「なに?」
「これって、もしかして」
アキはようやく、気が付く。
(この城は、途中退場を許さないんだ。
入ったら最後…決着をつけるまでは、逃がさないつもりなんだわ)
そのことに思いいたると、ゾクッと身震いをする。
そんなアキの微妙な表情に、気が付いたのか、
「どうやら、この館の主は…
どうしても、ボクたちに会いたいようだな」
ショータが冷静な顔付きで、そう告げる。
何だか…逃げ場を失ったみたいだ。
「なんてことだ!」
帽子屋は、ひと声そう叫ぶと、その場にしゃがみ込む。
巨大なツルは、ユラユラと揺れながら、オジサンのすぐ側で、
止まっている。
おそらく、一歩でも前に進むと、それを見はからって、
再び襲いかかってくるのだろう。
「あ~もう!好きにしてくれ」
帽子屋は、やけになってわめく。
「帽子屋さん、私たちと一緒に行きましょ」
遠巻きで見守るアキの側をすり抜けて、アリスが話しかける。
「何でだ?
私は、魔法も使えないし、何の役に立たないぞ」
座り込んだ姿勢のまま、帽子屋は腕組みをする。
「いいから、いいから!
ここにいたら、また襲ってくるかもしれないでしょ」
ニコニコしながら、アリスは帽子屋の腕を引っ張る。
「そうか?まぁ~そうかもなぁ」
思いのほか、立ち直りも早いようだ。
アリスの手を借りて、立ち上がると
「よぉし、こうなったら、いっちょ、やってやるかぁ」
威勢のいい声を上げた。