だが…帽子屋の思い切った行動で、その動物の気がそれたのは、
事実だ。
「さぁ~こっちへ」
ルークが、アキに手を引く。
「えっ」
まさか、帽子屋をオトリにするの?
でも…そんなことをしても、本当に大丈夫?
(何だか、あんまりいい作戦じゃあないなぁ)
どうにもスッキリとしない気分で、それでもカガリの手を引っ張る。
「アキちゃん」
カガリもやはり、釈然とはしないようで、もの言いた気に帽子屋を
振り向く。
帽子屋は、思いのほか器用に、カトンボみたいな細い手足を
大きく振り回しているのを…
その動物も気になるのか、しばらくじぃっとその様子を見守っている。
「あっ」
だがすぐに、ドンドン踊りながら進む、帽子屋の後を、追いかけて
行く。
ピョン!
帽子屋がトンボを切ると、その動物もハッハッと息を吐きながら、
惹きつけられるようについて行く。
「なんだぁ?」
急に気が抜けて、ガクンとアキは膝をつく。
「大丈夫か?」
完全に、帽子屋の姿が見えなくなったのを確認すると、ゼペットさんに
聞かずにはいられなかったのだ。
「あれでも、帽子屋は…気を使ったみたいだ」
ルークはアキに、話しかける。
「帽子屋さん…大丈夫かしら?」
やはりカガリも、帽子屋のことが気になるようだ。