「あそこには…井戸があるんだ」
ジンさんの代わりに、タツさんが答える。
「井戸が?こんな所に?」
地下の洞窟に、井戸が?
そんなことは、聞いたことがない。
「あぁ、そうかぁ」
だけどリュウは、思い当たるころがあるようだ。
「それじゃあ、あの竜神様の鳥居の近くにある井戸のこと?」
自分が肩車してもらっている、頭の下のタツさんに向かって、話しかける。
「そうだよ」
よくわかったなぁ~
タツさんは、リュウの足を、ポンポンと叩く。
「そっかぁ~」
ふいにリュウは、きゃはは!と、まるで父親に甘える子供のように、
嬉しそうに笑う。
「竜神様のトリイ?」
なんのこと?
裕太だけが、会話に置いてきぼりにされている。
「あぁ~さっき見たでしょ?
竜が立っていたとこ!」
ずいぶんアバウトに言うと、無意識なのか、ポンポンとタツさんの頭を叩く。
「おい、暴れるな!落っこちるぞ!」
グラッと揺れて、あわててタツさんが注意する。
だけどもリュウが乗っていることに対しては、ちっとも嫌がっている
様子がない。
「竜の立っていたところ?」
「あぁ~ここに来る前に」
「竜?竜の柱のこと?」
それを聞いて、ようやく裕太は、やたらと竜のモニュメントが多いなぁ、
と奇妙に思っていたのを思い出す。
「あれって、なに?」
思わず裕太が、何気なく尋ねた。