「どういうこと?」
人間をからめとるくらいに、大きな蜘蛛の巣って、あるのか?
裕太はそう思うけれど…
「まぁ、それも物のたとえだ。
本当は、そんな網って、ないんだけどね」
長老は、付け足すように言う。
何が何だか、今一つよくわからないけれど…
こんなところに、そんなワナみたいなものがある、というのか?
裕太はこの極楽のような場所を、見回す。
天井では、サラマンダーが火を噴き、
極楽鳥が、歌を歌い、
つる性植物が、森のように、自由自在に枝葉を広げている。
「じゃあ…どうしたら、いいんですか?」
今の所、頼みの綱は、この長老だけだ。
裕太は違和感には目をつぶって、我慢して尋ねる。
ズルリ…と長い体を、器用に動かすと、長老は泉の方に近づく。
「見てごらん」
泉の淵で立ち止まると、裕太に向かってうながす。
「えっ?」
裕太は今でもまだ…これは、夢なんかじゃあないか、と思う。
(もしそうだとしたら、ずいぶんリアルな夢だ)
まさか、泉の中をのぞいたら…そこに寝ている自分がいるんじゃあないか、
とか、オバケが住みついているんじゃあないか?とか。
それとも、底なし沼のようになっていて、突き落とされたりはしないか…
と、疑う。
いくら見ても、この竜神からは、何の表情も読み取れなかった。