この大切な水を、こぼさないように…と、裕太は慎重に両手で
捧げ持つと、赤い目の竜の像に向かって、深々とお辞儀をする。
「ありがとうございます。
どうかジュンペイを、もとに戻してください」
スラスラと、言葉があふれ出る。
その時一瞬、その竜がまばたきをしたように見えた。
その間も、絶えまなく水があふれている。
こんなに水が出続けたら、この洞窟が水浸しになるのではないか?
急に裕太は心配になる。
もしかしたら、ともう一度竜の赤い目に手を触れる。
すると、それがキッカケなのか、水がピタリと止まる。
「ほぇ~っ」
思わず間の抜けた声が、裕太の口からもれる。
裕太はあわてて口を閉じると、片手に懐中電灯、
もう片っ方に、竹の筒をしっかりと握りしめ、クルリと背を向ける。
『気をつけろよ』
竜が、そう語り掛けてきたような気がする。
裕太はもう一度振り返ると、さっきよりも深々と頭を下げた。
やった!
ついに、手に入れたぞ!
まさかこんなに簡単に、命の水が手に入るとは思っていなかったので、
裕太は小躍りしたくなるくらい、嬉しくなる。
「これで、本当に、ジュンペイが目を覚ますんだな」
本当かどうかは、裕太にはわからないけれど…
裕太はそう信じ込もうとしていた。