まさかまた、ここへ舞い戻ってくるとは…
裕太は再び、あの不思議な聖域へと戻って来た。
やはりシンと静寂で、清らかな空気に満ちている。
ジュンペイのことは、そのまま竜にまかせて、裕太はあの大きな岩
の所へやって来た。
『よく戻って来たなぁ』
早速、あの深みのある穏やかな声が、裕太を出迎えてくれた。
裕太はゴクリ…と、唾を飲み込むと、
「ジュンペイをもとに戻すには、どうしたらいいんですか?」
出来るだけ丁寧に、声のする方向に向かって、問いかける。
すると、目の前の大きな岩が、ゆっくりと盛り上がりを見せると、
『まぁ、そんなに焦るな』
物事には順序がある、と裕太をなだめる。
てっきり、木の茂みの辺りにいる…と思っていたので、
裕太はあわてて、その大きな岩山に視線を向ける。
ズッシリとした大きな体が、重たそうにズルズルと方向転換すると、
『まずは、その体を清めなさい』
低い声が返って来る。
「清める?だれの?」
まさか、ジュンペイを?
意識がないジュンペイに、そんなことをしても、大丈夫なのだろうか?
裕太はすっかり、不安になる。
「でも…」
竜の大きな目を見つめる。
『大丈夫だ。
あの泉は…不思議な力が宿っている。
きっと、あの子の力にもなるだろう」
おごそかに、そう返す。
『あの子の器は、今空っぽの状態だ。
生命の水で、満たしてやらないといけない』
キッパリとそう告げた。