裕太はなぜか、焦っていた。
この洞窟に入ってから、どのくらいの時間がたったのだろう?
外の世界が見えないせいか、まったく時間の感覚がわからないのだ。
「電池があと…どのくらいもつのだろうか」
ポツンとつぶやく。
(ジュンペイは、そのことに気が付いているのだろうか?)
このままだと、二人とも遭難してしまう…と、不安になって
きたのだ。
さらに裕太自身も、とても疲れてきていた。
岩がゴロゴロしている中を、上り下りするのは、平坦な道を歩くのよりも、
よっぽど体力を消耗するのだ。
「だけどユウタは…ここまで、どうやって来たんだ?」
なぜかジュンペイは、とても落ち着いた声で、裕太に尋ねる。
「それは…」
何と答えよう…
裕太は、言葉をつまらせる。
「竜に、乗せてもらったんだ」
ウソのような、本当の話を思い切って打ち明けるけれど…
果たしてジュンペイが、信じてくれるかどうかは、とても
怪しい。
だが思いのほか、ジュンペイの反応が、あまりにも薄い。
「へぇ~そうなんだ」
本当のところ、どう思っているのかは、裕太にはわからないのだ。
なのでさらに、裕太は思い切って口を開く。
「泉のある所に来たんだ。
そうしたら、泉の奥に、ジュンペイが見えて…
竜がその中に目掛けて、飛び込んだんだ」
我ながら、まったく作り話のようだ…と、しゃべりながらも
裕太はそのことが気にかかる。