(どうして、こんなことになったんだ?)
あのドローンは?
もしかして、あれを本当は、壊してはいけなかったのだろうか?
そもそもこれは、本当に…現実なのだろうか?
裕太は、重たくなった足を、それでもトボトボと持ち上げる。
真っ暗な洞窟の中を、懐中電灯の光が、ゆらゆらと揺れる。
まさか…道を間違えたのだろうか?
こんな所を、本当に通ったのだろうか?
さっきからずっと、そんなことをグルグルと、考え続けている。
「ジュンペイ…ホントは、寝ているだけなんだろ?
いい加減に起きて、一緒に帰ろうよ」
ついに裕太は、音を上げる。
普段は、弱音などはかない性格だ…と、自分でもそう思っていた
けれども。
「帰っちゃおうかなぁ~このまんま!
きっと、何かの間違いだよな」
気が付けば、さっきまでいた竜の桃源郷は、ドンドン遠ざかっている。
いつの間にか、周りが真っ暗な岩だらけのトンネルに、変化している。
上がったり、下がったり、ゴツゴツした岩の上を歩いているうちに、
段々マメができてきたのか、足先がジンジン痛くなる。
お気に入りだったスニーカーも、すっかり擦り切れて、茶色く
変色している。
「あーあ」
それに気が付くと、途端に、やる気がそがれていく。
「もう…こんな洞窟に入るのはやめよう。
大体母さんが、勝手に探検ごっこをするなって、いつも言っている
じゃないかぁ」
話す相手がいないせいか、さっきからブツブツと一人で文句を
言い続けている。
もしも出口が、目の前にあったら…すぐに飛び出していたかもしれない。