「いや」

 ジュンペイは短く答える。

「なんだぁ~」

自分の期待通りの返事が来なくて、裕太はガッカリする。

だがなぜか、ジュンペイは落ち着きなく、キョロキョロとしている。

「どうかした?」

やっぱり、何かあるのか?

裕太は辛抱強く、ジュンペイの答えを待つ。

「いや…」

なぜか、ジュンペイが言いにくそうにすると、周りに人が

いないことを確認して、

「大したことじゃあないんだけど…」

口をモゴモゴさせる。

(ほら、来た!)

待ってましたとばかりに、裕太はジュンペイをじぃっと見つめる。

「あの島には…漁師の間では、不思議な言い伝えがあるそうなんだよ」

だがどうも、ジュンペイの目が泳いでいる。

どうも、言うのをためらっているようだ。

「で、なに?」

焦れた裕太は、どうにかジュンペイから、話を聞き出そうとうながす。

「いや、あそこには…大きな翼を持つ生き物が現れる…というんだ」

「生き物?」

それって、鳥とかじゃあないのか?

ならば、こんなまどろっこしい言い方は、しないだろう…

「そう、生き物だ」

「動物?」

「うん、まぁ、大きなくくりで言えば、動物かなぁ」

何だか、妙な言い方だ。

「言い伝えなんだろ」

だとすると…この世にいない生き物なのか?

「だから、なに?」

ハッキリ言えよ!

ジュンペイらしくない言い方に、裕太は段々イラついてきた。

 

 

 

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