が化学薬品の完成に不可欠かどうかなどによっては、予備罪に問うのは難しい場合もあるとして、テロ等準備罪の新設を主張しています。
3つめは、テロ組織が、全国の電力や水道などのインフラのシステムを一斉に誤作動させて、パニックに陥らせることを計画し、メンバーがコンピューターウイルスの開発を始めた場合です。現在の法制度にはコンピューターウイルスが完成する前の段階で罰する規定は無いため、法務省は、開発を始めた段階で罪に問えるテロ等準備罪が必要だとしています。これに対しては、ウイルス対策ソフトを作るため、わざとウイルスを作ろうとしただけでも罪に問われかねないという指摘が出ています。
さらに、4つ目は、暴力団の組員らが対立する暴力団の組長の殺害を計画し、拳銃を購入する資金を用意した場合です。法務省は、殺害実行までの段階や状況によっては、殺人予備罪では対処できない可能性があり、テロ等準備罪が必要だとしています。
一方、法務省は一般企業が脱税を計画して、裏帳簿を作成しても、組織的犯罪集団に一変したと認定されないかぎり、処罰の対象にはならないとしています。
また、暴力団などが振り込め詐欺を計画したものの、何もしなかった場合も、準備行為がないため、処罰の対象にはならないとしています。
共謀罪 過去3回廃案になった経緯
国際組織犯罪防止条約が平成15年の通常国会で、自民・公明両党や、当時の民主党、それに共産党などの賛成で承認され、政府は条約が求める国内法の整備のため、同じ国会に共謀罪を設ける法案を初めて提出しました。
しかし、審議は行われず、この年の秋の衆議院解散によって、法案は廃案になりました。その後、平成16年の通常国会に同様の法案が提出され、翌年の通常国会で初めて審議が行われましたが、この時も衆議院の解散によって廃案になりました。
3度目の法案提出は、同じ年の特別国会で、翌平成18年の通常国会と合わせて30時間余りの審議が行われました。当時の法案は、処罰の対象を「団体」とし、犯罪の実行に向けた合意、つまり「共謀」があれば処罰できるとしていました。
対象となる犯罪は懲役・禁錮4年以上の刑罰が科せられる600余りに上り、与野党からは「市民団体や労働組合も対象になる」、「居酒屋で気にくわない上司を殴ることで合意しても、処罰される」などといった懸念が示されました。
これを受けて、与党側と民主党のそれぞれが、処罰の対象を「組織的犯罪集団」に限定し、処罰には合意に加えて、一定の準備行為などを必要とする修正案をまとめ、協議が行われましたが、決裂し、その後、審議されないまま、平成21年の衆議院解散によって廃案になりました。
・「共謀罪」法案を閣議決定 テロ準備段階で処罰 殺人・放火など277犯罪対象(日本経済新聞 2017年3月21日)
※政府は21日、犯罪を計画段階で処罰する「共謀罪」の構成要件を改め「テロ等準備罪」を新設する組織犯罪処罰法改正案を閣議決定した。犯罪の実行を目的とする「組織的犯罪集団」がテロなどの犯行を計画し、メンバーが現場の下見や資金調達などの準備を始めた段階で処罰する。殺人や放火など277の重大犯罪が対象。野党は恣意的な捜査につながる懸念を示しており、国会審議は激しい論戦になりそうだ。
政府は過去3回、「共謀罪」を新設するための法案を国会に提出したが、世論の反発を受けていずれも廃案になった。今回は同名称を使わず、テロ対策を強調して世論の理解を得る考え。
法案は21日中に国会に提出する。自民党の二階俊博幹事長は記者会見で「今国会で審議できない日程ではない。成立をめざすのは当然だ」と述べ、今国会で成立をめざす考えを表明した。
政府は法整備について、多国間で組織犯罪の捜査情報の共有などを進める国際組織犯罪防止条約(TOC条約)を締結するため、と説明している。金田勝年法相は閣議後の記者会見で「3年後の東京五輪・パラリンピックの開催を控え、条約締結のための法整備は重要で急務だ」と強調した。
TOC条約は187カ国・地域が締結済み。日本は法整備ができていないため、同条約は締結していない。
「組織的犯罪集団」は、テロ組織や暴力団、薬物密売組織などを想定している。これらの集団が犯罪を計画し、少なくとも1人が犯罪の準備行為に及べば、組織全体を処罰する。法務省は企業や宗教団体でも「目的が犯罪を実行する集団に一変すれば処罰対象になり得る」と説明している。
法務省は犯罪の準備行為として、航空機を乗っ取る目的で航空券を手配したり、犯行現場の下見に訪れたりするケースを挙げている。
条約では「懲役・禁錮4年以上」の重大犯罪を対象にするよう求めており、政府は当初、該当する676の犯罪を対象にする方針だった。だが公明党などが「対象が広すぎる」と懸念を示したため277に絞り込んだ。
法定刑は10年を超える懲役・禁錮を定めた罪で計画・準備行為を行った場合は「5年以下の懲役・禁錮」。4~10年の懲役・禁錮を定めた罪の場合では「2年以下の懲役・禁錮」。実行に着手する前に自首すれば、刑は減免される。
法案を巡っては野党から「集団や準備行為の線引きが曖昧で、恣意的な捜査で冤罪(えんざい)が起こりかねない」との声があがる。民進党の山井和則国会対策委員長は21日、記者団に「この国会での審議入りは断念すべきだ。成立を阻止するため戦う」と述べた。
金田法相は21日の閣議後の記者会見で「一般の会社や市民団体といった正当な活動を行っている団体が適用対象にならないことを一層、明確にした」と強調。菅義偉官房長官は「国民に法案の必要性や重要性を理解いただき、野党にも支持いただけるよう国会で丁寧に説明を尽くす」と語った。
・「共謀罪」法案を閣議決定 今国会で成立目指す(朝日新聞DIGITAL 2017年3月21日)
(上)閣議決定された法案のポイント
※政府は21日、犯罪を計画段階で処罰する「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ組織的犯罪処罰法の改正案を閣議決定した。「組織的犯罪集団」が犯罪を計画し、実行に向けた「準備行為」があったときに処罰するという内容。目的について政府は「テロ対策」を強調しているが、野党や日本弁護士連合会は「捜査機関の解釈や裁量に委ねられ、一般市民が対象になる恐れがある」などと反対している。
政府・与党は4月中に法案の審議に入り、通常国会の会期末(6月18日)までの成立を目指す。
国際組織犯罪防止条約(TOC条約)の締結に必要だとして、政府は2003~05年に計3回、「共謀罪」法案を国会に提出。「一般の市民団体や労働組合が対象となる」「思想や内心を理由に処罰される」といった批判が相次ぎ、いずれも廃案となった。
今回は20年の東京五輪のテロ対策を前面に出し、対象を「テロリズム集団その他の組織的犯罪集団」と規定。①2人以上で犯罪の実行を計画し、②そのうちの誰かが「物品や資金の手配」「関係場所の下見」といった「準備行為」をした場合――に適用する。「一般市民は対象にならない」と説明する一方、通常の団体が組織的犯罪集団に「一変」した場合には対象になるとしている。
対象となる犯罪の数も、過去の法案より減らした。TOC条約は、4年以上の懲役・禁錮の処罰を受ける「重大な犯罪」を計画した場合に罪を設けるよう締結国に求めており、過去の法案では対象犯罪は約620にのぼっていた。今回も原案では676の罪を挙げていたが、公明党が絞り込みを求め、政府は減らすことを検討。「組織的犯罪集団の関与が現実的に想定される罪」を対象とし、「テロの実行」「薬物」「人身に関する搾取」「その他資金源」「司法妨害」の5分類、計277罪とした。
野党や日弁連、研究者からは、市民が対象になる恐れや監視社会につながる懸念のほか、「対象の罪が多すぎる」「現在の国内法でも条約締結は可能だ」「政府の説明は不十分だ」などの指摘が出ている。
菅義偉官房長官は21日、閣議決定した法案について「対象となる団体を限定し、一般の会社や市民団体、労働組合などの正当な活動を行っている団体が適用対象とはならないことを明確にした。法案に対する不安や懸念を払拭(ふっしょく)する内容だ。国会でわかりやすく丁寧に説明をつくし、一日も早い法案の成立を目指したい」と述べた。
一方、民進党の山井和則国対委員長は「今まで3回廃案になった『共謀罪』と本質的には変わっていないと正直に説明するべきだ。審議入りの断念を求めるとともに、この国会での成立を阻止する」と批判した。(金子元希)
■組織的犯罪処罰法の改正法案のうち「共謀罪」に関する条文(抜粋)
(テロリズム集団その他の組織的犯罪集団による実行準備行為を伴う重大犯罪遂行の計画)
第六条の二 次の各号に掲げる罪に当たる行為で、テロリズム集団その他の組織的犯罪集団の団体の活動として、当該行為を実行するための組織により行われるものの遂行を2人以上で計画した者は、その計画をした者のいずれかによりその計画に基づき資金または物品の手配、関係場所の下見その他の計画をした犯罪を実行するための準備行為が行われたときは、当該各号に定める刑に処する。ただし、実行に着手する前に自首した者は、その刑を減軽し、または免除する。
一 別表に掲げる罪のうち、死刑または無期もしくは長期10年を超える懲役もしくは禁錮の刑が定められているもの 5年以下の懲役または禁錮
二 別表に掲げる罪のうち、長期4年以上10年以下の懲役または禁錮の刑が定められているもの 2年以下の懲役または禁錮
2 前項各号に掲げる罪に当たる行為で、テロリズム集団その他の組織的犯罪集団に不正権益を得させ、またはテロリズム集団その他の組織的犯罪集団の不正権益を維持し、もしくは拡大する目的で行われるものの遂行を2人以上で計画した者も、その計画をした者のいずれかによりその計画に基づき資金または物品の手配、関係場所の下見その他の計画をした犯罪を実行するための準備行為が行われたときは、同項と同様とする。
(※太字部分は今回設ける罪を定義している主な部分。別表は別掲)
■「共謀罪」の対象となる法律と罪名一覧
【刑法】内乱等幇助(ほうじょ)▽加重逃走▽被拘禁者奪取▽逃走援助▽騒乱▽現住建造物等放火▽非現住建造物等放火▽建造物等以外放火▽激発物破裂▽現住建造物等浸害▽非現住建造物等浸害▽往来危険▽汽車転覆等▽あへん煙輸入等▽あへん煙吸食器具輸入等▽あへん煙吸食のための場所提供▽水道汚染▽水道毒物等混入▽水道損壊及び閉塞(へいそく)▽通貨偽造及び行使等▽外国通貨偽造及び行使等▽有印公文書偽造等▽有印虚偽公文書作成等▽公正証書原本不実記載等▽偽造公文書行使等▽有印私文書偽造等▽偽造私文書等行使▽私電磁的記録不正作出及び供用▽公電磁的記録不正作出及び供用▽有価証券偽造等▽偽造有価証券行使等▽支払用カード電磁的記録不正作出等▽不正電磁的記録カード所持▽公印偽造及び不正使用等▽偽証▽強制わいせつ▽強姦(ごうかん)▽準強制わいせつ▽準強姦▽墳墓発掘死体損壊等▽収賄▽事前収賄▽第三者供賄▽加重収賄▽事後収賄▽あっせん収賄▽傷害▽未成年者略取及び誘拐▽営利目的等略取及び誘拐▽所在国外移送目的略取及び誘拐▽人身売買▽被略取者等所在国外移送▽営利拐取等幇助目的被拐取者収受▽営利被拐取者収受▽身の代金被拐取者収受等▽電子計算機損壊等業務妨害▽窃盗▽不動産侵奪▽強盗▽事後強盗▽昏酔(こんすい)強盗▽電子計算機使用詐欺▽背任▽準詐欺▽横領▽盗品有償譲受け等
【組織的犯罪処罰法】組織的な封印等破棄▽組織的な強制執行妨害目的財産損壊等▽組織的な強制執行行為妨害等▽組織的な強制執行関係売却妨害▽組織的な常習賭博▽組織的な賭博場開張等図利▽組織的な殺人▽組織的な逮捕監禁▽組織的な強要▽組織的な身の代金目的略取等▽組織的な信用毀損(きそん)・業務妨害▽組織的な威力業務妨害▽組織的な詐欺▽組織的な恐喝▽組織的な建造物等損壊▽組織的な犯罪に係る犯人蔵匿等▽不法収益等による法人等の事業経営の支配を目的とする行為▽犯罪収益等隠匿
【爆発物取締罰則】製造・輸入・所持・注文▽幇助のための製造・輸入等▽製造・輸入・所持・注文(第1条の犯罪の目的でないことが証明できないとき)▽爆発物の使用、製造等の犯人の蔵匿等
【外貨偽造法】偽造等▽偽造外国流通貨幣等の輸入▽偽造外国流通貨幣等の行使等
【印紙犯罪処罰法】偽造等▽偽造印紙等の使用等
【海底電信線保護万国連合条約罰則】海底電信線の損壊
【労働基準法】強制労働
【職業安定法】暴行等による職業紹介等
【児童福祉法】児童淫行
【郵便法】切手類の偽造等
【金融商品取引法】虚偽有価証券届出書等の提出等▽内部者取引等
【大麻取締法】大麻の栽培等▽大麻の所持等▽大麻の使用等
【船員職業安定法】暴行等による船員職業紹介等
【競馬法】無資格競馬等
【自転車競技法】無資格自転車競走等
【外国為替及び外国貿易法】国際的な平和及び安全の維持を妨げることとなる無許可取引等▽特定技術提供目的の無許可取引等
【電波法】電気通信業務等の用に供する無線局の無線設備の損壊等
【小型自動車競走法】無資格小型自動車競走等
【文化財保護法】重要文化財の無許可輸出▽重要文化財の損壊等▽史跡名勝天然記念物の滅失等
【地方税法】軽油等の不正製造▽軽油引取税に係る脱税
【商品先物取引法】商品市場における取引等に関する風説の流布等
【道路運送法】自動車道における自動車往来危険▽事業用自動車の転覆等
【投資信託及び投資法人に関する法律】投資主の権利の行使に関する利益の受供与等についての威迫行為
【モーターボート競走法】無資格モーターボート競走等
【森林法】保安林の区域内における森林窃盗▽森林窃盗の贓物(ぞうぶつ)の運搬等▽他人の森林への放火
【覚醒剤取締法】覚醒剤の輸入等▽覚醒剤の所持等▽営利目的の覚醒剤の所持等▽覚醒剤の使用等▽営利目的の覚醒剤の使用等▽管理外覚醒剤の施用等
【出入国管理及び難民認定法】在留カード偽造等▽偽造在留カード等所持▽集団密航者を不法入国させる行為等▽営利目的の集団密航者の輸送▽集団密航者の収受等▽営利目的の難民旅行証明書等の不正受交付等▽営利目的の不法入国者等の蔵匿等
【旅券法】旅券等の不正受交付等
【日米地位協定の実施に伴う刑事特別法】偽証▽軍用物の損壊等
【麻薬及び向精神薬取締法】ジアセチルモルヒネ等の輸入等▽ジアセチルモルヒネ等の製剤等▽営利目的のジアセチルモルヒネ等の製剤等▽ジアセチルモルヒネ等の施用等▽営利目的のジアセチルモルヒネ等の施用等▽ジアセチルモルヒネ等以外の麻薬の輸入等▽営利目的のジアセチルモルヒネ等以外の麻薬の輸入等▽ジアセチルモルヒネ等以外の麻薬の製剤等▽麻薬の施用等▽向精神薬の輸入等▽営利目的の向精神薬の譲渡等
【有線電気通信法】有線電気通信設備の損壊等
【武器等製造法】銃砲の無許可製造▽銃砲弾の無許可製造▽猟銃等の無許可製造
【ガス事業法】ガス工作物の損壊等
【関税法】輸出してはならない貨物の輸出▽輸入してはならない貨物の輸入▽輸入してはならない貨物の保税地域への蔵置等▽偽りにより関税を免れる行為等▽無許可輸出等▽輸出してはならない貨物の運搬等
【あへん法】けしの栽培等▽営利目的のけしの栽培等▽あへんの譲渡し等
【自衛隊法】自衛隊の所有する武器等の損壊等
【出資法】高金利の契約等▽業として行う高金利の契約等▽高保証料▽保証料がある場合の高金利等▽業として行う著しい高金利の脱法行為等
【補助金適正化法】不正の手段による補助金等の受交付等
【売春防止法】対償の収受等▽業として行う場所の提供▽売春をさせる業▽資金等の提供
【高速自動車国道法】高速自動車国道の損壊等
【水道法】水道施設の損壊等
【銃刀法】拳銃等の発射▽拳銃等の輸入▽拳銃等の所持等▽拳銃等の譲渡し等▽営利目的の拳銃等の譲渡し等▽偽りの方法による許可▽拳銃実包の輸入▽拳銃実包の所持▽拳銃実包の譲渡し等▽猟銃の所持等▽拳銃等の輸入に係る資金等の提供
【下水道法】公共下水道の施設の損壊等
【特許法】特許権等の侵害
【実用新案法】実用新案権等の侵害
【意匠法】意匠権等の侵害
【商標法】商標権等の侵害
【道路交通法】不正な信号機の操作等
【医薬品医療機器法】業として行う指定薬物の製造等
【新幹線特例法】自動列車制御設備の損壊等
【電気事業法】電気工作物の損壊等
【所得税法】偽りその他不正の行為による所得税の免脱等▽偽りその他不正の行為による所得税の免脱▽所得税の不納付
【法人税法】偽りにより法人税を免れる行為等
【海底電線等損壊行為処罰法】海底電線の損壊▽海底パイプライン等の損壊
【著作権法】著作権等の侵害等
【ハイジャック防止法】航空機の強取等▽航空機の運航阻害
【廃棄物処理法】無許可廃棄物処理業等
【火炎瓶処罰法】火炎瓶の使用
【熱供給事業法】熱供給施設の損壊等
【航空危険行為処罰法】航空危険▽航行中の航空機を墜落させる行為等▽業務中の航空機の破壊等▽業務中の航空機内への爆発物等の持込み
【人質強要処罰法】人質による強要等▽加重人質強要
【生物兵器禁止法】生物兵器等の使用▽生物剤等の発散▽生物兵器等の製造▽生物兵器等の所持等
【貸金業法】無登録営業等
【労働者派遣法】有害業務目的の労働者派遣
【流通食品毒物混入防止法】流通食品への毒物の混入等
【消費税法】偽りにより消費税を免れる行為等
【出入国管理特例法】特別永住者証明書の偽造等▽偽造特別永住者証明書等の所持
【麻薬特例法】薬物犯罪収益等隠匿
【種の保存法】国内希少野生動植物種の捕獲等
【不正競争防止法】営業秘密侵害等▽不正競争等
【化学兵器禁止法】化学兵器の使用▽毒性物質等の発散▽化学兵器の製造▽化学兵器の所持等▽毒性物質等の製造等
【サリン人身被害防止法】サリン等の発散▽サリン等の製造等
【保険業法】株主等の権利の行使に関する利益の受供与等についての威迫行為
【臓器移植法】臓器売買等
【スポーツ振興投票法】無資格スポーツ振興投票
【種苗法】育成者権等の侵害
【資産流動化法】社員等の権利等の行使に関する利益の受供与等についての威迫行為
【感染症予防法】一種病原体等の発散▽一種病原体等の輸入▽一種病原体等の所持等▽二種病原体等の輸入
【対人地雷禁止法】対人地雷の製造▽対人地雷の所持
【児童買春・児童ポルノ禁止法】児童買春周旋▽児童買春勧誘▽児童ポルノ等の不特定又は多数の者に対する提供等
【民事再生法】詐欺再生▽特定の債権者に対する担保の供与等
【公衆等脅迫目的犯罪資金処罰法】公衆等脅迫目的の犯罪行為を実行しようとする者による資金等を提供させる行為▽公衆等脅迫目的の犯罪行為を実行しようとする者以外の者による資金等の提供等
【公的個人認証法】不実の署名用電子証明書等を発行させる行為
【会社更生法】詐欺更生▽特定の債権者等に対する担保の供与等
【破産法】詐欺破産▽特定の債権者に対する担保の供与等
【会社法】会社財産を危うくする行為▽虚偽文書行使等▽預合い▽株式の超過発行▽株主等の権利の行使に関する贈収賄▽株主等の権利の行使に関する利益の受供与等についての威迫行為
【国際刑事裁判協力法】組織的な犯罪に係る証拠隠滅等▽偽証
【放射線発散処罰法】放射線の発散等▽原子核分裂等装置の製造▽原子核分裂等装置の所持等▽特定核燃料物質の輸出入▽放射性物質等の使用の告知による脅迫▽特定核燃料物質の窃取等の告知による強要
【海賊対処法】海賊行為
【クラスター弾禁止法】クラスター弾等の製造▽クラスター弾等の所持
【放射性物質汚染対処特別措置法】汚染廃棄物等の投棄等
・「共謀罪」法案を閣議決定=準備段階で処罰、対象犯罪277(時事通信 2017年3月21日)
※政府は21日の閣議で、「共謀罪」の構成要件を改め、犯罪を計画・準備した段階で処罰可能にする「テロ等準備罪」を新設する組織犯罪処罰法改正案を決定した。「共謀罪」を盛り込んだ法案が過去3回廃案となった経緯を踏まえ、謀議だけでは犯罪にならないようにするなど要件を厳格化し、対象犯罪を277に絞り込んだ。今国会での成立を目指す。
2003年に国会承認された国際組織犯罪防止条約を締結するための国内法整備で、政府は20年東京五輪・パラリンピック開催に向けたテロ対策と位置付けている。だが、野党は捜査権乱用の懸念があるとの立場で、今国会最大の対決法案となりそうだ。
・「ムスリム批判は絶対に許されない」移民が侵食するスウェーデンの“パラレル・ソサエティ”化が深刻すぎる(国防省レポート)(TOCANA 2017年3月21日)
※トランプ政権・首席戦略官のスティーブン・バノンがかつて主幹を務めていたニュースサイトが「ブライトバート」だ。右翼的サイトと米国では認識されているが、その「ブライトバート」で先頃、スウェーデンの国防省が最近発表したレポートについての興味深い記事を掲載している。
■「パラレル・ソサエティ」化するスウェーデン
公表されたこの「国防省レポート」は、まず、「ムスリム同胞団のような反民主的組織の排除を目的」に書かれたと述べている。続いて、スンナ派イスラム主義組織のムスリム同胞団がスウェーデン社会内に密かに浸透し、組織や政党を立ち上げ、「パラレル・ソサエティ」を構築しようとしていると主張している。
パラレル・ソサエティとはスウェーデンの文化と融合せずに、イスラム文化をスウェーデンで育む共同体だ。そして、皮肉なことにスウェーデンの「ポリティカリーコレクト」つまり中立性を重んじる文化がある意味災いして、この風潮を支持する様相になっていることを指摘している。さらに記事が訴えている問題点は下記のようなものだ。
「ムスリム同胞団活動家が目指しているパラレル・ソサエティの構築によって、スウェーデンは国家の社会的一体感の面で長期的な問題を抱える」
「アフリカと中東からの移民は親族の招聘や難民のかたちで、今後も継続して増える可能性がある」
「ムスリム同胞団の目標はスウェーデンおよびヨーロッパ全体でイスラム教徒の数を増やすことであり、それによってスウェーデン人とイスラム教徒間でつばぜり合いが起きるであろう」
1828年に創設されたムスリム同胞団は、疑いなく世界最大のイスラム主義組織であり、英国のイスラム評議会およびその他多くのヨーロッパのイスラム機関の主流ともつながりを持っている。しかし同グループは、武装勢力との関係強化を指摘されており、バーレーン、エジプト、ロシア、サウジアラビア、アラブ首長国連邦の政府においては“テロ組織”とみなされている。
■スウェーデンで多文化主義が問題視されたことはきわめて珍しい
問題の「国防省レポート」は、ムスリム同胞団はイスラム教徒とスウェーデン社会における緊張の増大を試みており、政党、NGO、教育機関、その他の市民社会組織をターゲットにしていると訴えている。そして批判はスウェーデンの政治エリートたちにも及び、彼らの移民への「寛容性と容認」を非難している。スウェーデンではイスラム教への批判をすると、「人種差別者」や「イスラム教恐怖症」と見なされる危険があり、その人物が築き上げてきたキャリアさえも奪ってしまうとも述べられているのだ。
スウェーデンでは政府の一機関がこのように自国の自由主義、そして多文化主義をあからさまに批判したのはきわめて珍しいことだ。そのため、評論家はこのレポートをすぐさま「陰謀」と呼び、イスラム教に対して間違ったイメージを植え付けるものだという批判が巻き起こった。マスコミはこのレポートを扇動的に扱い、22人の学者や宗教の専門家は、レポート作成者たちにブログ記事で公開質問も行っている。
このレポートの内容を不快に思うスウェーデンの主要大学の学者たちは「ムスリム同胞団がパラレル・ソサエティを作り出す」と言う考えは過去の研究で既に論破されたはずだと主張。またレポートが、スウェーデン内のムスリム・コミュニティをムスリム同胞団が率いていると断定していることにも反論している。そしてムスリム・コミュニティのほうも多様化しており、イスラム教徒のグループ同士にも競争があることを指摘する。
しかし一方、このレポートの筆者マグナス・ノレル氏は公共放送の「SVT」でこう語った。「彼らがレポートをちゃんと読んだのか疑問です。彼らがこれを認めないと言うなら、私がそれについてできることはあまりないですね。これは証明されている事実ですから」――。
スウェーデンは低出生率と高死亡率のため、労働者不足に悩み、その解決策として1975年から多文化主義的な政策に取り組み始めた。欧州では最も移民を積極的に受け入れてきた国だと言われる。しかし現在は移民政策により治安の悪化、移民保護制度の負担による財政破綻の危機を迎えていることも事実だ。
スウェーデン統計局によると現在、人口の20%近くが、国外にルーツを持つ人間となっている。日本でも労働者不足問題が日増しに切実になっているだけに他人事では済まされない話題といえる。(文=三橋ココ)
・移民問題、日本も当事者 年間34万人、世界第5位(西日本新聞 2017年3月23日)
※日本は、単純労働の外国人受け入れを公式には認めず、移民に関して鎖国的な政策を続ける。だが、留学生や技能実習生の肩書で呼び込んだアジアの若者たちに、低賃金の単純労働を担わせているのが実態だ。国際的な尺度からみても、移民の主要受け入れ国の一つとなっている。
経済協力開発機構(OECD)は統計上、「国内に1年以上滞在する外国人」を移民と定義する。加盟35カ国の外国人流入者数をまとめた「国際移住データベース」から、2014年の1年間における移民の動き(出身国別で1万人以上の流入が対象)を抽出し、世界地図に落とし込んでみた=図表参照。
流入者が多いのは欧州(181万人)、北米(88万人)。アジアも57万人と続き、うち4割以上を日本(24万人)で受け入れていることが分かる。出身国別で1万人未満の流入を含めると日本は34万人に上り、ドイツ(134万人)、米国(102万人)、英国(50万人)、韓国(41万人)に次ぐ。
米国ではトランプ大統領の就任で移民排斥の動きが強まり、欧州連合(EU)も移民受け入れの是非で揺れている。アジアでは国家間や地域間での外国人材の獲得競争が過熱し、奴隷制度をほうふつとさせる過酷労働も表面化。地球規模で人が往来するグローバル化の中で、移民問題は地続きであり、正面からの議論を避けてきた日本も既に当事者となっている。
・「逮捕者のうち4人は韓国籍」と警察庁 沖縄の米軍基地反対運動(産経新聞 2017年3月22日)
※警察庁の白川靖浩官房審議官は21日の参院沖縄北方特別委員会で、沖縄県での米軍基地反対運動に関連して平成27年以降に沖縄県警が威力業務妨害などの容疑で41人を逮捕し、このうち4人が韓国籍だったと明らかにした。「逮捕した4人の国籍はいずれも韓国だ」と述べた。自民党の山田宏氏の質問に答えた。
米軍基地反対運動をめぐっては、東村などの米軍北部訓練場や名護市辺野古の米軍キャンプ・シュワブ周辺での抗議活動参加者による威力業務妨害事件が相次いで発生している。
9日の参院内閣委員会では、警察庁の松本光弘警備局長が「反対運動を行っている者の一部には極左暴力集団も確認されていると承知している」と指摘し、反対運動に過激派が関与している実態を明らかにしていた。
・米ユダヤ系施設に爆破予告容疑、ユダヤ人の男を逮捕(朝日新聞DIGITAL 2017年3月24日)
※米国内のユダヤ系コミュニティーセンターなどへの爆破予告に関与した疑いが強まったとして、イスラエル警察は23日、同国内のユダヤ人の男(19)を逮捕した。反ユダヤ主義が背景にある可能性もあり、米連邦捜査局(FBI)が協力して捜査していたが、今のところ動機は不明という。AP通信などが伝えた。
男はイスラエルと米国の両国籍を持つユダヤ人で、警察は少なくとも数十件の爆破予告に関与したとの見方を示した。米国以外に豪州やニュージーランド、イスラエル国内にも脅迫電話をかけた疑いがあるという。精神的な問題を抱えていた可能性があるとの情報もある。発信元をたどりにくくする方法を用いた疑いがあり、警察は男のコンピューターなどを押収した。
ユダヤ系団体・反中傷連盟(ADL)によると、1月以降、米国のユダヤ系のコミュニティーセンターや学校などで150件以上の爆破予告があり、住民らが避難する騒ぎに。ユダヤ教徒の墓地が荒らされる事件も相次ぎ、トランプ米大統領は2月、「反ユダヤ主義の脅迫は恐ろしく、耐えられない」と非難。ヘイトクライム(憎悪犯罪)の可能性があるとして、関連団体が危機感を募らせていた。
・統一教会が分裂、逮捕者も 桜田淳子の役どころ(週刊新潮 2017年3月16日号)
※ご本人がいくらその影を拭おうとしても、そう、世間の目は決して違わないよぉ~! 来月、都内で“復活コンサート”を開く桜田淳子(58)。新興宗教へ入信後、鳴りを潜める彼女の周囲がいつになく騒がしい。信奉する教団で骨肉の分裂劇が幕を開けたのである。
***
激しく赤色灯を回転させたパトカーが向かった先は、都内有数の高級住宅街である渋谷区松濤だった。
幾人もの制服姿の警官が統一教会(現・世界平和統一家庭連合)の本部へ乗り込んでいく。この建物で不退去罪に問われた信者2名が、渋谷署員に逮捕されたのは2月12日のことだ。
桜田淳子が参加した合同結婚式をはじめ、数多の霊感商法や強引な勧誘トラブルで世を騒がせてきた統一教会。2012年に教祖である文鮮明が死去した後、ここ最近になって警察を巻き込む騒動が頻発しているというから穏やかではない。
統一教会問題に詳しいジャーナリストの鈴木エイト氏によれば、
「今回の逮捕劇は、教団を継いだ文鮮明の未亡人・韓鶴子氏の教義に対して、“四男・七男派”信者が抗議する中で起こったこと。後継者を巡るいざこざです」
宗教問題が専門の北海道大学大学院文学研究科・櫻井義秀教授が言う。
「文鮮明の後継者として認められた男子は3人います。三男は全国大学連合原理研究会という学生組織、四男は韓国を主とした事業組織、七男は宗教組織というような棲み分けがあったのですが、父親の死後、子供らが喧嘩別れをしたので、彼らの母親である鶴子氏が日本の本部を取り仕切って“主流派”となったのです」
■「教祖を否定」
対する四男と七男は母に対抗すべく手を携え、昨年末に一般社団法人「日本サンクチュアリ協会」を設立した。そんな彼ら“反主流派”を支持する信者による抗議活動は、年明けから始まったと先の鈴木氏が継ぐ。
「当初は本部前に1人で“会長は辞めろ”と書いたプラカードを掲げるだけでしたが、2月には複数人に増えていき、その度に本部職員が警察を呼んでトラブルになっています。それでも反主流派は毎週抗議を続けると意気軒昂ですね」
当の教団に聞くと、
「信徒にとって大切な礼拝を妨害するなど信教の自由を脅かす行為に対して、教会及び信徒を守るために法に基づいて対応しています」(世界平和統一家庭連合広報文化局)
と主張する。一方、逮捕者を出したサンクチュアリ協会の言い分はこうだ。
「文鮮明先生が亡くなられた後、その妻・鶴子さんが教義を変えて“自分がメシアだ”と教祖を否定することを言い出した。そんな鶴子さんを担ぎあげる本部教会はおかしいと抗議しているのです。桜田さんも会員ではありますが、悪い教会のイメージがついてしまえばいい迷惑だと思いますよ」
もはや、何が良くて何が悪いかは常人にとって与り知らぬ話だが、内ゲバ続きの教団にとって桜田淳子の“復活祭”は神風になるという。
霊感商法の被害者救済に取り組む弁護士の紀藤正樹氏が解説する。
「現在の統一教会では“七男派”が支持を集めつつあります。しかし、統一教会の不動産の大部分は宗教法人名義のため、結果的に、未亡人率いる“主流派”が不動産を握っている。衝突は、この遺産争いという面があります。桜田淳子さんは、現在も“主流派”に属して活動していると聞いています。来月行われるステージは、外部に対する広告塔としてだけではなく、内部の引締め、つまり“主流派”の正当性を主張するプロパガンダの意味も大きい」
表舞台から消え去った往年のスターであろうとも、骨肉の分裂劇では今なお役どころあり――のようで。
※政府は21日の閣議で、「共謀罪」の構成要件を改めて、「テロ等準備罪」を新設する法案を決定しました。テロ組織などの組織的犯罪集団が重大な犯罪を計画し、メンバーのうちの誰かが犯罪の準備行為を行った場合などに、計画に合意した全員が処罰の対象になるとしています。
政府は、テロなどの組織犯罪を未然に防ぐためには一定の要件が満たされた場合に、犯罪の実行前の段階での処罰が可能となる法整備が必要だとして、過去3回廃案となった共謀罪の構成要件を改めて、テロ等準備罪を新設する、組織犯罪処罰法の改正案を閣議決定しました。
法案では、一定の犯罪の実行を目的とする「テロリズム集団その他の組織的犯罪集団」が団体の活動として、重大な犯罪の実行を計画し、計画したうちの誰かが、資金または物品の手配、関係場所の下見など、犯罪を実行するための準備行為を行った場合などに、計画に合意した全員を処罰するとしています。
処罰の対象になる重大な犯罪は組織的な殺人や、ハイジャックなど、テロの実行に関連する110の犯罪や、覚醒剤や大麻の輸出入といった薬物に関する29の犯罪など、277の犯罪が明示されていて、政府は、組織的犯罪集団が関与することが現実的に想定されるものに限定したとしています。
また、罰則については、死刑や10年を超える懲役や禁錮が科せられる犯罪を計画し、準備行為を行った場合、5年以下の懲役か禁錮とするなどとしています。
一方、自民・公明両党の国会対策委員長らが国会内で会談し、「共謀罪」の構成要件を改めて「テロ等準備罪」を新設する法案が衆議院法務委員会で審議される際には、審議を充実させるため、法務省の林刑事局長の委員会への出席を認めるよう、野党側に働きかけていく方針を確認しました。
官房長官「共謀罪とは別物 丁寧に説明尽くす」
菅官房長官は閣議のあとの記者会見で「対象犯罪を明確化し、組織的犯罪集団の関与が現実的に想定される277の犯罪に限定した。法案に対する懸念や不安を払拭(ふっしょく)する内容となっており、かつての『共謀罪』と明らかに別物だ」と述べました。
そのうえで菅官房長官は「国民に法案の必要性や重要性をご理解いただき、与党だけでなく野党にも幅広くご支持をいただけるよう、国会で分かりやすく丁寧に説明を尽くし、1日も早い法案の成立を目指したい」と述べました。
また、菅官房長官は、記者団から「捜査機関の裁量で、組織的犯罪集団の認定が拡大解釈されるおそれも指摘されているが」と問われたのに対し、「犯罪の計画行為に加え、テロ等の実行準備行為があって初めて処罰することにしている。そこは問題なくできると思う」と述べました。
菅官房長官は午後の記者会見で、「テロを未然に防止するため極めて重要なのは情報であり、『国際テロ情報収集ユニット』を新設し、官邸直轄で情報を収集・集約し、分析を行う態勢を強化している」と述べました。そのうえで、菅官房長官は、記者団が「証拠収集の手段のため、例えば通信傍受の対象を拡大する必要性をどう考えるか」と質問したのに対し、「今回の『テロ等準備罪』を新たに設けることに伴って、通信傍受の対象犯罪とすることは全く考えていない」と述べました。
法相「速やかな成立を」
金田法務大臣は、閣議のあと記者団に対し「法案は処罰の対象となる団体を明文で『組織的犯罪集団』に限定することで、一般の会社や市民団体といった正当な活動を行っている団体が適用対象とならないことを、一層、明確にしているなど、これまでに示された不安や懸念といったものが払拭(ふっしょく)される内容となっている」と述べました。
そのうえで、金田大臣は「法案が閣議決定されたので、具体的な成案の内容に基づいてしっかりと誠実に説明していく。3年後に迫った東京オリンピック・パラリンピックの開催を控え、国際組織犯罪防止条約の締結のための法整備は重要で急務であり、国会において十分に審議し、法案を速やかに成立させていただきたい」と述べました。
外相「五輪控えるわが国にとって重要」
岸田外務大臣は閣議のあと、記者団に対し、「国際組織犯罪防止条約は、すでに187か国が締結しており、条約を締結し、テロを含む組織犯罪と闘うことは2019年のラグビーワールドカップ、2020年の東京オリンピック・パラリンピックを控える、わが国にとって、重要なことだ」と述べました。
そのうえで、岸田大臣は「条約の締結に必要なテロ等準備罪を創設することで、テロを含む組織犯罪を未然に防ぐことが可能になるほか、国際協力が促進され、深刻化するテロを含む国際的な組織犯罪に対する取り組みが強化されることになり、大変大きな意義がある。重要な条約を締結するための重要な法律で、政府としても、成立に向けて努力を続けたい」と述べました。
自民 二階氏「今の国会で成立目指すのは当然」
自民党の二階幹事長は記者会見で、「今の国会も、だんだんと日程は詰まってきているが、審議しようとして、できない日程ではなく、成立を目指して頑張るのは当然だ。テロが発生してからでは遅く、あらかじめ対応していくのが、政府・与党の責任として当然のことだ。審議中にも、いろいろな意見が出されると思うが、政府・与党としてしっかり対応していきたい」と述べました。
公明 山口氏「丁寧な対応で臨む」
公明党の山口代表は記者会見で、「政府・与党で慎重に議論を重ね、最終的に、対象となる犯罪を大きく絞り込んで、必要不可欠なものに限定した。今の国会での成立を目指して、法案を国会に提出する運びになったので、政府・与党挙げて、国民の理解が進むように丁寧な対応で臨みたい」と述べました。
民進 山井氏「成立阻止のため闘う」
民進党の山井国会対策委員長は記者団に対し、「これまでの国会審議で、この法案に、うそがあることが国民に明らかになったにもかかわらず、閣議決定を強行したことは非常に残念だ。『テロ等準備罪』という名前だが、これまで3度廃案になった『共謀罪』と本質的には変わっておらず、日本が一億総監視社会になるかもしれないという大きなリスクをはらんでいる。この国会での成立を阻止するために、闘っていく」と述べました。
共産 小池氏「本質は全く変わっていない」
共産党の小池書記局長は記者会見で、「『共謀罪』を『テロ等準備罪』に名前を変えたが、本質は全く変わっていない。多数の一般人を盗聴や監視の対象にし、国民の思想・信条の自由を侵すもので、法案の撤回と成立の阻止に全力を尽くしていく」と述べました。
維新 馬場氏「不十分な点 党の対案に反映」
日本維新の会の馬場幹事長は記者会見で、「わが党は、法案自体は、日本として必要なものだという基本的な立場だが、容疑者の取り調べの『見える化』を担保する姿勢が、政府にあるかどうかなどが重要なポイントになる。法案の全体を見たうえで、不十分な点は党の対案に反映させていく」と述べました。
自由 小沢氏「権力者の運用でどうにでもなる」
自由党の小沢代表は記者会見で、「この種の法律は、国民の基本的人権をいろいろな形で規制するものだ。国民の権利を侵害しないように作っても、権力者の運用によってどうにでもなる。権力の乱用を躊躇(ちゅうちょ)しない今の安倍政権が、そのような法律を作るということは、仮に、内容がある程度妥当なものであっても危険だ」と述べました。
社民 又市氏「廃案勝ち取るべく全力」
社民党の又市幹事長は記者会見で、「これまでに3度、廃案になった法案と同じ趣旨のものであり、市民や労働団体のさまざまな抗議行動が監視や弾圧される危険性が非常に高い。個人の内心の自由を、日ごろから監視するもので、平成の治安維持法と言わなければいけない。野党4党が協力して、廃案を勝ち取るべく全力を挙げて頑張っていきたい」と述べました。
テロ等準備罪とは
政府は、2020年の東京オリンピック・パラリンピックなどを控え、テロなどの組織犯罪を未然に防ぐために、一定の要件が満たされた場合には犯罪の実行前の段階でも処罰できるよう、テロ等準備罪を新設することが必要だとしています。
また、テロ等準備罪を新設すれば、重大な犯罪を行うことで合意した場合などの処罰を可能とする法整備を各国に求めている、「国際組織犯罪防止条約」の締結が可能になり、他国の捜査当局との間で直接、情報交換できるケースが大幅に増えるほか、現在は犯罪人の引き渡しに応じない国に対して、条約を根拠に引き渡しを求めやすくなると説明しています。
法務省によりますと、国連加盟国の中で条約を締結していない国は日本、イラン、ブータンなど11か国で、政府はテロ等準備罪を新設して条約を締結し、国際的な組織犯罪捜査の穴を埋めたいとしています。
テロ等準備罪は、かつて政府が導入を目指して、3回、廃案になった共謀罪の構成要件を改め、一定の犯罪の実行を目的とする「組織的犯罪集団」が団体の活動として、重大な犯罪の実行を計画し、計画したうちの誰かが犯罪を実行するための準備行為を行った場合などに、計画に合意した全員を処罰するとしています。
組織的犯罪集団にはテロ組織や暴力団、薬物密売組織などが含まれるほか、当初は別の目的で設けられても、その後、犯罪を目的とする団体に一変した場合には組織的犯罪集団と認定される可能性があるとしています。
また、処罰の対象になる重大な犯罪は、組織的犯罪集団が関与することが現実的に想定されるものに限定したとしていて、組織的な殺人やハイジャックなど、テロの実行に関連する110の犯罪や、覚醒剤や大麻の輸出入といった、薬物に関する29の犯罪など、277の犯罪が明示されています。
さらに処罰するために必要な準備行為の具体例として、資金または物品の手配、関係場所の下見などが法案の条文に明記され、政府は、テロ組織のメンバーが化学テロを計画し、必要な物質を調達した場合などが当てはまるとしています。
一方で、政府は組織的犯罪集団が重大な犯罪の実行を計画しても、準備行為を行っていない段階では処罰されないとしています。
テロ等準備罪めぐる争点
政府が締結を目指す国際組織犯罪防止条約は、殺人などの重大な犯罪を行うことで合意した場合などに処罰できるよう各国に法整備を求めています。
法務省によりますと、現在の国内法で、重大な犯罪を行うことで合意した場合に処罰できる規定としては、爆発物取締罰則など13の法規に設けられた共謀罪や、内乱罪など国の存立に関わるような8つの重い罪について、仲間と計画を立てたことを処罰する陰謀罪があります。
ただ、政府は、こうした現行の規定について、対象の犯罪が少なすぎて条約を結ぶ条件を満たせないとして、テロ等準備罪を新設し、より広範囲に取り締まれるようにすべきだとしています。
これに対して、民進党などは、罪の新設は憲法が保障する内心の自由を侵害する可能性が極めて高いとしたうえで、現行の法制度の下でも条約を締結することは可能だと主張しています。
具体的には共謀罪や陰謀罪に加えて、殺人予備罪など37ある「予備罪」や、「通貨偽造等準備罪」をはじめ、8つの「準備罪」などの適用で対応すれば、新たな法整備は必要ないとしています。
政府は、組織的犯罪集団には犯罪を行うことを目的に作られたテロ組織や暴力団、薬物密売組織、振り込め詐欺集団などが含まれるほか、当初は別の目的で設けられても、その後、犯罪を目的とする団体に一変した場合には組織的犯罪集団と認定される可能性があるとしています。
これに対し、民進党などは組織的犯罪集団は幅の広い概念であるのに加え、一般の団体がどのような状態になれば、「組織的犯罪集団に一変した」と見なすのかが不透明で、恣意(しい)的な判断により一般市民も処罰の対象になりかねないと指摘しています。
また、テロ組織などは暴力団と異なり、外部から組織的犯罪集団と判断するのは難しいことから、捜査機関が認定を目指す過程で、捜査の権限を乱用するおそれがあるという懸念も出ています。
政府は組織的犯罪集団の2人以上のメンバーが重大な犯罪の実行を計画することを構成要件の1つとしています。
メンバーの計画への合意は顔を合わさなくても、電話や電子メールなどを通じて成立するとしています。ただ、犯罪の計画などがメーリングリストなどを通じて、複数の人に一斉に送られた場合に単に閲覧しただけでは、合意に当たらないという見解を示しています。
これに対して、民進党などは、捜査機関が合意の有無を確かめるために電話やメールの内容などを広範囲に捜査し、プライバシーの侵害につながるおそれがあると批判しています。
どんな場合に適用される?
法務省は、国会での議論などで、今の法制度の下では適切に対処できず、テロ等準備罪の新設を必要とする具体例を複数、示しています。
まず、テロ組織が、複数の飛行機を乗っ取って高層ビルに突入するテロを計画し、メンバーの1人が、航空機のチケットを予約したというケースです。法務省は、この程度の準備行為では「客観的に相当な危険性がある」とは認められず、ハイジャック防止法の予備罪を適用できない可能性があり、計画した犯罪を実行するための準備行為が行われれば処罰できる、テロ等準備罪の新設が必要だとしています。
次に地下鉄サリン事件を念頭に置いたケースで、テロ組織が殺傷能力の高い化学薬品を製造して、同時多発的に大量殺人を行うことを計画し、原料の一部を入手した場合です。民進党などは、地下鉄サリン事件を受けて制定された「サリン防止法」にある予備罪で対処できると指摘していますが、法務省は、テロ組織が入手した原料の一部が化学薬品の完成に不可欠かどうかなどによっては、予備罪に問うのは難しい場合もあるとして、テロ等準備罪の新設を主張しています。
3つめは、テロ組織が、全国の電力や水道などのインフラのシステムを一斉に誤作動させて、パニックに陥らせることを計画し、メンバーがコンピューターウイルスの開発を始めた場合です。現在の法制度にはコンピューターウイルスが完成する前の段階で罰する規定は無いため、法務省は、開発を始めた段階で罪に問えるテロ等準備罪が必要だとしています。これに対しては、ウイルス対策ソフトを作るため、わざとウイルスを作ろうとしただけでも罪に問われかねないという指摘が出ています。
さらに、4つ目は、暴力団の組員らが対立する暴力団の組長の殺害を計画し、拳銃を購入する資金を用意した場合です。法務省は、殺害実行までの段階や状況によっては、殺人予備罪では対処できない可能性があり、テロ等準備罪が必要だとしています。
一方、法務省は一般企業が脱税を計画して、裏帳簿を作成しても、組織的犯罪集団に一変したと認定されないかぎり、処罰の対象にはならないとしています。
また、暴力団などが振り込め詐欺を計画したものの、何もしなかった場合も、準備行為がないため、処罰の対象にはならないとしています。
共謀罪 過去3回廃案になった経緯
国際組織犯罪防止条約が平成15年の通常国会で、自民・公明両党や、当時の民主党、それに共産党などの賛成で承認され、政府は条約が求める国内法の整備のため、同じ国会に共謀罪を設ける法案を初めて提出しました。
しかし、審議は行われず、この年の秋の衆議院解散によって、法案は廃案になりました。その後、平成16年の通常国会に同様の法案が提出され、翌年の通常国会で初めて審議が行われましたが、この時も衆議院の解散によって廃案になりました。
3度目の法案提出は、同じ年の特別国会で、翌平成18年の通常国会と合わせて30時間余りの審議が行われました。当時の法案は、処罰の対象を「団体」とし、犯罪の実行に向けた合意、つまり「共謀」があれば処罰できるとしていました。
対象となる犯罪は懲役・禁錮4年以上の刑罰が科せられる600余りに上り、与野党からは「市民団体や労働組合も対象になる」、「居酒屋で気にくわない上司を殴ることで合意しても、処罰される」などといった懸念が示されました。
これを受けて、与党側と民主党のそれぞれが、処罰の対象を「組織的犯罪集団」に限定し、処罰には合意に加えて、一定の準備行為などを必要とする修正案をまとめ、協議が行われましたが、決裂し、その後、審議されないまま、平成21年の衆議院解散によって廃案になりました。
・「共謀罪」法案を閣議決定 テロ準備段階で処罰 殺人・放火など277犯罪対象(日本経済新聞 2017年3月21日)
※政府は21日、犯罪を計画段階で処罰する「共謀罪」の構成要件を改め「テロ等準備罪」を新設する組織犯罪処罰法改正案を閣議決定した。犯罪の実行を目的とする「組織的犯罪集団」がテロなどの犯行を計画し、メンバーが現場の下見や資金調達などの準備を始めた段階で処罰する。殺人や放火など277の重大犯罪が対象。野党は恣意的な捜査につながる懸念を示しており、国会審議は激しい論戦になりそうだ。
政府は過去3回、「共謀罪」を新設するための法案を国会に提出したが、世論の反発を受けていずれも廃案になった。今回は同名称を使わず、テロ対策を強調して世論の理解を得る考え。
法案は21日中に国会に提出する。自民党の二階俊博幹事長は記者会見で「今国会で審議できない日程ではない。成立をめざすのは当然だ」と述べ、今国会で成立をめざす考えを表明した。
政府は法整備について、多国間で組織犯罪の捜査情報の共有などを進める国際組織犯罪防止条約(TOC条約)を締結するため、と説明している。金田勝年法相は閣議後の記者会見で「3年後の東京五輪・パラリンピックの開催を控え、条約締結のための法整備は重要で急務だ」と強調した。
TOC条約は187カ国・地域が締結済み。日本は法整備ができていないため、同条約は締結していない。
「組織的犯罪集団」は、テロ組織や暴力団、薬物密売組織などを想定している。これらの集団が犯罪を計画し、少なくとも1人が犯罪の準備行為に及べば、組織全体を処罰する。法務省は企業や宗教団体でも「目的が犯罪を実行する集団に一変すれば処罰対象になり得る」と説明している。
法務省は犯罪の準備行為として、航空機を乗っ取る目的で航空券を手配したり、犯行現場の下見に訪れたりするケースを挙げている。
条約では「懲役・禁錮4年以上」の重大犯罪を対象にするよう求めており、政府は当初、該当する676の犯罪を対象にする方針だった。だが公明党などが「対象が広すぎる」と懸念を示したため277に絞り込んだ。
法定刑は10年を超える懲役・禁錮を定めた罪で計画・準備行為を行った場合は「5年以下の懲役・禁錮」。4~10年の懲役・禁錮を定めた罪の場合では「2年以下の懲役・禁錮」。実行に着手する前に自首すれば、刑は減免される。
法案を巡っては野党から「集団や準備行為の線引きが曖昧で、恣意的な捜査で冤罪(えんざい)が起こりかねない」との声があがる。民進党の山井和則国会対策委員長は21日、記者団に「この国会での審議入りは断念すべきだ。成立を阻止するため戦う」と述べた。
金田法相は21日の閣議後の記者会見で「一般の会社や市民団体といった正当な活動を行っている団体が適用対象にならないことを一層、明確にした」と強調。菅義偉官房長官は「国民に法案の必要性や重要性を理解いただき、野党にも支持いただけるよう国会で丁寧に説明を尽くす」と語った。
・「共謀罪」法案を閣議決定 今国会で成立目指す(朝日新聞DIGITAL 2017年3月21日)
(上)閣議決定された法案のポイント
※政府は21日、犯罪を計画段階で処罰する「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ組織的犯罪処罰法の改正案を閣議決定した。「組織的犯罪集団」が犯罪を計画し、実行に向けた「準備行為」があったときに処罰するという内容。目的について政府は「テロ対策」を強調しているが、野党や日本弁護士連合会は「捜査機関の解釈や裁量に委ねられ、一般市民が対象になる恐れがある」などと反対している。
政府・与党は4月中に法案の審議に入り、通常国会の会期末(6月18日)までの成立を目指す。
国際組織犯罪防止条約(TOC条約)の締結に必要だとして、政府は2003~05年に計3回、「共謀罪」法案を国会に提出。「一般の市民団体や労働組合が対象となる」「思想や内心を理由に処罰される」といった批判が相次ぎ、いずれも廃案となった。
今回は20年の東京五輪のテロ対策を前面に出し、対象を「テロリズム集団その他の組織的犯罪集団」と規定。①2人以上で犯罪の実行を計画し、②そのうちの誰かが「物品や資金の手配」「関係場所の下見」といった「準備行為」をした場合――に適用する。「一般市民は対象にならない」と説明する一方、通常の団体が組織的犯罪集団に「一変」した場合には対象になるとしている。
対象となる犯罪の数も、過去の法案より減らした。TOC条約は、4年以上の懲役・禁錮の処罰を受ける「重大な犯罪」を計画した場合に罪を設けるよう締結国に求めており、過去の法案では対象犯罪は約620にのぼっていた。今回も原案では676の罪を挙げていたが、公明党が絞り込みを求め、政府は減らすことを検討。「組織的犯罪集団の関与が現実的に想定される罪」を対象とし、「テロの実行」「薬物」「人身に関する搾取」「その他資金源」「司法妨害」の5分類、計277罪とした。
野党や日弁連、研究者からは、市民が対象になる恐れや監視社会につながる懸念のほか、「対象の罪が多すぎる」「現在の国内法でも条約締結は可能だ」「政府の説明は不十分だ」などの指摘が出ている。
菅義偉官房長官は21日、閣議決定した法案について「対象となる団体を限定し、一般の会社や市民団体、労働組合などの正当な活動を行っている団体が適用対象とはならないことを明確にした。法案に対する不安や懸念を払拭(ふっしょく)する内容だ。国会でわかりやすく丁寧に説明をつくし、一日も早い法案の成立を目指したい」と述べた。
一方、民進党の山井和則国対委員長は「今まで3回廃案になった『共謀罪』と本質的には変わっていないと正直に説明するべきだ。審議入りの断念を求めるとともに、この国会での成立を阻止する」と批判した。(金子元希)
■組織的犯罪処罰法の改正法案のうち「共謀罪」に関する条文(抜粋)
(テロリズム集団その他の組織的犯罪集団による実行準備行為を伴う重大犯罪遂行の計画)
第六条の二 次の各号に掲げる罪に当たる行為で、テロリズム集団その他の組織的犯罪集団の団体の活動として、当該行為を実行するための組織により行われるものの遂行を2人以上で計画した者は、その計画をした者のいずれかによりその計画に基づき資金または物品の手配、関係場所の下見その他の計画をした犯罪を実行するための準備行為が行われたときは、当該各号に定める刑に処する。ただし、実行に着手する前に自首した者は、その刑を減軽し、または免除する。
一 別表に掲げる罪のうち、死刑または無期もしくは長期10年を超える懲役もしくは禁錮の刑が定められているもの 5年以下の懲役または禁錮
二 別表に掲げる罪のうち、長期4年以上10年以下の懲役または禁錮の刑が定められているもの 2年以下の懲役または禁錮
2 前項各号に掲げる罪に当たる行為で、テロリズム集団その他の組織的犯罪集団に不正権益を得させ、またはテロリズム集団その他の組織的犯罪集団の不正権益を維持し、もしくは拡大する目的で行われるものの遂行を2人以上で計画した者も、その計画をした者のいずれかによりその計画に基づき資金または物品の手配、関係場所の下見その他の計画をした犯罪を実行するための準備行為が行われたときは、同項と同様とする。
(※太字部分は今回設ける罪を定義している主な部分。別表は別掲)
■「共謀罪」の対象となる法律と罪名一覧
【刑法】内乱等幇助(ほうじょ)▽加重逃走▽被拘禁者奪取▽逃走援助▽騒乱▽現住建造物等放火▽非現住建造物等放火▽建造物等以外放火▽激発物破裂▽現住建造物等浸害▽非現住建造物等浸害▽往来危険▽汽車転覆等▽あへん煙輸入等▽あへん煙吸食器具輸入等▽あへん煙吸食のための場所提供▽水道汚染▽水道毒物等混入▽水道損壊及び閉塞(へいそく)▽通貨偽造及び行使等▽外国通貨偽造及び行使等▽有印公文書偽造等▽有印虚偽公文書作成等▽公正証書原本不実記載等▽偽造公文書行使等▽有印私文書偽造等▽偽造私文書等行使▽私電磁的記録不正作出及び供用▽公電磁的記録不正作出及び供用▽有価証券偽造等▽偽造有価証券行使等▽支払用カード電磁的記録不正作出等▽不正電磁的記録カード所持▽公印偽造及び不正使用等▽偽証▽強制わいせつ▽強姦(ごうかん)▽準強制わいせつ▽準強姦▽墳墓発掘死体損壊等▽収賄▽事前収賄▽第三者供賄▽加重収賄▽事後収賄▽あっせん収賄▽傷害▽未成年者略取及び誘拐▽営利目的等略取及び誘拐▽所在国外移送目的略取及び誘拐▽人身売買▽被略取者等所在国外移送▽営利拐取等幇助目的被拐取者収受▽営利被拐取者収受▽身の代金被拐取者収受等▽電子計算機損壊等業務妨害▽窃盗▽不動産侵奪▽強盗▽事後強盗▽昏酔(こんすい)強盗▽電子計算機使用詐欺▽背任▽準詐欺▽横領▽盗品有償譲受け等
【組織的犯罪処罰法】組織的な封印等破棄▽組織的な強制執行妨害目的財産損壊等▽組織的な強制執行行為妨害等▽組織的な強制執行関係売却妨害▽組織的な常習賭博▽組織的な賭博場開張等図利▽組織的な殺人▽組織的な逮捕監禁▽組織的な強要▽組織的な身の代金目的略取等▽組織的な信用毀損(きそん)・業務妨害▽組織的な威力業務妨害▽組織的な詐欺▽組織的な恐喝▽組織的な建造物等損壊▽組織的な犯罪に係る犯人蔵匿等▽不法収益等による法人等の事業経営の支配を目的とする行為▽犯罪収益等隠匿
【爆発物取締罰則】製造・輸入・所持・注文▽幇助のための製造・輸入等▽製造・輸入・所持・注文(第1条の犯罪の目的でないことが証明できないとき)▽爆発物の使用、製造等の犯人の蔵匿等
【外貨偽造法】偽造等▽偽造外国流通貨幣等の輸入▽偽造外国流通貨幣等の行使等
【印紙犯罪処罰法】偽造等▽偽造印紙等の使用等
【海底電信線保護万国連合条約罰則】海底電信線の損壊
【労働基準法】強制労働
【職業安定法】暴行等による職業紹介等
【児童福祉法】児童淫行
【郵便法】切手類の偽造等
【金融商品取引法】虚偽有価証券届出書等の提出等▽内部者取引等
【大麻取締法】大麻の栽培等▽大麻の所持等▽大麻の使用等
【船員職業安定法】暴行等による船員職業紹介等
【競馬法】無資格競馬等
【自転車競技法】無資格自転車競走等
【外国為替及び外国貿易法】国際的な平和及び安全の維持を妨げることとなる無許可取引等▽特定技術提供目的の無許可取引等
【電波法】電気通信業務等の用に供する無線局の無線設備の損壊等
【小型自動車競走法】無資格小型自動車競走等
【文化財保護法】重要文化財の無許可輸出▽重要文化財の損壊等▽史跡名勝天然記念物の滅失等
【地方税法】軽油等の不正製造▽軽油引取税に係る脱税
【商品先物取引法】商品市場における取引等に関する風説の流布等
【道路運送法】自動車道における自動車往来危険▽事業用自動車の転覆等
【投資信託及び投資法人に関する法律】投資主の権利の行使に関する利益の受供与等についての威迫行為
【モーターボート競走法】無資格モーターボート競走等
【森林法】保安林の区域内における森林窃盗▽森林窃盗の贓物(ぞうぶつ)の運搬等▽他人の森林への放火
【覚醒剤取締法】覚醒剤の輸入等▽覚醒剤の所持等▽営利目的の覚醒剤の所持等▽覚醒剤の使用等▽営利目的の覚醒剤の使用等▽管理外覚醒剤の施用等
【出入国管理及び難民認定法】在留カード偽造等▽偽造在留カード等所持▽集団密航者を不法入国させる行為等▽営利目的の集団密航者の輸送▽集団密航者の収受等▽営利目的の難民旅行証明書等の不正受交付等▽営利目的の不法入国者等の蔵匿等
【旅券法】旅券等の不正受交付等
【日米地位協定の実施に伴う刑事特別法】偽証▽軍用物の損壊等
【麻薬及び向精神薬取締法】ジアセチルモルヒネ等の輸入等▽ジアセチルモルヒネ等の製剤等▽営利目的のジアセチルモルヒネ等の製剤等▽ジアセチルモルヒネ等の施用等▽営利目的のジアセチルモルヒネ等の施用等▽ジアセチルモルヒネ等以外の麻薬の輸入等▽営利目的のジアセチルモルヒネ等以外の麻薬の輸入等▽ジアセチルモルヒネ等以外の麻薬の製剤等▽麻薬の施用等▽向精神薬の輸入等▽営利目的の向精神薬の譲渡等
【有線電気通信法】有線電気通信設備の損壊等
【武器等製造法】銃砲の無許可製造▽銃砲弾の無許可製造▽猟銃等の無許可製造
【ガス事業法】ガス工作物の損壊等
【関税法】輸出してはならない貨物の輸出▽輸入してはならない貨物の輸入▽輸入してはならない貨物の保税地域への蔵置等▽偽りにより関税を免れる行為等▽無許可輸出等▽輸出してはならない貨物の運搬等
【あへん法】けしの栽培等▽営利目的のけしの栽培等▽あへんの譲渡し等
【自衛隊法】自衛隊の所有する武器等の損壊等
【出資法】高金利の契約等▽業として行う高金利の契約等▽高保証料▽保証料がある場合の高金利等▽業として行う著しい高金利の脱法行為等
【補助金適正化法】不正の手段による補助金等の受交付等
【売春防止法】対償の収受等▽業として行う場所の提供▽売春をさせる業▽資金等の提供
【高速自動車国道法】高速自動車国道の損壊等
【水道法】水道施設の損壊等
【銃刀法】拳銃等の発射▽拳銃等の輸入▽拳銃等の所持等▽拳銃等の譲渡し等▽営利目的の拳銃等の譲渡し等▽偽りの方法による許可▽拳銃実包の輸入▽拳銃実包の所持▽拳銃実包の譲渡し等▽猟銃の所持等▽拳銃等の輸入に係る資金等の提供
【下水道法】公共下水道の施設の損壊等
【特許法】特許権等の侵害
【実用新案法】実用新案権等の侵害
【意匠法】意匠権等の侵害
【商標法】商標権等の侵害
【道路交通法】不正な信号機の操作等
【医薬品医療機器法】業として行う指定薬物の製造等
【新幹線特例法】自動列車制御設備の損壊等
【電気事業法】電気工作物の損壊等
【所得税法】偽りその他不正の行為による所得税の免脱等▽偽りその他不正の行為による所得税の免脱▽所得税の不納付
【法人税法】偽りにより法人税を免れる行為等
【海底電線等損壊行為処罰法】海底電線の損壊▽海底パイプライン等の損壊
【著作権法】著作権等の侵害等
【ハイジャック防止法】航空機の強取等▽航空機の運航阻害
【廃棄物処理法】無許可廃棄物処理業等
【火炎瓶処罰法】火炎瓶の使用
【熱供給事業法】熱供給施設の損壊等
【航空危険行為処罰法】航空危険▽航行中の航空機を墜落させる行為等▽業務中の航空機の破壊等▽業務中の航空機内への爆発物等の持込み
【人質強要処罰法】人質による強要等▽加重人質強要
【生物兵器禁止法】生物兵器等の使用▽生物剤等の発散▽生物兵器等の製造▽生物兵器等の所持等
【貸金業法】無登録営業等
【労働者派遣法】有害業務目的の労働者派遣
【流通食品毒物混入防止法】流通食品への毒物の混入等
【消費税法】偽りにより消費税を免れる行為等
【出入国管理特例法】特別永住者証明書の偽造等▽偽造特別永住者証明書等の所持
【麻薬特例法】薬物犯罪収益等隠匿
【種の保存法】国内希少野生動植物種の捕獲等
【不正競争防止法】営業秘密侵害等▽不正競争等
【化学兵器禁止法】化学兵器の使用▽毒性物質等の発散▽化学兵器の製造▽化学兵器の所持等▽毒性物質等の製造等
【サリン人身被害防止法】サリン等の発散▽サリン等の製造等
【保険業法】株主等の権利の行使に関する利益の受供与等についての威迫行為
【臓器移植法】臓器売買等
【スポーツ振興投票法】無資格スポーツ振興投票
【種苗法】育成者権等の侵害
【資産流動化法】社員等の権利等の行使に関する利益の受供与等についての威迫行為
【感染症予防法】一種病原体等の発散▽一種病原体等の輸入▽一種病原体等の所持等▽二種病原体等の輸入
【対人地雷禁止法】対人地雷の製造▽対人地雷の所持
【児童買春・児童ポルノ禁止法】児童買春周旋▽児童買春勧誘▽児童ポルノ等の不特定又は多数の者に対する提供等
【民事再生法】詐欺再生▽特定の債権者に対する担保の供与等
【公衆等脅迫目的犯罪資金処罰法】公衆等脅迫目的の犯罪行為を実行しようとする者による資金等を提供させる行為▽公衆等脅迫目的の犯罪行為を実行しようとする者以外の者による資金等の提供等
【公的個人認証法】不実の署名用電子証明書等を発行させる行為
【会社更生法】詐欺更生▽特定の債権者等に対する担保の供与等
【破産法】詐欺破産▽特定の債権者に対する担保の供与等
【会社法】会社財産を危うくする行為▽虚偽文書行使等▽預合い▽株式の超過発行▽株主等の権利の行使に関する贈収賄▽株主等の権利の行使に関する利益の受供与等についての威迫行為
【国際刑事裁判協力法】組織的な犯罪に係る証拠隠滅等▽偽証
【放射線発散処罰法】放射線の発散等▽原子核分裂等装置の製造▽原子核分裂等装置の所持等▽特定核燃料物質の輸出入▽放射性物質等の使用の告知による脅迫▽特定核燃料物質の窃取等の告知による強要
【海賊対処法】海賊行為
【クラスター弾禁止法】クラスター弾等の製造▽クラスター弾等の所持
【放射性物質汚染対処特別措置法】汚染廃棄物等の投棄等
・「共謀罪」法案を閣議決定=準備段階で処罰、対象犯罪277(時事通信 2017年3月21日)
※政府は21日の閣議で、「共謀罪」の構成要件を改め、犯罪を計画・準備した段階で処罰可能にする「テロ等準備罪」を新設する組織犯罪処罰法改正案を決定した。「共謀罪」を盛り込んだ法案が過去3回廃案となった経緯を踏まえ、謀議だけでは犯罪にならないようにするなど要件を厳格化し、対象犯罪を277に絞り込んだ。今国会での成立を目指す。
2003年に国会承認された国際組織犯罪防止条約を締結するための国内法整備で、政府は20年東京五輪・パラリンピック開催に向けたテロ対策と位置付けている。だが、野党は捜査権乱用の懸念があるとの立場で、今国会最大の対決法案となりそうだ。
・「ムスリム批判は絶対に許されない」移民が侵食するスウェーデンの“パラレル・ソサエティ”化が深刻すぎる(国防省レポート)(TOCANA 2017年3月21日)
※トランプ政権・首席戦略官のスティーブン・バノンがかつて主幹を務めていたニュースサイトが「ブライトバート」だ。右翼的サイトと米国では認識されているが、その「ブライトバート」で先頃、スウェーデンの国防省が最近発表したレポートについての興味深い記事を掲載している。
■「パラレル・ソサエティ」化するスウェーデン
公表されたこの「国防省レポート」は、まず、「ムスリム同胞団のような反民主的組織の排除を目的」に書かれたと述べている。続いて、スンナ派イスラム主義組織のムスリム同胞団がスウェーデン社会内に密かに浸透し、組織や政党を立ち上げ、「パラレル・ソサエティ」を構築しようとしていると主張している。
パラレル・ソサエティとはスウェーデンの文化と融合せずに、イスラム文化をスウェーデンで育む共同体だ。そして、皮肉なことにスウェーデンの「ポリティカリーコレクト」つまり中立性を重んじる文化がある意味災いして、この風潮を支持する様相になっていることを指摘している。さらに記事が訴えている問題点は下記のようなものだ。
「ムスリム同胞団活動家が目指しているパラレル・ソサエティの構築によって、スウェーデンは国家の社会的一体感の面で長期的な問題を抱える」
「アフリカと中東からの移民は親族の招聘や難民のかたちで、今後も継続して増える可能性がある」
「ムスリム同胞団の目標はスウェーデンおよびヨーロッパ全体でイスラム教徒の数を増やすことであり、それによってスウェーデン人とイスラム教徒間でつばぜり合いが起きるであろう」
1828年に創設されたムスリム同胞団は、疑いなく世界最大のイスラム主義組織であり、英国のイスラム評議会およびその他多くのヨーロッパのイスラム機関の主流ともつながりを持っている。しかし同グループは、武装勢力との関係強化を指摘されており、バーレーン、エジプト、ロシア、サウジアラビア、アラブ首長国連邦の政府においては“テロ組織”とみなされている。
■スウェーデンで多文化主義が問題視されたことはきわめて珍しい
問題の「国防省レポート」は、ムスリム同胞団はイスラム教徒とスウェーデン社会における緊張の増大を試みており、政党、NGO、教育機関、その他の市民社会組織をターゲットにしていると訴えている。そして批判はスウェーデンの政治エリートたちにも及び、彼らの移民への「寛容性と容認」を非難している。スウェーデンではイスラム教への批判をすると、「人種差別者」や「イスラム教恐怖症」と見なされる危険があり、その人物が築き上げてきたキャリアさえも奪ってしまうとも述べられているのだ。
スウェーデンでは政府の一機関がこのように自国の自由主義、そして多文化主義をあからさまに批判したのはきわめて珍しいことだ。そのため、評論家はこのレポートをすぐさま「陰謀」と呼び、イスラム教に対して間違ったイメージを植え付けるものだという批判が巻き起こった。マスコミはこのレポートを扇動的に扱い、22人の学者や宗教の専門家は、レポート作成者たちにブログ記事で公開質問も行っている。
このレポートの内容を不快に思うスウェーデンの主要大学の学者たちは「ムスリム同胞団がパラレル・ソサエティを作り出す」と言う考えは過去の研究で既に論破されたはずだと主張。またレポートが、スウェーデン内のムスリム・コミュニティをムスリム同胞団が率いていると断定していることにも反論している。そしてムスリム・コミュニティのほうも多様化しており、イスラム教徒のグループ同士にも競争があることを指摘する。
しかし一方、このレポートの筆者マグナス・ノレル氏は公共放送の「SVT」でこう語った。「彼らがレポートをちゃんと読んだのか疑問です。彼らがこれを認めないと言うなら、私がそれについてできることはあまりないですね。これは証明されている事実ですから」――。
スウェーデンは低出生率と高死亡率のため、労働者不足に悩み、その解決策として1975年から多文化主義的な政策に取り組み始めた。欧州では最も移民を積極的に受け入れてきた国だと言われる。しかし現在は移民政策により治安の悪化、移民保護制度の負担による財政破綻の危機を迎えていることも事実だ。
スウェーデン統計局によると現在、人口の20%近くが、国外にルーツを持つ人間となっている。日本でも労働者不足問題が日増しに切実になっているだけに他人事では済まされない話題といえる。(文=三橋ココ)
・移民問題、日本も当事者 年間34万人、世界第5位(西日本新聞 2017年3月23日)
※日本は、単純労働の外国人受け入れを公式には認めず、移民に関して鎖国的な政策を続ける。だが、留学生や技能実習生の肩書で呼び込んだアジアの若者たちに、低賃金の単純労働を担わせているのが実態だ。国際的な尺度からみても、移民の主要受け入れ国の一つとなっている。
経済協力開発機構(OECD)は統計上、「国内に1年以上滞在する外国人」を移民と定義する。加盟35カ国の外国人流入者数をまとめた「国際移住データベース」から、2014年の1年間における移民の動き(出身国別で1万人以上の流入が対象)を抽出し、世界地図に落とし込んでみた=図表参照。
流入者が多いのは欧州(181万人)、北米(88万人)。アジアも57万人と続き、うち4割以上を日本(24万人)で受け入れていることが分かる。出身国別で1万人未満の流入を含めると日本は34万人に上り、ドイツ(134万人)、米国(102万人)、英国(50万人)、韓国(41万人)に次ぐ。
米国ではトランプ大統領の就任で移民排斥の動きが強まり、欧州連合(EU)も移民受け入れの是非で揺れている。アジアでは国家間や地域間での外国人材の獲得競争が過熱し、奴隷制度をほうふつとさせる過酷労働も表面化。地球規模で人が往来するグローバル化の中で、移民問題は地続きであり、正面からの議論を避けてきた日本も既に当事者となっている。
・「逮捕者のうち4人は韓国籍」と警察庁 沖縄の米軍基地反対運動(産経新聞 2017年3月22日)
※警察庁の白川靖浩官房審議官は21日の参院沖縄北方特別委員会で、沖縄県での米軍基地反対運動に関連して平成27年以降に沖縄県警が威力業務妨害などの容疑で41人を逮捕し、このうち4人が韓国籍だったと明らかにした。「逮捕した4人の国籍はいずれも韓国だ」と述べた。自民党の山田宏氏の質問に答えた。
米軍基地反対運動をめぐっては、東村などの米軍北部訓練場や名護市辺野古の米軍キャンプ・シュワブ周辺での抗議活動参加者による威力業務妨害事件が相次いで発生している。
9日の参院内閣委員会では、警察庁の松本光弘警備局長が「反対運動を行っている者の一部には極左暴力集団も確認されていると承知している」と指摘し、反対運動に過激派が関与している実態を明らかにしていた。
・米ユダヤ系施設に爆破予告容疑、ユダヤ人の男を逮捕(朝日新聞DIGITAL 2017年3月24日)
※米国内のユダヤ系コミュニティーセンターなどへの爆破予告に関与した疑いが強まったとして、イスラエル警察は23日、同国内のユダヤ人の男(19)を逮捕した。反ユダヤ主義が背景にある可能性もあり、米連邦捜査局(FBI)が協力して捜査していたが、今のところ動機は不明という。AP通信などが伝えた。
男はイスラエルと米国の両国籍を持つユダヤ人で、警察は少なくとも数十件の爆破予告に関与したとの見方を示した。米国以外に豪州やニュージーランド、イスラエル国内にも脅迫電話をかけた疑いがあるという。精神的な問題を抱えていた可能性があるとの情報もある。発信元をたどりにくくする方法を用いた疑いがあり、警察は男のコンピューターなどを押収した。
ユダヤ系団体・反中傷連盟(ADL)によると、1月以降、米国のユダヤ系のコミュニティーセンターや学校などで150件以上の爆破予告があり、住民らが避難する騒ぎに。ユダヤ教徒の墓地が荒らされる事件も相次ぎ、トランプ米大統領は2月、「反ユダヤ主義の脅迫は恐ろしく、耐えられない」と非難。ヘイトクライム(憎悪犯罪)の可能性があるとして、関連団体が危機感を募らせていた。
・統一教会が分裂、逮捕者も 桜田淳子の役どころ(週刊新潮 2017年3月16日号)
※ご本人がいくらその影を拭おうとしても、そう、世間の目は決して違わないよぉ~! 来月、都内で“復活コンサート”を開く桜田淳子(58)。新興宗教へ入信後、鳴りを潜める彼女の周囲がいつになく騒がしい。信奉する教団で骨肉の分裂劇が幕を開けたのである。
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激しく赤色灯を回転させたパトカーが向かった先は、都内有数の高級住宅街である渋谷区松濤だった。
幾人もの制服姿の警官が統一教会(現・世界平和統一家庭連合)の本部へ乗り込んでいく。この建物で不退去罪に問われた信者2名が、渋谷署員に逮捕されたのは2月12日のことだ。
桜田淳子が参加した合同結婚式をはじめ、数多の霊感商法や強引な勧誘トラブルで世を騒がせてきた統一教会。2012年に教祖である文鮮明が死去した後、ここ最近になって警察を巻き込む騒動が頻発しているというから穏やかではない。
統一教会問題に詳しいジャーナリストの鈴木エイト氏によれば、
「今回の逮捕劇は、教団を継いだ文鮮明の未亡人・韓鶴子氏の教義に対して、“四男・七男派”信者が抗議する中で起こったこと。後継者を巡るいざこざです」
宗教問題が専門の北海道大学大学院文学研究科・櫻井義秀教授が言う。
「文鮮明の後継者として認められた男子は3人います。三男は全国大学連合原理研究会という学生組織、四男は韓国を主とした事業組織、七男は宗教組織というような棲み分けがあったのですが、父親の死後、子供らが喧嘩別れをしたので、彼らの母親である鶴子氏が日本の本部を取り仕切って“主流派”となったのです」
■「教祖を否定」
対する四男と七男は母に対抗すべく手を携え、昨年末に一般社団法人「日本サンクチュアリ協会」を設立した。そんな彼ら“反主流派”を支持する信者による抗議活動は、年明けから始まったと先の鈴木氏が継ぐ。
「当初は本部前に1人で“会長は辞めろ”と書いたプラカードを掲げるだけでしたが、2月には複数人に増えていき、その度に本部職員が警察を呼んでトラブルになっています。それでも反主流派は毎週抗議を続けると意気軒昂ですね」
当の教団に聞くと、
「信徒にとって大切な礼拝を妨害するなど信教の自由を脅かす行為に対して、教会及び信徒を守るために法に基づいて対応しています」(世界平和統一家庭連合広報文化局)
と主張する。一方、逮捕者を出したサンクチュアリ協会の言い分はこうだ。
「文鮮明先生が亡くなられた後、その妻・鶴子さんが教義を変えて“自分がメシアだ”と教祖を否定することを言い出した。そんな鶴子さんを担ぎあげる本部教会はおかしいと抗議しているのです。桜田さんも会員ではありますが、悪い教会のイメージがついてしまえばいい迷惑だと思いますよ」
もはや、何が良くて何が悪いかは常人にとって与り知らぬ話だが、内ゲバ続きの教団にとって桜田淳子の“復活祭”は神風になるという。
霊感商法の被害者救済に取り組む弁護士の紀藤正樹氏が解説する。
「現在の統一教会では“七男派”が支持を集めつつあります。しかし、統一教会の不動産の大部分は宗教法人名義のため、結果的に、未亡人率いる“主流派”が不動産を握っている。衝突は、この遺産争いという面があります。桜田淳子さんは、現在も“主流派”に属して活動していると聞いています。来月行われるステージは、外部に対する広告塔としてだけではなく、内部の引締め、つまり“主流派”の正当性を主張するプロパガンダの意味も大きい」
表舞台から消え去った往年のスターであろうとも、骨肉の分裂劇では今なお役どころあり――のようで。