(ヤバッ、人がいたんだ)
裕太はあわてて、ペコリと頭を下げると、ジュンペイのいる方へと
向かう。
「よっ」
裕太に注意した割りには、ジュンペイは大きく手を振り上げて
「こっち、こっち」と手招きをする。
「しっ!」
今度はすぐに、図書委員の女の子に注意される。
声を出さずに、ニヤニヤしながら、裕太が近づく。
すると、閲覧用の机で、ジュンペイは本を広げて、裕太を待ち
かまえていた。
「やっぱり、来たか」
ニヤッと笑って、ジュンペイは裕太を迎え入れる。
「そりゃあ、あんなことを言われたら、来るしかないじゃないかぁ」
声量をおとして、裕太は答える。
「で、何かわかったか?」
それでも何か、見つかったのかもしれない。
ジュンペイの表情が、思いのほか明るかったので、裕太は確かめてみる。
何しろ、このところ新聞でも、テレビでも、競うようにして、
例の無人島のことを取り上げている。
どれもどんぐりの背比べ状態で、さして珍しい話題でもない。
みんなの関心をひいているのは、やはり無人島の位置で…
正確な位置が、未だ解明されていなくて、専門家があぁだこうだと、
議論しているのは、裕太も知っている。
(それにしても、よく脱出できたなぁ~)
その一言に尽きる。
テレビでチラッと見た中学生は、どう見ても、普通の男子、女子中学生に
見えていたからだ。