「ねぇ、オジサンは今まで、どこにいたの?」
アキはさり気なく、探るような目付きで、オジサンの背中を
追いかける。
トントンと階段を上りながら、オジサンは前を向いたまま、
「どこにって…ここにいたって、言っただろ?」
淡々と答える。
何もやましいことなどしていない…と、やけに協調して言っている。
それがかえって、怪しく感じる。
「でも…カボチャとか、お化けが襲って来なかった?」
自分たちは、ノワールに連れ出されていたので、その時、
何があったのかは、わからないのだ。
「だから、探し物があったって、言っただろ」
あくまでも、白を切るつもりなのだ。
(なんて、白々しい…)
案外この人は、手ごわいのかもしれないな…
ふと、アキはそう思う。
「で、ホントに見つかったの?」
まさか…この人も、敵なのだろうか?
さらにアキの中で、疑惑が深まる。
「見つかったって、さっき言っただろ」
しつこいなぁ~と言わんばかりに、トン!と大きな音を
立てると、クルリと振り返る。
その顔は、イラついた表情を浮かべている。
「じゃあ…」
アキが声を上げるのを、
「アキ」
その背後で、ショータが彼女の肩に手を置いて、やめるようにと、
うながす。
「そうなんですか?それは、どこで?」
にこやかな表情を浮かべて、オジサンをまっすぐに見つめる。
「どこって…」
さっきまで、スラスラと話していたオジサンが、たちまち
口ごもる。
「それは…上の方だ」
何だか、モゴモゴと口の中で言った。