何だか、イヤな感じだ。
(何でこの人が、ついて来るのだろう?)
のぞき込む帽子屋の顔を振り払うように、アキは顔をそむける。
「戻ってこないわけが、ないじゃない」
行くのなら、一人で行けば?
アキは心の中でそう思い、カガリの方を向く。
だがカガリは、思いつめた顔をして、
「アキちゃん」
アキの手を、ギュウッと握る。
「ルークさん…一人で大丈夫かしら?」
そうして、心配そうにささやく。
(カガリちゃんは、本当に優しいんだなぁ)
なだめるように、カガリの手を握り返すと
「ルークなら、きっと…大丈夫よ」
なんの根拠もなく、そう返す。
だが帽子屋は、カガリの言葉に大いにうなづくと、
「そうだろ?やっぱり…気になるだろ?」
満足そうな顔をして、ルークの消えた方向を見つめる。
「あ~わかったよ。
行けばいいんでしょ?行けば」
うんざりした顔をして、アキは帽子屋をにらみつける。
「アキちゃん…」
カガリのうるんだ目といき合うと、アキは嫌だとは言えなく
なってしまう。
(ホント、カガリちゃんには、勝てないんだよなぁ)
自分のアキレス腱は、間違いなくカガリちゃんだ…
そうアキは自覚していた。
覚悟を決めると、行動に移すのは早かった。
アキはカガリと手をつないだまま、ダッシュでその岩に近付いた。