「キミは、とっても…素直な子だなぁ」
どうやら裕太のことを、気に入ったらしい。
「この竜は、まだ子供だけど…十分キミの役に立つはずだ」
保障するよ。
やけに自信満々の声で、その人は応じる。
「あの!」
思い切って、裕太は声を張り上げる。
「あなたの姿を、一度でいいから、見せてもらえませんか?」
失礼だ…とわかってはいたけれど、目に見えない相手と話をするのは、
どうしても実感がわかない。
暗闇に向かって、裕太は声を放つと…
(もしかして、まずいことを、言ったかなぁ)
すぐに反省した。
どう考えたって、こんなことが、あるわけがない。
だが裕太は、まだ、半信半疑だ。
「そうだなぁ」
その人の声が、徐々に遠ざかっているような気がする。
(まさか…怒っていなくなってしまうのだろうか?)
急に不安になるけれども。
「それなら…上の方を見てごらん」
短い沈黙の後、ようやく返事が返ってきた。
「えっ…」
上の方?
上の放って、どの辺りだ?
見当もつかないまま、裕太は漠然と、自分の真上の辺り見上げる。
暗闇の中に、キラリと何かがきらめいた後…
それは一瞬にして、姿を消した。
(まさか…いなくなった?)
ふいに、気になったけれども。
(本当に、あれは、竜神だったのだろうか?)
裕太は、竜にしがみついたまま、呆然と上を見上げていた。