阪急電車の岡本駅近くによく通っていた書店があります。
その日そこで、
『牢屋でダイエット』という題名の平積み小説が、
いきなり目に飛び込んできました。
このエッジの効いたタイトルの小説を書いた
中島らもという作家は、
10歳の時に母親の勧めで、
この本屋のすぐ近くにある神戸市立本山第一小学校に
尼崎の小学校から転入します。
当時この小学校が、
日本で有数の超進学校である灘中の合格率が高かったからです。
その結果、灘中に8番の成績で入学した彼曰く、
その頃の自分は
「友人からの遊びの誘いを断って偉人伝を読む嫌なガキだった」
と云います。
2003年2月に
「オランダで尻から煙が出るほど大麻を吸ってきた」
と大阪のラジオ番組で公言したところ、
その数日後に大麻取締法違反などで逮捕された上、
冷蔵庫から干からびたマジックマッシュルームも見つかります。
大阪地方裁判所での初公判では
弁護士から自重するよう求められていたにも関わらず
持論の「大麻開放論」を展開して、
その逮捕劇から牢屋生活までを題材にして書かれたのが
『牢屋でダイエット』です。
そして今、著者が2004年に急逝直前まで書いていた、
『ロカ』という近未来私小説を読んでいます。
遺作となったこの本の中で、酒と大麻と鮟鱇(あんこう)鍋
を愛する主人公がマリファナを吸いながら、
大麻取締法を考察している内容が興味深いので転載します。

——私は今犯罪を犯している。厚生労働省による“大麻取締法”。これはマッカーサーの指示の元に無理矢理押しつけられたものだ。しかし進駐軍の言うことだからそのまま立法化した。日本人がマリファナを吸い出したのは一九六〇年代に入ってからだ。しかしマリファナというものは全く無害だ。これは一九七〇年代のカーター大統領の調査によってはっきりと証明されている。無害どころか有益な薬草でもある。まず緑内障に卓効がある。癌、エイズ、多発性硬化症、痛みや吐き気、食欲不振などが通常の薬では治らず副作用のみ強いとき、マリファナはこれらの苦痛を緩和してくれる。
オランダにはもともと“コーヒーショップ”というマリファナ、ハシシュ売り場がごまんとあるのだが、今年の秋からは薬局でも買えるようになった。イギリス、ベルギーも今年解禁になった。アメリカでは現在六州が州法で認可している。アメリカには合議制というものがあって、ある議題に対して州民が投票する。現在十五の州でマリファナを解禁するべきだ、という結果が出ている。これが二十五州になると国の議会に出さなければいけなくなる。解禁になるのは明白だ。そのとき日本の立法はどう対処すればよいのだろう。おろおろするに違いない。これまでに逮捕し刑務所にぶち込んできた善男善女にどうやって詫びを入れるのだろう。「吸いません」とでも言うのだろうか。
JTがマリファナを売ればいい。一兆円産業になる。それをどうにかして厚生年金に回せばいいのだ。GNPはだいぶ落ちるだろう。ジャパンバッシングに遭わなくすむ。暴力団への資金源も減らすことができる。だいたいが大麻取締法というのは“戦争”のためにできた法律なのだ。マリファナを吸うと人は平和でおだやかな気分になる。これでは人殺しはできない。ためにコカイン、シャブなどのハイになる薬物は見て見ぬ振りをし、ヘロイン、マリファナなどのダウナー系にものは規制したわけである。憲法九条によって日本は戦争をしないことになっている。そこに大麻取締法を押しつけるなどはナンセンスの極みである。酔っ払ってケンカになり、相手を刺した例は枚挙にいとまがないが、マリファナを吸って相手を殺しました、なんて例は一件もない。その解禁の日を待って後十年くらいは生きてみようかというのが私の目論見だ——