まさか…さっきの場所に戻るか?
いや、それだと二度手間だ…
どうしたら、いいのだろう?
裕太は、頭を悩ませる。
それならば、竜の周りに、何かないか…
裕太はグルリと歩き、さらにしゃがみ込む。
コツン!
何かがつま先に当たり、蹴った感触がある。
「なんだ?」
足元を見ると、少し先に、何か黒いものが落ちているのが、目に入る。
裕太は慎重に、それに手を触れる。
「棒?竹?筒?」
拾い上げると、懐中電灯で照らしてみる。
それは、かなりすすけているようだが、竹の筒のように見える。
「えっ、なに?」
それは、さほど大きいものではない。
せいぜい30センチもあったらいいぐらいの、長さだろうか?
竹ぼうきよりも、一回り太いぐらいの直径だ。
「なんだろう?」
手に取って、グルリと回してみたり、ひっくり返してみる。
「これって…もしかして、花入れ?」
よく見ると、取っ手がついていて、斜めに切れ込みが入っている。
その中は、空洞だ。
物は試し…とばかりに、水を受けてみる。
するといい具合に、水が吸い込まれていく。
逆さにしてみると、きれいな水がこぼれ落ちる。
その受け口に、鼻を押し当ててみる。
不快なにおいも、特にしてこない。
「これだったら、いけるぞ」
とにかく一刻も早く、ジュンペイの所へ、持って行ってやろう…
と、竜の口に、もう一度近づける。
冷たい水が、入れ物いっぱいになると、裕太は一口、口に含んでみる。
裕太の乾いたのどに、しみいるように甘味が広がる。