一行は横一列に並んで、じぃっと目の前の城を見上げる。
「確かに…これは、あの森にあった城だ」
ゼペットさんがつぶやく。
「あっ、やっぱり、そうですよね?」
アキが思わず話しかける。
「しぃっ!」
ショータがすぐに、二人をたしなめる。
「耳を澄ませるんだ。
何か、聞こえてこないか?」
真剣な面持ちで、辺りを見回す。
「気のせいだろ?」
ヘラヘラしながら、帽子屋はからかうように言う。
「黙って!オジサンを置いていくよ」
ティンカーベルが、帽子屋の前をビュンと横切る。
「おい、やめろよ」
クシャン!
盛大に、クシャミをすると…すぐに一同から、
「しぃっ!」
とがめる目付きで返される。
「わかった、わかったよ」
シュンと鼻をすすると、帽子屋はおとなしく、アリスの後ろに
隠れる。
不自然なくらいに、何も聞こえてこない。
「気のせいなんじゃないか?」
こりもせず、再び帽子屋が声を上げる。
ナイトがスッと、帽子屋の前に立つ。
その手には、スラリと長い剣が握られている。
ひぇっ!
帽子屋は、声にならない悲鳴をもらすと、グッと帽子を目深に
かぶる。
「その…物騒なものを、引っ込めてはくれないか?」
首を縮めて、おそるおそるナイトに、話しかける。
ナイトは剣をちらつかせたまま、木の茂みを見上げる。
「アイツか?」
ボソリとつぶやく。
木の茂みが、ガサガサと揺れる。
「いいか、ここからは…何が襲ってくるか、わからない。
みんな、はぐれるなよ」
押し殺した声で、アキたちにそう告げる。
「わかった」
「了解」
「よろしく頼む」
短く答えると、ナイトの後ろに団子状になって、くっついて歩いた。