「ねぇ、ソータロー」
突然、話があると清子に呼び出され、宗太郎は再びあの神社へと向かう。
すると、階段の真ん中で座り込んでいた清子と、目が合う。
「あっ、ソータロー」
ここ数日、沈み込んでいた彼女なのだが、何だか興奮した面持ちで、
宗太郎を見つめる。
「私ねぇ、見たのよ!」
いつになくイキイキとした表情を、彼に向ける。
「だから…何を?」
何となく、嫌な予感がする。
「まさか…神林君か?」
だが、彼のことならば、それも仕方がないと思う。
「あら、違うわよぉ」
なぜか、吹っ切れた顔をして、ケラケラと笑う。
「そうじゃなくて…先生よ!」
「へっ?先生?
そりゃあ先生なら、いつも会うだろ?」
「だからぁ~」
もどかしそうに、清子は声を強める。
こんなテンションの清子は、ここ最近、見たことがない。
「先生は先生でも、あの先生よ!
高梨先生!」
「えっ?」
ウソだろ、と宗太郎は清子を二度見した。
「知ってるだろ、先生はいなくなったって」
「そうなんだけどね。この前、友達と帰っていたら、偶然!
先生を見掛けたのよ」
興奮気味に、清子はそう言う。
「まさかぁ~」
見間違いなんじゃないの?
宗太郎はまだ、本気にしない。
「しかも、女の人を連れて」
「女の人?まさか!」
「若い女の人!」
「嘘だろ?」
「先生、結婚してたの?」
「さぁ?独身のはずだけど?」
まだ、宗太郎は信じられないのだが…
清子のボルテージは最高潮で、振り切りそうな勢いなのだ。