「ねぇ~やっぱり見つからないんだよぉ。
ユウタ!もうあきらめて、その竜の池に行ってみようよ」
ねだるように、リュウは裕太に向かって、甘えた声を出す。
「うーん、あともうちょっと、待ってみようよ」
せめて、あのドローンが、戻って来るまでは…
そう思うけれども。
まったく、物音ひとつ、聞こえてはこない。
シーンと静まり返る洞窟で、リュウは「あーあ」と大きな声を上げると、
「時間の無駄だと思うけどなぁ」
わざと周りに響くくらいの声を出す。
(何でそんな風に、かまえているんだよ)
裕太はムッとする。
「じゃあ…その竜の池に行って、何もなかったら、どうするつもりなんだよ」
つい、ケンカ腰になった。
だが、ここまで来たら、引き下がるわけにはいかない。
「いいよ、それなら…行ってみようか」
ニヤニヤしながら、リュウは裕太に目を向ける。
「あぁ、そうだな」
本当は、待っていたかったのだけれど…
もしもジュンペイが、そこへ向かったのならば、途中ですれ違うだろう…
そう、裕太は期待したのだ。
「よぉし、行くぞぉ」
なぜだかリュウは、張り切った声を上げる。
「リュウタ!案内してくれよ」
そう言うと、リュウは竜の身体を軽くタップする。
「さぁ、ユウタも、早く乗って!」
リュウが手招きをする。
何だか、リュウの口車に、うまく乗せられたような気がするけれど…
「わかった」
さっさと、ジュンペイを見つけて、帰ろう…
そう思い、裕太はリュウの後ろに、体をすべり込ませた。