保坂正康氏の「昭和の怪物七つの謎」を読みました。

 氏の独自の取材による戦前の所謂指導者のレポートである。

石原莞爾、東条英機、瀬島龍三らのレポートである。

 氏は東条が陸軍大臣となり、首相となった日本が不幸であると断じる。

 東条は、戦闘機を打ち落とすのは何かと学生に問い、精神力で打ち落とすと答えた。この手の人物は氏が述べている様に決して人の上に立ってはいけない。

 石原莞爾は、226事件が起きた時、厳戒司令部の参謀として、事を起こした青年将校に毅然とした態度で接した。又、皇道派の青年将校に担がれた真崎甚三郎は、226事件発生当時は、青年将校の気持ちはわかるとしながら、天皇の態度が決起将校の鎮圧であるわかると、手のひらを反す様に決起将校から離れた。石原は、そのような真崎とは食事誘いを断固はねつけた。

 瀬島龍三の項では、陸軍官僚としての狡猾さを氏は見抜いている。瀬島とのインタビューでは、瀬島が要点をわざとずらして返答する事は陸軍官僚の伝統である。台湾沖海戦の幻の戦勝を偽りだとした堀栄三の報告を瀬島が個人的に握りつぶした。そのことを氏に問われてもあいまいな返事に終始する。おまけに瀬島のシベリヤ抑留中にソ連のスパイとなった瀬島を指摘している。

 氏の本は子気味の良い論調は大変勉強になる。