1977(昭和52)年、作詞家阿久悠さんは
広告代理店が企画したツアーで
さまざまな分野のクリエーターたちと
南太平洋に約20日間の旅をしています。


その旅の中、謎の島イースタ島で
異様な発光体に出会います。


それを見たことで、ピンクレディーの次回作
「UFO」を思いついたと後に明かしていますが、


実はこの旅が縁でつくった曲があります。


タヒチのビーチでウクレレを弾いて歌っていた
写真家の浅井慎平さんの歌に聞き惚れて、
帰りの飛行機の中で同行していた
レコードプロデューサーと浅井慎平さんの
レコードを出そうという話になったそうです。


そしてその2年後
1979(昭和54)年に発売されたのが
阿久悠作詞、宇崎竜童作曲、
浅井慎平の「湘南哀歌」。


レコードジャケットはやはり旅に同行していた
横尾忠則さんが手がけていて、
レコードとしてはなかなか手に入らない
貴重盤になっています。


ほろ苦い青春の感傷がせつなく沁みる詞に
宇崎竜童のテイストが感じられるメロディ、
浅井慎平の素直な歌唱も味がありました。


♪ 緑したたる 鎌倉で
   泣いて別れたあの人は
   今はあいつと結ばれて
   逢うに逢えないひととなる~


登場人物は3人、俺とあいつとあの人。


白と紺の制服の長い髪のあの人は
今はあいつと結ばれ、
3人で写った古い写真を、引き裂いて海へ流す。


♪ 夏が来た
   ほろにがい想い出つれて
   夏が来た
   ただひとり 湘南哀歌


阿久悠さんもこの曲を気に入っていて
自信作ではありましたが、
認知されないまま、
1981(昭和56)年には
清水健太郎のカヴァー盤シングルが発売されます。


湘南らしさでいえば浅井慎平バージョンでしたが、
少ししゃがれぎみの清水健太郎の声が
この曲の雰囲気によく合っていたと思います。



そしてそして、その2年後の
1983(昭和58)年には、
山本譲二によって再びカヴァーされます。


少し演歌ロックという印象が強くなりましたが、
こちらはDAMのカラオケにも配信されていますので
この手の曲が好きな方は、ぜひチェックしてみてください。


この曲、2度あることは3度ある、
ということで、もしももう1度カヴァーされるとしたら
演歌歌手ジェロにぴったりフィットするような気がします。