「はぁ~い」
まるで大好きな先生に、叱られた子供みたいに、リュウはおとなしく
首を引っ込める。
「悪いなぁ」
ジンさんは、ポンと裕太の肩に手を置く。
「あの子は、悪気はないはずなんだ」
とりなすように、裕太が言うと
「穴に入るのは、危険だけど…
呼び出すことは、出来るかもしれない」
ジンさんは急に、思いついたように裕太に言う。
「えっ、そうなんですか?」
まさかまた、『あれ』を呼んでくれるのか?
裕太はそのことに、期待する。
「あっ、でも、アイツではなくて…
もっとおとなしいヤツだけどね」
リュウの前では、あえてぼかすように言うけれど、当のリュウは、
気づいているのだろうか?
だがすぐに、ジンさんの言ったことが引っ掛かり、
「えっ」と聞き返す。
あのでっかいヤツではなくて、小さいのもいるのか?
ボンヤリとする裕太に向かって、
「あぁ~」
なぜか訳知り顔で、もっともらしくリュウがうなづく。
(なんなんだ?)
するとジンさんは、はぁ~と大きく息を吐き出すと、
「ちょっと、待ってて」
キュッと髪を結び直すと、ポケットから何かを取り出す。
一体、何が始まるんだ?
裕太がひそかに息を吐いて、じぃっと見守っていると、
「ちょっと、後ろに下がろうか」
タツさんが、裕太とリュウを、ひょいと抱え上げて、後ろに下がる。
ジンさんは、手に持っている鎖を穴に垂らすと、ゆっくりと
勢いをつけて、回し始めた。