「やった!」
自分の思い通りになったことを、リュウは素直に喜んでいる。
「ねぇ~この奥って、どうなっているの?」
今にも走り出しそうな勢いに、裕太はあわてて、リュウの肩をぐっとつかむ。
「勝手に飛び出したら、ダメだぞ」
早速リュウに、注意する。
「なんだよぉ~」
図星だったのか、リュウはブスッとした顔で、裕太の顔をにらみつける。
「さっき、ジンさんに言われたばかりだろ?
それとも、やっぱり行くのは止めるか?」
ここぞとばかりに、裕太はリュウにハッキリと言う。
「え~っ、それは、いやだよ!」
すぐさまリュウは、思いっきりしかめっ面をしてみせる。
「ここからは…命の保障はしません。
責任を持って、行動してください」
いつになく、厳しい口調で、ジンさんはリュウと裕太に向かって告げる。
「わかった!」
ペコンとうなづくと、リュウは今にも、飛び出して行きそうな勢いだ。
それをチラリと見てとると、
「リュウ!裕太くんと手をつなぎなさい」
珍しくジンさんは、キッパリとリュウに向かって言い切る。
「え~っ」
さっき約束したはずなのに、そんなことなどもう忘れてしまった、という
顔をして、リュウは不服そうに、口をとがらせる。
「言うことを聞かないと、置いて行くぞ。
さっき、言っただろ」
裕太は心を鬼にして、リュウの手をつかむ。
「ちぇ~っ」
早速リュウはうらめしそうに、ジンさんを見るけれど…
ジンさんは、それを無視するようにして、
「じゃあ、行きましょうか」
さっさと背中を向けた。