「逃げられたかぁ」
さっきまで、鳴りをひそめていた帽子屋が、ずぃっと姿を現す。
「何よぉ~さっさとアリスの陰に、隠れていたくせに!」
アキが、憎まれ口をたたく。
「そうじゃないだろ?
私はこう見えて、平和主義なんだ」
そう言うと、長い手足をヒラヒラと動かして、踊ってみせる。
「なによぉ」
「絶対、違うよね」
アキとカガリは、目を見合わせる。
「でも…ケイタ…また、行っちゃったねぇ」
「うん…」
せっかく、見つけたのに…
アキとカガリからは、ため息しか出ない。
「だけど…これだけ広いお屋敷の中で、どうやって探したらいいの?」
思わず、ケイタの消えた方向を、じぃっと見つめた。
「ねぇ~思うんだけど…
ティンカーベルも、翼のあるものだよね?」
ナイトの後をついて行きながら、ボソッとユウジがつぶやく。
「おっ?」
さすがのショータも、そこまでは考えてはいなかったようだ。
「確かに…そう言われたら、そうだな」
まぁ、違うだろうけどなぁ~と、内心そう思うけれど、
あえて言わない。
「なによ!」
すぐにティンカーベルが聞きつけて、ユウジの頭上をブンブン
と飛び回る。
「私を…あんな魔物と、一緒にしないでよ」
「えっ、どうして?」
ユウジには、その違いが全くわからない。
だが、ティンカーベルはイライラとしながら、ユウジの頭上を
ブンブンと飛び回って、金の粉を辺りかまわず、ぶちまけた。