先生は、にぃっと笑うと、
「そうか?私が助けたのは…キミだけだよ」
挑むような目付きで、宗太郎を見返す。
「えっ、ホント?」
おかしいなぁ~
気のせいか?
宗太郎はそうつぶやく。
先生は、彼から目をそらす。
「そうだよ、記憶違いだろ?」
わずかにまなざしが揺れるのを、神林君は黙って見ていた。
あれからオジサンたちは、探し回っていたけれど…
「さぁ、そろそろ帰ろうか」
先生は、宗太郎の背中に手を置いた。
(あの日と、同じだ…)
宗太郎は、ふと思う。
『赤い線と青い線、どっちが好き?』
そう聞かれて、
『青だ!』
そう叫んだ後、この人はニッと笑ったのだ。
あの時は、宗太郎ともう一人(女の子か?)を連れ出してくれた。
その時リョウくんが、こちらを見ていたのは…
気のせいだったのだろうか?
「ボクの人生は…お前へのしょく罪のためにある」
ポツンと宗太郎の背後で、神林くんはつぶやく。
「何だよ、それ!
神林くんは何も…悪いことなんて、していないだろ?」
ヘンなの~と、宗太郎は笑う。
だが…神林くんが申し分なさそうに、うなだれているのが、背中越し
でもわかる。
(一体、何をしたっていうんだ?)
その辺りは…宗太郎の記憶には残ってはいない。
「おまえは…どうしたい?」
いきなり神林君が、宗太郎に聞く。
「どうしたいって、べつに?」
そもそも何かをするために、ここに来たわけではない。
「いや、ボクはこのままでいい」
あえてすべてを思い出したいとは思わない。
「おまえは、それでいいのか?」
やけに神林君が、宗太郎にからんできた。