「何って…あれは…なに?」
ここからは、ハッキリとは見えない。
何か黒い影のようなものだ。
のぞき込む裕太の脇を、スルリとリュウがすべり込んでくる。
「あ~っ、ホントだ!誰か、いる!」
リュウも、無邪気な声を出す。
「やっぱり、見える?」
見間違いでは、ないんだなぁ。
裕太はホッとすると、もう一度、中をのぞき込む。
よく目をこらしてみると…泉の向こうで、誰かがこちらを
うかがっているように見える。
「えっ?だれ?」
それは、暗い穴の中で、誰かがこちらを見上げているように見える。
長老は、じぃっと裕太の方を向くと、
「よく見てごらん。
キミは…この人のことを、知っているんじゃあないか?」
それは、確信に満ちた声だ。
(えっ?何を言っているんだ?)
裕太は、半信半疑だ。
大体長老は、自分の何を知っているのだろう?
だがそれでも、集中して、さらにのぞいてみる。
すると段々、中の様子が見えてきた。
泉の奥にちょっとした空間があり、そこに自分と同じくらいの
男の子が立っている。
そうして口をパクパクさせて、こちらを向いている。
「へっ?」
それに気が付くと、思わず裕太はハッとする。
「えっ、なに?」
男の子がこちらに向かって、大きく手を振っている。
「えっ?まさか…ジュンペイ?」
そんなバカな…と思うけれども。
「でも…なんで、ジュンペイがここに?」
幻か?
あり得ない!
裕太は、自分の目がおかしいのか、と気になった。