「あった」

 裕太がお菓子の缶を引っ張り出すと、みんなの前に宝箱を持ってくる

ようにして、両手で抱えて戻ってきた。

その様子を見ると、颯太も先生も、明らかにホッとした顔をする。

もしかしたら、この部屋にはないのかもしれない…と、疑っていたからだ。

互いに目が合うと、共犯者のように、フフッと笑う。

 パカンと音を立てて、裕太が蓋を開けると、古い紙の他にも、

壊れた自転車のかぎとか、以前先生にもらった呼子笛とか、花火の残り

とかが、無雑作に突っ込んであった。

 

「あ~っ、これ!」

 思わず颯太が、懐かしそうに眺める。

それは、二人が死神から逃げていた時に使った、ロケット花火が一本と、

チャッカマン、それに懐中電灯まで入っている。

「よく入るなぁ」

「ユウタって、案外物持ちがいいんだね」

感心したように、颯太がボソッとつぶやく。

「物持ちがいいんじゃなくて…

 丁度引っ越しをするから、バタバタしてて、適当に放り込んだんだ」

ほら、ゴミが入っているだろ?

お菓子の包み紙をつまんで、ゴミ箱に放り投げる。

「そういうもんかなぁ」

颯太は少し、考え込む。

「ボクのは…もうとおに、捨てていると思うよ」

「へぇ~そう?」

「そうだよ!」

 颯太の母さんは、とてもきれい好きだ。

裕太の家と違って、モデルルームみたいにきれいなので、遊びに行くと

とても気を使ってしまう。

しかも真面目で、教育ママなので、よく裕太と遊ぶのを許して

くれるんだなぁ~と、裕太の中では、七不思議のうちの一つだ。

 

 

 

 

 

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