「ねぇ、ルシフェル。
私たちと同い年の男の子…見かけなかった?」
いつの間にか、メアリーと黒マントの男がいなくなって、
自分たちだけになってしまった。
その代わり、メアリーが置いて行った、シロクマみたいな犬が
いるだけだ。
「ムダじゃない?
ルシフェルは、メアリーにしか、なつかないんでしょ?」
アキに向かって、カガリがささやく。
「でも…ルシフェルは、私たちの話す言葉がわかるんでしょ?」
だったら何か、知っているのかもしれない。
この際だから、犬だろうか、死神だろうが…利用できるものは、
とことん利用してやれ!というオバサン的思考だ。
さて、反応はどうだろう?
四人はじぃっと、ルシフェルを見る。
だがルシフェルは、ワンともキャンともウーとも言わない。
まるでシロクマのぬいぐるみのように、反応がゼロだ。
「可愛げがないなぁ~」
帽子屋が、フンとソッポを向く。
「あら!やっぱり犬だったら…これでしょ?」
アリスが、ポケットから何かを取り出すと、ヒラヒラとさせる。
無表情だったルシフェルが、ようやくピクッと耳を立てる。
「ほら!」
やっぱりね!
アリスは嬉しそうに、手に持っているものを、ヒラヒラとさせると…
「ルシフェル、お利口ね!
私たちは、ケイタ君という男の子を探しているの。
ちゃんと案内してくれるなら、これをあげるわ」
これみよがしに、その白い何かを、揺らしてみせた。