よく知っている場所?
それは、本当なのだろうか?
のそのそと裕太は、もう少し開けた場所はないか…と、数歩、
歩を進める。
海はここからは、見えない。
民家も、この場所からは、離れているようだ。
山か?
テクテクと歩いて行くと、石の階段が見えてくる。
「あれ?ここは…」
階段に近づくと、古びて壊れそうな、ほこららしきものが
見えてきた。
「えっ?神社?」
…にしては、いつも見る神社とは、違うようだ。
「ねぇ」
クルリと振り返ると、竜は大きな石の所で、身体を休めて
いるようだ。
あの滝に逆らって、ひたすら上ってきたので、だいぶ体力を
消耗したのかもしれない。
「ここって、前からあった?」
裕太自身は、今まで見たことがないのだけれど。
(でも、見落としていただけなのかもしれない…)
『そうだろうなぁ』
リュウタは、大きな目だけを、ギョロリと動かすと、裕太に
向かってまばたきを繰り返す。
『ここは、昔と比べて人が少なくなった分、お参りする人が
いなくなったもんなぁ』
どうやら、ずいぶん昔のことまで、知っているような口ぶりだ。
「へぇ~そうなんだ」
じいちゃんが前に言っていた。
ここは昔は、今よりも子供も倍くらいいて、小学校のクラスも、
2クラスあったそうだ。
「じゃあ、今は?」
みんな、どこに行ったのだろう?
『今は、年寄りばかりだなぁ』
しみじみと、裕太に向かって話しかけた。