満たされない心、傷ついた心の正体とは? | 創造する知性 金と表現と魂の交差点
お盆休みは、いかがでしたでしょうか。

私は実家で墓参りをし、
普段と変らないリズムで過ごしていました。


お陰さまで80歳を超える父母は、
いまでも夫婦喧嘩をするくらい元気(笑)で、

相変わらずだなと、
はじめの数日は目をほそめて眺めていれても、
それが3日経ち4日経ちしてくると、
ストレスとなりイヤな気持ちが蓄積してきます。


しかしこうした気持ちが生じてくるのも、
脳の中で構築した自分の信念がそうさせている
ことが理解出来ると、

うまく距離を置けるようになって、
お互いを傷つけ合わずに済むようにもなります。



では一体、
満たされない心や傷ついた心の正体
とは何なのでしょうか?


その正体を、
会報誌「天路くらぶ通信6月号」に掲載した
苫米地英人『「イヤな気落ち」を消す技術』より
抜粋・加筆した内容を一部転載して解説します。




いきなり、

「あなたの独りよがりな“信念”が強い怒りを生み出している」

このように言われて、
腹立たしく感じる人は多いと思います。


相手のことを許せないと思う気持ちは、
どんなケースも

「自分は相手にこれだけのことをやってきたのだから、
自分の思いどおりになって当然だ」

という考えから生まれます。


そのとき、あなたの頭の中では、それが正しいことであり、
そうあらねばならないという“信念”があります。

その信念を否定されることによって、
「決して許せない」という強い怒りが湧きます。

そうした考えの根っ子には、
必ず「自分はつねに正しい」という認識があるはずです。


逆に
「自分は間違っているかもしれない」
「相手のほうが正しいかもしれない」
という考えはほとんどありません。


しかし、冷静に考えてみると、
相手が必ず自分の思いに応えなくてはいけないという法律が、
いったいこの世界のどこにあるのでしょうか。

また、常に自分のほうが正しいという評価は、
いったい誰が下してくれるのでしょうか。



●イヤな記憶ばかりが蘇るわけ


過去の辛い出来事や悲しい記憶を持たない人は、
よほど希有な存在です。

そもそも人間は、
イヤな出来事をよく記憶するようにつくられています。

とくに強烈な怒りや悲しみなどの情動をともなう体験をした場合、
人間の脳はことさら強くそれを記憶にとどめようとします。


その理由は、次に同じようなことが起こりそうなときに、
それを避けなければならないからです。

なぜ避けなければいけないのか。
そこに生命のリスクがあると感じるからです。


イヤな出来事を記憶することがなければ、
私たちはせっかくそれを体験しておきながら次も同じ轍を踏むことになり、
生命のリスクにさらされつづけてしまいます。

「死んでしまう」ことはないにしても、
厳しい生存競争に勝ち残ることはできなくなるでしょう。

だから、私たちの脳は、
イヤな出来事をよく記憶するわけです。


ところが、自ら獲得したその能力によって、
人間はかえって大きな苦悩を抱え込むケースが少なくありません。

辛い記憶や悲しい記憶は人を過去の出来事に縛りつけます。
そして、抱える苦悩があまりにも重くなれば、
それは人が未来へと前進する力を奪っていくでしょう。

辛い記憶、悲しい記憶に強烈に囚われてしまうと、
過去ばかりをふり返り、過去の出来事と闘おうとする人が生まれます。


本来、
私たちが目を向けるべきは未来のことのみのはずです。
また、もはや存在しない過去と戦って、
それに打ち克つこともできません。

にもかかわらず、
過去に拘泥するあまり、活力を奪われ、トラウマを抱え、
精神的に病んでしまうということが、人間には起こります。

とりわけ現代人は、
過剰な欲望を抱くように仕掛けられていますから、
イヤな出来事の記憶に囚われる傾向はますます強まっているように
思います。



●海馬と扁桃体がイヤな記憶を増幅させている


かつてアダルトチルドレン問題にスポットライトが当てられた時代、
ケースワーカーや心理療法家は、
精神的な問題を抱えるアダルトチルドレンのメンタルケアとして、
彼らが過去に受けた虐待などの体験を直接取り扱おうとしました。

そのとき、
同じような境遇に育ち、同じような問題を抱えた人たちが集まって、
自分の体験をみんなに話して聞かせるというグループセッションが
開かれていました。

しかし実は、イヤな記憶から自分を解放するために、
過去のイヤな記憶に働きかける方法は、
脳の仕組みから見て、決して効果が高いとはいえません。

実際、たとえその記憶がどんなにイヤな記憶であったとしても、
それそのものに人間を過去の出来事に拘泥させる力はありません。

トラウマを取り除いたり、
脱洗脳のために記憶を書き換えたりする処置をプロが施す場合にも、
側頭葉に収められた記憶に直接働きかけることはまず行いません。


記憶を出し入れする仕組みは、側頭葉ではなく、
海馬と扁桃体と呼ばれる部分の働きによって生み出されています。
どちらも大脳辺縁系というどちらかといえば古い脳に属している
部分です。

一般に海馬は、
しばらくの間だけ覚えておけばいい情報を一時的にためておく場所
として知られています。

一方、扁桃体は、海馬に働きかけ、
それを出し入れする記憶を増幅させたり弱めたりする機能を持って
います。

扁桃体が海馬に「強く思い出せ!」と命じると、
人間は過去の出来事を強烈に思い出すわけです。


私たちがイヤな記憶に囚われるのは、
海馬と扁桃体が増幅の連携プレーをくり返す結果、
そのイヤな記憶が前頭前野に認識のパターンをつくるからです。

また、イヤな記憶というのは我々が「エピソード記憶」
と呼ぶ一連の出来事の記憶であり、
前帯状皮質、尾状核といった部位も連携プレーに参加します。

辛い記憶、悲しい記憶の認識パターンが前頭前野につくられることで、
「どうしても許せない」とか「思い出すだけで身ぶるいする」など、
嫌な出来事に囚われる心の状態が生み出されるわけです。

くり返し自らを襲うイヤな記憶、
それがもたらす自縄自縛、捨て鉢的で邪悪な考え。
それは、側頭葉に収められたイヤな記憶ではなく、
海馬と扁桃体、そして前頭前野につくられた認識のパターンによって
生み出されているということです。