それからリナは、あらたまった顔をすると
「それがね、あんたのいたトコの場所を、聞かれた」
ちょっと、眉をしかめて、セナの顔を見る。
「え~」
「もしかして、あんたに会いに来たのかもよ!」
「そんなこと、ないよぉ」
からかうように、リナが見るけれど、セナは大げさなくらい頭を振る。
男の子の知り合いなんて、セナにはいない。
(学校と施設以外は)
ましてボーイフレンドや彼氏なんて、もってのほかだ。
「だって、親戚も親だっていないんだよ」
セナはそう言いかけて、あっと思う。
「いた…」
思わず、小さくつぶやく。
「えっ、いるの?」
オッという顔をして、リナは嬉しそうにセナを見る。
「ウサギ!あんた、やったねぇ~
ねぇ、だれ?
お兄さん?
知り合い?」
ユサユサと、セナの肩を揺さぶる。
リナに揺さぶるままに、振り回される。
「え~知らないよぉ。
だって、顏も覚えてないんだもん」
リナには悪いけどね、とセナが言う。
「え~っ、それって、どういうことよ」
だがリナは、セナを解放しようとはしない。
「うーん、だからぁ~私が、あそこに引き取られる前に、
いた所」
ポツンとそう言う。
「へぇ?」
ますますリナは、興味津々で、セナに迫る。
「え~っ、なになに?幾つの時?
それって…お金持ち?」
「赤ちゃんの頃よ!
おじいさんの所の男の子!」
そう言いかけて、それ自体も、本当のことなのかどうか、
あやふやなのだ。
「へぇ~そうなの?やったじゃん!」
だがリナはさらに、セナを揺さぶる。
「ねぇ、家出なんてヤメにして、帰ったら?」
ポンポンと背中を押した。