「先生?」
そういえば、先生の話を、ジュンペイにしたっけ?
ふいに裕太は、口ごもる。
「その話、先生が言い出したんだろ?」
だが裕太には、ジュンペイに話した覚えがないのだ。
(どこで聞いたんだ?)
「いや、まぁ、まだ…詳しい話は、なにも…」
しどろもどろで、返す。
だが実際に、そうなのだ。
裕太はまだ、先生から具体的なことは何も、聞かされてはいない。
だからこれ以上、話しようがないのだ。
(確かに…そうだよなぁ)
ジュンペイに指摘されるまで、気付かなかったことに、裕太は
反省する。
地図のことで、すっかり頭がいっぱいになっていたのだけれど、
それが言い訳にはならない。
(とっても、大切なことなのに…)
うかつだったなぁ~
ジュンペイに言われたことに、裕太はすっかり凹んでしまった。
「なんだ、それなら、聞けばいいじゃないかぁ」
いともあっさりと、ジュンペイが言う。
「だけど先生は…ここにはいないし」
すぐに会いに行くには、ちょっと距離がある。
「そんなの、電話して聞けば済むじゃないかぁ」
「電話番号なんて、知らないよぉ」
「なら、学校に教えてもらえばいいじゃないか。
それか、裕太の友達に、聞いてもらうとか」
何をグズグズしているのか、理解が出来ない…と、ジュンペイは
ポンポン、裕太に向かって言い放つ。
「そんなにうまく、いくかなぁ」
すっかり自信喪失の裕太は、急にやる気の芽が、しゅるしゅると
しぼんでいくのを感じていた。