「あれは…」
「ウサギよ!」
カガリが叫ぶ。
「おーい、おーい!」
アキも一緒になって、ペガサスに向かって、手を振る。
いきなり動いたものだから、さらに網にからまる。
「ちょっと、アキちゃん!動かないで」
さらにグルンとバウンドして、カガリが悲鳴を上げる。
「三月ウサギが来たからといって、どうなるわけでもあるまい」
オペラグラスを片手に、女王は憎々し気につぶやく。
「それは、どうかな」
ルークはいきなり立ち上がると、網に取り付く。
「だから、ムダだと言っただろ」
女王の鋭い声がかかった時に…
「それは、どうかな?」
すかさず、ショータから杖を奪う。
「あっ」
ルークのあまりの素早さに、完全にショータは、不意を突かれた。
「網が切れなくても…バラは切り倒せるだろう」
さっきまでの穏やかな表情が一変して、鋭い眼光が女王を捕らえる。
「や、止めろぉ~」
急に女王は、弱気な顔になり、あわててルークの背中に取り付く。
一振り
二振り
そのフシギな杖を、数回振り下ろすと…
あっけないほど、その頑丈なバラのフェンスが、打ち壊された。
「ルーク!おまえ、何をする!」
女王が、ルークの首に、その細い腕を巻き付ける。
「やめろ!」
今度はショータが、女王に体当たりをかました。
「それ!」
「よくも、アキとカガリを、こんな目に遭わせたな!」
ショータが、女王の胴体を。
ユウジが、女王の足に、それぞれ取り付く。
「何をするんだ、放せ!」
ジタバタと手を振り回して、ショータたちを引きはがそうとする。
その間にも、ルークは網をはずすと、アキとカガリを助け起こした。