「なんだ、そのこと?」
アリスはクスッと笑う。
「そりゃあ、そうでしょ?
だって、ここは…寄せ集めの世界。
ホンモノのようで、ホンモノではないのよ」
謎めいた言葉を口にすると、じぃっとアキの顔を見つめる。
「えっ?なんのこと?」
ポカンとするアキの横から、カガリがひょいっと、顔を
のぞかせる。
「あっ」
アリスは両手で、口元を隠すと、
「え~っ、何でもないよぉ」
ごまかすように笑う。
「メアリー様、このままで、よろしいのですか?」
柱の陰から、ひょっこりと、小さな影が現れる。
「別に」
メアリーは、カマを軽く振ると、
「ルシフェル」
自分の忠実な番犬に、声をかける。
メアリーは身体をかがめて、ルシフェルの耳元に口を当てると、
「あの子供たちのことを、よく見張っておいて。
特に…あのメガネの男の子の方だ」
チラリ…と、後ろを振り返る。
ルシフェルは、自分の主人の言うことを、完璧に理解した
かのように、その目を細めて、短く声をもらす。
「メアリー様」
ピョンと、小悪魔が柱から飛び出すと、
「やはり…気にしていらっしゃるのですね?」
嬉しそうに、ピョンと柱の彫刻に飛び乗る。
その柱には、翼のあるもの…の姿が、かたどられているものがあった。