「そうだなぁ~確かに、サボローほいほいだな!
ゼペットさんが、そう言った時…かすかに、にぎやかな音楽が
聞こえてきた。
それに合わせて、楽しそうな子供たちの声がする。
「あの音につられたら、ダメだぞ。
あれには、理性を失わせる音が混じっている」
「サブリミナルですか?」
ゼペットさんの言葉を遮るように、ショータが口をはさむ。
「おっ、キミ!中々、頭がいいなぁ~」
ゼペットさんは感心したように、ショータを見る。
話しながら、ベニヤ板で出来た扉に近づいた。
明らかに、作り物感満載の扉だ。
「よし、開けるゾ」
ゼペットさんは、そっとノブに手をかけた。
先ほどまでは、すっかり外界を遮断していたのだが…
いきなり光と音の渦に、巻き込まれたような気がした。
目の前に、移動式のオルガンを乗せた車が止まっていて、
そこでキツネが、子供たちにキャンディーと風船を配っている。
赤、黄、青、ピンク、水色…
七色の風船が、車の周りで浮いていて、子供たちはその周りに
群がっている。
「一つ、ちょうだい」
「ボクにも」
「あ~、押さないで、押さないで!」
にぎやかな音楽に混じって、子供たちの騒ぐ声が聞こえる。
キツネが、パンパンと手を叩くと、
「はーい、慌てないで、慌てないで!
順番に並んで!じゅんばん!」
大きな声を張り上げて、キツネとネコが、子供たちを並ばせる。
「よし、行こう」
ゼペットさんは、アキたちをうながす。
すると…いち早く、キツネはアキたちに気が付くと
「あっ、キミたちも、こっちに並んで!」
さっそくこちらに、手招きをした。