「ねぇ~ユウタのじいちゃんは、どこにいるの?」
じいちゃんの部屋の前を通る時、早速颯太が聞いてくる。
「さぁ、わかんないんだ。
何しろ朝早く、どこかに出かけたみたい」
裕太は、さっと部屋の前を通り過ぎると、
「ここです」
客間の引き戸に手をかけた。
「そうかぁ~会いたかったのに、残念だなぁ」
先生まで、じいちゃんの不在を聞いて、残念がる。
どうやら先生は、颯太から、じいちゃんの話を聞かされていたらしい。
颯太は、決しておしゃべりではないけれど、よっぽど気に入ったようだ。
「でも、昼には一度、帰って来るから…」
よっぽどのことがない限り、おそらくそうだろう。
「キミのおじいさんは…とても色んなことを知っていらっしゃる
ようだね」
先生に褒められると、裕太は自分のことじゃあないのだけれど、
何だかうれしくなってくる。
裕太にとっても、じいちゃんは自慢のじいちゃんなのだ。
「そんなぁ~ただのおじいさんですよ」
口では、そう言っているけれど、内心裕太にとっては、自慢の
じいちゃんなのだ。
「是非とも、私の知り合いにも、会ってもらいたいのだが…」
驚いたことに、先生がそんなことまで、さらに言い足す。
「えっ?先生のほかにも、まだ誰か会いに来るんですか?」
これは、大変なことになりそうだ…
裕太は母さんのことが、気になっていた。