「アオイくん、覚えているかなぁ…
あの子は、ちょっと変わっていて…」
そう言いかけると、アオイはついに我慢きれなくなり、立ち上がる。
「そんなの、関係ないです。
先生、教えて下さい。
あの子は、どうしているんですか?
まさか…もう…し…」
覚悟したように、アオイが強い口調で言いかけると、先生はあわてて
「あっ」と声を上げる。
「ごめんごめん」
急に、アオイの肩に手を触れる。
「大丈夫、あの子は元気よ。
今は、遠くの施設にいるの。
もうすぐ、高校生になるはずよ」
急に、アオイの機嫌を取るように、ニコニコ笑いながら、
「ごめんごめん」
重ねて、アオイに謝る。
「一体、何なんですかぁ~
ボクが、セナに会ったら、ダメなんですか?」
やや食い気味にそう言うと、アオイはブスッとした顔で、ドスンと
椅子に腰を下ろした。
「いや、そういう訳じゃあないんだけど…
あの子は、新しい環境にいて、もう昔のことは忘れてしまって
いるから…」
先生は、フッと寂しそうな顔をする。
「私のことも…ただのお医者さん、としか思っていないみたいだし」
ポツンとそう言うと、アオイの目を見つめる。
「それって…ボクのことを、知らないって…ことですよね?」
確かめるように、先生を見る。
先生は黙ってうなづくと、
「で、どうするの?」
アオイの目の奥を、のぞき込むようにした。