「案外、そうかもしれないなぁ」
ジンさんが、くるりと振り向く。
「エジプトとか、どこかの遺跡とか、昔の建造物って…きれいに
装飾されているのが多いだろ?
ピラミッドみたいな、お墓とか、神殿とか…」
いきなり、とんでもないことを言い出すので、
「ここは、どこだよ。日本でしょ」
比べるにはあまりにも、違い過ぎる…と裕太は思う。
それに、これがお墓だとしたら、お墓の中を歩き回るなんて…
さすがの裕太も、そんな趣味は持ち合わせてはいない。
チラリと、不服そうに見ている裕太に気が付くと、
「あっ、ごめん!
やっぱり、例えが悪かったかな?」
そういう割りには、やけに軽い口調で、ジンさんが話しかけてくる。
一体、どうなっているのだろう?
「もちろん、たとえ話だよ!
ここは、家康のお墓でも、埋蔵金伝説のある場所でもないからねぇ」
急に、ジンさんらしからぬ、ふざけた口調で言い出すから…
危うく自分が、信じかけていたことに、裕太は気が付く。
実に乗せられやすい性格だ…
「ジンさん、止めて下さいよぉ~
ボクたちは、そんなつもりで、ここに来たわけじゃあないんだから」
やけに裕太の声が、この洞窟内で響いている。
あはは…
「それは、そうだ」
あっさりとジンさんは引き下がる。
だが、とても楽しそうなので、まさかと思い
「ジンさんも…宝探しとか、冒険とか、興味があるんですか?」
思わず裕太は口から先に出てしまう…
ニヤリと笑うジンさんを見ていると、見た目は現実離れをするくらい、
美しい容姿のジンさんが、やけに近く感じられるので、裕太は嬉しく
なってきた。