「この扉を?」

 それにしても、勝手に開けても、いいものだろうか?

さすがに裕太は、気が引けている。

例え古びてはいても、ホコラはホコラだ。

そんなことをして、バチは当たらないものだろうか。

まさか自分の家みたいに…気楽な気持ちで開けられるものではない。

『大丈夫だ。

 これは…あそこにつながっている』

押し殺した声で、リュウタは裕太に向かって話しかける。

 

「えっ、そうなの?」

 まさか…何かが飛び出して来たり、たたられたりはしないよな?

裕太はドキドキしながら、ゆっくりと扉に手を伸ばす。

よく見掛ける神社のお社とは違い、とても質素で、小さな木の箱のような

ものだ。

言われないと、ただの物置か、掘っ立て小屋の類と思って、気付かない

ことだろう。

(まさか…鍵とか、かかっていないよな?)

 そっと手を触れると、何の抵抗もなく、あっさりと開いた。

リュウタの圧を感じて、しかたなく、その扉を大きく開ける。

ポッカリと、小さな空洞が見えた瞬間…裕太の手をすり抜けるよう

にして、リュウタはその空間に、身体をすべり込ませた。

 

(えっ?)

 もちろん、こうなることは、薄々予想はしていたけれど…

まさか本当に入るとは、思っていなかった。

「リュウタ!

 ホコラが、壊れちゃうよぉ!」

ミシミシと、木の枠が音を立てるのを…裕太は悲鳴のような声を

上げた。

 

 

 

 

 

 

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