筒美京平さんで思い出しましたが、

先日、阿久悠さんが、亡くなる前日、

私は阿久悠&筒美京平のゴールデンコンビがつくった

「また逢う日まで」のことにちょっとだけふれていました。


今回は、引き続き筒美京平シリーズということで、

この尾崎紀世彦「また逢う日まで」ではなく、

カップリング曲「帰郷」のことを取り上げてみました。


「また逢う日まで」は前に書いたように、

ズー・ニー・ブーというグループが歌った「ひとりの悲しみ」の詞を

書き換えたものですが、

実は、その前がまだありまして、

はじめはルームエアコンのCMソングとしてつくったメロディだったそうです。


途中でボツになったのでしょうか。


3度目でやっとドカンっときたということになります。


この曲のB面が本日ご紹介の「帰郷」。


「また逢う日まで」の陰でひっそりと、それこそB面の役目を果たしたのです。


そう言えば、「B面」という言葉を知らない世代もいますね。


レコードの時代は、「裏」とか「B面」とかで

メインの曲でない方の面は

おまけ的な印象が今以上にかなり強かったと思います。


さらに昔へ遡ると、A面とB面と歌手が違うケースもあり、

B面に収録された無名の歌手が、

A面のヒットのおかげで急激に有名になったりする

なんてこともあったそうです。


当時、まだ売れない作詞・作曲家が

B面に1曲使ってもらう日を夢見て創作活動を続けていたとか。


そんな人たちを「裏待ち作家」と言ったとかいう話も昔、

聞いたような気がします。


前置きが長くなりましたが、「帰郷」こちらもA面同様、

作詞阿久悠、作曲筒美京平。


「また逢う日まで」で別れた男が

傷心で故郷へ帰るという、

続編ではないかと思わせる内容になっています。


カントリーっぽいバラードのポップス、ちょっと歌謡曲風

といった感じのこの曲、

「想い出のグリーングラス」を意識してるように思えますし、


GSとは違う大人向けのポップスを

つくろうとしていたような意図があったかもしれません。


故郷といっても、あまり日本のふるさとという感じがしない。


阿久悠さんは当時、意識して

歌から感じられる景色を無国籍になるように心がけていたという

言葉通りの仕上がりになっています。


後に世に出す「五番街のマリー」や「ジョニーへの伝言」にも

同じようなコンセプトがあったと考えられます。


朝、人影もない古い駅に降り立つ男。


あせたベンチ、さびたレール、古い写真のように変わらない町。


コーヒーショップも 露地の花屋も

時の流れを知らずにいる。


そんな故郷に傷ついて帰って来たが、

おさななじみや昔の恋人に逢わずに通りすぎたい、

というような内容です。


DAMに配信されたのは、たしか昨年の後半ですから、

この曲も35年を経て甦ったことになります。


私自身も35年前に1~2度くらい聴いただけですっかり忘れていました。


10年くらい後に西村協という歌手が

この曲をまたしてもB面に収録しています。


「また逢う日まで」とは比べられないくらい

インパクトも弱い、渋い曲ではありますが、

興味がある方は、ぜひ、ボックスで流してみてください。